平成16年6月25日号から
冬場の過乾燥緩和
マツナガ 室内の湿度で換気量調整
 (株)マツナガ(本社東京都)は、同社が販売する仏・アエレコ調湿換気システムを採用した秋田県能代市内の住宅二棟で冬場の室内相対湿度を測定したところ、平均して40%弱を保つなど、冬場の過乾燥緩和に一定の効果があることを確認した。このシステムは湿度に応じて換気量を自動的に調節する仕組みで、換気効果は二酸化炭素(CO2)濃度測定により、定量換気システム運転時とほぼ同水準の結果を得られた。同社では、換気本来の目的である室内の空気質を維持・改善する機能は十分果たす一方で、冬場の過乾燥とファン消費電力の軽減を目指す新しい発想の換気システムとして、本格的に販売していきたいとしている。


換気ファン本体の施工
湿度40%弱を保つ
 アエレコ調湿換気システムは、新鮮外気を自然給気し、汚染空気を排気グリルからダクトを通じて強制排気ファンで排出する第三種セントラル換気システムだが、給気レジスターと排気グリルには湿度を感知して開口率を自動調節するナイロンリボンを内蔵しており、各部屋の湿度に応じて給気量、排気量を調節する仕組み。また、ファンは換気量に応じて消費電力が可変するように制御されており、室内の湿度が上がると換気量を増やし、湿度が下がると換気量を減らす。いわゆる湿度感知型の換気量制御だ。換気量はおよそ0.2~0.5回/時で変動する。
 室内の空気汚染を測る目安は湿度やCO2などがあるが、昨年7月に施行された改正建築基準法では揮発性有機化合物(VOC)低減のため、0.5回/時以上の常時換気を義務づけており、同システムは常に一定の換気量を保ち続ける「定量換気モード」に切り替えることもできる。
 秋田の住宅で冬期間、外気温度と室内の温度・湿度の変化を記録したデータによると、外気温はマイナス5℃からプラス5℃ぐらいの間を上下しているが、室内の湿度は概ね35~40%程度の間におさまり、湿度維持効果が認められた。この住宅は、新在来木造構法を採用して断熱・気密性に優れているため、室内温度は外気条件にあまり影響されず20℃前後で推移している。
 また、別の住宅で行った換気効果の測定では、八畳間の寝室に家族六名が寝るという条件で一週間ごとに「換気停止」、「調湿換気モード」、「定量換気モード」と運転内容を切り替え、それぞれCO2濃度の変動を測定したところ、換気停止時は濃度がビル衛生管理法などが定める基準値1000ppmを上回る1500ppmに上昇したのに対し、定量換気モード、アエレコ調湿換気モードとも1000ppmを下回った。
 アエレコ調湿換気システムを採用した秋田県の住宅を設計した、?西方設計の西方里見社長は、「冬場に室内の湿度が30%を切ることもあり、一部のユーザーから不快感を訴える声があった。アエレコ調湿換気システムを採用したところ、ユーザーからの評判は良く、今回の実測データで良さが実証されたと考えており、今後もニーズに合わせて使っていきたい」と話している。


アエレコ調湿換気システムと室内環境(秋田県での実測値)
“調湿換気”が焦点
【解説】熱交換換気からはじまった北海道のセントラル換気の歴史は、フィルター清掃を行わないと換気量が低下するというメンテ上の問題、省エネ効果があまり期待できない点などから、システムのシンプルさと換気性能の安定性、コスト面に優れた第三種が主流となり、改正建築基準法の施行以降は本州でも徐々に採用が増えている。
 ただ、第三種にも泣き所はある。それが冬場の過乾燥問題と冷気対策だ。基準法通り0.5回/時以上の換気を行うと、冬場にはユーザーが寒さと乾燥を訴えるケースがあり、その場合は換気量を抑える、パッシブ加湿器「アメニア(宇部気密ハウジング)」をパネルヒータに引っかけるなどの対応が一般的。
 また、第三種で熱ロスを抑えるため換気排熱を利用したヒートポンプ暖房、省電力化では、電圧制御(コントローラー)、システムの圧損抑制といった手法に加え、DCモーター化なども進んでいる。
 このような中で登場したのがアエレコの調湿換気だ。定量換気モードに加え、湿度が低くなる冬場には換気量を抑え、電力消費も抑える調湿換気モードを持ったこのシステムは、いわば付加価値型の商品。やや割高になるコストと調湿システムをビルダーとユーザーがどう評価するかが焦点となりそうだ。

