平成17年11月5日号から

低コストで200ミリ断熱
旭川・新濱建設 機械に頼らずQ値アップ

施工中のQ1.0住宅

パッシブ換気の排気と夏期の熱気を排出する10個の屋根排気口
 (有)新濱建設(旭川市、新濱壽男社長)のQ1.0住宅は、発泡プラスチック系断熱材による外張り100ミリ断熱と同等のコストで、スウェーデン基準並みの断熱性能を目指した点が大きな特徴となっている。
 同社ではこれまでにも2棟の外壁200ミリ断熱住宅を施工した実績があり、1棟目はグラスウールのみ、2棟目はグラスウール充てんプラス押出スチレンフォームとロックウールボードによる外張り付加。今回はコストアップの要因となる特注サイズの部資材を使わずに、軸組外側に100のグラスウール断熱付加を行い、軸間充てんと合わせて200厚のグラスウール断熱を選択した。
 建物の構造は新在来木造構法で、延床面積約28坪の2階建て(車庫除く)。
 外壁は軸組の外側にOSB9.5ミリを張り、その上から100ミリ×30ミリの間柱材を構造体軸組の芯からずらして施工し、軸間と軸組外側の間柱材の間に高性能グラスウール16K100を充てん。その後、室外側は間柱材の欠き込みに横桟を入れて透湿・防水シートを張り、胴縁を打ってモルタル仕上げを行っている。
 基礎は押出スチレンフォームB3種100ミリ。屋根は断熱厚を確保するため、上から210材の屋根たる木、105ミリの間柱材、天井下地となる18ミリの胴縁をそれぞれ直交させるように組み、210材の間に取った通気層45ミリの下にブローイング313ミリを吹き込んでいる。窓は木製サッシ・アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラス。

GW100ミリ付加分は材料費2000円/m2
 暖房は電気温水セントラルによる床下暖房、換気は施主の考えでパッシブ換気を採用している。パッシブ換気は布基礎から居間と脱衣場の床下まで引いた1500φの塩ビ管2本を通して新鮮外気を取り込み、床下の放熱器で温めた後、室内に給気。屋根には150φの排気口が10個あり、冬期はこのうち2個を開けて汚染空気を排気、夏期は残りの8個も開けて室内の熱気をスムーズに排出する考え。確認申請上は、トイレなどのパイプファンによる第3種換気とのハイブリッド換気となる。
 まだQ値計算は行っていないが、同社では1.1~1.2W程度になると推測している。軸組外側に付加した100ミリ断熱分のコストは、汎用サイズの部資材を使い回すことができ、水切りの設置などの手間も省略できたことから、材料だけで2000円/(壁面積)くらいに収まったという。

軸組外側のOSBの上から施工した間柱材。この間にグラスウールを充てんする
 同社の新濱社長は「機械に頼ることなく、断熱材の厚手化を効率的に行うことでローコストな次世代型断熱工法を目指した。特に苦労したところもなく、ユーザーから要望があればいつでも200ミリ断熱をわずかなコストアップで施工できる」と話している。

主な断熱仕様とQ値
基礎
押出スチレンフォームB3種100ミリ
高性能グラスウール16K100ミリ×2
屋根
ブローイング313ミリ
木製サッシ・トリプルLow-Eアルゴン入り
換気
パッシブ換気
暖房
電気温水セントラル
Q値
1.1~1.2W/m2・K



熱交で2棟目に挑戦
札幌・STV興発 年間灯油消費量348リットル

特徴的な書斎コーナーと窓の配置
 STV興発(株)(札幌市、北島壽一社長)では、新住協が昨年から提唱しているQ1.0(キューワン)住宅の2棟目を札幌市大谷地に完成させ、去る9月18日に現場見学会を開催。断熱性能だけでなく、落ち着いた雰囲気を感じさせる内外観の仕上がりにも来場者の注目が集まった。

熱交換気本体をユーティリティーに配置

オープン階段と米杉の羽目板
 今回の住宅では、第一種熱交換換気システムを採用しての取り組みとなり、熱交換換気の熱回収率を80%、換気回数を0.1回相当として計算した熱損失係数(Q値)は0.83W。暖房にかかる年間灯油消費量のシミュレーションでは348リットルとなり、次世代省エネ基準レベルの1253リットルに対しておよそ73%も削減するという超省エネ住宅となっている。断熱仕様は前回と同じく、基礎断熱は外側に押出スチレンフォームB3種100ミリ+内側に同20ミリ、外壁は高性能グラスウール16K100ミリ充てん+フェノールフォーム50ミリ外張り(ダブル断熱)、屋根は高性能ロックウール330ミリ吹き込み。 
 建物は軸組接合金物テックワンを使った新在来木造構法で延床面積はおよそ42・1坪の2階建て。
 北西角地の敷地に対して北側に建物、西側にアプローチを兼ねたカーポートと物置を配置し、南東の一角に大きな庭を設けている。
 外装は、1階が稚内産珪藻頁岩による左官仕上げ、2階が角波鋼板貼りとし2種類の素材を使い分けた。リビングが位置する南面に日射熱を取得し開放感を演出するため、大開口部を設置し大きなウッドデッキを造り付けている。
 玄関は靴置き場を来客用と家族用とに分けている。玄関土間が床暖房なので、雨や雪で濡れた靴をそのまま置いておくだけで乾く。
 1階はリビングダイニング+キッチン、洗面脱衣室や浴室など水廻りを配置。リビングから上る階段は間仕切りがないオープン階段。この階段と接する西側の壁だけ米杉羽目板を貼って空間にアクセントをつけた。
 2階は書斎を併設した主寝室と子供部屋を2つ配置し、書斎とそれぞれの子供部屋に窓付きのロフトを設けた。1階からロフトまでの通気をしっかり確保し、湿気や熱気を高窓から排出する計画。また、吹き抜けのリビングを囲う腰壁手すりは単行本などを整理できる本棚の役割も兼ねている。
 同社の北島社長は「今回のQ1住宅では、年間の灯油消費量が計算上で3488リットルと大幅な省エネ化を実現した。この住宅を通して地球環境に配慮した家づくりのあり方を知ってもらいたい」と話している。

