平成17年1月15日号から
道産材の良さPR
千歳市森林組合/古田建設 森林組合初のモデルハウス

構造と断熱が問われる時代に
 千歳市森林組合(鈴木昭廣組合長)は道産材を使った住宅の良さをPRする森林組合としては初のモデルハウス2棟を千歳市稲穂3-8-3で企画、古田建設(株)(本社帯広市、古田剛好社長)が設計・施工して昨年12月に完成した。今年3月まで一般に公開後、売却予定で既に多くの見学者が訪れるなど好評だ。


構造と断熱が問われる時代に


南側土間を眺めると、木製カーテンウォールのフレーム材や構造柱などに道産カラマツ集成材が現しで使われている
異なる趣向で2棟
 同森林組合は造林苗木の供給を目的に約60年前に設立されたが、現在千歳市内は宅地化が進み、森林も生活環境の保全など公的機能が重視されているため木を切り出して直接住宅に活かすのは難しい状況。その代わりに道産材の普及啓蒙活動を、と同組合が保有する土地に道産材を使ったモデルハウス建設を計画した。主旨を理解して協力するビルダーを探したところ、道産材の魅力を活かした住宅づくりを進めている古田建設を知り、設計・施工を依頼した。古田建設は販売代理として公開後のモデルハウス売却も担当する。
 モデルハウスは個性的な北欧風の企画住宅「フィンハウス」とカラマツの魅力をアピールする和風注文住宅「北楽工舎」。道産構造材は、両棟とも協同組合オホーツクウッドピア(常呂郡留辺蘂町)から調達している。構造面では、古田建設が標準仕様としている在来軸組金物工法「スーパーメタル工法」(開発元・ナガサワ建販(株))を採用。また、両棟とも玄関近くに暖炉を設置して接客スペースとして使う提案をするなど、間取りにゆとりを持たせたのが特徴。
 フィンハウスは、道産材として構造材にエゾ・トド集成材を使用、床材にカバを使用している。プラン面では4層スキップフロアと玄関まわりの高さ8mの吹き抜けで立体感を演出。車庫は組み込み式。また床暖房を玄関廻りなどに採用している(パネルヒーティングも併用)。
 北楽工舎は、一昨年音更町に建設した同社のモデルハウスとほぼ同様の外観、内装で建設。道産材は、カラマツ集成材を構造材として使い、間仕切り壁を真壁として柱を現し、カラマツの魅力を見せるつくりにしている。ダイニングテーブルと掘りごたつテーブルもカラマツ集成材で、床はカバを使用。このほか、玄関まわりの土間の南側は窓を壁いっぱいにとった木製カーテンウォールを自社製作。このフレーム材も道産カラマツ集成材を使用。建具は造作で枠を作らずに直接軸組み材に取り付けている。
 同社は数年前から札幌圏への進出を検討、昨年は札幌圏での住宅受注が10棟を超えるなど需要開拓のメドがついたことから札幌市東区に札幌支店を開設した。今回のモデルハウス公開で知名度を高め、札幌圏での展開に弾みを付けたい考え。

幅広い層にPR
 千歳市森林組合の鈴木組合長は、「道産材の住宅は輸入材で造った住宅と価格も性能も変わらないことを示し、異なる趣向の建物を二棟造ることで幅広い層のお客様にPRしたい。道産材で建てたいという方に土地も安価に提供したい」と話している。

2005年挑戦
ゼオンサイディングの可能性
戸建てから中低層、高層へ

強風地域で威力を発揮するゼオンサイディング「センターロック」シリーズ


中央部かん合の仕組み
 耐久性の高さや輸入住宅風のデザインが人気を集め、またたく間にリフォームから新築戸建て、そして公共施設へと用途が広がったゼオンサイディング。今年はさらに飛躍の年になりそうだ。昨年末に竣工した11階建てマンションの外壁改修工事に採用された実績に自信を深め、中低層建築から高層まで、ゼオンサイディングの用途を広げたい考え。もちろん戸建ての分野でも高層建築で培ったノウハウが強風地域などで生かされる。2005年の挑戦、ゼオンサイディングにスポットを当ててみた。

