平成17年11月25日号から

熱交採用で灯油1/3に
旭川・芦野組 基礎は押出50ミリを内側付加

塗り壁とガルバリウム鋼板で張り分けた外観。南面に日射を積極的に導入する大型窓を取り付けている
 (株)芦野組(旭川市、芦野和範社長)ではこのほど、同社の標準断熱仕様に50ミリの基礎内側断熱付加を行い、換気に第一種熱交換システムを採用することで、年間暖房灯油消費量を500リットル台まで低減したQ1.0住宅を旭川市内に完成させた。
 同社の標準断熱仕様は、外壁が高性能グラスウール16K100ミリ充てん+グラスウールボード32K45ミリまたは48K25ミリ外付加のダブル断熱、屋根が高性能グラスウール16K280ミリ、基礎が押出スチレンフォームB3種100ミリとなっており、今回Q1.0住宅を建てるにあたっては、熱交換換気を使わず断熱厚を増やしてQ値(熱損失係数)を低減することも検討したが、コスト負担が大きくなると判断し、熱交換換気を採用すると同時に基礎内側にも押出スチレンフォーム50ミリを付加した。
 構造は新在来木造構法で、延床面積約41坪の2階建て。外壁の付加断熱部分は軸組外側にOSB9.5ミリを施工し、その上に横桟を流してグラスウールボード32K45ミリを納めている。屋根は212材の屋根たるき間に高性能グラスウール16K140ミリを2層充てんし、屋根たるき上に透湿・防水シートを張ってから通気層を確保し屋根仕上げを行っている。
 窓は木製サッシ・アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラスを標準とし、南面に取り付けた1800×2200ミリと900×2200ミリの窓は日射を積極的に導入するため、アルゴンガスとLow-Eを省いた木製サッシ・透明トリプルガラス、2階の排熱窓はPVCサッシ・アルゴンガス入りLow-Eペアガラスとした。


外張り付加のグラスウールボードを施工中の現場
コスト30万アップ
 Q値は熱交換換気の熱交換率を80%、換気回数を0.1回/hとして0.807Wとなっており、年間暖房灯油消費量の試算は566リットル。次世代省エネ基準のQ値1.6Wで計算した場合は約1500リットルになるので、3分の2近くの暖房灯油消費量削減となっている。同じ木製窓を使った標準仕様からのコストアップについては、基礎断熱の内側付加分と熱交換換気で約30万円になるという。
 なお、外観は1階をアクリル系塗り壁材、2階をガルバリウム鋼板で仕上げたモダン系のデザインだが、室内は外壁以外の壁をすべて真壁として現しにした軸組を濃い茶系色で塗装したほか、壁はワラ入りのプラスター、1階床はウォールナットのフローリングを施工するなど、昔の木造校舎のイメージを高い断熱・気密性能による快適な空間の中で再現している点も大きな特徴となっている。

“昔の木造校舎”をイメージした懐かしさを感じる室内空間
 同社の芦野社長は「当社の標準仕様とQ1.0住宅は、基本的に熱交換換気を入れるかどうかの違いだけで、特に苦労したところはない。熱交換換気については、性能やメンテナンス性をひと冬検証してみたい。また、機械に頼らずに地熱や家庭内排水の熱を利用する方法も考えていきたい」と話している。

主な断熱仕様とQ値
基礎
押出スチレンフォームB3、外100ミリ+内50ミリ
高性能グラスウール16K100ミリ+グラスウールボード32K45ミリ
屋根
高性能グラスウール16K280ミリ(140ミリ×2)
木製サッシ・トリプルLow-Eアルゴン入り(南面の大開口部と2階排熱窓は別仕様)
換気
熱交換換気(顕熱90%)
暖房
灯油温水セントラル
Q値
0.807W/m2・K
暖房エネルギー試算 566リットル(灯油)



