平成16年8月25日号から
こだわるR-2000
リビングドクター 熱橋防止のディテール

都市型の3階建ての外観
 基本に忠実に断熱性能を高く。R-2000の基本仕様にこだわったツーバイシックス住宅が札幌市内で施工中だ。施工しているのは(有)リビングドクター。「コストばかりが先行する今こそ基本に忠実に」と同社石川正社長は語っている。



壁コーナー部(上)とT字部分の納め
コーナー部などL字組み
 札幌の市街地に建つこの住宅は、1階がRC造で車庫を組み込み、2、3階がツーバイフォーの木造三階建て。
 設計を担当しているVAN設計室・板東芳章主宰もリビングドクター・石川社長もこれまで長くツーバイフォーとR-2000に取り組んでおり、設計・施工は職人も含めて熟練している。こだわりを持った両者に十数年前までさかのぼって施工例をみせてもらい、最後の新築を丈夫な構造でと望んでいた50代のユーザーも2つ返事でOKした。
 壁はツーバイシックスの現場組み。3階の床根太と天井根太はTJI。施工性より断熱性能を優先し、スタッドの組み方や根太・まぐさ部分の断熱補強も徹底している。
 まず壁はBIB工法(グラスウール吹き込み)140ミリ。コーナー部と間仕切壁が入るT字部分は、構造上の支障がない限りスタッドをL字組みとしている。
 この納まりはR-2000のマニュアルにも掲載されているもので、断熱性能を優先し、スタッドの裏に断熱材を充てんすることで木部の熱橋を抑える。
 間仕切壁が耐力壁でない場合のT字部分は、たて枠を省略して間仕切受けだけで外壁を構成する方法もあるが、構造上の余力を持たせるために間仕切はすべて耐力壁としてT字部分を納めている。
 まぐさ部分は室内側にロックウールボードを充てんし、木部熱橋を抑える。
 ツーバイフォーはツーバイシックスによって高断熱化が簡単にできるほか、気密性能も安定的に高めやすいなどメリットが多いが、木部熱橋の多さは数少ない弱点の一つ。これらを克服するため、一般的に使われるスタッドの3枚合わせではなくL字組みで断熱補強を徹底している。

根太外周部もBIB
  TJIを使った三階の床・天井部も徹底している。中間階となる3階の床根太は側根太がTJIの2枚合わせ。空洞となるウェブの間にロックウールボードを挟み込み、さらに外周部の一スパン、455ミリ分にBIBを充てんし熱橋防止。端根太側も455ミリ室内側にBIBを充てんしている。


2、3階部分の矩計
 三階の天井根太は断熱区画となるためBIB235ミリ充てん。側根太はロックウールボード挟み込み。なお屋根はM型無落雪。
 二階についてはハイスタッドとし、3階床のTJIの間にロックウール100ミリを充てんした上で二重天井の構成。配管・配線はふところで処理する。この構成で在来木造の吊り天井と同等の防音効果が確かめられている。
 1階のRC部分は予算の関係もあり断熱的には別の区画とした。
 設計の板東氏は「純木造の三階でやりたかったが、ユーザーの希望もあり混構造となった。RC部は散水養生を行い、型枠をはずしてもクラック1つなかった。やはり手をかければその分だけいいものができると実感している」と語っている。また施工している石川社長は「認定事業としてのR-2000は終わったが、その役割、そしてトータルで住宅性能を高めるという思想・ディテールは、コスト優先の今こそ大切だと思う。地道にコツコツR-2000にこだわっていきたい」と語っている。
 竣工後は気密測定を行い、R-2000基準である50パスカル減圧法で漏気回数0.5回/h以下であることを確認する。

キーワード/R-2000:カナダが開発した超高断熱・高気密・省エネルギーのツーバイフォー住宅。1980年代に日本に紹介され、1990年代には日本ツーバイフォー建築協会の認定事業としてスタートしたが、認定事業としてのR-2000は終わった。断熱性能・ツーバイシックス以上、気密性能・漏気回数0.5回/h以下、セントラル暖房・換気という基準は、次世代省エネルギー基準も上回り、現在も最高水準。カナダが認定を行っているスーパーEハウスの基本にもなっている。

側根太・端根太(奥)はウェブの間にロックウールボードを挟み込み、さらに外周部は断熱補強

まぐさの室内側にロックウールボード、その下はBIB充てん

プチ電脳化を提案
加藤建設 手軽な機器で暮らし便利に

階段足下に設置したセンサー照明
 加藤建設(株)(本社札幌市、加藤芳彦社長)では、オール電化住宅をベースにセンサー照明やリモコン式玄関ドア錠、インターネットやテレビ・電話を各部屋で利用できるホームネットワークなど、ローコストで便利な電化設備・システムによって快適性を高めた住宅を「プチ電脳住宅」としてユーザーに提案している。
 同社では施工物件の九割以上がオール電化ということもあり、二年ほど前から差別化としてセンサー照明やリモコンドアロックなど便利な電化設備を積極的に採用。携帯電話などを使った遠隔操作による暖冷房や照明のコントロール、外の明るさを感知して自動的に開け閉めするカーテンなど本格的なオートメーション設備のようなものはコストが高くついてしまい、ユーザーの予算に合わなくなるため、同社ではローコストで入手でき、施工も日曜大工的な作業でできる電化機器を組み合わせることを考えている。


