写真2点とも…外装材にレンガを採用した住宅の例。レンガと木をうまくコーディネートして個性的な外観デザインとしている |
小山内建設(株)(宗谷郡猿払村、小山内浩一社長)では、外装材にカナダレンガを始めとする高耐久部材を積極的に採用することで、厳しい風雪にさらされる猿払の気候風土の中でもメンテナンス負担を最小限に抑えながら長期にわたって快適に暮らせる住まいづくりに取り組んでいる。
同社がある猿払村は宗谷管内のオホーツク海側に位置し、水揚げ量日本一を誇るホタテ貝を中心とした漁業や酪農などの第1次産業を経済基盤とする日本最北の村。冬期は積雪量こそ多くはないが、強い西風が吹き、同村のホームページによると南極のブリザードを思わせる日も数回あるという。その強い風雪は住宅の外装材にも影響を及ぼし、例えば窯業系サイディングでは板材の収縮やコーキング切れといった問題が心配になってくるそうだ。
そこで同社では5年ほど前から風雪から構造体を守る外皮=外装材の耐久性を重要視し、レンガやPVCサイディング、ガルバリウム鋼板などを積極的に採用。イニシャルコストは割高になるものの、長期的に見てランニングコストがかからず、メンテンナンスもほとんど必要ないというメリットを活かし、建物の長寿命化と維持管理負担の軽減を図っている。
このうち最も採用例が多いレンガは、幅257ミリ高さ79ミリ奥行90ミリのカナダ製品を使用している。国産品より目が粗く、水を吸っても排出しやすいため凍害を受けにくいのが特徴で、カラーも豊富。施工は6径の鉄筋を縦514ミリピッチ、横400ミリピッチで入れて積み上げ、専用金物を使って鉄筋と柱・間柱、構造面材のOSBを一定のピッチで緊結する。
また猿払村の場合、生コンクリートが当たり1万8000円程度と非常に割高なことから、レンガを受ける基礎は幅を広くするとコスト増に直結してくる。そこで同社では150ミリ幅の布基礎上部の室外側に造った130ミリ幅の突き出し部分でレンガを受け、突き出し部分とフーチングの間には押出スチレンフォームB3種75ミリ、布基礎内側には同50ミリを打ち込む納まりとしている。
PVCサイディング(ゼオンサイディング)を採用した住宅。玄関が東向きのため、この後、玄関前にカーポートを設置し、袖壁も付けることで西風による吹き溜まりに対応した |
最初にコストかける
レンガにかかるコストはm2当たり材工で2万円強。窯業系サイディングが同4千円近くかかるので外壁面積を 160m2とすると、その差は240万円程度になる。ちょうどサイディングの張り替え1回分くらいの差になることから、「サイディングは後々張り替えることが必要になることを考えれば、最初にその分のお金をかけて半永久的に長持ちするレンガを使ったほうがいい」(小山内社長)と言ってユーザーに提案しているという。
外装材にレンガを使う時の納まり例。布基礎室外側に設けた突き出し部分の上にレンガを積み上げていく |
このほか、猿払村では積雪こそそれほど多くはないが、強い西風によってできる吹き溜まりを防ぐことが家づくりのもう一つのポイントになる。
同社では玄関を吹き溜まりが発生しにくい南または北に配置するほか、東に玄関を設ける場合は玄関前のアプローチにカーポートや袖壁を付けるなどして吹き溜まりをできにくくしている。
同社の小山内社長は「当社が建てた住宅では、外壁のメンテナンスでお客さんにお金をかけさせたくないと考えたことが、レンガなどを積極的に採用するきっかけとなった。今後は他の地場工務店とも話しあって、環境や省エネを考慮した猿払のスタンダートとなる住宅の性能・仕様を決め、地元ユーザーが地元業者に安心して家づくりを頼めるようにしたい」と話している。 |