平成17年11月15日号から
鎌田教授が平易に講演
新住協北海道 市民セミナーに100名以上

多くの市民で埋まった講演会場
 NPO法人新木造住宅技術研究協議会(鎌田紀彦代表理事、室蘭工業大学教授)では10月23日に帯広、29日旭川、30日札幌と道内3会場で市民セミナー「そうだったのか高断熱住宅2005」を開催。多くの一般市民が講師で代表理事の鎌田教授の講演に耳を傾けた。
 このセミナーは同法人が掲げる“第二次高断熱・高気密住宅運動”の一環として一般市民を対象に高断熱・高気密を中心とする現在の住宅技術とこれからの提案としての省エネ技術などをわかりやすく解説するもので、旭川はもちろん、集客が難しいとされる札幌でも100名を超す盛況となった。

講演する鎌田教授
 住宅技術の進歩で寒さの解消と省エネの両立、吹き抜けなどの開放的空間の実現など大きく変わってきた戸建住宅の現状を説明したほか、見た目には高断熱・高気密住宅と変わらなくても技術力には差があることを指摘、ユーザーはわかりやすい説明に真剣に耳を傾けていた。
 また、同会の北海道ブロックが展開中のQ1.0住宅についても触れ、コストアップを抑えながらCO2排出と灯油消費を大幅に減らす取り組みを紹介した。
 当日はセミナー会場内でQ1.0住宅のための主要建材・設備の展示や同住宅に取り組む会員工務店各社の紹介も行われた。



改良型ヒートポンプを見学
NEWソトダン住宅研究会 来春には測定結果を公開

挨拶をする川本会長
 NEWソトダン住宅研究会(川本清司会長兼技術顧問、(有)北欧住宅研究所所長)では10月26日、第三種換気システムの排気から熱を回収して暖房に利用する換気廃熱利用型ヒートポンプ暖房、および給気加温システムの装着現場見学会を、小樽市赤岩に建設された住宅で開催した。ヒートポンプの効率を大幅に引き上げた改良タイプの製品ということもあり、当日は会員以外の参加も含め総勢25名が訪れ、現場を熱心に見学した。
 現場は(株)江田建設(小樽市、江田清三専務)の施工。建物は1階RC造、2階木造の2階建て。コンプレッサーユニットを除き、給気加温装置、空気熱交換ユニット、水熱交換ユニット、補助ボイラーは1階の納戸に取り付け、ここから室内の暖房パネルに温水を循環させる。

1階車庫の天井に取り付けた給気加温装置を見学している参加者
 建物の性能は、気密0.11/m2、換気回数0.5回/h、熱損失係数(Q値)はおよそ1.6W/m2・K。暖房面積は34坪で、補助熱源として灯油ボイラーを取り付けている。
 今回のヒートポンプは、効率を表すCOPを従来の2~2.5に対して4~4.5に引き上げる大幅な高効率化改良を加え、暖房エネルギー消費量を次世代省エネ基準比で7割削減するというもの。見学会ではヒートポンプのシステムについて江田専務が説明したほか、給気加温装置によって暖かい新鮮空気が供給されている様子を実際に確認した。
 設備一式の本体価格と工事費の内訳は、給気加温システムが材工22万円。ヒートポンプユニットが52万円、取り付け費が10万円、ホットタイム22工事が12万円、補助ボイラーを含む温水暖房設備費が80万円、合計176万円(全て税込)。ヒートポンプ採用に伴うNEDOの助成金などを受けることでユーザーの負担増を極力抑えている。
 この住宅では入居後、ヒートポンプの稼動に伴う電力消費や補助ボイラーの灯油消費量、室内の温湿度状況を来年3月まで測定する。結果は来年6月頃に発表する予定だ。
 川本会長は「給気加温システムと排熱利用ヒートポンプを組み合わせることで、暖房の省エネ性をより一層高めることができる。会員以外のビルダーにも広く採用してもらいたい」と述べた。


