平成17年7月15日号から
水平採熱の地熱HP
白田建築事務所/広谷工務店 施主参加でコストダウン
 今年初め、北広島市内にユニークな採熱方式を使った地中熱ヒートポンプの住宅が完成した。道内で初めてエナジーパイルによる採熱と水平採熱方式を併用し、暖房だけでなく給湯や冷房もまかない、この冬の電気代も予想通り低い水準に収まっている。

2種類の採熱併用

地熱ヒーポンを採用した住宅の外観。盛土しているため、農地面からは高台にあるように見える
 設計は白田建築事務所(札幌市、白田智樹主宰)で、施主が環境問題に関心があり、ヒートポンプ暖房を使ってみたいと相談を受けた。白田氏は前年にニセコで換気排熱ヒートポンプの住宅を手がけた経験があった。施主が農家で敷地が広いという条件から、COPの面では高効率が見込めるが市街地では採熱管の埋設工事が困難で採用が難しかった地中熱ヒートポンプに取り組むことになった。
 日本スティーベル(株)の地中熱ヒートポンプを使用。建物躯体などの施工は(株)広谷工務店(北広島市、廣谷貢社長)が担当した。今回は外張り断熱で室内を構造材現しで仕上げる予定だったことから、大工自らが墨付けし、木材の扱いにたけた棟梁が担当した。
 地中熱ヒートポンプは、一年中安定した温度の地中熱を利用するが、採熱管を50~100メートルの深さまで埋める必要があり、そのための掘削費用がかかるのが難点だった。今回は宅地造成前の土地が道路面より2.5メートルほど下がっており、盛土する前に水平に採熱管を敷くことで掘削コストを節約した。水平採熱方式はドイツなどで実績があるが、採熱のために広い面積を必要とするため道内戸建住宅の採用実績はなかった。またパイル工事が必要な地質で、(株)アイザワが開発した採熱用U字管を内蔵したH型PCパイル「エナジーパイル」を採用して掘削コスト削減も計画。結果的に両方式とも採用し、1階は水平採熱方式、2階はH型PCパイル方式で採熱してそれぞれ別のヒートポンプで稼働することになった。


採熱管を水平に埋設している。この後、写真左の道路の高さまで盛土をする
給湯や冷房にも利用
 2世帯住宅のため、延床面積は310.95?(93.94坪)と通常の2軒分。さらに給湯にも使うため熱量を多くとる必要があり、水平採熱は採熱管を住宅前の378?に総延長600mほど埋設。ここから得られる熱は約5.3kWほど。一方、エナジーパイルは深さ5メートルのものを70本埋設した。ここからは約4.0kWの熱が得られる。この熱を熱交換器で冷媒に伝え、さらにヒートポンプの圧縮機で60℃にして、給湯用配管と暖房用配管に分配して給湯と床暖房に使っている。
 暖房はCOPを上げるために送水温度を下げても暖かさが得られる床暖房に1階2階とも統一している。なお、暖房用送水温度は45℃前後に設定し、室温設定が22℃のとき床面温度は実測で26℃前後となっている。ヒートポンプによる暖房・給湯出力は、設計値として1階が約7.6kW、2階が約5.7kWで、COPは3.1~3.3ほど。

2階は内装仕上げせずに合板や構造材を現しにしてコストダウンをはかった
 通常の2軒分の設備工事が必要なのと、得られた熱を給湯や冷房にも使うため設備工事が大がかりになるため、道が募集していた新エネルギー導入促進事業に応募し、採用された。補助金として工事金額の2分の1補助を受けた。今後は事業の一環として北海道工業大学工学部建築学科の半澤久教授らがヒートポンプの実証実験を行うことになっている。

