平成18年11月5日号から
無暖房住宅に挑戦
千歳市・協栄ハウス  2×4工法、外壁は335ミリ断熱

断熱施工中の無暖房住宅。手前に外張り付加用の断熱材が積まれている
 北海道の空の玄関口、千歳市で無暖房住宅が今月末の完成を目指して建設中だ。ツーバイフォー工法で壁の断熱厚は335ミリ。この冬に室内環境の計測を行い、エンドユーザーの声も聞きながら来年には商品化を進めたい考え。

販売可能なコストで商品化
 建設しているのは(株)協栄ハウス(千歳市、前田豊司社長)。無暖房住宅に興味を持って今年2月にスウェーデン・ヨーテボリの無暖房住宅を視察。さらに長野県の無暖房住宅・モデルハウスを見学して、千歳でもやってみようと決断した。
 千歳市は最低気温がマイナス20℃を下回り、真冬日は2005年で73日を数えるなど札幌よりはるかに寒いが、降雪量は少なく冬場の日照には恵まれている。このため、日の出前後の冷え込みに耐えられるか、昼間の日射で暑すぎないかなど、高緯度のスウェーデンとは違った観点から課題を探り、もう一方では無暖房への取り組みを1棟だけに終わらせることのないよう、魅力的なプランづくりも念頭に置いた。

ツーバイテンのスタッドにグラスウールを吹き込む。「なかなか終わらない」とぼやきながらも、工事関係者の目は無暖房への期待に輝いている
 工法はツーバイフォー工法。断熱は床、壁、屋根で断熱し、開口部は熱貫流率1・0Wの超高断熱木製サッシを使った。
 断熱スペックは、床が210の床根太の下に断熱補強の206材を付加し、断熱材受けとして押出スチレンフォーム25ミリを取り付けて根太間に高性能グラスウール16K120ミリを3層充てん。
 壁は210のスタッドにBIB工法で充てん、その外側に押出スチレンフォームB3種100ミリを外張り。屋根は構造たる木208の下に断熱補強の208を流し、およそ370ミリをブローイングで充てん断熱した。
 問題となったのは各部の納まりだ。
 スタッドがツーバイテン材で235ミリ厚。このため床根太の直交方向はいいが、並行方向は床下地に根太がない格好になる。そこでスタッドを受ける床根太をはしご状に組んでその部分だけ断熱を先に施工。フレーミングが終わってから根太の断熱補強を追加した。
 ツーバイテンスタッドの室内側は、防湿・気密シート、石膏ボードを張ってから45ミリ角のたる木材で下地を組んで空気層とし、その上に内装下地の石膏ボードを張る2重壁とする。
 これは電気配線などで気密層を傷めることのないように室内側に付加し壁を設けるスウェーデンのやり方を参考にしたもので、密閉空気層になることで断熱効果も期待できる。

無暖房住宅の矩計図。初施工でもあり、現場で納まりが変更になっている部位もある
 換気は熱交換換気システム。配管にダクト清掃のハッチを設けた。暖房は肌寒いときに使えるよう、また、夏場対策として冷房兼用エアコンを装備する予定で、いわゆる暖房設備は設置しない。

暖房試算は灯油170リットル
 プランは吹き抜けを設けた4LDK。販売を前提としたモデルなので、空間設計で吹き抜けなど大空間を演出。必ずしも無暖房のためのプランにはしなかった。
 夏の暑さ対策はかなり悩んだという。接道方位が45度振れており日射遮へいがやりにくいことと、通風を重視すれば窓が多くなる点だ。通風を重視して個室を2面開口にすると、西日の処理と冬の熱ロス増加が問題となる。この点はある程度断熱性能の維持を優先させた。また日射遮へいは、南東面は軒とひさしで対応。軒とひさしの出幅は、夏至と冬至の太陽高度を割り出して決めた。冬場は冬至の正午でも太陽が取り込める一方、夏至の正午は完全に日射を遮へいする。
 南西面と北西面については太陽高度が低い西日となるため、さらに気を使ったが、西側の個室窓はオーニングで処理する予定だ。
 これらの断熱スペックで熱損失係数は0・78W。暖房面積は150m2。暖冷房のシミュレーションによると、暖房負荷は年間で1600kW、灯油換算で 170リットル程度で、次世代省エネ基準の6分の1に激減する。床面積1m2あたりでは10kWあまり。また冷房負荷は60kW程度でこれも激減となる。
 シミュレーション上では暖房負荷が発生するが、エアコンで十分対応可能と同社では見ている。
 同社石黒浩史専務は「まずは挑戦だと思う。モデルハウスで施工性とコスト、竣工後のデータ取りを行い、商品化へ向けて販売可能な性能レベルを検証したい。多くのユーザーが受け入れ可能なコストを実現できれば、寒冷地の北海道にとって大きな一歩だと思う」と語っている。


