平成16年5月25日号から
十勝産木材で家造り
地産地消を消費者と目指す-「とかちの木で家をつくる会」発足
 北海道・十勝産カラマツ材を使った家づくりに取り組む建築関係者や林業関係者が集まって「とかちの木で家をつくる会」設立総会が去る8日に開かれ、地場工務店4社、設計事務所3社、林業関係団体4組合が正会員となり、アドバイザーとして道立林産試験場、九州大学農学部北海道演習林、オブザーバーとして十勝支庁林務課を加えて発足した。地元のカラマツをはじめとする地域木材で家づくりすることで森林を守り育て、地産地消の家づくりを目指す。

会長就任あいさつをする秋元紀幸氏
木人工林を有効活用
  総会では、会の規約、役員及び会員、平成16年度事業計画・予算案がそれぞれ全会一致で承認された。会長に就任した秋元紀幸氏(十勝からまつ製材加工(協)理事長)は代表あいさつの中で、「日本で1000万ヘクタールある人工林の年間成長量は8000万立方メートルもあり、これらを有効活用すれば約170万戸の住宅建設ができ、すべて国産材で家が建つ計算になる。今現在のカラマツの付加価値は低いが、戦後の混乱期に植林されたカラマツが伐採期を迎え、これをなんとか利用していかないといけない時期に来ている。十勝でも知恵を出しあい、当会の目的を達成できるようご支援ご協力いただきたい」と述べた。
 その後、設立記念講演会で四国・高知で活動する建築家の松澤敏明氏が「地域を活かす」をテーマに、高知県で産出されるスギや漆喰など伝統的な素材・手法をベースに現代の感性に応える家づくりを行う「土佐派の家」のこれまでの取り組みについて講演した。

カラマツ材を構造材に使い、現しとした住宅(施工:(有)ホームテクト佐藤)
道の事業とも連携
 今後同会は、定期的な例会を開くほか、市役所内でミニモデルルームの展示、カラマツ林のバスツアーやカラマツ住宅の見学会・講演会への協力、会報誌の発行などを予定しており、特に地域材や木について学びたい人や環境問題・健康に暮らすことなどに興味のあるエンドユーザーを巻き込み、生産者と消費者が一緒になって森林づくりから始める“地域の木材を使った家づくり”を進める運動に発展させていきたいとしている。
 十勝管内は他地域と比べて民有林の比率が高く、中でもカラマツは民有林の約4割の八万七千ヘクタールを占めて全道14支庁中一番広いため、その資源の有効活用が課題となっている。最近では建築材としての利用も進み、昨年管内で施工されたカラマツ住宅は15棟を数える。同会の活動でカラマツ住宅への理解が深まりさらに施工が増えることが期待されている。
 道庁も、今年度から「人にやさしい道産材表示普及事業」と「道民との協働による『地材地消』促進事業」を3ヵ年計画で進めている。これは道産材の産地表示を行って消費者が安心して道産材を選び、道産材を地域で消費するシステムを構築することを目指しており、事業に取り組む関連団体と企業が作る連携グループに対して補助金が拠出される。補助内容には、住宅一棟分の柱代補助もあり、同会もこの事業に参加を予定している。
 なお、同会では新規会員を募集している。問い合わせは事務局長の小野寺一彦(有)設計工房アーバンハウス社長(Tel.0155・23・7011)まで。






外断熱の魅力を提案
アシストホーム 飾り棚や野地板現しなど
リビングの壁に連続して設けた飾り棚。軸組外側に張った構造用合板をそのまま見せている
 (株)アシストホーム(札幌市、岡本勝社長)では、外断熱工法を採用することにより、外壁軸間の空間を飾り棚などに有効利用するとともに、小屋組みの構造材や野地板などを積極的に現しにして和のイメージを演出したモデルハウスを公開。訪れたユーザーから好評だ。
 同社が外断熱工法を採用するのは、平成9年以来7年ぶり。その間にも外断熱で軸間を現しにすることを検討していたが、建築基準法の改正によって外壁の防火認定が壁構造全体で評価されることになり、外断熱で認定されていた防火構造は内装下地の石膏ボードを張らなければならなかったため、施工を見送っていた。しかし、フェノールフォーム断熱材のネオマフォームであれば、窯業系サイディング等との組み合わせで内装下地の石膏ボードが不要な防火構造を昨年取得したほか、次世代省エネ基準対応でも壁・屋根は一層張りで済み、断熱厚も外壁で50ミリとなるので外装材の荷重がかかるビスの長さを抑えられること、燃えにくく火災時の安全性も高いことなど、外断熱の弱点と言われていた点が解消できることから、ネオマフォームによる外断熱の採用に踏み切った。

合板気密でC値は0.5cm2

 モデルハウスは約40坪の2階建てで、断熱仕様は基礎が押出スチレンフォームB3種外側60ミリ+内側40ミリ、外壁がフェノールフォーム50ミリ、屋根が同66ミリ。軸組外側に縦張りした構造用合板9.5ミリ3×10尺と、屋根の野地板となる同3×6尺を気密層としており、それぞれジョイント部分と窓廻りは気密テープ処理、土台廻りの気密化は布基礎外側の断熱材と布基礎の間から立ち上げた防風・透湿シートを外壁部分の構造用合板に気密テープ止めし、その上からフェノールフォームで押さえる納まり。気密測定の結果、相当隙間面積は0.5平方センチ/平方メートルを記録した。

