平成16年9月25日号から
「進化する2×4工法」
品質向上に木質I型梁

TJIとLSLで組まれた床組み
 ここ数年、木やせによるクレーム防止と、供給量や価格が不安定なランバーの代わりに、木質I型梁を床根太などに採用するビルダーが増えてきた。エンジニアードウッドならではの安定した品質と供給体制、軽量で換気ダクトの貫通施工も容易という施工性の良さなど、木質I型梁が持つ多くの魅力を活かして差別化を図るビルダーもいる。そのような中、進化するツーバイフォーをキーワードに、木質I型梁などのエンジニアードウッドと専用金物、その設計・施工上の注意点等を特集した。

課題の木やせ解消
 木質I型梁は、フランジと呼ばれる38~58ミリ×38ミリサイズのLVL等を、ウェブと呼ばれる構造用合板やOSBでつないだI型状のエンジニアードウッドで、米国ウェアーハウザー社の「TJIジョイスト」が代表的だ。同じサイズのランバーと比べてコスト高になるため、これまで標準仕様として採用するビルダーは少なかったが、ここにきて採用するビルダーが増えてきた。
 その理由の一つが、ランバーの供給量や価格が安定しないことだ。アメリカの住宅着工が好調なことから、日本へ十分な量を輸出することができず、価格も高くなっている。
 もう一つの理由が安定した品質の確保だ。最近のランバーは品質が悪く、以前と比べてねじれやすくなったという声も聞く。210のランバーは高さ方向で1センチ以上は木やせすると言われており、床根太やたる木が木やせした場合、床鳴りがひどくなったり、クロスにしわが寄ったりして補修や調整が必要になる。品確法によって床の傾き具合などがシビアに見られるようになってきた今日では、そうした観点からも神経質にならざるを得ない。
 木質I型梁(以下TJIなど)は、エンジニアードウッドなので供給量は安定しており、寸法安定性や強度に優れ、ランバーのように1センチも木やせすることはない。同サイズのランバーより軽量で現場での取り回しが楽なため、慣れれば大工も施工が楽になる。

TJI・LSLとディメンションランバーの比較
TJI・LSL
ディメンションランバー
寸法精度
安定している バンドルを解いた時点で235mmに対してバラつきがあり、正確なパネル製作にはプレーナーなどの処理が必要
経年変化
TJI・LSLとも含水率が8 10%程度に収まっており、施工後の寸法形状変化は少ない 施工後の含水率の低下により、235mmの高さ方向の収縮が発生し、床鳴りの原因となる
長  さ
定尺はなく、希望の長さでの発注が可能。最長で11,800㎜(38フィート) 12、14、16、18、20フィートの定尺
検品作業
基本的に精度が出ているために、検品に要する時間は大幅に短縮可能 木のそり、曲がりがあるために選別技術者が必要
価  格
TJI・LSLともディメンションランバーと比較して多少コストは高い TJIよりコストは低いが北米の住宅事情などによって価格・供給量が左右される
廃材処理
焼却は可能。再利用に関しては要検討 焼却は可能
6mを超えるパネル
可能 難しい
作業性
軽量であるため良好 TJIと比べると重く、ハンドリングは悪い

北総研と林産試が開発、久保木工が製品化した道産材の木質I型梁

在来工法の床組みにTJIを使った現場
価格徐々にこなれる
 これまでTJIなどを採用しない理由として挙げられていた価格についても、全国的に代理店の整備が進み、供給が安定したことで以前のような割高感は薄れつつあるようだ。道内は七都市に在庫を持ち、1週間以内の納品が可能になっている。木やせによる建具の調整等にかかる手間暇や職人の人件費が解消されることで、コストアップ分は吸収できるというビルダーも多い。
 床のバウンド感が気になるという話もあるが、従来は最大たわみ量の基準を10ミリとしていたのに対し、現在ではトラスジョイスト社が開発した床性能のシミュレーションソフトを使ってサイズや施工ピッチを決定することによって最大たわみ量は5、6ミリ程度に収まっているという。
 国内でも、木質I型梁に関する動きは活発になってきている。旭川市の久保木工では道立北方建築総合研究所と道立林産試験場が共同開発した道産材利用の木質I型梁「アイビーム」を製品化。阿寒町の高橋林産もカラマツ構造用合板をカラマツの無垢材でサンドイッチした在来工法専用の木質I型梁を開発。いずれも現在、建築基準法第37条認定を申請中で、早ければ年末に認定が下りる見込みだ。
 また、遠軽町の箱は、輸入したフランジとウェブを独自の技術で加工・組立しているエイアンドエムカーペントリー(東京都)と業務提携し、自社生産の木質I型梁「スーパージョイスト」を自社物件に使用。建築基準法第37条認定も取得し、将来的に一般販売も検討している。
 普及のための環境整備が進み、コストの問題がクリアされつつある中、ビルダーはTJIなどを自社の仕様にうまく取り込めば、品質の安定化や他社との差別化につなげることも可能になる。


