平成17年4月25日号から
「新鮮外気が暖かい」
NEWソトダン住宅研究会 加温給気で快適さ実証

天井ふところに設置した給気加温システム。左側が給気口側で塩ビダクトの断熱吹付け工事途中
 硬質ウレタンフォーム断熱板による外張り工法で高性能な家づくりを目指すNEWソトダン住宅研究会(川本清司会長兼技術顧問)は、このほど例会を行い、第3種換気の新鮮給気を温水セントラル暖房の放熱器で予熱して室内に供給することで冷気感の解消を目指した給気加温システム「ヒート・フレッシュエアーエアサプライシステム」(特許申請中)の改良に伴う性能評価を北海道大学大学院工学研究科に委託、同科教授の絵内正道氏から良好な結果が出たことが報告された。

4年前の装置を改良
給気温度43℃で冷気感解消
 同システムは川本会長が4年前に開発したもので、その後改良を加えて3年近くの間に50件以上の採用実績がある。改良装置では給気量が増え加温効率がアップし、本体も小型化した。
 システムは、新鮮外気を2個のφ150ミリ給気口から取り入れ、1階天井ふところに設置したヒートチャンバーに分流したまま導入して内部の放熱器(2台で1700kcal)で加温、1階、2階それぞれ1ヵ所の給気グリルから加温した外気を第3種換気の排気ファンの作動で生じる内外圧力差で供給する。
 改良のポイントは、ズバリシステムの圧損低減。4年前の装置では加温効果は23~24℃だったが、今回は給気口のダクトを最初から1階用2階用に分流し、さらにヒートチャンバーの形状を流体力学の観点から見直すことで改良前の約8分の1に圧損抵抗を低減。これにより家全体の給気量に占める同システムからの給気の割合が高まるとともに、加温効率もアップ、室内の給気温度は平均43℃に高まった。また、装置本体も560×560×280ミリと天井ふところに設置できるほど小型化に成功した。

給気口フード。フードは横から取り外し可能で、メンテナンスに配慮した設計

ヒートチャンバー単体。右下前側が給気口への接続口で、左上側が室内給気グリルへの接続口。中央下は温水配管。左下に見えるフタは、チャンバー内部のメンテナンス用
 今回測定した住宅は新築のRC造3階建てでグラスウール外断熱工法、相当隙間面積は0.35/m2。今年1月12日~20日の間、北海道大学大学院工学研究科建築環境学研究室が内外差圧と室内給気量を測定し、外気温、風速変化と給気量の因果関係を調べた。それによると、風速変化による給気量の変動はあるが、変動幅は小さく、平均すると約130m2を保っている。これは排気ファンの排気量約240m2の約55%になる。また、給気温度は外気温の変動にほとんど影響されずほぼ一定の温度に保たれていた。
 改良装置の工務店渡し価格は、ヒートチャンバー部とダクトでだいたい15万円程度。給気口の外側フードを入れても16万円程度におさまるという。
 川本会長は、「改良前は室内への給気温度が20℃弱で冷気感がまだ残っていたが、改良後の装置は43℃以上まで加温できたため冷気感は全く感じない。このため暖房の設定温度を2℃ほど下げる人が多く、結果として暖房費を平均10%程度節約できているようだ。本体と給気ダクトの清掃にも配慮しており、今後はこの装置を活かした省エネ性の高い暖房システムも考えていきたい」と話している。

鵜野氏招き勉強会
アース21 地場ビルダーの課題と対策

鵜野氏
 全道の工務店ネットワーク組織・アース21(橋本政仁会長)では今月12、13の両日、札幌市内で第12回の定期総会を開催。議案を全会一致で可決したあと、高気密・健康住宅研究所・鵜野日出男氏が4時間あまりにわたって講演。講演を受けて会員が3グループに分かれて討議を行い、新しい年度へ向けそれぞれが決意も新たにした。
 鵜野氏は昨年10月の新潟県中越地震の被害地を訪れ、現地のビルダーとも連携を取りながらつぶさに被害状況を見た経験から、震度7の地域でもごくわずかではあるがほとんど被害なく残った住宅があることを例に、耐震性の強化と同時に住設・家具の転倒、ガラスの破損などを未然に防ぐためのポイントも紹介。この中で1.仏壇の転倒が意外な盲点、2.引き違い窓のクレセントが引きちぎられた例がある、3.フロの残り湯は災害に備えて入浴の直前まで捨てない―などの具体的ポイントを示した。