真壁で180ミリ断熱
小平・吉田建設 PFP工法で合板気密採用

1階を杉板、2階をサイディングで仕上げた外観。向かって右側に日射取得を考えた大開口部を設けた
 (株)吉田建設(留萌郡小平町、吉田興悦社長)が留萌市内に建設したQ1.0住宅は、真壁造りとしながらグラスウール90ミリ外側付加によって180ミリの断熱厚を確保した外壁や、南面に取った大開口部から日射を取得し、床下に設置したブロックに蓄熱させるパッシブソーラーの採用などにより、熱損失係数(Q値)低減と省エネ化を図っている。
 住宅の構造は、クレテック金物で接合したプレカットの集成材軸組に、工場製作の壁パネルセットを現場で組み立てて取り付けるPFP工法。2階建てで延床面積は54坪。

軸組外側に取り付けた204材の間にグラスウール90ミリを充てん
 断熱仕様は、外壁が高性能グラスウール16K90ミリ軸間充てん+同24K90ミリ外側付加による180ミリダブル断熱、基礎が押出スチレンフォームB3種外側50ミリ+内側50ミリ、屋根が高性能グラスウール16K280ミリ。
 外壁は軸組外側に面材として張った無機質エンジニアリングパネルのダイライト12ミリが気密層となる合板気密工法としており、ダイライトと軸組との取り合いはウレタン系の両面テープで気密化した。外側に付加したグラスウールは、ダイライトの上から横使いで柱・間柱にビス止めした204材の間に収めている。屋根は212材のたるき間にグラスウール100ミリを3層充てんし、その上に合板を張ってから30ミリの通気層を取って野地板を施工する納まりとした。


南面大開口部からの日射熱を蓄熱するブロックを床下に設置

灯油消費は700リットル強

 窓は木製サッシ・アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラス。南面の大開口部と天窓は透明トリプルガラスとし、太陽熱の取得を優先した。浴室とトイレを除く開口部は、南面を含めてすべて断熱ブラインドのハニカムサーモスクリーンを設置。暖房は電気温水セントラルヒーティング、換気は第一種熱交換換気システムを採用し、熱交換率80%、換気回数を0.1回/hとして計算したQ値は1.0W。年間暖房灯油消費量の試算は728リットルとなる。
 1階南面の窓は1800×1800ミリの大型とし、日射取得を考えてLow-Eガラスを使わない木製サッシ・透明トリプルガラスを入れたほか、屋根には3連窓の天窓を設置しており、積極的に導入した日射を床下に積んだブロックに蓄熱するパッシブソーラーも特徴の1つとなっている。

コストアップは5000円/坪


南面大開口部からの日射熱を蓄熱するブロックを床下に設置
 同社の標準的な断熱仕様は、外壁が高性能グラスウール16K100ミリ充てん+ロックウールボード150K25ミリ、屋根は高性能グラスウール16K23ミリ5、基礎は今回の住宅と同じ。今回の断熱にかかるコストアップ分はハニカムサーモスクリーンと第一種熱交換換気を除いて約5千円/坪ほどという。
 同社の吉田社長は「Q1.0仕様は今後も取り入れていきたいが、実際に施工するかどうかはユーザーの理解が重要だ。また、コストや施工性についてもより良い仕様を考えていきたい」と話している


主な断熱仕様とQ値
基礎
押出スチレンフォームB3、外50ミリ+内50ミリ
高性能グラスウール16K90ミリ+同24K90ミリ
屋根
高性能グラスウール16K280ミリ(100ミリ×3)
木製サッシ・トリプルLow-Eアルゴン入り(南面の大開口部と天窓は別仕様)
換気
熱交換換気(顕熱90%)
暖房
電気温水セントラル
Q値
1.0W/m2・K
暖房エネルギー試算 728リットル(灯油)