快適性と暖房に焦点
O.E.H ユーザー向けセミナー開催

大勢の参加者で埋まったセミナー会場
 オホーツク環境住宅研究会(略称O.E.H、竹口祐司会長・(株)竹口組社長)では、去る6日、一般ユーザー向けに「快適で経済的な暖房方法とは」をテーマとした第1回オホーツク環境住宅セミナーを北見市内で開催。参加した多くのユーザーが暖房熱源・システムの違いや家づくりのポイントについて熱心に耳を傾けた。
 今回のセミナーは2部構成で行われ、第1部では「灯油と電気エネルギーどちらを選択しますか?」をテーマに、日立空調システム北海道支店空調リビング営業グループアドバイザーの溝口貴裕氏と北海道電力北見支店販売グループの小川宏之氏が講演。溝口氏は灯油・電気それぞれを熱源としたセントラルヒーティングの仕組みや、暖房給湯一体型電気ボイラーによるセントラルシステム、灯油ボイラーによるセントラルシステム、電気蓄熱暖房のコスト比較などを紹介し、小川氏は電気蓄熱暖房器や電気温水セントラルなどそれぞれの電気暖房システムに応じた電気料金メニューを解説した。
 第2部では「快適住宅のあるべき姿」をテーマに、同研究会会員で(有)オカトミ社長の岡田好勝氏が講演し、「ある程度の断熱・気密性能があれば、暖房さえきちんとすれば暖かくなるのが今の住宅。業者に暖かい家にしてほしいと言うのは間違い。省エネな家にしてほしいと言うべき。日本ではキッチンなどの設備にはコストをかける半面、断熱材にはコストをかけない風潮がある。しかしきちんと施工すれば何十年でも持つので、断熱材にこそコストをかけるべきだ。ただ、断熱材が厚くても施工が悪ければ意味がないので、きちんと仕事をする業者を選ぶことが非常に大切になる。みなさんが家づくりについてしっかり勉強し、業者を厳しくテストするつもりでどんどん質問を投げかけてみてほしい」と参加者に業者選びの大切さを訴えた。



木質系断熱材で200ミリ
伊達・須藤建設 地場材の採用に取り組む

施工中の外観。外装材にはモルタルと道南スギを使う予定だ
 須藤建設(株)(伊達市、須藤芳美副社長)が建設中のQ1.0住宅では、11月上旬に構造見学会を開催し、12月ごろの完成予定で工事が進められている。現場は伊達市舟岡町の分譲住宅地で、退職後に移住したいと考えている団塊世代から注目が集まっている場所だ。
 暖房の省エネ化だけでなく、地場材を積極的に採用した家づくりを進めるなど、様々な面から環境へ配慮し地場産業へ貢献する取り組みがこの現場で行われており、構造材には道産カラマツ集成材、外壁の一部には道南スギ外装材、外壁の外側には木質繊維断熱材を使用している。

ベベルボードを張り終えたリビングの様子。下地処理をした後、塗り壁で仕上げる
 カラマツ集成材は道東の山林で伐採されたもので、苫小牧のプレカット工場で加工してから現場へ納品されている。一方、道南スギは表面を粗挽き加工した無塗装板をそのまま張っているが、現場によっては塗装仕上げのものもある。木質繊維断熱材はドイツから輸入された製品で、木材の端材などを原料に生産されたものだ。

内付けした開口部。抱きをみると外壁の厚さがわかる
 建物は軸組接合金物テックワンを採用した新在来木造構法で、延床面積44.8坪の2階建て。
 外観はL字型で、南西側の2階建て部分が母屋で北東側が平屋になっており、1階の母屋は玄関+リビングダイニング+キッチンを配置し、平屋にユーティリティー+洗面脱衣室+浴室+トイレなど水廻りを集約し、予備室を設けた。2階を主寝室+子供部屋+多目的ホールとしている。 
 外壁の構造は軸間に高性能グラスウール16K100ミリ充てんし、外側にOSB合板・タイベックを張った上からツーバイフォー材の間柱を455ミリピッチで釘打ちし、そこに木質繊維断熱材100ミリを施した200ミリ断熱。基礎は押出スチレンフォーム75ミリ、屋根は高性能グラスウール16K300ミリ。
 換気は第一種熱交換換気システムを採用し、熱交換率を80%、換気回数を0.1回/h相当で計算した熱損失係数(Q値)は0.86W。年間灯油消費量は563リットル、次世代省エネ基準レベルの1676リットルに対しおよそ70%も削減されている。
 設計担当の岸喜友氏は「エンドユーザーには地産地消、環境保全、地場産業の活性を踏まえた上での家づくりを常に提案している。Q1.0住宅への取り組みについても、1人でも多くの人に理解してもらいたい」と話している。