講演する鵜野氏と会員。当日は東北からも工務店などが集まった
 また営業はトップの仕事であるとし、社長自身を地域に売り込むとともに、営業マンが受注する仕事も必ず見込み客と面談し、契約してはならないお客を見極める必要があるとした。
 会員からは「首都圏での厳しい市場で勝ち抜く営業手法が参考になった」などの声も聞かれた。
 なお、総会では新年度事業として例会の充実などのほか、パンフレットの制作やホームページの充実も決まった。

異業種の成功学ぶ
アース21・楔の会 話題の旭山動物園を見学

夜行性のユキヒョウが昼間寝ているところを下から見ることができるように工夫された旭山動物園の施設を熱心に見学する楔の会会員
 アース21に続き、昨年7月に発足した、社長の右腕となる社員の育成を目的としたアース21・楔の会(吉田隆会長)も、今月14、15の両日、旭川市内で第1回総会と例会を開催。
 総会では昨年度の事業経過報告のほか、今年度の事業計画案などを審議・可決し、例会では現場見学のほか「発想の転換を旭山動物園に見る」をテーマに全国区の人気となった旭山動物園を見学するなど、会員にとって内容の濃い2日間となった。
 旭山動物園では、同園職員の井上さんの案内で各施設を見学。かつては20万人まで落ち込んだ年間入場者数が100万人を超えるまでになった同園の取り組みとして、なるべく野生に近い動物の姿を、入園者が間近で見ることができるように、職員が各施設の構造やプランを考えたこと、そしてその構造・プランが技術の進歩によって可能になったことに、参加した会員からは「ユーザーのことを第一に考え、新しい技術を活かして常にいいものを提供するのは工務店も同じ。とてもいい体験ができた」という声が聞かれた。
 このほか例会では明治時代に建てられた旧旭川偕行社の建物で重要文化財の指定を受けている旭川市彫刻美術館や、井上靖記念館なども見学。会員はそれぞれ熱心に建物の造りや展示物を見て回った。


オール電化をPR
東北電力北上 北洲と協力、2日で1400名

大勢の市民が見守る中で開かれた会場のイベント風景
 東北電力(株)北上営業所が北洲グッドリビングショーに協賛して開催したオール電化設備機器展示会が2日、3日の両日、北上市総合体育館小アリーナで開かれ、2日間でおよそ1400名を動員した。
 両日は(株)北洲がビルダーと一般ユーザーを対象に住設建材の展示会を隣接した会場で開催。相乗効果で多くの来場者で賑わった。
 電化設備の展示会では、オール電化機器の展示のほか、IHクッキングヒーターの体感コーナーや各種イベント、北方型住宅の紹介コーナーも併設され、リフォームや新築のプランなどを相談する一幕もあった。
 岩手県・北上市とその近郊は、雪も比較的多く、ときには最低気温がマイナス20℃にも下がるなど、寒い期間は短いものの北海道並みの寒冷地。ユーザーの暖かい家づくりに対するニーズは強く、近年では高断熱・高気密住宅とオール電化が徐々に普及している。

臭わない養生テープ
光洋化学 全種類をノントルエン化

カットエースFGを使った床養生
 アクリル系気密・防水テープを開発・製造する光洋化学(株)は、このほど養生テープ「エースクロス」「カットエース」全種類をノントルエン化、また弱粘着の「カットエースUG」を発売した。これにより、同社の住宅用養生テープは接着力の強さで建築塗装用(強粘着)、床養生用(中粘着)、仮止め・引越養生用(弱粘着)の3種類、テープの製法で2種類、合計6種類の養生テープの中から用途に応じて選ぶことが可能。機能性・利便性の高い養生テープとして今後拡販する考え。
 ユーザー引渡時には養生用テープは剥がされて室内に残らないため、トルエン臭の室内への影響は軽微と思われているが、健康住宅への関心が高まっていることから同社では数年前から養生テープのノントルエン化を順次進め、全種類のノントルエン化を達成した。
 「エースクロス」は、同社のアクリル系気密・防水テープと同じポリエチレン系の糸を縦横に編みこんだフラットヤーン基材で、しっかりとしていて手切れ性も良い。「カットエース」はポリエチレン系のエンボスフィルムを基材に使っているため薄くて柔軟性があり凸凹部にも追従性が良い。また、エースクロスと同等の手切れ性もある。
 強粘着タイプは、エースクロスYGとカットエースMGで、建築養生、塗装養生用。粘着力は25ミリあたり1000g。中粘着タイプはエースクロスFBとカットエースFGで、主に床養生用。粘着力は25ミリあたり750g。軟質塩ビへの糊残りもしにくい。弱粘着タイプはエースクロスUCとカットエースUGで、主に引越養生用。粘着力は25ミリあたり500g。