厳しい自然環境に耐えるオープンジョイント施工
 戸建住宅、RC建築など様々な建物の躯体を守り、美観を高める外装材。しかし外装材に求められる機能はそれだけではない。住宅の建て替えサイクルが長くなってきたことを考えると、こうした性能ができるだけ長く維持される必要がある。消費者の立場からは、なるべく維持費をかけず、メンテナンスもあまりせずに長持ちしてくれれば言うことはない。
 これら外装材に求められる厳しい諸条件をチェックしていって全てをクリアできる外装材の1つが樹脂サイディングだ。
 樹脂サイディングは耐久性や耐候性に優れた特別な配合の塩ビ樹脂でできた外装材で、サイディングの端部を重ねて雨仕舞いとし、シーリングなどを一切使わないオープンジョイント方式の施工が特徴。シーリングを使う外装材は、紫外線などでシーリング切れが生じるとそこから毛細管現象や壁内外の気圧差により水が内部に吸い寄せられる危険性があり、思わぬ問題が生じる可能性がある。それに対し樹脂サイディングは、適度なすき間が開いているためサイディング内部と外部が等圧となって水が躯体へ浸入しにくくなっていることが、公的機関の研究でも実証されている。軽量なので取扱いも楽。また素材を厳選することで、ゼオンサイディングのような30年保証を可能にした特に耐久性に優れる製品もある。

高い耐久性生かし中低層から高層へ

北海道事務所長の山中惠氏
 ゼオン化成では、かねてから戸建住宅だけでなく、優れた特性を生かして中低層、さらに中高層住宅でもゼオンサイディングを使えるのではないかと考えていた。しかし超えなければならないハードルがある。それは、耐風圧性だ。特に中高層建築物では「ビル風」とも呼ばれる強い風にさらされるなど条件は過酷だが、外装材が剥落したりして通行人に危害を与えることは許されない。
 同社で樹脂サイディングの販売事業を、その責任者として当初から手がけてきた北海道事務所長の山中惠氏は、カナダのあるメーカーがハリケーン被害防止に振れ止め金具を開発し、一方でアメリカの別メーカーが強風に強い形状の樹脂サイディングを持っていることを知り、その両方を組み合わせることで耐風圧性を高められるのではないかと考えた。それが、現在同社で扱っている強風対策金具「ウインドロック金具」と強風地域でその威力を発揮する「センターロック」シリーズ。
 ウインドロック金具は外装下地材にビス止めし、サイディングはその金具に挟むようにして納める。日本への導入に当たっては独自の改良を行い、センターロックとの相性も改善した。一方、「センターロック」は、重ね張りする際に上下だけでなく中央部でもかん合できる独特の形状。強風時にサイディングがバタつかず、既に海岸沿いなど風の強い地域で戸建住宅用に使われている。

耐風圧性高めた新工法で11階建MS改修に初採用

ゼオンサイディングにウインドロック金具をはめ込んだところ

シーリング切れは危険なサイン。早めに手を打つことが大切
 (株)アイテックの佐藤潤平社長は、以前公共建築のリフォームでゼオンサイディングを採用して結果が上々だったことから、様々な建築物での樹脂サイディングの可能性を感じていた。ちょうど入居している11階建てのマンション「大通ハイム」が外装材の取替えを含む大規模改修工事をすることになり、ゼオンサイディングと耐久性の高い特殊樹脂モルタル材を併用したプランを提案した。山中氏によると11階建てほどの高層建築物への樹脂サイディングの使用は北米でも例がないそうで、「中低層から始めるつもりがいきなり高層建築物で採用が決まり、緊張した」という。
 平成16年秋、折しも台風18号が上陸、札幌で最大風速50.2mという猛烈な風が吹き荒れ、耐風圧性に対する要求はさらに厳しくなった。「風速60mに耐えられる外装材でないとダメだ」と施工担当の岩田建設(株)も交えて強風を想定した実験やシミュレーションを繰り返し、ウインドロック金具と本体の止め方もさらに改良。超大型台風にも耐えられる施工法が完成した。
 大通ハイムは、築30年の11階建て、総戸数約120戸の高層マンションで、外装がかなり傷んできたほか、最近のマンションに比べると断熱性などで住民の不満もあり、大規模改修時に躯体の保護も兼ねてビーズ法ポリスチレン断熱板による外断熱工事を行い、開口部の断熱強化などを計画した。このとき問題になるのが外断熱での外装仕上げ。タイルは断熱材に負荷がかかるので採用しづらい。また、以前は吹き付け塗装にひび割れが入り、そこから雨水などが浸入して鉄筋が錆びるなどの問題があったため通常の吹き付け塗装仕上げも避けたい。このような背景から樹脂サイディングと特殊樹脂モルタル仕上げが選ばれた。
 施工は、躯体の劣化状態を十分に調査確認した上で、躯体の外側に金属製胴縁を取付け、胴縁の間にビーズ法ポリスチレンフォーム断熱板を張る、その胴縁にゼオンサイディングとウインドロック金具をビスを使った特殊工法で固定する。これで風速60m程度の強風でも製品本体が剥がれて剥落することはない。