ルフロ換気を一新
日本住環境 省電力化、省施工の提案も

換気ファン本体。吸い込み口は三方に2ヵ所ずつ、計6ヵ所
 日本住環境(株)は、天井隠蔽型の第3種セントラル換気システム「ルフロ300」を12月からフルモデルチェンジ、「ルフロ400」として発売する。換気ファン本体の高性能化、静音化、省電力化を図るとともに、給気レジスターの防水性能向上や吸気グリル新設計、屋外排気フードの形状も改良するなどダクトを含め一新した。ダクト配管施工合理化のための新提案も盛り込み、施工性やコストパフォーマンスを向上させた主力商品として今後全国的に販売に力を入れる。
 ルフロ400は、今夏から同社が発売しているピアラ24やプラネッツと同様にファンモーターをDCモーター化。ファン風量スイッチを5段階の最強に設定した場合、換気風量は最大約450m3/h(機外静圧0Pa時)を確保しながら消費電力を抑えた。最大風量設定時で65W、風量を5段階で最弱に設定するとわずか4Wに低減、月々の電気代は40坪程度の住宅では約150円/月程度。
 本体を高強度発泡樹脂製とすることなどで静音化を実現、ファン騒音値を平均5dB下げた。本体の軽量化も実現、施工性が向上した。吸い込み口は従来の4ヵ所から6ヵ所に増え、別売のY型チャンバーでさらに増やすこともできる。
 今回のモデルチェンジでは、製品改良とともにダクトの配管方法について新しい提案を盛り込んだ。一般的に第三種換気は吸気グリルを1、2階とも天井、または天井付近の壁に設置するため、2階への配管距離が長くなるが、ルフロでは2階の配管を1階天井ふところで行い2階の床に吸気グリルを取り付け可能なように設計。システムの施工性に重点を置くビルダーにも対応している。
 このため吸気グリル「オリフィス'05」は天井にも床にも取り付けられる新設計とし、ダクトとの取り合いも施工性を重視した。吸気量は小さな穴が開いたプレートを2枚重ねて調節する。また、吸気量は中央の2ミリの穴より専用ピトー管を入れ、差圧計で簡単に検証できる。

給気口のスクウェアフロー。左が室内側で上方を開けて下方を閉じれば冬期のダウンドラフトを低減できる。右は雨だれ防止の水切り付の屋外給気ガラリ
 一新した給気レジスター「スクウェアフロー」は、閉時の気密性を保ちながら結露対策を施し、パイプ内に二重に水切りを設けて雨水などの浸入を防いでいる。室内側の表面カバーは可倒式で下部を閉じて上部を開ければ冬場のダウンドラフトを軽減することが可能。また、住宅密集地では隣家の排気口と近接することも配慮し、給気口内部に厚さ40ミリのフィルターを標準装備、空気の浄化と遮音効果を狙っている。なお、屋外ガラリには雨だれ防止の水切り加工済み。色はホワイトのほかオプションでブラックも用意。パイプは通常の塩ビ管を使用しており、ステンガラリフードへの変更もできる。
 屋外排気フード「エアロビット150」は、別シリーズの「オーロラ」シリーズに標準採用されている「エアロビット」をさらに低圧損化するなど改良。フードの正面や横方向からくる風を逆に利用して排気能力を高めるため防風板などの形状を見直した。
 このほか、風量コントローラーはツマミ式からピアラ24などと同じ視認性の高いタッチ式に変更。ファン本体のメンテナンス性にも配慮し、手で回せる化粧ネジの採用で、ドライバーなしで本体を開けることができ、ファンの羽根を容易に掃除できる。
 ダクトは低圧損を考え、二重構造の本管150ミリと従来通り100ミリの枝管で構成。
 オープン価格だが、実勢価格は従来製品より安くなる予定。寸法、重量などは確定していないが、現行品のルフロ300と同等になる見込み。
 問い合わせは、東京本社(Tel.03・5807・3434)または各支店・各営業所へ。

ルフロ400のシステム図。2階は床から吸気することで配管が短くなっている

エアロビット150。独特の形状で排気能力をアップ

吸気グリルは2枚のプレートの重なり合わせで吸気量を調節

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