平成16年5月15日号から
今年度から二大改訂
住宅保証機構
(財)住宅保証機構では今年度から性能保証住宅設計・施工基準を改訂、木造住宅の屋根は「勾配屋根としなければならない」と定め、木造のフラット屋根を禁止するほか、地盤に応じた適切な基礎設計を行うためのチェックシートを公開した。スガモリを含む漏水事故と不同沈下の事故に対応するもの。4月以降に住宅登録の申請を受理した住宅から適用するが、混乱を避けるため9月いっぱいの受理分までは旧基準も適用する。今回は住宅保証機構の2大改訂について特集する。



M型無落雪屋根の施工例(参考図)
木造のフラット屋根禁止
北海道は特例でM型無落雪

 今回の改訂で基準そのものが変更になったのは防水関係。木造住宅では「屋根は勾配屋根としなければならない」という文言が追加となり、フラット屋根を禁止した。これにより、同機構の保証制度を利用する住宅でフラット屋根は使えないことになった。フラット屋根で漏水事故が多発したことによる措置。なお北海道はM型の無落雪屋根を北海道版の基準として認めることを明記した。
 北海道の屋根形状は勾配屋根のほか、札幌圏はM型の無落雪を使うケースが多いが、道東などでは100分の1から2程度のフラット屋根が多い。このフラット屋根がここ数年のドカ雪などでスガモリを起こした。また全国的にも雨漏り事故が多発し、今回の基準改訂・追加となった。
 勾配については、常識的に考え3寸勾配以上が目安となる。それ以下の緩勾配は慎重に判断するべきだ。
 基準は同機構の性能保証制度を利用する住宅が対象で、それ以外はこれまで通り自由にフラット屋根を建てることはできる。建築基準法が改正されたわけではないからだ。しかし、新築戸建ての2割程度が登録している同保証制度で基準改正が行われたのは、それだけフラット屋根の事故率が高いからであり、その意味は大きい。
 なお、特例的に北海道だけで認められたM型無落雪は別図の通りで、住宅金融公庫の仕様書分冊北海道版などと大きな変更はない。基準の主なポイントは 1.屋根板金と横樋とのつかみの部分をしっかり施工する(この部分からのスガモリが多い) 2.横樋を途中で継がない 3.横樋まわりと野地下に断熱材を施工する 4.横樋の下は小屋裏換気を妨げないよう高さを確保する⑤縦樋は階下にまっすぐ下ろす(小屋裏等で横引きしない)。
 M型無落雪が認められた背景には、屋根形状を勾配だけに限定すると、落雪スペースのない都市部などで雪処理に困るという背景がある。フラットほどでないにせよM型もスガモリ事故があるため、基準を守って施工をしてほしいとしている。
 このほか、「バルコニーの床は50分の1以上の勾配を設けなければならない」という基準も追加された。バルコニーも雨漏り事故が多かったため。
基礎設計のためのチェックシート
過大な経費を抑え事故防ぐ

 住宅保証機構の改訂の2点目は地盤に応じた適切な基礎設計を行うためのチェックシートの追加。こちらは基準は従来のまま、標準仕様の参考として追加されたもの。
 平成12年の品確法施行から住宅性能保証制度の保証内容が見直された結果、不同沈下による事故が増加し、金額的にも多額に及んでいる。そこで事故の防止を図りながら必要以上の経費をかけないという観点から事故例を分析し、まとめたのがチェックシートだ。
 このシートは大きく3つのパートに分かれている。まず1.の現地調査のチェックでは周辺状況と敷地状況からチェックを行い、すべての項目がAに該当すればサウンディング調査などの計測は不要。一つでもBに該当する場合は計測を行ったうえで“基礎形式選択のためのチェック”に進む。
 基礎形式選択のチェックは2.1次判定と3.2次判定に分かれている。
 計測の結果をどう読むかは難しいケースがある。その時に判断を誤るとせっかく地盤調査したのに不同沈下が発生することにもなりかねない。そこでチェックシートに従って判断していく。
 2.の1次判定では4項目のチェックがあり、これらに1つでも該当する場合は判断の難しいケースなので専門家に相談する。どれも該当しない場合は2次判定に進む。3.の2次判定は項目に沿って基礎形式を決め、どれにも該当しない場合は専門家へ相談する。
 住宅保証機構では専門家と提携して七月ころをメドに専門家リストを公開。一律1万円で相談できる体制を整える。地盤と基礎については専門的知識が必要となる場合があり、過大な費用負担を抑えながら安全な基礎設計を行うために、判断の難しい場合は専門家へ相談することを勧めている。
 同機構はこのチェックシートに沿って設計し不同沈下の事故が起きた場合は、保険金を支払う。その意味でこのチェックシートは重要な意味を持つことになる。
 同機構の住宅保証制度を利用しない場合は、品確法・10年瑕疵保証の枠組の中で自社保証していくことになるが、公的機関がチェックシートというかたちで目安を示したことにより、事故の際に業者側の過失を判断する材料の1つにもなりそう。これまで具体的な指標がなかった基礎設計の問題は一歩前進したと言える。また現地調査のチェックは建て主にもできる内容であり、相次ぐ地震などをきっかけに関心が高まっているユーザーにとっても朗報だ。

