平成17年7月25日号から
真壁の断熱・気密化
ここが知りたい!現場のツボ2

真壁造りの和室。ここ数年、本格的な和風の造りにこだわるビルダー・ユーザーが増えている

 在来工法で充てん断熱する場合、外壁部分は軸組室内側に気密層を連続させるため、大壁とするケースがほとんどだが、伝統的な在来工法にこだわる地域・ユーザーの要望で真壁とする場合、どうやって断熱・気密化するかは非常に大きな課題となってくる。そこで今回は真壁の断熱・気密化手法について取り上げてみた。

 高断熱・高気密と真壁 
気密の連続性確保
付け柱や付け梁で対応

 真壁は柱や梁を室内に現しにする在来工法の伝統的な壁の造り方で、軸組材が直接空気に触れるために木材の吸放湿効果が期待できるほか、木材そのものの耐久性も向上すると言われており、さらに木の温かみを活かした室内空間を造ることも可能になる。
 外断熱であれば防湿・気密シートと断熱材は軸組外側に位置するため、防火構造認定の仕様であれば軸組や壁の中を現しにすることが可能になり、真壁とすることも容易だ。
 一方、充てん断熱の在来工法では、軸間に断熱材を充てんしてから軸組室内側に防湿・気密シートを回し、柱・間柱等を下地として石こうボードで押さえるため、必然的に大壁となってしまう。そのため、これまで高断熱・高気密で真壁を表現する場合、付け柱や付け梁で真壁風とすることが多かった。
 しかし、ここ数年はビルダー・ユーザーが伝統的な在来工法を再現した和風住宅を造る動きが徐々に目立つようになってきたほか、本州では真壁の在来工法に対して根強いニーズがある地域もある。
 そのような中、高断熱・高気密住宅の発祥地である道内でも高い断熱・気密性を確保しながら真壁を実現する納まりが見られるようになってきた。



シート気密による真壁の納まり図(「新在来木造構法マニュアル2002」より)

 気密化のポイント1 
柱の両側を欠き込む
シート巻き込みボード押さえ

 真壁とする場合にポイントとなるのは気密性の確保断熱厚の確保―の2つ。
 気密性の確保については柱の部分で防湿・気密シートを連続させることができないため、いかにして防湿・気密シートと柱の取り合いの隙間をなくすかがポイントになる。
室蘭工業大学建設システム工学科・鎌田研究室が監修した「新在来木造構法マニュアル2002」に掲載されている1つの方法として、柱の両側に入れた欠き込みに防湿・気密シートを巻き込むように石こうボードを差し込む納まりがある。
 欠き込みを省略し、受け材と柱の間を気密パッキンで気密化し、柱間に入れた防湿・気密シートを石こうボードで押さえる方法もあるが、いずれにしても柱の欠き込みや気密パッキンの取り付けなど施工に手間がかかる。また、土台や胴差し廻りの先張りシートも柱に当たる部分を切り込んで気密テープでシールするなど、多少複雑になってしまう。


ボード気密による真壁の納まり図「新在来木造構法マニュアル2002」より)

合板を気密層に利用
 気密施工をより容易に行う方法としては、ボード気密工法とタイベック気密工法がある。いずれも「新在来木造構法マニュアル2002」に紹介されており、室内側の防湿・気密シートに防湿の役目だけ任せ、気密は軸組外側の構造用合板またはタイベックで確保するという考え方だ。
 ボード気密工法は、軸組外側の面材に構造用合板を使い、軸材との取り合いは気密テープまたは気密パッキンで気密化する工法。桁廻りや下屋と2階壁の接合部は先張りシートを使うが、桁廻りは結露を防ぐため透湿・防水シートを使うことになる。
 軸組室内側の防湿層にはこれまで通り0.2ミリのポリフィルムを使うが、多少の湿気は通気層によって屋外に排出できるため、それほど神経質に連続させる必要はなくなり、胴差し廻りの先張りシートも不要。真壁とする際にも防湿層のポリフィルムはこれまで通りに軸組室内側に回し、柱間に石こうボードを施工したら、カッターで柱の部分だけポリフィルムを切り取っていく。

気密化のポイント2 
タイベックで気密化
芦野組が新住協村で施工

 タイベック気密工法は、軸組外側に面材として使う構造用合板の外側に張るタイベック(透湿・防水シート)で気密化を図る工法。
 ボード気密工法では構造用合板と軸組との取り合いを気密テープや気密パッキンで処理するため、多少の手間は避けられないが、3m幅のタイベックを1、2階に横張りしていけば、桁・土台廻りとタイベックのジョイント部分を気密テープなどで処理するだけでいいので、かなり施工は楽になる。
 昨年、鷹栖町の新住協村でタイベック気密工法を採用した芦野組(旭川市、芦野和範社長)の納まりを見ると、構造は接合金物で緊結したプレカット材の軸組に現場で組み立てた工場制作の壁パネルセットを組み込んだオール真壁のPFP工法Mark3を採用。柱間に間柱と枠材から成る厚さ82.5ミリのパネルを組み込み、室内側は専用サイズのグラスウールを充てんしてからポリフィルムを回し、パッキン付きの土台先張りシートと連続させる。その後、石こうボードを張って柱廻りのポリフィルムをカットし、内装仕上げを行う。


