平成18年11月15日号から
新住協北海道 札幌と旭川で見学会
200ミリ断熱の納まり
ローコスト化がポイント

 新住協北海道では10月31日札幌、11月11日旭川と相次いで200ミリ断熱の現場見学会を開催。多くの会員が超高断熱への取り組みとディテールなどを学んだ。

外側に付加断熱した200ミリ断熱の現場。筋交いが見える部分は外側の付加断熱層のグラスウール。その手前側が充てん断熱層
 200ミリ断熱は、外壁に充てん断熱の2倍の厚さとなる200ミリの断熱を施すなど、断熱材の厚手化によって住宅が解体されるまでの長い間にわたって省エネルギー性能を高める取り組み。
 本格的な超高断熱化の動きとしては始まったばかりで、熱橋が少なく壁内結露もない200ミリ断熱をより低コストで実現する標準工法の確立を目指し、同会会員を中心に取り組みが始まっている。

内側付加断熱に挑戦
 札幌では軸組の外側に付加した現場と内側に付加した現場を視察。そのあと同会代表理事の室蘭工業大学鎌田紀彦教授を中心に、納まりなどを振り返った。
 外側の付加断熱は、25ミリ、50ミリの付加断熱、またボード状の断熱材を使った外張り断熱などで広く行われているが、充てん用のマット品を使う200ミリ断熱では、下地の納めが難しくなる。
 今回の現場ではコーナー部分に構造上の隅柱を含めて4本の105ミリ角材を使ったが、この部分の熱橋はできるだけ小さくしたいところ。1つのアイデアとして鎌田教授からは図のような納まりが提案された。
 構造上の強度と外装材の下地を確保しながら断熱を優先する考え方で、出隅部分に少しでも断熱材を充てんする。これはツーバイフォー工法でもカナダ・R―2000などで紹介されたスタッド割りの考え方だ。
 一方、内側の付加断熱は、外部を囲った上でゆっくり断熱施工できる点で冬場施工には向いており、施工した大工は『外付加よりもやりやすい』と語っているという。
 工法は通常通りに充てん断熱を施工し、防湿・気密シートを張ったのち、付加断熱層の下地材を熱橋防止のため軸組とずらして施工。グラスウールをつめて内装下地のボードを張る。
 内付加の分だけ室内面積が狭くなるので、今回の現場では外壁面を105ミリ分だけ外に拡大し、実居住面積を維持した。ただ、これによって梁の長さが105ミリだけ長くなるなど複雑なプレカットも必要になった。

内側に付加断熱した200ミリ断熱の現場。充てん断熱層の上から防湿・気密シートを張り、付加断熱層の下地を組んだ状態。木部の熱橋を抑えるため、枠材の芯をずらしている
 このほか、羽子板が内付加断熱層と干渉するので、今後は金物工法のほうがいいこと、防湿・気密シートを中間にはさむのは、札幌までならいいがこれより寒い地域では結露の危険が高いことなどが、鎌田教授から説明された。

外側付加横下地など
 この春から200ミリ断熱プロジェクトがスタートしている旭川では、4つの現場の見学会と意見交換会が行われた。
 日本で最も寒冷でしかも冬場の日射が期待できない旭川をはじめとする道北地域は、省エネ化のために超高断熱化が最も必要な地域。工法開発は昨年から始まっており、今年度は参加会員も増えて10数棟の200ミリ断熱の住宅が建築される予定。
 これまで204材を使って横下地を組んだ190ミリ外付加断熱や、外壁下地面材の室内側から付加断熱枠材をビス止めする200ミリ外付加断熱などが考案されている。 鎌田教授は「高断熱性能は住宅が解体されるまで続き、省エネ効果は非常に大きい。厚手化で断熱性能を高める200ミリ断熱などの場合は、グラスウールボードなどではなく、コストパフォーマンスの高いマット品の高性能グラスウール16Kを使うほうが良い。多くの事例によってコスト低減が可能になれば、普及段階に持っていくことができる」と意義を語っている。


