塗り壁とガルバリウム鋼板で張り分けた外観。南面に日射を積極的に導入する大型窓を取り付けている |
(株)芦野組(旭川市、芦野和範社長)ではこのほど、同社の標準断熱仕様に50ミリの基礎内側断熱付加を行い、換気に第一種熱交換システムを採用することで、年間暖房灯油消費量を500リットル台まで低減したQ1.0住宅を旭川市内に完成させた。
同社の標準断熱仕様は、外壁が高性能グラスウール16K100ミリ充てん+グラスウールボード32K45ミリまたは48K25ミリ外付加のダブル断熱、屋根が高性能グラスウール16K280ミリ、基礎が押出スチレンフォームB3種100ミリとなっており、今回Q1.0住宅を建てるにあたっては、熱交換換気を使わず断熱厚を増やしてQ値(熱損失係数)を低減することも検討したが、コスト負担が大きくなると判断し、熱交換換気を採用すると同時に基礎内側にも押出スチレンフォーム50ミリを付加した。
構造は新在来木造構法で、延床面積約41坪の2階建て。外壁の付加断熱部分は軸組外側にOSB9.5ミリを施工し、その上に横桟を流してグラスウールボード32K45ミリを納めている。屋根は212材の屋根たるき間に高性能グラスウール16K140ミリを2層充てんし、屋根たるき上に透湿・防水シートを張ってから通気層を確保し屋根仕上げを行っている。
窓は木製サッシ・アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラスを標準とし、南面に取り付けた1800×2200ミリと900×2200ミリの窓は日射を積極的に導入するため、アルゴンガスとLow-Eを省いた木製サッシ・透明トリプルガラス、2階の排熱窓はPVCサッシ・アルゴンガス入りLow-Eペアガラスとした。
外張り付加のグラスウールボードを施工中の現場
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コスト30万アップ
Q値は熱交換換気の熱交換率を80%、換気回数を0.1回/hとして0.807Wとなっており、年間暖房灯油消費量の試算は566リットル。次世代省エネ基準のQ値1.6Wで計算した場合は約1500リットルになるので、3分の2近くの暖房灯油消費量削減となっている。同じ木製窓を使った標準仕様からのコストアップについては、基礎断熱の内側付加分と熱交換換気で約30万円になるという。
なお、外観は1階をアクリル系塗り壁材、2階をガルバリウム鋼板で仕上げたモダン系のデザインだが、室内は外壁以外の壁をすべて真壁として現しにした軸組を濃い茶系色で塗装したほか、壁はワラ入りのプラスター、1階床はウォールナットのフローリングを施工するなど、昔の木造校舎のイメージを高い断熱・気密性能による快適な空間の中で再現している点も大きな特徴となっている。
“昔の木造校舎”をイメージした懐かしさを感じる室内空間 |
同社の芦野社長は「当社の標準仕様とQ1.0住宅は、基本的に熱交換換気を入れるかどうかの違いだけで、特に苦労したところはない。熱交換換気については、性能やメンテナンス性をひと冬検証してみたい。また、機械に頼らずに地熱や家庭内排水の熱を利用する方法も考えていきたい」と話している。
主な断熱仕様とQ値
基礎
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押出スチレンフォームB3、外100ミリ+内50ミリ |
壁
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高性能グラスウール16K100ミリ+グラスウールボード32K45ミリ |
屋根
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高性能グラスウール16K280ミリ(140ミリ×2) |
窓
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木製サッシ・トリプルLow-Eアルゴン入り(南面の大開口部と2階排熱窓は別仕様) |
換気
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熱交換換気(顕熱90%) |
暖房
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灯油温水セントラル |
Q値
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0.807W/m2・K |
暖房エネルギー試算 |
566リットル(灯油) |
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