平成17年9月25日号から
見直される札幌軟石
 

懐かしさや温もりを感じる札幌軟石の表情
 明治時代を中心に札幌市内の庁舎や洋風の建物などに建築材料として使われていた札幌軟石が、住宅業界で再び注目されている。以前ほど使われるケースは少なくなったが、懐かしさを感じる表情や天然石そのものの素材感を気に入るユーザーも多く、唯一の生産業者である辻石材工業(株)(札幌市、辻明宏社長)には、このところ住宅関連業者からの問い合わせが例年以上にあるという。

差別化に適した素材
 札幌軟石は、大昔に支笏湖ができた時の火山活動で飛散した火山灰が、札幌市南区の石山地区一帯に降り積もり、何万年という長い年月にわたって強い圧力で押し付けられて固まったもので、正式名称は支笏噴火溶結凝灰岩。硬質なものと軟らかいものの2種類があり、硬質なものは建築用途や墓石として使用。軟らかいほうはパンやピザを焼くカマなどに使われる。
 明治7年頃から切り出され、耐火性の高さから当時の札幌本府庁舎や洋風建築物に使用。代表的な使用例としては、小樽運河の石造倉庫群や旧札幌郵便局、札幌市資料館がある。特徴としては、優れた耐火性や加工性に加え、懐かしさや温もりを感じる表情、肌触りの良さ、天然石の素材感などが挙げられ、住宅・建築においても塀や外装材、敷石、庭の置き石などに使われていたが、建築様式の変化や新素材の登場で徐々に採用されるケースは少なくなっていった。
 今でも石山地区では札幌軟石を使った建築物や施設をいくつか見ることができるが、ここにきて再び住宅業界で注目されるようになってきたことについて、辻石材工業・辻社長は「他社との差別化を図るために採用を考えるケースが増えているのでは」と話しており、魅力ある住宅建材として改めて見直されているようだ。

豊かな表情も魅力
 建築用途としては、加工のしやすさから豊かな表情を作れるのも魅力の1つで、ダイヤモンドカッターによる切断面をそのまま見せるダイヤ切り、ラフな凹凸を付けたコブ出し、全体的に細かく小さなくぼみを付けたビシャン仕上げ、コブ出しのコブ部分に細かく小さなくぼみを付けたトンボ、チェーンソーで縦線を細かく入れたチェーン引きがある。
 外装材としては、縦300ミリ×横600ミリ×厚さ40~50ミリのサイズで使う場合が多く、躯体外側にC型鋼を一定のピッチで横または縦に入れ、ステンレス線を介してC型鋼に取り付けていく。目地は止水セメントなどで処理。木造でも施工可能だが、構造によっては荷重を受けるため、数段置きに受け材を入れることもある。
 また、吸水性があるので庭の置き石に使うと、年月が経つにつれてコケが付き、味わい深くなるほか、芝生の緑ともマッチするようになる。研磨できないのでアプローチや庭に敷いても滑ることはなく、高齢者にも安全だ。
 辻社長は「札幌軟石は開業当時の東京・新橋駅舎を再現した旧新橋停車場にも使われるなど、昔懐かしいレトロ調のデザインの建物を作るのに適している。また、自然素材ならではの温もりある表情や素材感も大きな魅力」と話している。
  札幌軟石に関する問い合わせは辻石材工業(Tel.011・591・3939、Fax.011・591・3280)へ。



左:1階の壁に札幌軟石を使った札幌芸術の森・工芸館
右:道内唯一の札幌軟石採掘現場


雪庇対策に注目の製品
-必要は発明の母-
 北海道などの積雪・寒冷地域で、いまだに悩みの種なのが屋根の雪対策。特に無落雪屋根にできる雪庇は決め手がない。その雪庇対策に好評な製品が出現した。1つは雪庇を発生させない「ゆきもちくん」、もう1つは発生した雪庇を安全に落とす「スノーカットマン」。“必要は発明の母”。ともにその効果は抜群という。

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取材先からの申し入れにより記事を削除しました
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ゆきもちくんを取り付けたことで、雪庇やつららが発生していない