4要素プラス防暑対策
北住研25周年 記念講演会で長谷川先生

北住研25周年の記念講演会で快適な家づくりを解説する長谷川先生
 「寒地住宅に関して産学共同で研究を行い、その成果を広く一般に普及・啓蒙したい」という有志が集まって1982年7月に設立された北方圏住宅研究会(長谷川寿夫会長、北海道大学)がこのほど創立25周年を迎え、10月21日(土)札幌市内で記念講演会が開かれた。
 同会は「ゆとりある豊かな北国の住まい」の実現を目指して、主として技術的な面から研究例会や視察旅行を実施する一方、啓もう・普及のための出版事業や講演会なども行ってきた。また、本州の家づくり研究グループと定期的な交流活動を重ね、講演会当日の午前中も、東北・長野・北陸地域の研究グループと1年間の活動や研究成果を発表する恒例の合同研究会が開かれていた。
 講演会は長谷川会長が冒頭のあいさつを行ったあと、会員が一般消費者向けに住宅づくりの進め方やポイントを丁寧に説明。
 この中で長谷川会長は「健康で省エネ・長寿命の住宅づくりの基本は、1.断熱 2.気密 3.換気 4.暖房、さらに5.防暑の5点セットの性能をバランスよく建てること」と説明。冷房がいらない地域と言われる北海道でもこのところ冷房需要が高まり、暖冷房の年間トータルで省エネを考えると、暑さ対策が重要になってきていることに触れた。
 具体的には、日射の遮へいとしてひさし、すだれや外付けブラインド、オーニング、断熱戸などを紹介。また夜間の冷気を利用した排熱・蓄冷換気として、高窓利用などの手法を説明した。



C値1でも0.2回
NEWソトダン研 改めて気密の大切さ説く

講演する川本会長
 NEWソトダン住宅研究会(川本清司会長、(有)北欧住宅研究所所長)では先月27日、札幌市内で定例研修会を開催。川本会長が気密性能の重要性を熱ロスの増大という側面から解説したほか、会員から一般消費者の啓蒙(けいもう)活動について提案があった。
風・温度差による漏気と気密性能との関係(第3種換気システム稼働時)
[条件]第3種換気システム稼働・床面積150m2・給気口5ヵ所(相当隙間面積14cm2/m2)・必要換気量0.5回/時(180m3/時)・高さ5.3m
相当隙間面積
(cm2/m2)
風力換気量
温度差換気量
総漏気量
風速2.5m~ 3m/秒の時
(回/h)
風速6m/秒の時(回/h) 内外温度差30℃時(回/h) 風速2.5m~3m/秒の時
(回/h)
風速6m/秒
の時(回/h
5.0
0.48
1.40
0.38
0.86
1.78
4.0
0.35
1.10
0.28
0.63
1.38
3.0
0.21
0.80
0.18
0.40
0.98
2.0
0.08
0.50
0.08
0.16
0.58
1.0
0
0.19
0
0
0.19
0.9
0
0.16
0
0
0.16
0.8
0
0.13
0
0
0.13
0.7
0
0.10
0
0
0.10
0.6
0
0.07
0
0
0.07
0.5
0
0.04
0
0
0.04
0.4
0
0.01
0
0
0.01
※0.36
0
0
0
0
0
※0.36/㎡から風速6m/秒でも漏気量が0となる。
(有)北欧住宅研究所川本清司所長作成データを一部編集
 講演の中で川本会長は、本紙が連載している「高省エネ住宅の視点」から9月15日号の第4回“漏気量踏まえたQ値計算を”の内容を詳しく解説。建物の気密性能が低いと風によって漏気が発生し、それが熱損失を大きくすることを数値をもとに説明。
 漏気が熱損失係数の計算や灯油消費量計算に現れない隠れた熱ロスであり、これをなくすことが高省エネの第一歩であると強調した。
 第三種換気システムを採用した住宅で一定の条件の下で計算すると、気密性能が次世代省エネルギー基準の2倍の性能の相当隙間面積(C値)1cm2/m2 でも、居室容積の0.2回分の漏気が1時間で発生するとし、これを減らすにはC値で0.7cm2/m2、できれば0.5cm2/m2が必要であること、そのためには高価な建材が必要なわけではなく、技術さえあれば達成できることを改めて説明した。
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