平成16年6月5日号から
道産材住宅に補助
北海道
 北海道水産林務部では、今年度から道産材利用促進対策事業として、「人にやさしい道産材表示普及事業」と「道民との協働による『地材地消』促進事業」を平成18年度までの3ヵ年計画でスタートした。道内を6圏域に分けて圏域毎に産地表示制度を行い、その圏域内の木材を使った住宅に柱代を補助するなど補助金も交付する。圏域内の木材業界・地場工務店が連携グループを作り、一般消費者を巻き込んでこの動きを進めたい考えだ。


道産カラマツを外装に使った家
2つの事業を一体化
  「人にやさしい道産材普及事業」は、道内を道南圏、道央圏、道北圏、オホーツク圏、十勝圏、釧路・根室圏の6圏域に分け、それぞれの圏域で産出された圏域材に対して三枚綴りの「道産材産地証明書」を製材業者等が流通業者や工務店などに納品書形式で発行し、その材が圏域材であることを証明するシステム。『地材地消』促進の基盤となる重要な事業だ。
 森林組合などから原木を購入した製材業者は、伐採された場所を聞き取り、製材等の加工、保管を行う際に他の原木と混ざらないよう管理する。管理された材のみ産地証明書をつけることができるため、製材工場が圏域材をちゃんと管理できるかどうか認定を行う必要がある。そこで、道では検討委員会を設けて認定基準を作成し、今月中に認定申請受付を開始、来月には第1回の認定工場を発表する予定。なお、認定の実施主体は北海道木材産業協同組合連合会(道木連)。このほか人工林材の乾燥技術の研修会開催などを北海道乾燥材普及協議会が行う。
 「道民との協働による『地材地消』促進事業」は、圏域毎に森林業、製材業、工務店などが連携グループを作り、圏域材の需要拡大に消費者といっしょに取り組む。3ヵ年で各圏域に6グループ、全道で36グループを作ることが目標で、例えば圏域材を使った住宅を対象に各グループに対して年間2棟まで構造柱代の半額補助を行う。

森林の持続的な発展には地材地消が不可欠
産地証明と補助金携
 カラマツ、トドマツを中心とする道内の人工林は成熟期を迎えたところが多いが、梱包材など付加価値の低い利用法が大半を占めているのが現状だ。これを付加価値の高い建築用途に利用していくのが大きな目的で、そのためには消費者に対する生産者の情報開示が不可欠と道では考え、産地証明制度を導入する。地場の木材を利用することは、木材の輸送で消費される二酸化炭素排出量の抑制や地場産業の活性化、価格の安定性など環境面、経済面でも大きなメリットがある。
 道では連携グループの核に、道内各地域に存在する「家造り研究会」的な組織を据えたいとしている。また、「地材地消」の意識を普及啓蒙する催しとして各地でシンポジウム、パネル展、枝打ちや工場視察などの体験ツアーを開催する。
 前号で報じた「とかちの木で家をつくる会」がこの連携グループへの参加を検討中で、道では、「十勝圏が一番取り組みが進んでいるが、他圏域も地域の家づくり組織などに声掛けをして、早くこの取り組みを全道に広げたい」と話している。
 問い合わせは、道水産林務部木材振興課需要推進グループ(Tel.011・231・4111内28455)へ。

新たな市場を求めて
定期借地と住宅建築
あいの里に完成したジョンソンホームズの住宅とイメージ
 公共工事の激減により、住宅にシフトする建設業者も少なくないが、その住宅も長引く不況で消費者の足は戸建てから遠のいているのが現状だ。そうした中、家づくりの新しい提案として一定期間、土地を借りて家を建てることで土地にかかるコストを低減する定期借地権(以下定借)が注目されている。土地を抱え込むことによるリスクがなく、工務店にも取り組みやすい。NPO法人北海道定期借地借家権推進機構(池脇昭二理事長)では5月13日、札幌市内の副都心住宅販売(株)内で総会・勉強会を開催。長野県定期借地借家権推進機構副理事長吉田保氏と札幌の(株)ジョンソンホームズ岡島義法氏がそれぞれ長野県と札幌市あいの里地区における定借事例について講演した。要旨は次の通り。

