平成16年12月5日号から
MS改修に樹脂SD採用
アイテック/岩田建設 湿式工法と併用して外断熱

躯体外側に断熱板を張ったところ。金属胴縁の中は加工した断熱板を入れている


施工途中のゼオンサイディング。中央に見えているのがウインドロック金具
 (株)アイテック(札幌市、佐藤潤平社長)は、札幌市内のマンションの大規模修繕で外断熱改修を計画、今月下旬の完工を目指して岩田建設(株)(本社札幌市、岩田圭剛社長)が工事を進めている。マンション外装材に一般的に使われる吹き付けタイルの代わりに樹脂サイディングと特殊樹脂モルタルを採用、どちらも30年以上の高耐久性製品でメンテナンスフリーを狙っている。

築30年のMs改修
外断熱の仕上げにゼオン

 施工物件は築30年の11階建て、総戸数約120戸の大規模マンションで、吹き付け塗装にひび割れが入り、そこから雨水などが浸入して鉄筋が錆びるなどの問題があった。また屋上階に近い住民の間から「冬場の寒さ」など訴える声があり、管理組合がアイテックの協力を得て大規模修繕の一環として室内側のサッシ取り替え(アルミ→PVCペアガラス入り)と外付けサッシの追加による開口部の断熱強化、躯体の保護も兼ねてビーズ法ポリスチレン断熱板50ミリによる外断熱工事を計画。この際、外断熱工法では従来の吹き付け仕上げが使えないことから、それに代わる材料として軽量で躯体に負担を与えない外装材を検討、ゼオン化成(株)の樹脂サイディング・ゼオンサイディング・センターロックシリーズと湿式外断熱工法のシュトーサーモ・クラシック(責任施工・(株)ダンネツ)の採用を決めた。

大型台風にも耐える
 躯体の外側にビーズ法ポリスチレン断熱板を施工した後、耐久性の高い耐食めっきを施したZAM鋼板(発売元・日新製鋼(株))製の胴縁を300ミリピッチに縦使いで入れ、ゼオンサイディング本体を胴縁にビス止めしている。中高層マンションでは上層階ほど風の影響を受けやすくなるため、通常の樹脂サイディングでは強風で剥がれ落ちる不安もあったが、強風に強いセンターロックを使い、本体のビス止め以外にゼオン化成が販売するウインドロック金具という風対策の専用部材でサイディング本体を固定した。佐藤社長は、「札幌市内で今年9月に記録した50メートル/秒の瞬間風速にも耐えられると思う」と話している。窓まわりは断熱材と一体施工できる樹脂モルタルの「シュトーサーモ・クラシック」を使い、外観に変化を持たせた。


30年は大規模修繕必要ない

 外付けサッシの追加や共用部分の補修なども含めた大規模修繕の総工費は、吹き付け仕上げで外断熱改修をしない場合の見積もりとくらべて3割以上高くなったが、佐藤社長は「外装の大規模修繕は今後30年は必要ないと考えており、躯体が保護されて建物寿命も延び、結果として資産価値も上がる」と考えている。

完成予想図。AとD…湿式外断熱塗装 B…ゼオンサイディング C…ガルバリウム鋼板
 また「公共建築物でゼオンサイディングを採用した経験から小規模な住宅だけに使うのはもったいないと感じていた。はじめての経験でとまどう部分もあったが採用して良かったと思っている」と話しており、岩田建設も今後大型建築物の改修時に提案していきたいと話している。
 ゼオンサイディングは、これまで木造戸建住宅を中心に採用され、商品本体の30年保証とシーリングを使わないオープンジョイント方式の施工が評価されて新築、リフォームで採用が増えている。今回は大規模マンションの改修に採用されたことで、用途がさらに広がったと言える。

