アルミシートの上に、厚さ21ミリの強化石膏ボードを張っている |
(株)川田建設工業(室蘭市、川田寿之社長)では、延床面積100平方メートル以上の店舗併用住宅を室蘭市内の防火地域に建設中だ。六十分耐火構造として認定を受けたツーバイフォー工法の建築物を防火地域に建設するのは道内で初めて。(社)日本ツーバイフォー建築協会とカナダ林産業審議会が取得した耐火構造大臣認定により、延床面積100平方メートルを超える住宅や店舗を防火地域に建設することができるようになった。地域にかかわらず4階建ての住宅や3階建て以上の商業施設、病院、ホテル、高齢者向け施設、保育園、幼稚園を建設することも可能となる。
強化石膏ボード21ミリ+15ミリ
外壁はALCなど 建設中の建物はツーバイフォー工法による延床面積209.7平方メートル、店舗併用の2階建て。
施主との打ち合わせから間取りなどのプランニングは全て同社が行い、耐火仕様の設計と構造計算は(有)ウッズ建築設計事務所(帯広市、山口正所長)が行った。
耐火構造の仕様は大臣認定を取得した仕様書と同じ。外壁は厚さ35ミリのALC板を張り、その上から厚さ15ミリの窯業系サイディングを金具止め。室内側は厚さ15ミリの強化石膏ボードを張り、厚さ0.05ミリのアルミニウムはくを張ってから、さらにその上に厚さ二一ミリの強化石膏ボードを張る。一階の床は土間コンクリート(耐火仕様の対象外)。
2階床の耐火仕様は3層構造。床根太の上から順に15五ミリ実付き構造用合板、15ミリ強化石膏ボード、継ぎ目をアルミテープ止め、21ミリ強化石膏ボード、仕上げフロア材。2階天井は15ミリと12ミリの強化石膏ボード張り。
胴縁の上に厚さ35ミリのALCパネル、その上から窯業系サイディング15ミリを張って仕上げる
室蘭駅近郊の防火地域に建設中の現場。防火地域で延床面積100平方メートルを超える木造の建設は道内で初めて |
鉄骨よりコスト競争力高い
一般的に建てられているツーバイフォー工法と比べ工法面での特別な違いはないが、仕様書通りに施工することと、耐火仕様は厚い石膏ボードを二重張りしているので、その分の重さを考慮して構造計算をすることが重要なポイントだという。「100平方メートル以上の木造の建物を防火地域に建てられるということは、工務店が今まで対応できなかったこの分野の工事を今後は受注できるというメリットにつながる。鉄骨やRC造の建物は仕様や構成によってコストは異なるが、三、四階建ての店舗や事務所のような建物は、耐火構造のツーバイフォー工法の方がコスト競争力があると思う」と山口所長は話している。
根強い木造人気
室蘭駅近くの防火地域には、古い木造の店舗併用住宅がたくさん建ち並んでいるが、ここに住んでいる住民からはRC造や鉄骨造よりも、木造の住宅に住みたいという要望が多いという。それはコストの問題だけではなく、純粋に木造住宅に住みたいという気持ちでもある。
川田社長は「今回の耐火構造を採用すると通常のツーバイフォー工法より一割ほど高くなるが、室蘭の防火地域では自営業を営みながらそこに暮らしている人も多く、防火地域だけど木造で建ててほしいという要望が以前からあった。同地域に鉄骨造で施工した住宅の施主からは、今回の物件を見て“うちも木造にしたかった”と言われた。
施工上は、耐火構造の仕様により室内側の床、壁、天井、階段など至るところを強化石膏ボードで2重張りする手間がかかるが、これも慣れの問題」と話している。
耐火2×4工法建築の流れ
ツーバイ協が取得したツーバイフォー工法耐火建築物を建てる場合の流れは次のようになる。
設計者(日本ツーバイフォー建築協会、以下協会指定講習会受講修了者に限る)は協会が定めた「枠組壁工法耐火建築物標準仕様書」と「枠組壁工法耐火建築物標準詳細図」を協会から入手し、それに基づいて耐火仕様の設計を行う。
耐火構造認定を取得したツーバイフォー工法の構造図
|
設計が完了した段階で、確認申請書に添付する耐火構造・国土交通大臣認定書(写し)の発行を協会へ申請し入手する。建築確認には、耐火構造認定書、枠組壁工法耐火建築物標準仕様書、枠組壁工法耐火建築物標準詳細図を添付する。
設計者は建築確認許可後、確認許可番号を協会に報告する。
耐火構造検査員は設計図書に基づき、「自主工事検査チェックリスト(耐火建築物編)」を用いて耐火建築物に関わる施工を確認・検査する。なおこのチェックリストは、特定行政庁ならびに指定確認検査機関から耐火建築物に関わる施工状況報告の提出を求められた場合、報告書として提出することができる。
施工者は「自主工事検査チェックリスト(耐火建築物編)」を設計図書とともに10年間保管する。 |