製品は鉄線をひし形状に編んだもの
落雪・雪庇を防ぐ
YSE どんな屋根にも設置可能

 (株)YSEでは、屋根の軒先に取り付けることでつららや雪庇を防ぐ「ゆきもちくん」(販売元・(株)キョーワ)の販売をこのほど開始した。すでに本州の豪雪地域では多くの採用実績があり、道内でのモニター設置でも効果が証明されたことから注目を集めている。 
 ゆきもちくんは、亜鉛メッキ塗装を施した鉄線を20ミリピッチでひし形状に編んだもの。屋根面の軒先部分を覆うように設置し、網目に雪を食い込ませることによって落雪を防止。さらに屋根面との間にできる空洞部分が通気・通水層となり、融雪水をスムーズに流し、雪庇と屋根雪のせり出し、つららの発生を抑える。
 建物の美観をできるだけ損なわないように4色のカラーを用意。洋瓦、日本瓦、鋼板など素材を問わず、また、どんな形状の屋根にも取り付けられるように、専用部材を豊富に取り揃えている。
 昨年から道内のモニター住宅でゆきもちくんの設置効果が検証され、冬期間でもつららや雪庇ができず、落雪や落氷も起きないことが確認された。
 色はダークグリーン・ダークブラウン・ブラック・グレーの4色。価格は屋根の形状によって異なるため要見積。
 問い合わせは同社(札幌市中央区北1条西26丁目2ノ22、Tel.011・633・1101)まで


国土交通省・経済産業省
悪質リフォームに営業停止など
現行法内で厳しい処分
 国土交通省では社会問題化している悪質リフォーム工事業者について、建設業許可の有無にかかわらず不正行為を行う者に適切な指導・監督を行う必要があるとして、このほど監督処分の基準を一部改正し公表するとともに、都道府県に対して示す予定の指導・監督のガイドライン案を公表した。また経済産業省では法解釈の明確化により、悪質な訪問販売リフォーム取り締まり・行政処分の強化に乗り出した。

無許可業者も同じく

高齢者をターゲットにしたサギまがいのリフォームが、リフォーム市場全体に悪影響を及ぼしかねない
 工事費用が比較的低いリフォーム工事については、建設業許可をもたない建設業者が施工することが多いが、適切なリフォームを推進するためには、許可の有無にかかわらず不正な行為を行う者に対して適切な指導・監督を行う必要がある。
 国土交通省による今回の監督処分の基準案では、訪問販売や電話勧誘など悪質リフォームの営業形態となっている販売方法について法律違反があれば、営業停止や改善指示の処分を行うことを定めるとともに、指導・監督のガイドラインでは無許可業者に対する処分全般について厳しい姿勢で臨むことを示した。
 まず、営業停止処分については、1.工事が不適切で公衆に危害を及ぼした場合 2.重大な手抜き工事など著しく不誠実な場合 3.契約締結に詐欺行為があった場合 4.特定商取引に関する法律(特定商取引法)に違反し刑に処せられた場合 5.無許可では請け負えない額の工事を請け負った場合 6.粗雑工事によって重大な瑕疵(かし)が発生した場合―に行うとしている。
 また営業停止はできないが意味の乏しい工事を繰り返すなど悪質な場合は、指導、勧告を行うほか、必要があるときは立ち入り検査を行うとしている。
 これら処分と同時に、許可業者以外でも処分内容について一般に公開し、被害の拡大を防ぐ措置を講ずる。

見積もり方法も規制
 一方、経済産業省では、悪質な訪問販売リフォーム業者に対し、特定商取引法に基づく業務停止命令を行うなどしているが、このほど同法の解釈を明解にし都道府県などに通達した。
 本来は必要ない工事なのに、あたかも危険があるかのように説明する(不実告知)、「下水道の調査にきました」などと声をかけるだけで、配水管清掃など請負契約を勧誘する目的を明らかにせず、さらにほかの工事勧誘目的も明らかにしない(勧誘目的等不明示)、何度も断っているのにしつこく勧誘する(迷惑勧誘)などの違反行為のほか、高齢者などに対する高額な契約とその勧誘なども違法であることを明確にした。高齢者などの判断力については柔軟に解釈し、結果として消費者の利益を害することがないようにという趣旨。
 さらに、たとえば“床下工事一式”とか“床下耐震工事一式”とだけ記載することは同法の書面交付義務違反に当たるとしている。一式見積もりが度を超えれば、内容を把握することができなくなるからだ。