最大で月4万円強
 住宅の構造は在来木造軸組工法でネオマフォームの外張り断熱を採用、断熱厚は外壁が50ミリ、屋根は66ミリ、基礎部分は押出スチレンフォーム75ミリ。サッシは木製トリプルサッシで、断熱・気密性能とも次世代省エネ基準をクリアしている。換気は第3種セントラル換気をフロア別に2台使用。
 構造材は道産エゾ・トド材を使用し、これは広谷工務店が1年かけて人工乾燥と天然乾燥を組み合わせて平衡含水率まで落として安定させ、狂いにくくしたものを使用している。
 外装は乾式レンガタイル貼りが主体で、デザイン上のアクセントとして道南杉の板材を部分的に貼っている。正面玄関横には波形ポリカーボネート板を張って目隠し効果と明かり取りの両方をねらっている。内装は1階壁はクロス貼りで仕上げているが、2階壁はコストダウンも狙って構造用合板を現しにしている。床材は無垢の道産ナラ材を使用し、塗装は施主が担当。床暖房だが、床面温度が比較的低いこともあり、今のところナラ材の変形・反りなどはないという。

2階は内装仕上げせずに合板や構造材を現しにしてコストダウンをはかった
 白田氏は「コストダウンのためには仕上げの一部を省略したり、メンテナンスを施主が行う前提にして工事を一部省略するなど材料・工事そのものを少なくすることを考えている。その方が施主の住宅づくりに参加する意識が高まってよい効果が出る」といい、ヒートポンプ工事も含めた総工事費は約4800万円(設備工事費、補助金含む。設計費用、宅地造成費用は含まず)に抑えている。白田氏は「今後もヒートポンプシステムを提案していきたい」と話している。
 ヒートポンプの効果は、施工直後の2月の電気代が、上下階合わせて4万4千円ほどにおさまった。これは、暖房だけでなく、給湯、調理のオール電化部分すべてが含まれている。これには施主も予想以上と満足しているという。
 施工を担当した広谷工務店は、「外張り断熱はほとんど初めての経験で、構造材を現しにするため通常の墨付けができないなどとまどう部分もあったが、比較的早く慣れることができた。また材料を大事に扱う大切さを改めて認識した」と話している。



道産I型梁をPR
林産試・北総研 認定取得しオープンに利用

北総研の実験住宅であいさつする林産試の石河普及課長(左)。天井に見えるのがI型梁。また腰壁は内装用針葉樹合板
 道立林産試験場と道立北方建築総合研究所(北総研)が共同開発を進めていた道産I型梁に対して5月に国土交通大臣から建築基準法37条認定がおり、北総研構内実験住宅で6月28日施工説明会が行われた。
 I型梁は20年近く前に北米から日本に紹介・販売も始まり、最近ではツーバイフォー工法はもとより、在来木造工法でも屋根たる木などに採用する例が増えている。道立林産試験場(林産試)などが開発したI型梁は、ウェブと呼ぶ板状部分に道産カラマツの構造用合板、フランジと呼ぶ上下のツバ部分に道産トドマツの製材を使用した道産のエンジニアードウッド。
 I型梁の特徴としては寸法安定性や強度に優れ、軽量で取り回しもいいほか、スパンを飛ばせるというメリットもある。今回は在来木造にも用途を広げるため、根太受け金物の開発を行い強度試験などのデータ取りも終えている。
 金物は土台用と梁用の2種類があり、土台用は基礎を逃げてI型梁を受けられるよう形状が工夫されている。
 在来木造、ツーバイフォー工法ともに施工マニュアルが用意され37条認定によってオープン部材として使うことができる。
 製造技術は、すでに久保木工(株)(旭川市)に技術移転されているほか、林産試では道内の数拠点で生産できるよう同社以外にも技術移転を行いたいとしている。

屋根たる木に使った場合、軒の跳ね出しにも対応できる強度がある
 なお、同社が生産するI型梁は、梁背が235ミリの1種類、フランジの幅は42・63・88ミリの3種類あり、長さは10メートルまで。
 このほか説明会では道産材を使った異樹種集成材と内装用針葉樹合板についても紹介された。
 異樹種集成材は比較的強度の低い道産材を集成材の中央の層に、ベイマツやシベリアカラマツといった強度の高い樹種を外側の層に使うことで強度等級でE120をクリアしようというもの。
 試験の結果、異樹種の接着面のハガレもなく、結果は良好だった。今後は集成材メーカーへの技術移転を進めたいとしている。
 内装用針葉樹合板は、道産のトドマツやカラマツを使った内装専用の合板で、天然木化粧合板とは異なり、すべてのプライが道産針葉樹で構成されており、また構造用合板とは異なり、表面仕上げ材は抜け節や大きな節を避けて割り付けることができる。
 羽目板よりローコストで施工手間もかからず、構造現しのインテリアなどによく合う。
 すでに三井物産林業(株)と日本システム機器(株)が販売している。
 各製品についての問い合わせは林産試へ(Tel.0166・75・4233(代))。