母屋の2階。屋根断熱の空間の横架材・カラマツ集成材が印象的だ
主な断熱仕様とQ値
基礎
押出スチレンフォームB3、75ミリ
高性能グラスウール16K100ミリ+木質繊維断熱材100ミリ
屋根
高性能グラスウール16K300ミリ
木製サッシ・トリプルLow-Eアルゴン入り
換気
熱交換換気(顕熱90%)
暖房
灯油温水セントラル
Q値
0.86W/m2・K
暖房エネルギー試算 563リットル(灯油)



帯広の気候生かす
帯広・ホーム創建 灯油消費量は3リットル台/m2

総2階建てのシンプルな外観
 (株)ホーム創建(帯広市、阿部利典社長)は自社の企画住宅「YASURA木」をベースに、断熱仕様を変えずに断熱戸や冬場の日射時間が長い帯広の地域性を考慮し南面の開口率を上げてパッシブに太陽熱を利用することでQ値(熱損失係数)=1Wを実現し、灯油消費量を約3リットル台/m2に減らすモデル住宅を完成、10月の週末に一般公開した。
 同社では数年前からセントラル暖房、第3種換気システム込みで1坪あたり約30万円~(消費税、諸経費等別途)の企画住宅「YASURA木」を発売し、販売の主力となっている。価格を抑えるため総2階を基本とし、プランニングなどをシンプルにしているが、断熱・気密仕様は次世代省エネレベル以上を確保し外装に輸入樹脂サイディングを標準仕様とするなどメンテナンス性にも配慮している。
 断熱仕様は外壁が軸間にグラスウール乾式吹込100ミリ、外張り付加断熱としてロックウールボード25ミリ、天井はブローイング300ミリ、基礎断熱部は外側ビーズ発泡ポリ100ミリ+内側同20ミリ。熱損失係数=Q値は1.3W程度の性能。


壁のグラスウール乾式吹き込みと天井の防音用断熱材

2階の天井をあげる前の先張り防湿・気密シート。上下に走るスパイラル管は熱交換換気の配管
通常商品として販売へ
 今回のモデルはこの「YASURA木」をベースに断熱戸としてハニカムサーモスクリーンを取り付け、換気システムは日本スティーベルのLWZ―161第1種換気システムを採用した。また南面の開口部を大きくとってパッシブソーラーを意識、これらによりQ値は1.008Wにアップした(熱交換換気により換気回数を0.1回/h相当として計算)。開口部はアルゴンガスペアガラス入り輸入PVCサッシ。
 構造はPFP工法、延床面積が約40坪。基礎断熱を生かして1階はスキップフロア方式の半地下洋室を設けている。ここにペレットストーブを設置しており、補助暖房として使う予定。ここは南面からの日射取得熱を蓄熱する役割も担っており、壁は一部布基礎現し仕上げにクロス張り、床はコンクリート土間に絨毯を敷いている。
 暖房用灯油消費量をシミュレーション計算したところ、1m2あたり3.13リットル、合計433リットルと次世代省エネ基準の性能で試算した場合の1003リットルに比べて半分以下に抑えられた。
 阿部利典社長は、「灯油消費量が半分以下に減るというセールスポイントはとてもわかりやすく、魅力的だ。多くの人が買えるようYASURA木をベースに標準仕様では坪4万円程度の価格アップに抑えており、販売につなげていきたい」と話している。

主な断熱仕様とQ値

基礎
ビーズ発泡スチレンフォーム、外100ミリ+内20ミリ
グラスウール乾式吹込100ミリ+ロックウールボード25ミリ
屋根
ブローイング300ミリ
プラスチックサッシ・Low-Eアルゴンペア+断熱スクリーン
換気
熱交換換気(顕熱90%)
暖房
灯油温水セントラル
Q値
1.008W/m2・K
暖房エネルギー試算 433リットル(灯油)

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