リビングの壁に連続して設けた飾り棚。軸組外側に張った構造用合板をそのまま見せている
室内は“和”を表現
 室内は空洞になっている軸間部分を利用し、居室の壁に連続した飾り棚、玄関の壁際に傘や小物を置くスペースなどを設け、2階天井となる屋根はサンダー掛けした野地板(構造用合板)と登り梁を、室内側の梁や柱とともに現しにして、和の雰囲気を表現。「当初は構造部分を壁一面現しにしたり、真壁にすることも考えていた」が、ゴールデンウィークの公開に間に合わせるため工期が限られ、見た目がきれいな構造用合板などを調達する時間がなかったことから、外壁軸間は部分的な利用にとどめたそうだ。
 工期的には軸間充てん断熱と比べると、断熱材のビス止めなどによってサイディング下地施工までは今回の外断熱のほうが手間がかかっており、コストも断熱材とビスによって坪あたり1.5~2万円アップになるというが、同社では充てん断熱ではできない魅力を加えられるのであれば、このコスト差は納得できる範囲だとしている。

室内空間の表現手段の一つ
岡本社長

 同社の岡本社長は「内装下地の石膏ボードを張って軸間を現しにしないのであれば、外断熱は熱橋の解消だけがメリットになり、それならダブル断熱(付加断熱)でもいいということになるが、今回はフェノールフォームを使うことによって軸間を有効利用でき、充てん断熱ではできない提案が可能になった。外断熱はユーザーがイメージする室内空間を表現する手段の1つと考えている」と話している。
玄関廻りの壁には傘や小物を置けるスペースを作った 吹き抜けから見た屋根なりの2階天井部分。小屋組の構造材と野地板を現しにし、和のイメージを演出している

ISO9001取得
北海道電機 全社でCS向上に取り組む

近田彰夫社長
 電気蓄熱暖房器「暖吉くん」などを開発・製造している北海道電機(株)は、このほど品質マネジメントシステムの国際標準規格「ISO9001」の認証を本社・営業・工場などの全部門で取得した。今後は生産・営業・販売・メンテナンスの一貫体制の企業として『お客様にとってナンバーワンの企業を目指そう』をスローガンに、さらなる顧客満足度の向上に努めていく考え。
 「ISO9001」は、製品やサービスの品質を継続的に良好に保ち、向上させるための「品質マネジメントシステム」を規格化したもので、第三者機関が審査して認証する。最新版は2000年制定版で、規格の要求がそれまでの「品質保証」からさらに一歩踏み込んだ「顧客満足の向上」に変わった。
 同社は昨年3月にコネクタ付光ケーブル・コードの組立部門で「ISO9001」認証を取得。その翌月から全社をあげて今まで以上に顧客満足度の向上に取り組み、7月にはCS(顧客満足)センターを立ち上げるなど、よりきめ細かい対応ができる体制を整えた。
 同社は1987年、道内唯一の電線製造メーカーとして設立、その後電気蓄熱暖房器の道産化に取り組み「暖吉くん」を発売、現在は道内だけでなく東北、北陸でも発売している。また、昨年秋には機器実証試験のための住宅「プロメテウス」2棟を本社敷地内に完成、各種データ取りを進めるとともにオール電化住宅としても公開するなど、電化住宅の普及に貢献している。

取得したISO9001の認証書

48坪で真冬に3万円
八雲町・加納工務店 全館空調型ヒーポンを採用

施主が実際に生活している中で測定が行われた住宅
 (株)加納工務店(八雲町、加納昭平社長)では、暖房・冷房・換気機能を備え、室温を24時間管理するヒートポンプ全館空調システム「ネクストエア」を、昨年完成した住宅に採用。今年の1月から3月までの間に電気代や室内温度などの測定を行った。
 ネクストエアはヒートポンプによる冷暖房に全熱交換型の換気を組み合わせた空調型のセントラルシステム。取り込んだ外気はまず全熱交換気ユニットで熱交換、さらに空調室内ユニットで暖冷房し、ダクトで端末となる吹出ユニット/グリルに配管、端末から各室に給気する。循環側は空調ユニットから吸い込み再加熱、排気は全熱交換気ユニットから吸い込み熱交換して屋外に排気する。これらのシステムが1回路となる。
 今回の物件では1フロアに1回路、合計2回路を設置した。ヒートポンプユニットは圧縮機の能力が七五〇ワットと一キロワットの2タイプを揃えている。
 一月から行われた実測データによると、1月18日~2月16日の間にかかった電気代は2万9900円ほど。この住宅は延床面積は47.9坪。オール電化でドリーム8の非蓄熱式電気暖房割引を採用し、IHヒーター・給湯・照明など全て含めての金額だ。室温はおよそ20~23℃で推移している。
 断熱仕様はヒートポンプの採用を前提に次世代基準を上回る水準に設定した。ツーバイフォー工法でグラスウール24K90ミリを充てん、押出スチレンフォームB3種八五ミリを外張りした175ミリ厚のダブル断熱(付加断熱)と基礎断熱を採用。また、基礎の仕上げにはクラック防止に効果があるとされているスタッコフレックスを採用している。

天井にあるのが空調室内ユニット 室外ユニットは1階用と2階用の2台を設置
ほたて漆喰壁を室内に採用
 今回の住宅は室内の一室をほたての貝殻を粉砕させた貝灰(かいばい)を原料にしたほたて漆喰壁で仕上げている。産業廃棄物として、毎年たくさんの量が排出されているほたての貝殻を有効活用するため、2年ほど前から室内用の塗り壁材として販売されており、現在は外壁用としても開発が進められている。
 同社では、リサイクルした建材やヒートポンプシステムを提案することで他社との差別化を図る考えだ。
 同社の加納社長は「ネクストエアはまだ道内で採用例がなく、当社が初めてだったことから、室内温度や消費電力などの測定を行った結果、住宅の性能がしっかりしていれば何の問題もなく採用できることがわかったので、今後は当社のセールスポイントとしてユーザーに勧めていきたい」と話している。
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