リビングの壁に連続して設けた飾り棚。軸組外側に張った構造用合板をそのまま見せている
定借の展望と課題
分譲地と共存する…吉田 保氏

 地価の下落が著しい現在のような状況では、土地を売ろうとしてもユーザーはなかなか手を出してくれない。「どうせ明日になればもっと安くなるから、もう少し待ってみよう」というのが今の顧客心理といえる。
 長野も例外ではなく、いつまでも買い手のつかない造成地がいたる所に点在する。しかし、造成した土地を遊ばせておいては何の利益も得られないどころか、よけいに誰も寄りつかなくなる。「売るよりほかに土地の使い道がない」と嘆く地権者は少なくない。
 また、ある区画整理事業で一般の地権者が保留地より安い価格で土地を販売したため保留地が全く売れなかったなどの問題も発生している。
 そこで、区画整理事業と協調しながら土地を有効活用する手段として定借を提案したところ反応が良く、多くの成果をあげている。
 定借の候補地として長野の場合は市街化区域内の農地や工場の跡地などがある。現時点で実例はないが、市町村など行政が所有する土地も有力だ。これらを定借で住宅地や商業地として再利用すれば大きな需要が生まれる。地場の建設業者や土木工事業者にも施工業者として参加する道が拓ける。
 ただ、一企業が金儲け主義に走るのでは周りがついてこない。やはり、参画する全ての企業や関係各団体にとってメリットのあるプロジェクトでなくてはならない。
 今後、定借が普及するには区画整理事業の中での位置づけがポイントになりそうだ。1つの街づくりの中で定借地と分譲地を分けて運営していく時代になってきたのではないかとも思う。
住宅の質で差別化
 住宅建築で定借を提案する場合、忘れてはならないのが「安かろう、悪かろう」ではユーザーの心をつかむことはできないということだ。
 土地にかかるコストを低減できるのが定借の最大の利点だが、今のユーザーは「土地にお金がかからなかったから貯めておこう」とは思わない。余ったお金は充実した余暇を過ごすための空間づくりに使おうと考える。最近の傾向としては外構にお金をかけて街並みづくりに貢献したいと考える人も多いようだ。
 こうしたニーズに応えるには、より質の高い建物を提供し、土地を購入して家を建てる場合との差別化を図らなくてはならない。コモンスペースを設けて統一感のある街並みをつくるなど外構空間に関する提案が特に重要になる。個々の住宅だけでなく、街を造るというスタンスが必要だ。
 北海道は全国的に見て区画整理の進んだ地域といえる。整然とした街並みは開拓の歴史の中で培われてきた貴重な財産だと思う。敷地面積も広く、首都圏並みに敷地の狭小化が進む長野と比べると恵まれた条件といえる。これらを生かしながら定借という考え方を取り入れて外構空間をさらに充実させれば、今まで以上に魅力的な街並みが誕生すると思う。

札幌あいの里地区の実例
低所得者層を狙う…岡島 義法氏

 定借でマイホームを取得する場合のメリットは、土地にかかるお金を建物にまわせるためワンランク上の住まいを手に入れられるという点だ。外構工事の予算も十分確保できるので統一感のある街並み形成が可能になる。
 固定資産税がかからず、月々の支払いの負担が軽くなるのもユーザーにとっては大きな魅力だ。従って、これまで住宅取得が難しいとされてきた低所得者層もターゲットとなりうる。
 街並みづくりに対するユーザーの反応は「街が出来上がっていくのを見るのが楽しみ」など概ね好意的。付加価値の高い提案をすれば受注が取れるという実感が得られた。定借が定着すれば住む人自身が街並み形成に参加するスタイルが確立されるのではないか。
 札幌市あいの里地区における定借成功事例をいくつか紹介する。