新製品のカットエースUG
 同社では、「最近パインやスギなどの柔らかい材の無垢フローリングが増え、塗装も塗膜を作らない含浸タイプの自然塗料が増えてきたが、当社の弱粘着タイプを使えば糊残りや変色なども見られず、安心して使える」とPRしている。
 全6種類とも幅は50ミリ、長さは25メートル。オープン価格。
 問い合わせは、同社東京営業所(Tel.03・3379・5361)へ。
 ホームページ:http://www.koyo-kagaku.co.jp/

精度高い在来複合梁
阿寒・高橋林産 道産材使い床鳴り保証付

断面は独特の形状をしている。カラマツ乾燥材同士はあえて接着していない
 高橋林産(株)(阿寒郡阿寒町)は、カラマツ構造用合板を心材としてカラマツ乾燥材を貼り合わせた在来軸組工法用複合梁「ハイブリットIビーム」を開発した。住宅内装で現しにして使うなど冬場の乾燥状態が続いても合板部の収縮がほとんどないため梁背方向の収縮率が最大0.1%以下に抑えられ、木やせが起こりにくく床鳴りが発生しないという。
 現在、本格的な販売に向けて国土交通省大臣認定を申請中で、性能評価機関の評価も終え5月には全国初の在来軸組工法用複合梁として認定が下りる見込み。同社のプレカット部門で大引材主体の販売を目指し、他地域のプレカット工場への販売や製造特許のライセンス供与による他地域での生産も検討中。
 ハイブリットIビームはツーバイフォー用I型梁をヒントに、接合部を欠きこむ在来軸組工法用複合梁として開発、15.5ミリ厚のカラマツ構造用合板の両側に45ミリ厚のカラマツ乾燥材をF☆☆☆☆取得の接着剤とCN釘又はスクリュー釘で二重接合したもの。カラマツ乾燥材は梁背の半分の高さの材を2枚貼りとし、2枚の木口接合面は接着剤も釘も全く使わないため乾燥時はそれぞれが独立して収縮するため収縮や反りなどを通常の半分以下に抑えられる。
 カラマツ乾燥材は収縮や反りが最も小さくなるように目を選んでカラマツ合板に貼り付ける。貼り付ける機械も新たに開発し、少々曲がりのある材でも狂いを出さずにスムーズに接着でき、歩留まりが大幅に向上してコストダウンが可能になった。なお、製法に関しては既に特許を取得済。
 また、同材は接合部破壊強度がホワイトウッド集成材に比べて高く、釧路工業技術センターの試験結果によると、初期破壊荷重で約2.3倍、最大破壊荷重で約1.4倍の強度がある。また、試験体間の成績にバラツキが非常に少なく構造材として安定した品質が期待できるという。

釧路工業技術センターでせん断試験を行っているところ
 そこで同社では、プレカット加工及びころばし根太か半欠き根太仕様で、構造計算時にエゾ・トドの基準強度で床組みを行っている場合、木やせによる床鳴りに対して一定額の保証を行うことにしている。
 価格は、輸入物のホワイトウッドKD材との比較であたり1、2割ほど高い程度で同集成梁と比べれば安く、カラマツ材は公庫仕様書で地面から高さ1メートル以内の防腐処理が不要となるため、床梁に使用した場合十分な競争力が期待できる。
 サイズは梁せいが210、240、270ミリ、長さは3650ミリで2730ミリや1820ミリなども対応可能。
 同社の高橋恒一社長は、「従業員を研修で林産試験場に派遣したとき、I型梁が十分な強度を持っていることに感心し、在来軸組工法で使える複合梁の開発を思いついた。林産試や釧路工業技術センターの支援・協力もあり、ようやく販売にこぎつけることができた」と話している。
 問い合わせは、同社(Tel.0154・66・3106)へ。

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