信頼獲得に業界あげて地道な努力を
 【解説】悪質リフォームによる詐欺的工事が新聞などで大きく報じられて社会問題となり、国が現状の法律の中で対策に乗り出したのが今回の措置だ。住宅業界への信頼を揺るがしかねないこの問題の影響で、今年のリフォームは単価が上がらないという声も聞こえており、業界全体として信頼の維持・向上に努めなければならない問題でもある。
 まずすぐにでもできる対策は、会社名と氏名がわかるIDカードを営業・管理の全社員が携帯することだ。訪問営業に限らず、外出の際は全員が必ず首などからさげてユーザーに所属がわかるようにしておく。できれば工事業者全員に携帯してもらうのがいい。ユーザーから見たとき、元請も工事業者も区別はできないからだ。
 見積もりも注意が必要。一式見積もりが問題だとは言っても、ふつうは工事全体を一式で表示することはない。それにしても見積もりの意味をわかりやすくする努力は必要になる。信頼が揺らいでいるときだからこそ、しっかりとした現状調査と予定する工事、そしてわかりやすく明快な見積もりが必要になる。
 また工事中の車両については路上駐車をやめるべきだ。不便はあっても近隣住民のことを考えると、『ご迷惑をおかけします』ですまされる時代ではなくなっている。


 特定商取引法(旧訪問販売法):訪問販売など消費者トラブルを生じやすい特定の取引類型を対象に、トラブル防止のルールを定め、事業者による不公正な勧誘行為等を取り締まる法律。
 取引類型は6つあるが、悪質リフォームで問題となるのはこのうち訪問販売、電話勧誘販売など。同法では氏名などの明示の義務づけや虚偽説明などを規制しており、これらに反すると業務停止や改善指示などの処分となる。所管は経済産業省。


防犯性能の項目追加
住宅性能表示 開口部の侵入防止措置明示

開口部のグループ分けのイメージ
 国土交通省ではこのほど、日本住宅性能表示制度の評価項目に「防犯に関すること」を新たに追加。来年4月1日以降に性能評価を申請する住宅に対し適用する。
 住宅への侵入・窃盗犯罪が年々増加の一途をたどり、重視したい性能項目として防犯性を挙げるユーザーが多くなっている中、平成13年には同省が「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」を策定、14年には同省・警察庁・民間団体などによる「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が発足し、昨年には防犯性能の高い建物部品目録を公表。さらに今年6月には内閣が推進する都市再生プロジェクトで住宅の防犯性能の表示・評価が位置付けられたが、これらの動きを背景として住宅性能表示制度にも防犯に関する評価項目が追加されることになった。
 具体的に戸建住宅では 1.400ミリ×250ミリの長方形 2.400ミリ×300ミリの楕円形 3.直径350ミリの円形―のいずれかが通り抜けられる開口部を対象とし、各階ごとに住戸の出入り口地面またはバルコニーなどからの高さが2m以下で、さらに2階以上ではバルコニーなどからの水平距離が90以下の開口部その他の開口部―などにグループ分けし、それぞれの開口部が防犯建物部品を使用しているかどうかを表示することになる。防犯建物部品は官民合同会議の目録掲載品であれば良い(侵入抵抗時間が5分未満の製品除く)。
 なお、防犯建物部品で開口部全てに対応するのか、一定の範囲内で対応するのかは、個々の敷地の状況などを検討して、施主の判断にゆだねるとしている


戸建住宅の評価書のイメージ
構造の安定なども基準改正制
 このほかにも住宅性能表示基準・評価方法基準の一部が改正されており、戸建住宅関連では性能項目の「構造の安定に関すること」に薄板軽量形鋼を使った住宅=鉄骨造やスチールハウスの構造基準や、2階建て住宅の入り隅部を準耐力壁にできる仕様を追加し、地盤改良を行っている場合には改良後の地耐力の表示も義務化。また、「火災時の安全に関すること」では、評価対象となる台所等の火災感知器に熱式のほか煙式を追加した。いずれも9月14日から運用を開始している。

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