平成18年1月25日号から
選べる自由に課題は残る
ローンの選択に適切な助言必要
フラット35利用者の平均像
項 目
全国
北海道
年齢(歳) 36.7 37.2
家族数(人) 3.0 3.1
世帯年収(万円) 681.8 686.0
住宅面積(㎡) 宅面積(㎡) 060125-HP.htm.0 100.1 126.1
主要資金額(万円) 3545.4 2751.0
 手持ち金 912.4 660.6
 公庫買取金 2260.8 1909.5
 その他公的機関 11.2 25.7
 民間金融機関 323.1 124.1
 勤務先 22.5 30.9
 親・親戚・知人 7.8 0.3
住宅取得後も返済を要する土地取得費の借入金 7.5 0.0
1ヵ月当たり予定返済額(千円) 104.4 85.3
返済負担率(%) 19.4 16.8
住宅金融公庫「フラット35利用者調査報告」(17年度上半期編)より
 住宅は多くの人にとって一生に一度の大きな買い物で、頭金も一定額必要だ。しかし北海道では昔から「頭金の少ないお客」が多かった。そのため公庫融資で返済開始5年後から返済額が急増する「ゆとり返済」で多くの焦げ付きを生んだ。住宅ローンの主役は公庫から民間に移ったが、低所得層への融資課題は残っており、住宅市場低迷の一因ともなっている。

主役は3年固定型
フラット35利用は高年収

 一般に若い人ほど、収入の低い人ほどフラット35のような長期・固定金利のローンが必要とされる。返済金額を最終支払い月まで確定できるため、転職などのリスクにも対応しやすいからだ。住宅ローンの主役が住宅金融公庫から民間金融機関に移り、公庫が証券化の仕組みを利用して民間の長期固定金利ローンを実現するフラット35は、全国平均で住宅ローンの9%、北海道に至ってはわずか4%台の利用にとどまっている。残りの大半は民間住宅ローン。中でも圧倒的に人気があるのが3年固定型ローンだそうだ。
 フラット35の平均的な利用者像は、全国、北海道ともに平均年齢が37才前後で平均年収680万円台。北海道では高年収と言ってもいい層だ。市場の裾野を広げたい若くて年収の低い層は利用しにくいのが現実だ。
 3年固定型のローン金利は、当初3年間は1.0%前後の低水準。しかしその後は変動金利になる。金利が上がれば返済額は当然上がり、半年ごとに金利が見直されるから、大げさに言えば3年先は支払額がどうなるかわからないリスクを背負っている。
 一方で公庫の調査によると、これから住宅取得を予定している人はフラット35のような長期固定型の住宅ローンを望んでいる人が半数。希望と現実のギャップは大きい。


新築住宅の融資シェア推移(民間住宅ローン)
平成16年民間住宅ローン実態調査(国土交通省)より
道内は頭金少ない
 先日公庫が消費者代表や金融専門家、住宅会社などの有識者を招いて意見を聞いたところ、フラット35が支持されない背景として、「書類が多く、審査や資金実行も民間ローンに比べて遅い」という指摘があった。さらに金融専門家からは、「フラット35は8割までしか借りられないが、民間住宅ローンは諸費用含めて10割借りられるところが多く、頭金が不足しがちな道内の購入者を考えるとフラット35は勧めにくい」という指摘もあった。長期・固定金利の魅力あるフラット35も住宅会社や金融機関から見ると勧めにくい商品だ。
 公庫のアンケート調査によると、道内ではローン選択の際に住宅会社を情報源とする人が約40%と多く、親族・知人の意見も約36%。これらは全国平均より10%近く多い。道内は身近な人の意見を参考にしているようだ。
 それではローン利用者側が民間住宅ローンのリスクを正しく理解しているかと言えば、特約期間後の金利設定方法については多くの人が理解しているが、金利が上がった時に返済額を増加させても未払い利息が生じる可能性があるなどのリスクについては半数近くの人が理解していない。