地材地消へ踏み出す
「どうなん杉で住宅建てよう」渡島西部森づくりセンター

講演する小野寺氏
 渡島西部森づくりセンターでは去る11月17日、道南・木古内町の木古内町中央公民館で「どうなん杉」利用促進交流会‐地材地消を共に考える‐を開催。十勝でカラマツの住宅利用促進に取り組んでいる(有)設計工房アーバンハウス代表取締役小野寺一彦氏が基調講演を行い、地元の木材会社や工務店ら4名のパネラーを招き「住宅資材としてのスギの利用を考える」をテーマとしたパネルディスカッションも行われた。また、十月に開催された「どうなん杉と住まいを結ぶバスツアー」の報告なども行われ、参加者は地材地消の大切さについて理解を深めた。


多くの参加者が集まった会場

スギの立ち木に値札を表示している
「一人ひとりの理解が必要」
小野寺氏が基調講演

 小野寺氏は地材地消への挑戦をテーマに講演した。概要は次の通り。
 今ある環境をそのまま残すか、あるいはこれ以上悪化させないための努力をしよう、ということで、今年5月18日、地元の木を使った家づくりを推進するために管内の森林組合、製材業者、工務店、建築家ら13名の仲間と一緒に、オブザーバーとして行政を迎えて『十勝の木で家を造る会』を設立した。
 会では地元の木で家を造ろうと呼び掛けている。地元の木で家を造ることは山を守ること、広い意味で十勝の川、海、畑も全て守ることにつながるんだということを呼び掛けている。森林所有者や家を造る人たちが近所で顔の見える関係をつくりたい。いろんな人が知恵を出し寄り合って一つのものを造っていくことが、十勝の家でありこの会であると思っている。
 十勝は一次産業で支えられているにもかかわらず、十勝の産物を地元の人はあまり口にしていない。農産物、畜産物、肉、牛乳、乳製品など全てが地元以外の地域で消費されている。それはなんだか寂しいこと。まずは食べてみておいしいと認めあえたら、本州へ持って行かなくても地元の人たちで最初においしい物を食べればいいだろう。そういう発想が根源にあった。地元に認めてもらう努力を誰かがやらなければいけないということで活動を開始した。
 カラマツは戦後に植林されて50年が経ったけれど、これまでの成長過程において間伐材だけが公営住宅の小屋組などに使われた時期があり、その時に狂いがでてしまった。その後カラマツは曲がる・反る・ヤニが強いというイメージだけが30年以上も残ってしまっている。当時の人たちはカラマツの癖をよく理解できず、建築材として好ましくない木だと決めつけてしまった。
 カラマツの狂いは生育の過程で表れることで、木の癖を大切にして造らないといけない。木材だけを見るのではなく、木が育った山の環境を見ることによって木というものが見えてくるのではないだろうか。そのすばらしい環境で育った木だからこそ、付加価値があり、製材用としてさらにすばらしいものになる。
 設計者の立場としてはカラマツ材の生産者とそれを使う人を結びつけることで地産地消の大切さを訴えることから始めている。油をたいて遠い国から持ってきた木材より、地元の木を使って造った人の顔が見える家づくりの魅力を知ってもらいたい。

バスツアーも実施

 続いて渡島支庁と渡島東部森づくりセンターが主催した「どうなん杉と住まいを結ぶバスツアー」の報告を、渡島東部森づくりセンターの担当者が行った。昨年に引き続き2回目となるバスツアーは、道南スギを一般消費者へPRする目的で行われている。応募開始初日で定員を超える申込みがあったという。
 バスツアーでは、住宅地の近くにあるスギの人工林を見学。上磯町森林組合では建築材として使えるスギの立ち木を登録し、立ち木1本の価格と、製材した価格を表示した値札をスギの立ち木に掲示しており、参加者から「わかりやすく非常に良い」という声があったという。その後、道南スギで建てられた住宅と建設中の現場を見学し、最後に開かれた懇談会ではみな活発に意見を出し合った。参加者を対象にしたアンケートの結果では、半数以上の参加者が道南スギの地材地消に関心があり、道南スギで家を建てたいと回答したという。

