新住協北海道では10月31日札幌、11月11日旭川と相次いで200ミリ断熱の現場見学会を開催。多くの会員が超高断熱への取り組みとディテールなどを学んだ。
外側に付加断熱した200ミリ断熱の現場。筋交いが見える部分は外側の付加断熱層のグラスウール。その手前側が充てん断熱層 |
200ミリ断熱は、外壁に充てん断熱の2倍の厚さとなる200ミリの断熱を施すなど、断熱材の厚手化によって住宅が解体されるまでの長い間にわたって省エネルギー性能を高める取り組み。
本格的な超高断熱化の動きとしては始まったばかりで、熱橋が少なく壁内結露もない200ミリ断熱をより低コストで実現する標準工法の確立を目指し、同会会員を中心に取り組みが始まっている。
内側付加断熱に挑戦
札幌では軸組の外側に付加した現場と内側に付加した現場を視察。そのあと同会代表理事の室蘭工業大学鎌田紀彦教授を中心に、納まりなどを振り返った。
外側の付加断熱は、25ミリ、50ミリの付加断熱、またボード状の断熱材を使った外張り断熱などで広く行われているが、充てん用のマット品を使う200ミリ断熱では、下地の納めが難しくなる。
今回の現場ではコーナー部分に構造上の隅柱を含めて4本の105ミリ角材を使ったが、この部分の熱橋はできるだけ小さくしたいところ。1つのアイデアとして鎌田教授からは図のような納まりが提案された。
構造上の強度と外装材の下地を確保しながら断熱を優先する考え方で、出隅部分に少しでも断熱材を充てんする。これはツーバイフォー工法でもカナダ・R―2000などで紹介されたスタッド割りの考え方だ。
一方、内側の付加断熱は、外部を囲った上でゆっくり断熱施工できる点で冬場施工には向いており、施工した大工は『外付加よりもやりやすい』と語っているという。
工法は通常通りに充てん断熱を施工し、防湿・気密シートを張ったのち、付加断熱層の下地材を熱橋防止のため軸組とずらして施工。グラスウールをつめて内装下地のボードを張る。
内付加の分だけ室内面積が狭くなるので、今回の現場では外壁面を105ミリ分だけ外に拡大し、実居住面積を維持した。ただ、これによって梁の長さが105ミリだけ長くなるなど複雑なプレカットも必要になった。
内側に付加断熱した200ミリ断熱の現場。充てん断熱層の上から防湿・気密シートを張り、付加断熱層の下地を組んだ状態。木部の熱橋を抑えるため、枠材の芯をずらしている |
このほか、羽子板が内付加断熱層と干渉するので、今後は金物工法のほうがいいこと、防湿・気密シートを中間にはさむのは、札幌までならいいがこれより寒い地域では結露の危険が高いことなどが、鎌田教授から説明された。
外側付加横下地など
この春から200ミリ断熱プロジェクトがスタートしている旭川では、4つの現場の見学会と意見交換会が行われた。
日本で最も寒冷でしかも冬場の日射が期待できない旭川をはじめとする道北地域は、省エネ化のために超高断熱化が最も必要な地域。工法開発は昨年から始まっており、今年度は参加会員も増えて10数棟の200ミリ断熱の住宅が建築される予定。
これまで204材を使って横下地を組んだ190ミリ外付加断熱や、外壁下地面材の室内側から付加断熱枠材をビス止めする200ミリ外付加断熱などが考案されている。 鎌田教授は「高断熱性能は住宅が解体されるまで続き、省エネ効果は非常に大きい。厚手化で断熱性能を高める200ミリ断熱などの場合は、グラスウールボードなどではなく、コストパフォーマンスの高いマット品の高性能グラスウール16Kを使うほうが良い。多くの事例によってコスト低減が可能になれば、普及段階に持っていくことができる」と意義を語っている。 |