改めて電食と保証を取材
ガルバリウム屋根にサビ
 昨年、札幌でいわゆるガルバリウム鋼板の屋根材に無塗装ステンレス製の雪止め金具を付けた結果、取付部分に電食が発生し腐食した事例を本紙で昨年11月25日付1面に取り上げた。その中で「異種金属同士を接触させてはいけないという認識が、ビルダー・板金業者に十分浸透していない」ことを問題点の一つとして指摘したところ、板金業者側から「ステンレスでもSUS430はダメだが304は大丈夫と回答した鋼板メーカーもある。メーカーはもっと情報提供を行うべきではないか」との指摘を受けた。そこで本紙ではこの問題を中心にメーカー・板金業者に改めて取材を行ったところ、新たに板金の保証に関する問題点も浮かび上がってきた。


ステンレス製の雪止め金具とガルバリウム鋼板の接触部分で起きた電食


ガルバリウム鋼板を使った苫前町の公営住宅の屋根。塩害の恐れのある地域では、ガルバリウム鋼板などの高耐久な材料が欠かせない
電食でサビが発生
 事の発端となった異種金属同士の接触による屋根板金の腐食は、施工物件の一部で溶融55%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)のフラットルーフを採用し、近隣の状況や配置計画によってステンレス製の雪止め金具を設置している札幌のビルダーが昨年の春に発見。
 そのビルダーによると、昨年春先に屋根上を点検中、ガルバリウム鋼板と雪止め金具の接触部分に腐食を確認。その仕様で施工した全物件を点検したところ、築後一年未満の物件も含めて全て雪止め金具の取付部分にサビが発生しており、同社では雪止め金具を塗装仕上げの亜鉛めっき製品に交換、ガルバリウム鋼板は腐食が発生した部分を下地処理し、補修塗装を行って対処した。
 腐食の原因は電食によるもの。電食とは異なる金属同士を接触させた場合、一方がプラス、一方がマイナスの電位となって微量電流を生じ、その電流の電解作用によって腐食が起きる現象を指す。水が加わると腐食がより促進され、ガルバリウム鋼板に限らず、一般的な亜鉛めっき鋼板(トタン)も電気的な特性は同じなのでステンレスとの接触で電食が生じる。

メーカーは常識と主張
 この問題に対しメーカー側は「異種金属同士を接触させてはいけないというのは、この業界では常識。鋼板のカタログにも、防錆保証の免責事項の一つに、『異種金属同士の接触による電食』が入っており、板金業者団体の勉強会でも指導している。住宅現場でもわかっていると思っていた」としているが、札幌市内のある板金業者は「異種金属同士はつながないが、雪止め金具などについては、設計図や工事管理者の指示によるので異種金属同士の接触は意識したことがない」と言い、メーカーと板金業者の間には温度差があることがわかった。

浮上した保証問題
 本紙では、鋼板メーカーはユーザーであるビルダー・板金業者に対しこの問題を含めて施工上の注意点をより周知徹底するべきであり、ビルダー・板金業者側も新しい工法・部材を採用する時は採用・施工に関する十分な情報を集めることが必要として、記事を締めくくった。
 その後、電食を起こした屋根を施工した板金業者から「鋼板メーカーに問い合わせたところ、ステンレス304ならガルバリウム鋼板と組み合わせても大丈夫と回答してきたメーカーもある。メーカーはもっと積極的に情報を提供すべきだと思う」という意見が寄せられた。
 その板金業者によると、現在の板金に関する問題点として、異種金属同士の接触以外にも、一度鋼板を屋根材として成型加工したら保証は受けられなくなることがあるという。さらに、屋根材と同色の釘やコーキングが用意されていないとしている。
 一方、沿岸部の他の板金業者によると、「塩害に敏感な地域だけあって異種金属同士を接触させることはない。また、保証はよほど海のすぐそばでもない限り、成型加工しても10年保証はしてもらえる」としており、保証についての対応にバラつきがあることがわかった。