床根太にTJIなどを使う時は側根太・端根太にはLSLなどのエンジニアードウッドを使わないと、構造上の問題を起こすことがある

TJIなどとの取り合いを切り欠きしたLSLの転び止め
連続梁で合理化
 TJIなどはツーバイに限らず、在来工法でも床根太やたる木などに使用できるため、どのビルダーでもそのメリットを活かした施工が可能だ。11.8メートルの製品が在庫されており、長物を使えば端から端までつなぎのない連続梁となるので、施工の簡略化にもつながる。
 また、梁背の大きなものを使ったり、一間間隔で転び止めを入れるなどの配慮をすれば、床剛性が上がることでバウンド感を抑え、二階からの振動音を低減する効果も期待できる。
 在来工法で床をプラットフォームとする場合、二階床は梁に欠き込みを入れて根太を同面で入れる仕様にすると、梁の強度の低下や音の響きが心配されるため、梁間にTJIなどを303ミリまたは455ミリピッチで入れて、その上に厚物の構造用合板を直張りしているビルダーもいる。

多雪地の屋根垂木
 屋根たる木としての使用は、特に多雪地域で屋根廻りの剛性を高めるのにベター。できれば積雪荷重に対する余裕を持たせるために、梁背286ミリ以上のものを使いたい。天窓を付けた場合、ランバーのたる木だと天窓周辺のクロスが切れたり、しわが寄ったりすることがあるが、このような現象の防止策としてもTJIなどの使用が考えられる。
 このほか、TJIなどと同じエンジニアードウッドのLSLを使うケースも目立つようになってきた。梁やまぐさに関しては、ランバーで合わせまぐさを作るくらいなら、LSLや集成材を使ったほうが施工は楽だし、強度的にも安心と言える。


フランジに釘を打つときの注意点
側根太は必ずLSL
 TJIなどのエンジニアードウッドを使用する際には、注意点もいくつかある。
 まず床根太にTJIなどを使用する場合、側根太・端根太にはLSLなどエンジニアードウッドを使うこと。これは側根太・端根太のランバーが木やせによって収縮した時に、TJIなどの端部が上階の荷重によって破壊され、構造上の問題が発生する可能性が高いためだ。転び止めについては現在、TJIなどとの取り合いを切り欠きしたLSLの転び止めがある。
 フランジを釘打ちする時には、割れに注意する。安易に釘を打つと割れてしまうことがあるので、ウェアーハウザー社では角度を付けて釘を打ち込むようパンフレットで紹介している。
 また、換気システムのダクトを通すために複数の穴を開ける場合、穴の間隔は隣の穴の最大径の2倍以上取ること。穴の上下はフランジまで5ミリ以上離すことも大切だ。
 穴あけについては、専用の穴開けチャートが用意されている。

金物は専用品を使用
 TJIなどを床根太として使用する場合、梁との取り合い部分に金物を使ってTJIなどと梁を緊結するが、その金物は専用品を使うことが大切だ。
 金物に要求される性能としては耐久性や強度、施工のしやすさなどが挙げられるが、これらの品質を満たす専用品として、タナカが今年から販売を開始した米国シンプソン・ストロングタイ社のツーバイ用金物がある。シンプソン・ストロングタイ社は50年ほど前に設立された世界最大規模の木造建築用金物メーカーで、その品質には定評があり、TJI用の専用金物もラインアップしている。