(上)タイベック気密を行った芦野組新住協村モデルの施工現場
(右)タイベック気密の納まり図

 軸組室外側は面材の構造用合板9.5ミリを張り、その上から3m幅のタイベックを施工。1階のタイベックは下端を土台に押さえ材を釘打ちして挟んでから立ち上げ、2階のタイベックとのジョイント部分は両面テープを挟んで重ねると同時に、さらに上からアクリル製の気密テープで密閉。2階のタイベックは軒桁のところで屋根の防湿・気密シートとラッピングさせ、横桟で押さえて連続させる。
 その後、横桟を流して付加断熱材のグラスウールボード45を充てんし、通気胴縁となる12ミリの小幅板を225ミリピッチで施工。その上に左官のフェルト代わりとしてタイベックを張り、付け柱・付け梁を施工してからラスを張ってモルタル仕上げを行う。
 このタイベック気密工法で、気密性能は相当隙間面積0・3/と、防湿・気密シートによる気密化工法と同等の性能を達成している。

 断熱のポイント 
付加断熱がお勧め
縦桟使用で施工合理化も

 真壁にすると、柱間の壁面が柱より奥に引っ込むことになるため、一般的な充てん断熱では断熱厚が80ミリ前後となってしまい、外壁の断熱性能を十分確保するのが難しい。そこで十分な断熱厚を確保するための工夫が必要になってくる。
 手法としては、付加断熱を採用するのが最も容易。芦野組の施工事例と同じように軸組外側に横桟を流し、その間にグラスウールボードを納めていく方法や、押出スチレンフォームなど発泡系断熱材をめくら張りしていく方法が考えられるが、断熱材をめくら張りしていくやり方は通気胴縁を打つ際に墨出しの手間が必要になってくる。なお、大壁と真壁の外壁面を揃えるため、大壁の部分にも付加断熱材を施工する。
 グラスウールボードで付加断熱するのであれば、縦桟用のグラスウールボードを使う方法もある。縦桟を通気胴縁兼用で使用することによって施工の合理化を図ることが可能だ。

平角材を柱に使用
 このほか、正角ではなく室内方向が長い長方形の平角材の柱を使って断熱厚を確保するビルダーもいる。
 (株)アシスト企画(札幌市、岡本勝社長)では真壁とする外壁部分の柱に、特注の133ミリ×105ミリサイズを使用。土台から室内側に28ミリ突き出るように柱を立て、気密は柱の両側に欠き込みを入れて防湿・気密シートを巻き込むように石こうボードを差し込む。窓が入る場合は柱の両側に設けた下地の上から防湿・気密シートを石こうボードで押さえる。この納まりで施工しても、気密性能については全てが大壁仕様の場合とほとんど差がないという。


石膏ボードを張る前の室内の防湿・気密シートの施工状態(芦野組新住協村モデル)

通気胴縁兼用の縦桟を使った付加断熱用グラスウールボードの施工現場


平角材を柱に使った真壁の納まり例



新型ピアラ24発売
日本住環境 大風量で低消費電力実現

ファン本体NJ-400DCと風量コントローラー
 日本住環境(株)(本社東京都)は、第3種セントラル換気システム「ピアラ24」を従来製品比で消費電力を約7割カットするなど、全面改良してお盆明けから販売する予定。
 新型「ピアラ24」は、新開発のDCモーターの採用で最大480m3の幅広い換気能力を持ち、また主な排気ダクトを従来の125φから150φに広げるなどの工夫で圧損抵抗を低減、一層の低消費電力化をすすめた。これにより、風量コントローラーを5段階中レベル2に設定して配管時の圧損抵抗を50Pa程度と想定すると、換気量は160m3で消費電力は10W以下、電気代は月々158円以内で済むという。このときの騒音値は30.5dBで、さらに最弱のレベル1の設定では27dB以下と人のささやき声よりも静かなレベルになる。
 北海道・東北向けとして給気口「アクアプルーフ」に結露低減用の発泡ポリスチレンフォームや断熱ボックスをセットした製品を用意したほか、コントローラーにボタン式風量調節を採用し、一定期間が経つとコントローラーにフィルタークリーニングサインが点灯するなど、エアコンのリモコンのような感覚で扱えるようにした。また、同製品はユーザー自身でメンテナンスを行うことを考慮してファン本体をユーティリティなど見える場所に壁掛けで設置するため、デザインにも配慮してダクト配管の目隠し用化粧カバーを標準装備した。
 価格はファン本体、コントローラー、排気フードやダクトなど配管副資材を含む基本セットが28万5000円(税別)。
 問い合わせは、本社(Tel.
03-5425-6634)か各地の営業拠点へ。

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