耐久性の向上とともに外観を引き立てるゼオンサイディング。
写真は人気のチャーターオーク
大通ハイムリフォーム後の外観(札幌市中央区北1条西15丁目、知事公館南向)
 室内側のサッシ取り替え(アルミ→PVCペアガラス入り)、外付けサッシの追加なども含めた大規模修繕の総工費は、外断熱改修をせずに吹き付けで仕上げた場合の見積もりとくらべて3割以上高くなったが、佐藤社長は「あと30年は手入れの必要のない外装仕上げにしたかった。樹脂サイディングも特殊樹脂モルタル仕上げも開発された本国で30年以上の実績があり耐久性も十分だと思う。今回の改修でマンションの躯体が保護され、建て替えの時期が延びて資産価値が結果的に上がることも期待している」と話している。

学校建築などに広がる樹脂サイディングの用途
 塩ビは、塩と石油を主原料とした合成樹脂で、原料に占める石油使用割合が低いため合成樹脂の中でも最も省資源性に優れる。この塩ビ樹脂に様々な添加剤を配合することで特性を大きく変えることができ、耐久性、加工性にも優れているため、壁紙、巾木やモール、サッシをはじめ排水管など建材用にも広く浸透した。
 北米では外装材に広く使われ、現在、カナダでは市場の7割、アメリカでも5割を占めるという。もちろん木製の下見板張りなども好まれているが、森林資源保護の観点からも全ての住宅に木製サイディングを使うわけにはいかない。また、メンテナンスもコストもそれなりにかかる。塩ビの優れた特性を生かし、木のような柔らかい質感の樹脂サイディングは短期間で普及した。
 日本国内ではゼオン化成がオープンジョイント工法と準防火地域への独自対応で評価を高め、道内など北米と気候が似た寒冷地を中心に増えてきた。さらにメンテナンスフリーやリサイクル性など、省資源型材料であることから、最近では公共建築物へも採用され、学校や役所施設、病院などにも使われるようになってきた。山中所長は、「今回の施工で新たなノウハウも蓄積できた。学校校舎や公共施設への提案も今後はもっと積極的に行いたい」と今後の展開に意欲を見せている。


外装をゼオンサイディングで施工した中学校校舎。公共施設への採用が増えている

11月度全道着工
息切れムード漂う
分譲大幅減、持家は微増

北海道
16年11月
前年比
1~11月
前年比
合計
4,076
82.0
45,558
99.9
利用
持家
1,010
100.7
13,295
98.4
貸家
2,577
92.4
24,746
99.7
給与
7
43.8
592
108.0
分譲
482
41.4
6,815
103.3
平成16年11月度北海道新設住宅着工戸数

全道新設着工戸数の推移
 道内の11月度新設住宅着工戸数は、4076戸、前年同月比18.0%減となり、4月度の23%減に次ぐ大幅ダウンとなった。
 持家が微増ながら3ヵ月ぶりのプラスとなったが、これまで市場をけん引していた分譲が6割近くも落ち込み、貸家は5ヵ月ぶりのマイナス、給与も半減と振るわず、1年の終盤にきて息切れムードが漂い始めた。
 1~11月累計は4万5448戸、0.1%減と5カ月ぶりのマイナスに転じた。貸家が再び減少に転じて、プラスは給与と分譲のみだが、分譲の伸び率は前月度より11.4ポイントダウンの3.3%と、12月度の実績次第では年計がマイナスとなる可能性も出てきた。

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