建て方がほぼ終わった現場
 主な断熱仕様とQ値
 
基礎
押出スチレンフォームB3、外100ミリ+内20ミリ
高性能グラスウール16K100ミリ+フェノールフォーム50ミリ
屋根
高性能ロックウール吹き込み330ミリ
木製サッシ・トリプルLow-Eアルゴン入り
換気
熱交換換気(顕熱90%)
暖房
灯油温水セントラル
Q値
0.83W/m2・K
暖房エネルギー試算 348リットル(灯油)


アスベストと無縁
北海道セルローズファイバー会 CFの健康性をアピール

セルローズファイバーは柔らかい木質繊維なので、人体安全性が高い断熱材-と道セルローズファイバー会がPRを展開中
 北海道セルローズファイバー会(佐藤公会長、(有)ホクシン断熱工業社長)は現在、セルローズファイバーがアスベストとは異なり安全で高性能な断熱材であることを積極的にPRしている。
 セルローズファイバーは、新聞古紙を主原料とし、木材中の固形成分であるリグニンを取り除き、柔らかい繊維状のセルローズとした断熱材で、無機質繊維のアスベストは一切含まれていない。万が一人体に入るような事があっても蓄積されず体外に排出されるため健康被害はない。
 これに対しアスベストは、天然に産出する鉱物繊維で、現在は蛇紋岩から抽出される白石綿が使われている。繊維は細くて固く、呼吸などで人体の肺に取り込まれると、一部が排出されずに残り、潜伏期間20~50年で肺ガンや悪性中皮腫などの疾患を発症する危険性が高くなる。不燃性、耐熱性に優れ、耐久性、耐摩耗性など様々な優れた特徴があるため建築材料として広く使われてきたが10年ほど前に毒性の高い青石綿、茶石綿が使用禁止に、続いて昨年10月に白石綿も使用が禁止された。
 なお、セルローズファイバーは国土交通省が示したシックハウス対策の規制対象建築材料17品目に該当しないため内装用建築材料の規制対象外となり、F☆☆☆☆などの等級付けも必要ない。また性能面でも木質繊維内にも気胞が存在することから断熱性能が高く、吹き込み用断熱材としてはトップクラスの性能。同会事務局では、「セルローズファイバーへの誤解をなくし、正しい姿を知ってもらいたい」と話している。
 問い合わせは同会事務局(王子製袋(株)内、Tel.0126・26・2311)へ。


帯広市の景観賞受賞
赤坂建設帯広事務所 地場産材と自然素材を多用

受賞した帯広事務所の外観。カラマツ合板や写真上部に見える鹿追産の土を使ったレンガなど、道産材料も多く使っている
 帯広市内にある(株)赤坂建設(中川郡池田町、赤坂正社長)帯広事務所の建物がこのほど2005年度帯広市まちづくりデザイン賞を受賞した。
 帯広市は都市景観に対する意識の高揚を図り、優れた都市景観形成を目指して1984年に都市景観賞を創設、優れた建造物に対して毎年賞を授与してきた。20年を経た今年からは募集対象をまちづくり全体に広げ、「帯広市まちづくりデザイン賞」と名称も変更し、『まち創り部門』、『まち育て部門(活動)』、『まち育て部門(まちづくり提案)』の3部門で募集を行った。
 この中で『まち創り部門』は、十勝の自然や気候風土を活かす、地場産材を使う、デザインや色彩が優れている、緑地・オープンスペースに配慮した建造物や街並みなどが審査の基準。
 同社帯広事務所は梅田和敬取締役が設計、十勝・鹿追産の土を使ったセラミックタイルを外壁の一部に使用し、敷地内にあった建物を解体した時に出た耐火レンガを塀に再利用している。また、ミズナラやアカエゾ、ナナカマドといった北海道の木々を植え、利用しづらい三角形の敷地のコーナー部分に憩いのスペースとしてウッドデッキやテラスを配置したことなどが評価された。

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