札幌で4地域合同研究会
研究・活動成果を報告
長野の無暖房や札幌の断熱改修

札幌で開かれた合同研究会
 北海道・東北・長野・北陸の各地域で、研究者と住宅関連企業がそれぞれの地域にふさわしい住まいづくりをともに学びながら考える4グループが一堂に会して、1年間の活動と研究成果を発表する合同研究会が10月21日札幌市内で開かれた。
 年に1回持ちまわりで今年は北海道。受け入れ団体である北方圏住宅研究会(北住研)が創立25周年の記念の年でもあり、寒冷地住宅の技術をリードしてきた北海道で最新の新築住宅を見学したり、北住研の記念講演会へ参加したりと盛りだくさんの内容となった。
 集まったグループは、北海道が北住研(長谷川寿夫会長、北海道大学)、東北が住まいと環境東北フォーラム(吉野博理事長、東北大学)、長野が信州の快適な住まいを考える会(山下恭弘会長、信州大学)、北陸が北陸の快適な住まいを考える会(垂水弘夫会長、金沢工業大学)の4団体。
 合同研究会では、それぞれが参加者を紹介し活動報告を行ったあと、研究発表を行った。


無暖房実験住宅の外観。窓の取付位置が外壁断熱の厚さを物語る
 長野  無暖房住宅は冷房も少ない
 最初は無暖房住宅に挑戦している山下会長の実験住宅などについて。長野市の信州大学構内に建設した実験住宅は、延床24m2、実験室が16m2の小さな建物。熱損失係数は、グラスウール520ミリの断熱などによって0.72W。
 測定と宿泊実験から、真冬日や最低気温がマイナス10℃程度の日を含む外気条件で、冬場の無暖房は可能であるだけでなく、快適に暮らせることがわかった。
 一方、夏場は、日射の遮へいと排熱換気を行うことで、冷房負荷を大幅に減らせることがわかった。山下会長は「冬場の無暖房を確認するとともに、“超高断熱化すると冷房負荷が増える”という事実はないことが実証できた」としている。

 東北  換気は施工後の測定が必要
 東北からは、吉野理事長が住宅に装備される換気の性能検証の必要性について、調査と実測をもとに説明した。
 法的には0.5回/h程度の換気が義務化されているにもかかわらず、実際には多くの住宅がフィルターの汚れやダクトの破損、ファンの選定ミスなどさまざま理由で換気不足になっている。
 これらは施工後の性能確認が行われていないためであり、問題解決のためには1.しっかりとした換気設計 2.施工後の性能測定・確認 3.運用(使用)段階での性能確認―が必要と換気風量測定の必要性を述べた。
 このほか安井妙子理事(㈲安井設計工房)を中心に取り組んでいる既存住宅の断熱改修と長寿命住宅の啓蒙(けいもう)活動を紹介。寒くて暗く、使いにくい既存住宅をどうするか、築百年を超す古い住宅をどう残すのかという大きな課題に取り組んでいる現状を説明した。

 北陸  床下暖房の室内環境を実測
 北陸からは垂水会長がヒートポンプを熱源に使った床下暖房の環境測定を報告。基礎断熱した住宅の床下コンクリートに放熱管を埋め込み、1階を暖房。2階は暖房を設置せずに計測した。熱損失係数は1・7W。
 結果はヒートポンプの成績係数(COP)が最大で2.4程度に達したが、温熱環境面では、1階の部屋ごとの温度差が大きかった、2階への熱供給がうまくいかなかったなど課題も見つかった。熱供給の計画を見直すなど今後はこれらの改善を進めるという。


