躯体外側に断熱板を張ったところ。金属胴縁の中は加工した断熱板を入れている
施工途中のゼオンサイディング。中央に見えているのがウインドロック金具 |
(株)アイテック(札幌市、佐藤潤平社長)は、札幌市内のマンションの大規模修繕で外断熱改修を計画、今月下旬の完工を目指して岩田建設(株)(本社札幌市、岩田圭剛社長)が工事を進めている。マンション外装材に一般的に使われる吹き付けタイルの代わりに樹脂サイディングと特殊樹脂モルタルを採用、どちらも30年以上の高耐久性製品でメンテナンスフリーを狙っている。
築30年のMs改修
外断熱の仕上げにゼオン
施工物件は築30年の11階建て、総戸数約120戸の大規模マンションで、吹き付け塗装にひび割れが入り、そこから雨水などが浸入して鉄筋が錆びるなどの問題があった。また屋上階に近い住民の間から「冬場の寒さ」など訴える声があり、管理組合がアイテックの協力を得て大規模修繕の一環として室内側のサッシ取り替え(アルミ→PVCペアガラス入り)と外付けサッシの追加による開口部の断熱強化、躯体の保護も兼ねてビーズ法ポリスチレン断熱板50ミリによる外断熱工事を計画。この際、外断熱工法では従来の吹き付け仕上げが使えないことから、それに代わる材料として軽量で躯体に負担を与えない外装材を検討、ゼオン化成(株)の樹脂サイディング・ゼオンサイディング・センターロックシリーズと湿式外断熱工法のシュトーサーモ・クラシック(責任施工・(株)ダンネツ)の採用を決めた。
大型台風にも耐える
躯体の外側にビーズ法ポリスチレン断熱板を施工した後、耐久性の高い耐食めっきを施したZAM鋼板(発売元・日新製鋼(株))製の胴縁を300ミリピッチに縦使いで入れ、ゼオンサイディング本体を胴縁にビス止めしている。中高層マンションでは上層階ほど風の影響を受けやすくなるため、通常の樹脂サイディングでは強風で剥がれ落ちる不安もあったが、強風に強いセンターロックを使い、本体のビス止め以外にゼオン化成が販売するウインドロック金具という風対策の専用部材でサイディング本体を固定した。佐藤社長は、「札幌市内で今年9月に記録した50メートル/秒の瞬間風速にも耐えられると思う」と話している。窓まわりは断熱材と一体施工できる樹脂モルタルの「シュトーサーモ・クラシック」を使い、外観に変化を持たせた。
30年は大規模修繕必要ない
外付けサッシの追加や共用部分の補修なども含めた大規模修繕の総工費は、吹き付け仕上げで外断熱改修をしない場合の見積もりとくらべて3割以上高くなったが、佐藤社長は「外装の大規模修繕は今後30年は必要ないと考えており、躯体が保護されて建物寿命も延び、結果として資産価値も上がる」と考えている。
完成予想図。AとD…湿式外断熱塗装 B…ゼオンサイディング C…ガルバリウム鋼板 |
また「公共建築物でゼオンサイディングを採用した経験から小規模な住宅だけに使うのはもったいないと感じていた。はじめての経験でとまどう部分もあったが採用して良かったと思っている」と話しており、岩田建設も今後大型建築物の改修時に提案していきたいと話している。
ゼオンサイディングは、これまで木造戸建住宅を中心に採用され、商品本体の30年保証とシーリングを使わないオープンジョイント方式の施工が評価されて新築、リフォームで採用が増えている。今回は大規模マンションの改修に採用されたことで、用途がさらに広がったと言える。 |