夏対策に層流換気
日本住環境 暑い空気を拡散させず排出

ペーパーダクトを天井下部に現しで設置した状態。ファン本体は試作中のもので製品とは異なる
 日本住環境(株)では主に温暖地の夏の暑さ対策を中心に新しい考え方の換気システムを開発、「プラネッツ」という商品名で新発売した。高断熱・高気密住宅の夏の暑さ対策に悩む東北・北海道でも評判を呼びそうだ。
 プラネッツは建築基準法の換気基準クリアをベースにしながら、夏場、室内にこもる熱を効率よく排出するため、熱気がたまる天井付近に排気口を設ける。この排気口がプラネッツの大きな特徴の1つ。
 通常の排気口は丸形のグリルから20~30m3/hを吸い込むが、プラネッツは200ミリφのペーパーダクトを半割にしてツバを付け、そこに通気材を挟んで合わせた形状の排気部材。
 天井付近にたまった熱気は行き場を失ってどんどん増えていくが、プラネッツはその熱気を留めることなくまた拡散することなく線状に吸い込む。これを“層流換気”と名付け、プラネッツの基本に据えた。
 層流とは空気などが乱れずに規則正しく流れる様をいう流体力学の用語。夏場の排熱は対流などを利用して拡散させずに『すっと抜く』ことがポイントとされており、プラネッツは層流換気でこれを実現しようとしている。
 層流換気を効率よく行うため、オープンな空間設計を提案。階段室と吹き抜けを上下階の対流スペースととらえ、ペーパーダクトは天井付近に露出させて設置することを基本としている。

ペーパーダクトを天井下部に現しで設置した状態。ファン本体は試作中のもので製品とは異なる
 5棟ほど試作品を設置しデータ取りをしているが、埼玉県内の戸建住宅では、施主が「36℃の日でも昼間はエアコンを必要とせず、また1階より2階が涼しい」と語っており、暑さ対策の設計的工夫と相まってプラネッツの効果が発揮されていることが確認された。
 なお、トイレなどは個別換気となるが、今後オプションによりプラネッツでダクト換気することが可能になる。
 排気ファンは新開発の静音設計・大風量・省エネタイプで、単体で最大450m3/hの風量があり、DCモーターの採用などで省エネ化を図っている。延床面積40坪程度の住宅で24時間連続運転しても消費電力は10W程度、月々の電気代は158円ほど。この時の騒音は27以下と非常に静か。夏場の排熱のため風量を増やしても電気代を少なく抑えられる。またペーパーダクトは100%古紙からできており、ファンモーターの省エネ化と合わせて地球環境への貢献も考えた。
 施工は、天井の上層部にペーパーダクトを住宅の幅いっぱいに設置し、途中にT字管をかませてファン本体にダクト配管する。基本セットにはペーパーダクトが6メートル分と排気フード、T字管、排気ファン本体、自然給気口のアクアプルーフなどが付属する。設計価格は31万円(税別)。ペーパーダクト以外の排気ダクト類は別途用意が必要。
 問い合わせは、本社(Tel.03・5807・3434)か各地の営業拠点へ。

試読・購読はこちら

このページの先頭へ

運営サイト

株式会社北海道住宅新聞社
〒001-0029 札幌市北区北29条西4丁目2-1-201
tel.011-736-9811 fax.011-717-1770

当サイトで使用している写真およびテキストの無断転載を禁止します。

Copyright (c) 北海道住宅新聞社. All Rights Reserved.