住宅ローン予定者の希望する住宅ローンのタイプ
住宅金融公庫「住宅ローンに関するアンケート調査結果」(H17.8実施)より
ビルダーは借り手の立場で
 住宅ローンは、利用する人が自己責任で選ぶことが基本だが、住宅会社や金融機関も判断に必要な情報を提供することが必要だ。
 健全な住宅市場育成のためには、利用者のライフプランも含めた資金計画をアドバイスすることが必要であり、これを住宅会社がやれば他社との差別化にもなる。営業トークの勉強も大事だが、こうした消費者の立場に立った専門的なアドバイスができる能力育成にも目を向けるべきでなかろうか。



パッシブ手法を活用
三笠・武部建設 南面に突き出しの大開口部

南面に突き出た大開口から日射を積極的に取り入れる。屋根の排気塔は暖炉用
 武部建設(株)(本社三笠市、武部豊樹社長)では、南面窓からの日射取得を積極的に行うパッシブソーラー手法と窓の断熱強化、熱交換換気の採用によって大幅な省エネ化を図ったQ1.0住宅を札幌市内で建設中だ。
 この住宅は新在来木造構法による延床面積約47坪(カーポート含む)の2階建て。同社では今回Q1.0住宅を建てるにあたって、躯体の断熱を強化するのではなく、パッシブ的な手法を中心に熱損失係数(Q値)の低減を図り、コストパフォーマンスに優れた省エネ住宅の実現を目指した。そのため躯体の断熱仕様は外壁が高性能グラスウール16K100ミリ、屋根が同140ミリ+140ミリ、基礎が押出スチレンフォームB3種100ミリと、同社の標準仕様と同じスペックだ。
 標準仕様と異なるのは、1.南面の外壁に大開口の突き出し窓を設置 2.窓の約8割にアルゴンガス入りトリプルLow-Eガラスを採用 3.第一種熱交換換気システムの導入―の3点。南面の大開口部は三角形状の突き出し部分に開口面積1000ミリ×1200ミリの木製サッシ・アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラスを8セット並べた構成となっている。他社のQ1.0住宅では日射取得を優先して大開口部にアルゴンガスとLow-Eを省いた透明トリプルガラスを用いるケースもあったが、同社では日射取得と熱損失低減のバランスを考えてアルゴンガス入り・Low-Eにしたという。

大開口部を含めて数ヵ所の窓はサッシレスとしてコストダウンにつなげている
 また、南面の大開口部を含めて開口部全体の8割にアルゴンガス入りトリプルLow-Eガラスを採用しており、このうち数ヵ所は窓枠に直接ガラスを設置し、サッシレスとすることでコストダウンの工夫を図っている。

熱交利用の床下暖房
 換気は4kWの電気蓄熱暖房器3台を設置した床下空間に熱交換換気本体を納めており、壁からダクトを通じて導入した新鮮外気を熱交換して床下に給気し、電気蓄熱暖房器でさらに加温してから各階に給気する仕組み。1階へは電気蓄熱暖房器上部の床に設けたスリット、2階へは建物コーナー部などに造ったダクト部分を通じて給気し、排気は各階ともトイレなど3ヵ所から床下の熱交換換気本体に送られ、熱交換した後、屋外に排出する。
 Q値は熱交換換気の熱交換率を80%、換気回数を0.1回/hとして0.97Wとなっており、年間暖房灯油消費量の試算は635リットルと、次世代省エネ基準のQ値1.6Wでの試算値1408リットルより800リットル近く少なくなる。11~4月の暖房にかかる電気料金の試算は、ドリーム8契約・マイコン割引有りで約25000円。この住宅ではオーナーの要望で3kWの太陽光発電システムを設置しており、その売電分が7000円/月見込まれるので、暖房費は太陽光発電で十分まかなえることになる。
 標準仕様からのコストアップについては、開口部のスペックアップと熱交換換気本体で約100万円という(電気蓄熱暖房器の床下設置のために土間を一部掘り下げた基礎や、床下から2階への給気ダクトなどにかかる工事費は含まず)。

手書きによる暖房・換気のシステム図用
 このほか、玄関廻りの壁にカラマツ、室内の腰壁にトドマツ、フローリングに東濃ヒノキの無塗装品を使うなど、内外装はできるだけ道産材・国産材を使うことにこだわっている。これは、地元の木が地元の環境に一番適していることに加え、環境のことを考えた場合、国外のCO2を吸収した輸入材を国内にできるだけ蓄積したくないと考えてのこと。
 同社の武部英治専務は「施工中の現場は冬でも少しヒーターを付けただけで十分暖かく、アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラスを使ったことで温熱環境がかなり良くなったことが実感できる。ユーザーにはこの温熱環境の快適さと、それによって可能になったオープンな間取りやデザインをわかってもらいたい」と話している。

主な断熱仕様とQ値

基礎

押出スチレンフォームB3種100?

