要は加工等が適切かどうか
それでは日本鉄鋼連盟亜鉛鉄板委員会が現在進めている統一保証基準の見直しは、どういうものなのか。
同委員会によると、平成12年に現行の統一保証基準を定めてから4年の月日が経ち、その間に発売された新しい製品にも対応するために行われているもので、何らかの欠陥が発生した時に、メーカー側がどこまで保証するかが主な検討内容。板金業者が成型加工したガルバリウム鋼板については、適切な環境・手順で加工したかどうかが判断の基準になり、加工が不適切と判断された場合は保証の対象外になる。成型加工が適切か不適切かは、メーカー各社が判断することになるため、結局は現行の統一保証基準と変わらないことになりそうだ。
現行の統一保証基準通り、各メーカーが現場ごとに適・不適を判断することになれば、ビルダー・板金業者側としては腐食が発生した場合、極端に言えばその時になってみなければ保証を受けられるかどうかわからないということになる。
大切なのは品質
改めて問題を整理しよう。
まず電食は、基材が鋼板であればメッキ層がいわゆるガルバリウムであろうと亜鉛メッキであろうとステンレスと接触すれば電食が起きる可能性が高い。雪止めや釘などにも注意が必要だ。
次に電食に関する情報提供だが、ここまで取材を進めてきて、ビルダー・建築板金業者ともに電食についての情報を知らないケースが多い。鋼板メーカー側は“常識”としているが、改めて情報提供をする機会を設けてほしい。
問題は保証に関することだ。トタン屋根は鋼板メーカーが製造したトタンをそのまま使っているわけではなく、板金業者がプレス加工してはじめて屋根材になる。その意味では鋼板メーカーは屋根の材料を提供しているに過ぎず、プレスの状態によっては保証できないケースがあることは理解できる。しかしそれでユーザーが納得するのかどうか。そこがいちばんの問題だ。
すでに電食が発生した今、一番大切なことはユーザーが安心して暮らせること。責任論を主張する前に、どのようなかたちで品質を守っていくのか、工務店、板金業者、商社、メーカーなどが相談して決めることではないか。
この被害例を教訓に、品質向上へ向けた動きがはじまることを望みたい。
ステンレス・SUS304とSUS430 ステンレス(鋼)とは鉄に10.5%以上のクロムを含有した合金鋼の総称。鉄の弱点であるサビに強く、優れた耐食性・耐久性を有する。ステンレスの中でもSUS304は磁性がないオーステナイト系と呼ばれ、耐食性に優れるほか、成型加工性や溶接性も良好。SUS430は磁性のあるフェライト系と呼ばれ、耐食性や成型加工性、溶接性に優れる。
|
亜鉛鉄板委員会が定めている現行の統一保証基準
1.保証内容
新築住宅の屋根に屋根用亜鉛めっき鋼板を使用した場合、材料の腐食による穴あきが、屋根工事完了引渡し日より10年間ないこと。
2.保証条件
1)適切な環境で使用されていること。
2)適切な加工・施工が行われていること。
3)適切な設計が行われていること。
4)適切な維持管理が行われていること。
3.対象材料
1)JIS G 3312 「塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
2)JIS G 3318 「塗装溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
3)JIS G 3322 「塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
4)JIS G 3321 「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯」の屋根用
4.補償方法
各メーカーが定めた内容による |
|