床根太にTJIなどを使う時は側根太・端根太にはLSLなどのエンジニアードウッドを使わないと、構造上の問題を起こすことがある


両サイドのつめを折り曲げてボトム・フランジに釘打ちすることで、きしみ音の低減につながる
 現在、タナカが国内で販売しているTJI専用金物は、床根太用に使うものとして梁などの側面に釘打ちして固定するフェースマウント・ハンガーと、梁などの上面に引っかけて固定するトップ・フランジ・ハンガーがある。
 いずれの製品も両サイドにベンド・タブというつめがあるのが大きな特徴で、ベンド・タブを内側に折り曲げてボトム・フランジに釘打ちすることにより、TJIなどが何らかの原因によってずれる時のきしみ音を低減できる。
 フェースマウントハンガーは、ZN-40を使用。トップ・フランジ・ハンガーもZN釘を使うが、フェースマウントハンガーより多くの荷重に耐えることができるほか、高さはTJIなどの高さに合わせて調整されているので、簡単に水平な床面をつくることが可能。
 このほか、たる木用では、TJIなどと一般的なランバーのどちらにも使える製品がラインナップされているほか、隅木との取り合いに角度をつけた専用金物も用意している。

ユーザーの声

 安心を提供できる  カネイチ伸栄建設(株) 柴田憲典 専務
 当社では約10年前、丈夫でかつ断熱・気密がとりやすいツーバイフォー工法へ全面的に切り替えたが、そのとき既に2階の床根太にTJIを全面採用していた。在来軸組工法でも床の痩せやたわみが気になっていたこと、当社はすべてオーダー住宅で間取りが自由になることが絶対に欠かせなかったこと、などが採用の理由。
 当初はフランジ幅38ミリ、15DFタイプの梁背235ミリを使っていたが、面内剛性を高めるために2年後に同44ミリ、25DFタイプの梁背286ミリに変更した。当初採用したタイプよりも剛性値が8割以上も上がり、その結果スパンも飛ばせるので間取りの自由度も高くなった。LSLも平成10年秋ごろから側根太、端根太に使用している。
 TJIのメリットは、いろんな面で「安心を提供できる」ことだと思う。痩せが極めて少なく寸法安定性が高いこと、長物があり、軽量なので施工性が高まること、クレームも少なくなることなど。さらに、TJI自身が固体振動音を伝えにくく、階間にブローイングを充填することでサイレントフロアーを実現できる。2階の床は構造用合板とフロア材との間にコンビボードを入れて音・振動を和らげる工夫もしている。
 今後は1階の床根太にも使用していく。梁背を235ミリにするのか、286ミリにするのかは検討中。


 平成3年から採用  (株)岡本建設 岡本 忠 社長
 床根太がやせるなどの問題があり、平成三年からTJIを使いはじめ、翌年から標準仕様にした。今年からは一階の床にも採用している。
 二階床は25DFと呼ばれる規格でフランジの幅が四四ミリ、梁背は二八六ミリの製品を使っている。一間おきにころび止めを入れることで強度アップだけでなくたわみも減る。また振動音低減にも有効だ。
 十勝の冬はとにかく乾燥しており、MDFでさえやせる。冬場の施工はほとんど絶乾状態となるので竣工後のやせは少ないが、秋口の完成だと冬場の乾燥は避けられない。TJIを使うようになってから、巾木まわりが空くということはほとんどなくなった。
 スパンは2間半まで、長さは4間半までは運べるので、そのまま連続梁として使っている。
 ほかにもセントラル換気のダクト配管を貫通施工できるなど、メリットは多い。見積上も価格の上乗せはしていない。

 フラット屋根にも  (株)赤坂建設 梅田和敬 社長
 TJIは平成5年から採用しはじめ、現在では2階床根太に全棟で、このほかフラットルーフの屋根たる木に使用している。今後は、1階の床組みでも使っていきたい。
 ランバーを使用していた頃は、1階壁と天井の見切り部分などでクロスが切れやすい問題があり、床根太の痩せの問題も気になっていた。また現場でパネルを組んでクレーンで吊り上げ1日で上棟するため、強度が同じなら少しでも軽い方が作業性が良くなるという理由もあった。4間×6間の床組みでもパネルにしている。市街地では場所を取るため難しいこともあるが、たいていやっている。
 TJIの材料費自体はランバーに比べ割高だが、ランバーだと継いで使用しなければならない長さも一本で済むため材積が若干減り、端材も減る。人工は半人工短くできるぐらいだが、施工しやすくなったので大工の評判が良い。
 使っていて手間がかかるのはファイアストップ材の処理。TJIはランバーと違って他の材と合わせて使うときに隙間が生じるのでその部分の転び止めの形状を工夫しなければならない。LSLを加工しているが、堅い材料なのでちょっと面倒。また、長手方向にファイアストップを入れなければならない区画はTJIそのものが使用できず、LSLで代用することになる。
 フラットルーフは、二重たる木でやっており、構造たる木をTJI連続梁に変えることで梁を継ぐ必要がなくなり、こちらも施工性向上のメリットが大きい。