メーカーは統一基準採用
現場はケースバイケース

 そこでこれらの問題点について代表的な屋根鋼板メーカーである日新製鋼と北海鋼機に取材した。まず異種金属同士の接触でガルバリウム鋼板とステンレス304との組み合わせについては、いずれも「大丈夫とは言えない」とし、北海鋼機は特約店の問屋で入社4~5年の社員を対象にした工場見学会や勉強会を企画する予定。釘やコーキングのカラーについては「屋根材の補修用の塗料で対応してもらいたい」としている。
 保証については、事情がさらに混み入っている。二社とも鉄鋼業界の全国的な組織である日本鉄鋼連盟の亜鉛鉄板委員会で今年度を目処に見直しを進めている統一保証基準に従う予定で、現時点では各メーカーとも、同委員会が定めている現行の統一保証基準を利用しているようだ。その保証条件は適切な環境で使用されていること適切な加工・施工が行われていること適切な設計が行われていること適切な維持管理が行われていること、補償方法は各メーカーが定めた内容によるとしており、実際には腐食によって穴が開いた場合、メーカー各社が現場を確認して加工等の適・不適を判断し、保証するかどうかを決めているようだ。つまり、保証はケースバイケースということになる。
 なお、同委員会では保証条件の各項目について不適切な事例を技術標準集(雨漏り編)で掲載しており、例えば不適切な環境の例としては、鉄粉の付着など異種金属同士の接触による電食の発生を挙げている。
要は加工等が適切かどうか
 それでは日本鉄鋼連盟亜鉛鉄板委員会が現在進めている統一保証基準の見直しは、どういうものなのか。
 同委員会によると、平成12年に現行の統一保証基準を定めてから4年の月日が経ち、その間に発売された新しい製品にも対応するために行われているもので、何らかの欠陥が発生した時に、メーカー側がどこまで保証するかが主な検討内容。板金業者が成型加工したガルバリウム鋼板については、適切な環境・手順で加工したかどうかが判断の基準になり、加工が不適切と判断された場合は保証の対象外になる。成型加工が適切か不適切かは、メーカー各社が判断することになるため、結局は現行の統一保証基準と変わらないことになりそうだ。
 現行の統一保証基準通り、各メーカーが現場ごとに適・不適を判断することになれば、ビルダー・板金業者側としては腐食が発生した場合、極端に言えばその時になってみなければ保証を受けられるかどうかわからないということになる。

大切なのは品質
 改めて問題を整理しよう。
 まず電食は、基材が鋼板であればメッキ層がいわゆるガルバリウムであろうと亜鉛メッキであろうとステンレスと接触すれば電食が起きる可能性が高い。雪止めや釘などにも注意が必要だ。
 次に電食に関する情報提供だが、ここまで取材を進めてきて、ビルダー・建築板金業者ともに電食についての情報を知らないケースが多い。鋼板メーカー側は“常識”としているが、改めて情報提供をする機会を設けてほしい。
 問題は保証に関することだ。トタン屋根は鋼板メーカーが製造したトタンをそのまま使っているわけではなく、板金業者がプレス加工してはじめて屋根材になる。その意味では鋼板メーカーは屋根の材料を提供しているに過ぎず、プレスの状態によっては保証できないケースがあることは理解できる。しかしそれでユーザーが納得するのかどうか。そこがいちばんの問題だ。
 すでに電食が発生した今、一番大切なことはユーザーが安心して暮らせること。責任論を主張する前に、どのようなかたちで品質を守っていくのか、工務店、板金業者、商社、メーカーなどが相談して決めることではないか。
 この被害例を教訓に、品質向上へ向けた動きがはじまることを望みたい。