高性能グラスウール16K100?
屋根
高性能グラスウール16K280?(140?×2)
木製サッシ(一部サッシレス)・トリプルLow-Eアルゴン入り(全体の2割の窓は別仕様
換気
熱交換換気(顕熱90%)
暖房
電気蓄熱暖房器
Q値
0.97W/?・K
暖房エネルギー試算 635リットル(灯油)


屋根緑化で一体環境
小樽・トベックス 防水材にオーシープラン

施工中の園舎。屋根に芝を張っている様子
 トベックス(本社・小樽市、戸部勇司社長)が建設を進めている北広島市の保育施設でこのほど屋上緑化を採用、防水性の信頼からドイツ・カスター社が製造している高耐久屋上防水シート「O.C.PLAN(オーシープラン)」を屋根防水として採用した。建屋の完成は3月中旬の予定。
 この保育施設は、自然の中で子供たちを伸び伸び育てる教育方針で、建物の周辺は木々が生い繁った環境の良い場所だ。そんなイメージを壊さず園舎も一体の環境づくりを進めようと計画。延床面積60坪の平屋建て園舎の屋根全体を緑化するアイデアもその一環だ。
 屋根はかまぼこ型の形状で、東西面の2箇所にドーマーを取り付け、排気用の塔屋を屋根の中心に設けている。屋根の構造はロックセラム240ミリによる屋根断熱工法とし、30ミリの通気層を設け、厚さ12ミリの構造用合板2枚を重ね貼りし、その上にオーシープランで防水施工を行った。


オーシープランを熱溶着し、優れた防水層を形成
熱溶着で優れた防水層
 防水材となるオーシープランは上下2層で段違いに施工。構造用合板の上に1層目を80ミリほどの間隔を開けて敷設し、両サイドを専用の金属ディスクとスパイクピンで固定。その後、1層目のオーシープランの間を覆うように上から2層目を敷設し、ジョイント部分に熱を加え溶着させる。その上から土が流れないように土留めを施し、排水用のドレンを取り付け、黒土と火山礫を混ぜ合わせた土を15の厚さで屋根に盛り、最後に芝を張って完成。
 オーシープランは瀝青(れきせい)とオレフィン系の原料を混合させたエチレンコポリマー瀝青(ECB)をシート状に加工した熱可塑性防水シート材で、紫外線や熱、水の影響を受けないため、優れた耐候性・耐加水分解性を発揮する。可塑剤を使っていないので、水にさらされても有害物質が放散される心配はないほか、高い寸法安定性と30年以上という予想耐用年数を誇る。

42tの屋根荷重をP&Bで支持
 緑化部分は黒土と火山礫を混ぜ合わせることで、保水力を持たせ重さを軽くしているが、それでも屋根の上に載っている土と芝の重さを合わせると42tにもなる。雪が積もれば何倍もの荷重が躯体にかかってくるが、これだけの重さをダグラスファーの太い丸太の柱・梁で支えるポストアンドビームの設計だ。
 同社の戸部社長は「バーベキューハウスなどの小さな建物で屋根緑化に取り組んだことはあったが、今回のように大きな施設で屋上緑化に取り組むのは初めてなので、良い経験になった。もともとログは自然ととけ込む工法。屋根緑化によって環境との調和もすすむ」と話している。

製品プロフィール

製品名
O.C.PLAN
部位等 屋根・屋上等の防水
価格 問い合わせのこと
問い合わせ サンエナジー(株)
札幌市手稲区前田10条12丁目1-30
Tel.011-688-4446

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