長谷川先生の改修後の自宅。屋根はトタンを吹き替えただけ
 北海道  断熱耐震改修の手法と実例
 最後に北海道は長谷川会長が断熱改修の基本と自宅の改修を報告。基本的な考え方として断熱・気密・耐震性の改修と、換気・暖房の対応が必要。方法として、基礎断熱、屋外側からの外壁断熱・耐震改修、窓の交換、間仕切壁上部などの気流止めの設置などを説明した。
 自宅の改修では、築25年の外張り断熱を充てん+外張りの200ミリ断熱に改修。さらに耐震補強や換気システムの更新などによって次世代省エネ基準を大きく上回る高省エネ住宅に生まれ変わった姿を紹介した(詳細は本紙7月25日号参照)。



高省エネ住宅の視点8
ガスコージェネ・燃料電池で何が変わりましたか
北海道ガス(株)札幌支店リビング開発グループ・石田信行マネージャー
北海道ガス(株)技術開発研究所技術開発グループ・後藤隆一郎課長 に聞く
 熱需要が大きい北海道では、省エネ化を図る手段として高断熱化とともにエネルギーをいかに効率良く使うかが重要なポイントになる。そこで注目されているのが、一つのエネルギーから電気と熱を効率良く取り出すコージェネレーションシステム。道内では北海道ガスが家庭用システム「エコウィル」を昨年6月から発売してビルダー・ユーザーから注目を集めたが、同社ではさらに次世代エネルギーとして期待されている燃料電池システムも数年後には市場に投入する。そこで今回は天然ガスによるコージェネレーションシステムで暮らしがどう変わるのかを、北海道ガス(株)の札幌支店リビング開発グループ・石田信行マネージャーと技術開発研究所技術開発グループ家庭用コージェネレーション開発チームリーダー・後藤隆一郎課長に聞いた。
【記事全文は紙面にて。見本誌をご請求ください】



JHS(ジャパンホームショー)に参考出展
キムラ 玄関ドアとウッドデッキ

サスティナシリーズのTc-363G5
 (株)キムラは、今月15日(水)から17日(金)まで東京・ビックサイトで開かれる「ジャパンホーム&ビルディングショー2006」に木製断熱玄関ドア「サスティナ」シリーズ5タイプと、東南アジア原産の硬くて耐久性の高いセランガンバツ材を使ったウッドデッキシリーズの新商品を展示する。一部は年内に発売、来春頃にはすべて発売できる見込み。
 木製断熱玄関ドア「サスティナ」シリーズは、同社の木製断熱玄関ドア「Tc-3木製断熱玄関ドア」の新しいバリエーションで、特長としてシリンダー錠の防犯性能表示に新たに対応、官民合同会議の試験で「侵入に5分以上を要する防犯性能の高い建築部品」に合格したことを示すCPマーク付きの美和ロック (株)製ダブルロック錠を採用。耐ピッキング、耐鍵穴壊し性能に優れ、上下のスイッチを両方押し込んだ状態にしなければサムターンが回らないキムラオリジナルの防犯サムターンも装備した。
 デザイン面では、小窓を等間隔で縦に配置するなどシンプルでモダンなデザインで防犯性にも配慮した。また、表面化粧材の厚みを部分的に変えることで立体的な高級感あるデザインとした。この表面化粧材はチーク材の柾目を採用、深く落ち着いた味わいを出している。
 このほか、基本性能は高品質な気密材「キューロン」の採用などでJISのA-4等級を大きく上回る優れた気密性をマークしている。

折りたたみ収納式のデッキチェアとテーブル
 寸法は幅990×高さ2265×厚さ115ミリ。予定価格は38万円(税別)と40万円(同)の2種類。
 一方、セランガンバツ材を使ったウッドデッキは、フレーム内にペットなどを洗えるプラスチック製流しを内蔵できる『ワンワンウォッシュ』と専用薄型ボックスに収納できるデッキチェア2脚とテーブルセットを展示。ユーザーから寄せられた「こういう商品があったらいいな」の声を形にした。
 デッキチェアとテーブルセットを収納する薄型ボックスは、北海道など掃き出し窓が一般的でない地域では腰高窓からウッドデッキに出るときの踏み台として使用できるよう高さを調整している。
 問い合わせは、同社商品部開発企画課(Tel.011・742・3173)へ。

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