開口部と防犯性能
北欧製品の機能〈前編〉

7年過ぎても軽快に回るエリートフェンスターとヒンジに刻印されたA/S SPILKAの文字
7年後でも軽く回る
 築後7年を経過して、對馬さんが「これは?」と思うことが1つある。それは回転操作が軽い窓と重い窓があることだ。ギャラリーには一部だけ、同じ横軸回転窓でも違う金物を使った窓がある。その窓だけが開閉操作が重いのだ。
 トリプルガラスの入った木製窓は重いことで有名だ。それを主婦でも軽く回転させるには、どの窓金物を使うかで決まる。エリートフェンスターはノルウェーのスピルカという窓金物を採用。スピルカ社は北欧を中心にヨーロッパ、アメリカに窓金物を供給しており、北欧ではトップシェアを誇る。窓ヒンジにはA/S SPILKAの文字とシリアルの刻印がある。
 輸入元のガデリウス(株)によると、同じ木製窓でもこういったディテールの違いがエリートフェンスターのこだわり。価格はやや高いが、断熱性能だけでなく、防犯性、操作性などにすぐれている点が、スウェーデン本国でも高級品と認められているポイントだという。
 なお断熱性能はトリプルガラス仕様でもトップクラスの熱貫流率1.3ワット。これもエリートのこだわりだ。


 ドア編  防犯性能表示はじまる
 ピッキングによる空き巣被害の増加により、玄関ドアの防犯性能にも関心が高まっている。今年4月からは防犯性能表示がスタートし、耐ピッキング性能など防犯性能五項目に出荷時かぎ本数を加えた六項目について表示することになっている。
 国内メーカーはドアメーカー・錠前メーカーがさまざまな製品を発表している。輸入メーカーはどうか。
 スウェーデンからの輸入ドアについている鍵には、ほとんどが“ASSA(アーサー)”という刻印が打たれている。これはメーカー名で、スウェーデン・ASSA社の鍵は日本に広く輸入されだした十数年前、日本国内では簡単にコピーを造ることすらできなかった。
 現在、ASSA社のシリンダー錠は防犯性能を高めた7ピン仕様。

モダン系にも好まれる
デザイン

標準装備のロックガード(左)とASSAのシリンダー錠(上)
過去20年で被害ゼロ
 スウェドア輸入元のガデリウスでは防犯性能表示へ向けて、現在試験を進めている。
 銀行の金庫などと違い、住宅の防犯性能は絶対に開けられない性能ではなく、開けにくい、時間がかかる、死角がないなどが重要とされている。このため、防犯性能を見る上で五分かかって侵入できるかどうかが一つの目安となっている。これは侵入まで5分以上かかると侵入をあきらめる窃盗犯が7割に及ぶという調査に基づいている。
 マンションの場合は玄関ドアからの侵入が多いとされるが、戸建ての場合は侵入しやすい窓からが多く、マンションと比べれば玄関ドアの危険性は低い。とは言えユーザー心理からしても防犯性能は重要だ。
 同社は昨年から、それまでオプションだったロックガードを標準装備。こじ開けを防ぐとともにデッドボルトが屋外から見えないように改良している。
 ヨーロッパはもともとしっかりした錠前を作ってきた歴史がある。スウェドアも過去20年間で錠前破りの被害ゼロの実績。今回の性能表示や性能試験にあたっては、輸入製品であるがゆえのさまざまな障害があったというが、対応は着々と進んでいるようだ。なお、輸入の錠前メーカーとしては日本カバ(株)などが性能表示を実施している。

ガデリウス株式会社 札幌営業所Tel.011-743-7710
http://kenzai.gadelius.com/

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