懐かしい感じのする外観。外壁はモルタル仕上げ
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古材(こざい)にひかれその再生に力を入れている帯広市の(有)夢家建造・加藤義隆社長はこのほど、築80年の十勝管内の古民家を解体、その古材を使って同清水町にレトロな外観の新築住宅を建てた。古材の持つ魅力を少しでも多くの人に知ってもらい、心豊かな生活を送ってもらえればと建築コストをオリジナルの建具なども含めて坪50万円台のリーズナブルな価格に抑えている。
磨くほど魅力出る
加藤社長は、大工として長年働き、15年ほど前に帯広市内の古民家を蕎麦屋にリフォームする際に初めて古材と向き合った。「何でこんなに固いんだ、と呆れつつ磨けば磨くほど魅力の出る古材に惹かれていった」という。その後本州で仕事をしながら、休みの日は、料亭やお城など、古い建物などを実際に見て回って研究した。
十勝に戻って6、7年ほど前から古民家再生の仕事を始め、芽室町にある大正(笑)庵という手打ち蕎麦屋などを手がけた。これは更別村の民家を移築し、断熱改修などのリフォームを行ったもの。
キッチンはタイルやガラス玉の埋め込みなどでモダンな空間に |
今回建てた新築住宅は、20代の若い夫婦に子ども2人の4人家族が入居する。施主は古材に興味があり、これまで何度か古材を使った同社の現場に見に来ていた。
外観は昭和30年代を思わせるレトロデザイン。住宅前に屋根付き車庫があるため、住宅全体が大きく見えるが、延床面積は36坪ほど。
古材は見せることを意識して室内に露出する梁や柱などに限って使っている。2階の梁はカシワ、梁を支える5寸柱はナラ、階段部の梁はタモなど。また、外壁部の一部に使った柱は古材の5寸柱のため、100ミリ充てん断熱でも室内にチリが出てその柱だけ真壁となっている。
内装は古材を見せながらもモダンな仕上げ。夫婦の寝室だけはクロス貼りでクローゼットドアはアクリルガラス入りの既製品を使用しているが、それ以外は塗り壁、タイル、木材、ガラスなどを使って温かみある仕上げにしている。壁面は石こうボード下地に本漆喰仕上げで、古材に見える床は、ツーバイ材を並べて塗装したもの。キッチンは既製品のキャビネットを使っているが天板はタイルと古材を使い、オリジナリティを出している。古材の天板は長く伸びており、ダイニングテーブルとしても使う。
断熱は壁がグラスウール100ミリ充てん、屋根がウレタン断熱板を120ミリ。基礎断熱を利用して床下空間に放熱器を埋め込み、暖気は1階床のガラリから上がるようにしている。このほか、薪ストーブも設置して目に見える暖かさも確保した。
夢家建造の敷地内には古材が仮組みの状態でストックされている
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ビルダーにも古材を販売
同社では、事務所敷地内に次に建築予定あるいは移築予定の古民家を仮組みした状態でストックし、それ以外に細かったり傷みがひどかったりして通常ならば捨ててしまう古材でも何らかの形で活用できるよう工夫しているという。
古民家は解体から請け負っており、解体した古材は一本単位で工務店や一般客に販売もしている。
LDK全体が吹き抜けで、2階ホールの子ども用空間がよく見える。白い装飾手摺は鉄製で地元制作品 |
加藤社長は「古材は、昔の職人が手で製材した味わいと質の良い道産材を使った木目や質感が大きな魅力。樹齢何百年という木を使っているのだから、丁寧に使えば何百年も使えるはずで、産業廃棄物にしてしまうのは勿体ない。解体して古材を再利用するまでの手間を考えると大変だが、コストを消費者にそのまま上乗せするのではなく、古材の魅力や特性を理解して使ってみたいという消費者に求めやすい価格で提供したいと考えている」と話している。
古材についての問い合わせは、同社(帯広市西22条北5丁目1、Tel.0155・37・0073(FAX兼用))へ。
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