Dotプロジェクト第1号住宅の外観
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(有)岩手ハウスサービス(盛岡市、安藤敏樹社長)では、昨年から発足した岩手型省エネルギー住宅の運動「Dot(ドット)プロジェクト」の第1号住宅を盛岡市内に完成させた。
岩手県立大学盛岡短期大学部の佐々木隆教授を座長に昨年から活動を開始した同プロジェクトは、最低気温は札幌以上に低いが、1日の最高と最低気温の差が大きく、日射には恵まれた岩手地域にふさわしい高省エネ住宅を目指すもの。
建物の熱損失係数(Q値)を1.0W以下に抑え、暖房エネルギー消費量を次世代省エネルギー基準の半分以下にすることを目標に掲げながら、快適性の維持と光熱費の節減を寒冷地の暮らしを豊かにする基本に据え、岩手の暮らしの豊かさにつなげたいと大きな目標も掲げている。
第1号の住宅は延床面積52.9坪の在来木造工法で、ダブル断熱工法(付加断熱)を採用した2階建て。
基本的な考え方は、断熱性能の引き上げで建物外郭の省エネルギー性能を高め、暖房負荷を小さくしたうえで、輻射と自然対流の暖房を電気熱源で行おうという計画だ。
第1号住宅のリビング・ダイニング。暖房は温水パネルヒーターを電気ボイラーで暖める |
断熱仕様は、基礎外周部にウレタンボード50ミリ、外壁に高性能16Kグラスウール100ミリ充てん+ウレタンボード50ミリ外張り、屋根に高性能
16Kグラスウール200ミリ充てん+ウレタンボード62ミリ外張りしたダブル断熱工法。換気は第1種熱交換換気システム、暖房方式は電気温水セントラルでパネルヒーターを採用。
相当隙間面積は0・10/㎡。熱交換換気の採用により換気負荷を0.22回/hとし、Dotプロジェクト基準による計算方式で計算したQ値は
0.94W。室内平均温度18℃で試算した年間暖房エネルギー消費量は、4647kW、灯油に換算しておよそ465リットル。今後、エネルギー消費量の実測を行う予定だ。
断熱仕様と換気システムの変更などで、標準仕様よりも120万円ほどコストアップになっているが、暖房にかかるランニングコストを計算すると、コストアップ分は10~15年ほどで回収が見込める。これにより、暖房の省エネ化で環境を守ろうという考えをユーザーが受け入れてくれたという。
2階の洋室。屋根断熱で小屋裏を居室に。色使いが印象的 |
今後へ向けたテーマ
去る8月上旬に開催した現場見学会は、最高気温が36℃。多くの来場者が訪れたこともあって室内が暑くなり、エアコンを入れざるを得なかったことから、同社では超高断熱化と同時に夏場の日射遮へいや通風対策にも取り組む考え。冷房がなくても夏の暑さをしのげる住宅を目指す。
同社の安藤敏樹社長は「Dotプロジェクトの取り組みは始まったばかりだ。改良点を洗い出して次回につなげるとともに、自分たちの取り組みを多くの同業者にも知ってもらい、環境を守っていくという同じ目標を持って取り組んでくれるビルダーが1社でも多く増えてほしい」と話している。
また今後の活動についてDotプロジェクトでは、岩手の気候を踏まえた住宅性能と建材・資材の地場生産という観点から、地元の木製サッシメーカーと協力して高性能サッシの開発も検討していく。 |