リモコン式電気錠玄関ドアは外からはスイッチ操作、室内からはインターホンのモニターを見ながら施錠・開錠が可能

パソコン用ネットワークのハブやテレビの分配器などを収納した情報化配線用の専用管理ボックス
各種情報化配線のモジュラージャックを内蔵したマルチメディアコンセント
センサー照明の利用が中心
 プチ電脳住宅の具体的な仕様はユーザーの要望や家族構成によって異なるが、最も多く設置するのがセンサー照明。特に高齢者のいる家庭では足下灯を寝室からトイレまでの廊下に設置し、夜中に安全にトイレまで行けるようにサポートする。40坪程度の住宅であれば、標準的に廊下に2つ、階段に2つ、合わせて4つ設置するが、コストはセンサーが1万5000円ほどで、それに照明本体の価格がかかることになる。
 また、玄関ホールにセンサー照明を付ければ、夜間に帰宅しても手探りで照明スイッチを探さなくてすむので便利。人が離れている時や日中の明るい時は、消灯または照度を落とすため、消し忘れの心配がなく、作動時間も設定できるので、電気代の節約にもつながるとのこと。
 このセンサー照明と連動して電動開閉シャッターとリモコン式の電気錠玄関ドアを設置するケースも多い。リモコン式の電気錠玄関ドアは外からはスイッチを押すだけで施錠・解錠ができ、室内側からの施錠・解錠もインターホンの横にスイッチを付ければ相手を確認してその場で行うことができる。コストは室内側のスイッチを1階に設置する場合、ドア本体を除き10万円程度。

各部屋にマルチメディア配線
 情報化配線は、インターネットの利用率が高い若年層のユーザーの住宅を中心に設置するケースが増えている。これは電話線の引き込み場所の近くに、パソコン用のネットワークケーブルを各部屋に分配するハブやテレビの分配器・ブースター、電話の配線端子等を収納する専用ボックスを合板で造作し、各居室のパソコン用ネットワーク・テレビ・電話のモジュラーコンセントを内蔵したマルチメディアコンセントまで配線。専用ボックスは開閉可能なのでメンテナンスが容易で、壁と同じ仕上げを施して見た目にも配慮している。コストは四部屋に配線しても3万円以内に納まるそうだ。
 同社の谷口学常務は「最近はこだわりを持つユーザーが増えたが、こだわるのは快適な暮らしを望んでいるからこそだと思う。そういうユーザーに対し今後は、太陽光利用や雨水利用、光触媒なども取り入れ、便利なうえに光熱費等も節約できるプチ電脳+エコ住宅まで発展させていきたい」と話している。

米国製の防水シート
キャスケードコンポーネンツ 耐候性など基本性能を重視

ウェザーメイトプラス
 キャスケードコンポーネンツは、米ダウ・ケミカル社製の高性能防風・防水シート「スタイロフォーム ウェザーメイトプラス」を発売した。耐紫外線劣化や引き裂き強度、防水・防風性などの基本性能を重視。アメリカでは建築専門誌の年間最優秀商品にも選ばれた。
 同製品は、微細なディンプル(凸凹)加工をした不織布をポリオレフィン系の超薄型フィルムでサンドイッチした構造になっており、フィルムには孔は開いておらず、高い防水性と防風性能を確保。防風性能は他社製品の4~6倍、引き裂き強度は同2倍程度の性能という(いずれもアメリカでの比較)。また耐紫外線劣化では、屋外に曝露しても約4ヵ月は大丈夫としている。
 透湿性についてはまったく新しい考え方だ。室内側から屋外側へは湿気を通しやすいが、屋外側から室内側へはさほど湿気を通さない。

表面のフィルムを剥がしたところ。フィルムには薄くて強い素材が使われている
 屋外側から室内側への透湿性は九・五ミリの構造用合板より湿気を通しにくくOSBより通しやすいというレベル。透湿・防水シートのJIS基準から見るとけた違いに湿気を通しにくい。
 高気密住宅では壁内への湿気の流入は極端に少なくなっているほか、外壁下地に透湿性の低い構造用合板などを張る例が増え、夏場の逆転結露なども考えれば、屋外側から室内側への透湿性は抑えてもよいという考え方。キャスケード社では高気密住宅のビルダーなら不安なく使えるとしている。
 製品規格は、幅が約2.7メートル×長さ約30メートル/巻。価格は工務店渡しで2万3000円(税別)。このほか幅が約3メートルの品や長さが約38メートルの品など、サイズは4、5種類ある。問い合わせは同社へ(横浜市港北区新横浜3-20-5、Tel.045・475・0711)。






高い防水と排熱性

ジェイベック 平板・S瓦用棟換気テッペン

施工見学会で同製品の納まりを確認

平板・S瓦用棟換気テッペンの納まり
 ジェイベック(株)はこのほど、「平板・S瓦用棟換気テッペン」を新発売。7月には同社の新潟社屋屋上で同製品の実験棟を公開、施工見学会を実施した。
 近年、本州では平板瓦、S瓦が需要を伸ばしており、これらに対応する棟換気が待たれていた。今回販売される平板・S瓦用テッペンは、ほかのテッペンと同様、小屋裏温度と外気との温度差を5℃以内に保つために、瓦と冠の間にセットし防水機能も持たせた構造となっている。
 北見工業大学・坂本弘志教授の試験結果によると、雨水浸入限界風速は同社の「テッペン大中小」と同等、自然条件下では雨漏りの心配は全くないと言う。
 施工見学会当日は快晴で、正午の気温は30.5℃、湿度45%。このとき小屋裏は35℃、49%で、小屋裏内外の温度差は5℃以内に抑えられていた。吉岡茂樹社長は「多くの方に見ていただき、納得してほしい」と語っていた。
 製品は長さが1,820ミリ、厚さ20ミリ。設計価格は1ケース3本入りで4万8000円/ケース(税別)。
 展示実験棟の見学希望、商品についての問い合わせは同社まで(新潟市卸新町1-2059-5、Tel.025・250・8900、斉藤・村井)。

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