ステンレス・SUS304とSUS430 ステンレス(鋼)とは鉄に10.5%以上のクロムを含有した合金鋼の総称。鉄の弱点であるサビに強く、優れた耐食性・耐久性を有する。ステンレスの中でもSUS304は磁性がないオーステナイト系と呼ばれ、耐食性に優れるほか、成型加工性や溶接性も良好。SUS430は磁性のあるフェライト系と呼ばれ、耐食性や成型加工性、溶接性に優れる。
 
亜鉛鉄板委員会が定めている現行の統一保証基準

1.保証内容
 新築住宅の屋根に屋根用亜鉛めっき鋼板を使用した場合、材料の腐食による穴あきが、屋根工事完了引渡し日より10年間ないこと。

2.保証条件

 1)適切な環境で使用されていること。
 2)適切な加工・施工が行われていること。
 3)適切な設計が行われていること。
 4)適切な維持管理が行われていること。

3.対象材料

 1)JIS G 3312 「塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
 2)JIS G 3318 「塗装溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
 3)JIS G 3322 「塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
 4)JIS G 3321 「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用

4.補償方法

 各メーカーが定めた内容による

換気と点検口を充実
宇部気密ハウジング 製品改良とラインナップ追加

ピアラ24のパッケージ内容


ダンブロッカー床用のフローリング対応タイプ
 宇部気密ハウジング(株)では、第三種換気システムのパッケージ商品「ピアラ24」を改良、換気ファンをDC(直流)モーターに変更して消費電力を低減しながら最大風量をアップさせた。また、同じくパッケージ商品の「ルフロ300」のパッケージ内容をツーバイフォー住宅用に変更した「ルフロ300ツーバイ」を追加発売。このほか、断熱・気密型床下点検口「ダンブロッカー床用」に木質系フローリング対応タイプを追加発売した。
 「ピアラ24」は、換気ファンと排気フード、給気レジスター、排気グリル、ダクト、チャンバー、配管副資材をパッケージにした商品。姉妹機種の大風量タイプ「ピアラ24L」は発売当初からDCモーターだったが、「ピアラ24」もファンモーターUR-220をDC化し、型番もUR-220DCに変更した。この改良により、ゼロ静圧時の最大風量は220立方メートルから260立方メートルに増加、逆に消費電力は58ワットから40ワット(強運転時)に低減した。また日常運転モードは26ワット、セーブモードは13ワットと省エネ。工務店実行価格は、従来タイプとほぼ同等になる見込み。
 換気ファン本体を天井裏に設置する「ルフロ300ツーバイ」は、ツーバイフォー住宅での施工性を考慮して一階用ダクトを50ミリ径にするなどセット内容を変えた。換気ファン本体、コントローラー、排気フード、給気レジスター、排気グリル、ダクト、Y型チャンバー、配管副資材がセットになっており、設計価格は30万円/1セット(税抜)。
 断熱・気密型床下点検口「ダンブロッカー床用」に追加したフローリング対応タイプは、15ミリ厚以下のフローリングに対応する。ダンブロッカー床用は、施工部材をアルミ枠、断熱蓋、断熱材付補助根太の三つにまとめて施工を簡単にした。また、150ミリ厚の断熱蓋とアルミ枠まわりのトリプルシーリング構造で断熱性・気密性を向上させ、次世代省エネルギー基準を全地域でクリアしている。設計価格は2万4000円/1セット。(税抜)
 問い合わせは、同社札幌支店(札幌市中央区北1条西5丁目2、Tel.011・222・6330)など各拠点へ。

試読・購読はこちら

このページの先頭へ

運営サイト

株式会社北海道住宅新聞社
〒001-0029 札幌市北区北29条西4丁目2-1-201
tel.011-736-9811 fax.011-717-1770

当サイトで使用している写真およびテキストの無断転載を禁止します。

Copyright (c) 北海道住宅新聞社. All Rights Reserved.