新住協村オープン
道北・鷹栖町 新しい挑戦に高い関心
 上川郡鷹栖町の宅地分譲地・シンフォニータウンで、最新のモデルハウスを通じて地元ユーザーに次世代の快適な暮らしを提案する「シンフォニータウン住宅祭」が1日から5日まで開催され、「雪と寒さの克服」を目的に新木造住宅技術研究協議会旭川支部の会員工務店が取り組んできた“新住協村”プロジェクトの8棟を含め、旭川のビルダー9社がモデルハウスを一般公開した。
 住宅祭に参加したのは、會田建設(株)(會田敏雄社長)、(株)芦野組(芦野和範社長)、大城建設(株)(大城功社長)、昭和木材(株)住宅事業部(?橋秀樹社長)、(有)新濱建設(新濱壽男社長)、(有)東光工務店(橋本敏昭社長)、(有)豊島建設(豊島孝男社長)、ヨシダホーム((株)吉田建設社、吉田寛社長)の新住協旭川支部会員8社と、(株)ハウジング?橋(?橋有司社長)の9社9棟。
 新住協旭川支部会員各社のモデルは、国の次世代省エネルギー基準を上回る断熱性能や屋根の工夫による雪対策を共通仕様とし、さらに同協会顧問の室蘭工業大学・鎌田紀彦教授が監修した會田建設、芦野組、新濱建設、東光工務店、ヨシダホームの五棟は、プレカットの集成材と、工場で製作された壁パネルセット、接合金物、造作材で構成されるPFP工法MarkⅢで施工。アプローチ兼用のカーポート、3寸5分の無落雪勾配屋根や真壁による伝統的な在来工法のデザイン、高窓換気による防暑対策、品質の高い収納システムなども採用した。
 鷹栖町長で土地開発公社理事長の佐藤節雄氏はあいさつのなかで「シンフォニータウンはすこやかで安心して暮らせる街を目指し、冬の雪対策を実施した。融雪槽の設置や低縁石などによって冬でも道を広く取ることができる。ぜひ多くの方に鷹栖に住んでほしい」とPRしていた。
 連休初日の1日午前中から多くの見学者が訪れ、隣接する旭川市内で新築を計画していた見学者からは「考え方を変えて、素晴らしい家と環境の鷹栖で暮らすことにしたい」という声も聞かれた。また納材や工事にかかわった業者からは「建物の配置計画や外構などがスッキリした街並みを実現したが、これを消費者がどう評価するか注目している」と新しい挑戦に関心が高かった。

テープカットする佐藤鷹栖町長(左から2人目)と関係者


テープカット後、にぎわうモデルハウス

南欧風のモデル公開
七飯町・葛西建設 地場産材を積極的に採用

南欧風のデザインをイメージしたモデルハウス
 (株)葛西建設(七飯町、葛西春夫社長)では、南欧風のデザインをイメージしたモデルハウス「プロヴァンス」をロングラン公開。アイデアや工夫が、訪れたユーザーの関心を集め話題となっていた。
 プロヴァンスは、延床面積が40坪の在来木造による2階建て。南欧風をイメージしたといっても輸入建材はほとんど使用しておらず、地場産材などを積極的に取り入れているところがポイントだ。
 室内の内装仕上げには、噴火湾で捕れたほたての貝殻をリサイクルし、塗り壁材として再利用したほたて漆喰壁(販売元、藍杜工房)を採用。淡い桃色のほたて漆喰が、室内を明るく彩り南欧風のイメージを演出している。リビングに隣接する4.5帖の和室にも特徴があり、畳の下は全面を桐の床下収納スペースとし、ここで使用している桐材も地場産材だ。真ん中の畳を取り除くと掘りごたつとして使うこともできる。
 今回のモデルハウスでは、一級技能士を取得している大工の技術力を見てもらうために、オリジナルの造り付け家具をリビングやキッチンなどに設けた。キッチンの収納家具は使いやすさにこだわり、同社の女性スタッフが主婦としての経験を活かして設計したもの。キッチンの隣には家事コーナーを設けている。2階の吹き抜けを囲う手すりも同社のオリジナル。手すり子には直径13ミリの鉄筋を使い、ウレタン塗料を施している。
 住宅の断熱仕様は、基礎に押出ポリスチレンフォームB3種60ミリ、外壁に硬質ウレタンボード62ミリを外張りし、天井はブローイング200ミリの外断熱工法。温水セントラル暖房に第三種換気システムを採用。
 同社の葛西利吉専務は「モデルハウスは従業員みんなのアイデアを活かし、見どころがたくさんある仕上がりとなった。そのかいあってほたての塗り壁やオリジナルの手すりなどに興味を持ち見学に来たユーザーがたくさんいた」と話している。

畳の下はこのように桐の床下収納のスペースとなっている


13ミリφの鉄筋を使用したオリジナルの手すり

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