北海道では道南地域にしか植生していないスギの造林は江戸時代・松前藩の時代から始まったと言われている。渡島・桧山管内の人工林の面積は15万1000ヘクタールで、このうちスギが21%、3万2000ヘクタールを占め、標高の低い里山の一般民有林に2万5000ヘクタールの杉林がある。間伐が進められているのは約6000ヘクタール。
 スギの製材は渡島・桧山管内で年間およそ1万1000立方メートル製材されているが、そのほとんどは本州で消費されており、地元ではあまり使われない。

スギ人工林を見学している様子

テックワンと真壁
上磯・渋谷建設 プロポーション演出に工夫

七寸角の大黒柱と障子の照明など見どころを盛り込んだリビング
 渋谷建設(株)(上磯町、渋谷旭社長)では、クレテック金物の改良型として開発された、軸組接合金物テックワンP3を採用した住宅を、このほど函館市内に完成させた。金物工法の利点を活かした工夫や真壁を活かしたデザイン性、所々に見られるアイデアが大きな特徴だ。

室内のドア枠は全て集成梁を割ったものを使っている
 テックワン金物はクレテックより断面が長い梁背に対応しており、大きな特徴として梁を現しとした場合でも、金具が梁から出っ張らないという特徴を持っている。同社では現場での施工を簡略化させるため、構造用集成材とテックワン金物で躯体を構成し、軸間にPFPパネルを取り入れて硬質ウレタンボード62ミリを外張りしている。この現場を含めて3棟の施工実績があり、建て方から上棟までおよそ1日で終えているという。
 建物は在来木造工法による延床面積47.6坪の2階建て。外壁は白の角波鋼板を全面に張りモダンデザインを演出しているが、室内は和風の演出を盛り込んだしつらえなどが見どころの一つとなっている。1階の間取りは6畳間の和室+LD+対面キッチン、階段がある玄関ホールを含めて間仕切りのないオープンな空間。室内全体の柱・梁を現しにした真壁工法を採用、内壁はコテでアクセントをつけたコンパウンド仕上げ、一階の腰壁にトドマツの羽目板を張っている。
 七寸角の大きな大黒柱が映える和室は、基礎断熱を活かして床下を収納スペースとしている。和室を1階の床レベルよりも高くすることで、高さ800ミリの床下空間を確保。畳を開けて床下に潜り込むことができる。給気は外部からダクトで床下へ自然給気し、床下は床下暖房機で加温、冬でも暖かく湿気がこもる心配がない。


造りつけの本棚も集成梁を割ったものを利用した大工の造作
障子照明と桐化粧材
 リビングの照明は丸長の蛍光灯を目隠しする形で、正方形の障子を吊るし、白色灯の光が障子を介して間接照明のように柔らかい光となって室内を照らすという工夫を施している。1階天井は根太レス合板が現しになっている面に、厚さ4ミリの桐の積層材を張って仕上げ、白い桐の質感と間接照明が相まって和風のデザインを演出。北東に面したリビングの開口部は、現しにしている柱と柱の間にサッシをバランス良く配置するために、高さ1500ミリ×幅780ミリの横滑りワイドタイプの特注品サッシを取り入れた。

サッシの寸法に合わせて両側の柱をずらしている
 室内のドア枠と書斎に造り付けた本棚は、集成梁を割ったものを使用している。2階ホールの開口部にもサッシの納まりにこだわり、高さ770ミリ×幅780ミリのサッシを柱と柱の間に納めるために柱の間隔を変更した。この部分の壁は室内側から見た寸法は幅3640ミリで、予定のサッシを配置すると柱と柱の間にうまく納まらない。そこで5本の柱のうち、中心に当たる柱を軸に左右の柱を内側に25ミリずつ寄せることで、予定のサッシを柱と柱の間に納めプロポーションを整えている。
 同社の渋谷社長は「サッシの寸法に合わせて柱をずらしたので大変だったが、見どころがたくさんある住宅が完成した」と話している。

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