 事例46歳、公務員(子供3人)の場合 
 当初計画の敷地では希望通りの居住スペースが得られないため、他の土地を探した。しかし、条件を満たす土地が見つからず、建物の規模についても予算内では十分な広さを確保できないことから定借を提案。650万円も少ない予算でガレージ付きの住宅が実現した。
 事例40歳、自営業(子供なし)の場合 
 土地を購入し住宅を建てる予定だったが、自営業のため希望融資額がおりず、融資額を減らすため定借を採用した。その結果、トータルコストは予定額より750万円、月々の支払いは3800円のダウン。建物は6坪広くなり、ガレージを造ることもできた。
 事例33歳、公務員(子供なし)の場合 
 「将来、沖縄に住みたい」という理由で定借に決定。「店舗がほしいので、ある程度人が多く目立つ場所を」などの要望もあった。当初より850万円少ない予算で店舗付き住宅が取得可能になったほか、月々の支払いは1万1000円減。街並みづくりに関しては「同じような建物が建っている方が店舗が目立つ」。
 事例29歳、会社員(子供2人)の場合 
 土地を購入し家を建てることが経済的に困難だったため定借を提案。ガレージ付きの住宅が造れる、固定資産税がかからないなどが決め手となった。トータルコストは100万円、月々の支払いは1万5000円のダウン。
ケース1
46歳 公務員 お子様3人
当初計画
建物30坪 土地50坪 トータル3,000万
月支払い 109,500円
定借計画
建物39坪+ガレージ 土地70坪 トータル2,350万
月支払い 109,000円
(賃借料23,000円込み)
ケース2
40歳 自営業 犬1匹
当初計画
建物32坪+ガレージ 土地80坪 トータル3,200万
月支払い 116,800円
定借計画
建物38坪+ガレージ 土地80坪 トータル2,450万
月支払い 113,000円
(賃借料23,000円込み)
ケース3
33歳 公務員 犬1匹
当初計画
建物39坪+店舗 土地70坪 トータル3,000万
月支払い 91,000円
定借計画
建物44坪+店舗 土地70坪 トータル2,150万
月支払い 80,000円
(賃借料20,000円込み)
ケース4
29歳 会社員 お子様2人
当初計画
建物31坪 土地52坪 トータル2,300万
月支払い 84,000円
定借計画
建物35坪+ガレージ 土地70坪 トータル2,200万
月支払い 99,000円
(賃借料19,000円込み)

工務店へ本格販売
カクダイ デザイン性と機能性を両立

ルッカ。サーモスタット付シャワー混合栓
 水栓金具の専門メーカー(株)カクダイ(本社大阪市)は、デザインと機能両方にこだわった水栓金具の専用カタログを作成、注文住宅を手がける地場ビルダーへの売り込みを強化する。
 同社はホームセンター向けに水栓金具の補修用品を製造しているほか、ヨーロッパでデザインした高級水栓金具を国内規格で製造して注文住宅向けに販売、「ルッカ」、「ガルダ」、「レジナ」、「ガラッチーニ・オルタ」などのシリーズがある。
 同社製品は水量をワンタッチで4段階に調節できる機構を内蔵、現在主流となっているシングルレバー水栓金具の『細かな水量調節がしづらい』という欠点を解消した。さらにガラッチーニ・オルタシリーズでは分水孔アダプターを内蔵し、マイナスドライバーで取り外すと、家電量販店で市販されている食器洗浄乾燥機や浄水器などへお湯や水が取れる。これまでと比べ施工が楽になり、見た目もきれいにおさまる。カタログ掲載商品の設計価格範囲は、だいたい1万8000円から3万8000円ぐらいが中心とリーズナブル。
レジナ。優美さとダイナミックさが同居したデザイント ガラッチーニ・オルタ。写真右下のカバーに分水孔アダプターを内蔵
 また、洗濯機置き場向けに水栓コンセントも出っ張りの少ない薄型タイプを用意、洗濯機の設置の自由度が上がるだけでなく、ホースが外れた際に出水を自動的に遮断するストッパーも内蔵している。
 同社では、「水栓金具もインテリアという考え方が一般ユーザーにも浸透してきており、家づくりにこだわる工務店の方々に是非使って欲しい」と話している。
 カタログの請求など問い合わせは、同社札幌営業所(札幌市東区北23条東12丁目3-17、Tel.011・704・1511)へ。

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