平成16年12月15日号から
道内初の耐火2'×4'
室蘭市、川田建設が防火地域に施工

アルミシートの上に、厚さ21ミリの強化石膏ボードを張っている
 (株)川田建設工業(室蘭市、川田寿之社長)では、延床面積100平方メートル以上の店舗併用住宅を室蘭市内の防火地域に建設中だ。六十分耐火構造として認定を受けたツーバイフォー工法の建築物を防火地域に建設するのは道内で初めて。(社)日本ツーバイフォー建築協会とカナダ林産業審議会が取得した耐火構造大臣認定により、延床面積100平方メートルを超える住宅や店舗を防火地域に建設することができるようになった。地域にかかわらず4階建ての住宅や3階建て以上の商業施設、病院、ホテル、高齢者向け施設、保育園、幼稚園を建設することも可能となる。

強化石膏ボード21ミリ+15ミリ
外壁はALCなど 建設中の建物はツーバイフォー工法による延床面積209.7平方メートル、店舗併用の2階建て。
 施主との打ち合わせから間取りなどのプランニングは全て同社が行い、耐火仕様の設計と構造計算は(有)ウッズ建築設計事務所(帯広市、山口正所長)が行った。
 耐火構造の仕様は大臣認定を取得した仕様書と同じ。外壁は厚さ35ミリのALC板を張り、その上から厚さ15ミリの窯業系サイディングを金具止め。室内側は厚さ15ミリの強化石膏ボードを張り、厚さ0.05ミリのアルミニウムはくを張ってから、さらにその上に厚さ二一ミリの強化石膏ボードを張る。一階の床は土間コンクリート(耐火仕様の対象外)。
 2階床の耐火仕様は3層構造。床根太の上から順に15五ミリ実付き構造用合板、15ミリ強化石膏ボード、継ぎ目をアルミテープ止め、21ミリ強化石膏ボード、仕上げフロア材。2階天井は15ミリと12ミリの強化石膏ボード張り。



胴縁の上に厚さ35ミリのALCパネル、その上から窯業系サイディング15ミリを張って仕上げる


室蘭駅近郊の防火地域に建設中の現場。防火地域で延床面積100平方メートルを超える木造の建設は道内で初めて
鉄骨よりコスト競争力高い
 一般的に建てられているツーバイフォー工法と比べ工法面での特別な違いはないが、仕様書通りに施工することと、耐火仕様は厚い石膏ボードを二重張りしているので、その分の重さを考慮して構造計算をすることが重要なポイントだという。「100平方メートル以上の木造の建物を防火地域に建てられるということは、工務店が今まで対応できなかったこの分野の工事を今後は受注できるというメリットにつながる。鉄骨やRC造の建物は仕様や構成によってコストは異なるが、三、四階建ての店舗や事務所のような建物は、耐火構造のツーバイフォー工法の方がコスト競争力があると思う」と山口所長は話している。

根強い木造人気
 室蘭駅近くの防火地域には、古い木造の店舗併用住宅がたくさん建ち並んでいるが、ここに住んでいる住民からはRC造や鉄骨造よりも、木造の住宅に住みたいという要望が多いという。それはコストの問題だけではなく、純粋に木造住宅に住みたいという気持ちでもある。
 川田社長は「今回の耐火構造を採用すると通常のツーバイフォー工法より一割ほど高くなるが、室蘭の防火地域では自営業を営みながらそこに暮らしている人も多く、防火地域だけど木造で建ててほしいという要望が以前からあった。同地域に鉄骨造で施工した住宅の施主からは、今回の物件を見て“うちも木造にしたかった”と言われた。
 施工上は、耐火構造の仕様により室内側の床、壁、天井、階段など至るところを強化石膏ボードで2重張りする手間がかかるが、これも慣れの問題」と話している。

耐火2×4工法建築の流れ
 ツーバイ協が取得したツーバイフォー工法耐火建築物を建てる場合の流れは次のようになる。
 設計者(日本ツーバイフォー建築協会、以下協会指定講習会受講修了者に限る)は協会が定めた「枠組壁工法耐火建築物標準仕様書」と「枠組壁工法耐火建築物標準詳細図」を協会から入手し、それに基づいて耐火仕様の設計を行う。

耐火構造認定を取得したツーバイフォー工法の構造図
 設計が完了した段階で、確認申請書に添付する耐火構造・国土交通大臣認定書(写し)の発行を協会へ申請し入手する。建築確認には、耐火構造認定書、枠組壁工法耐火建築物標準仕様書、枠組壁工法耐火建築物標準詳細図を添付する。
 設計者は建築確認許可後、確認許可番号を協会に報告する。
 耐火構造検査員は設計図書に基づき、「自主工事検査チェックリスト(耐火建築物編)」を用いて耐火建築物に関わる施工を確認・検査する。なおこのチェックリストは、特定行政庁ならびに指定確認検査機関から耐火建築物に関わる施工状況報告の提出を求められた場合、報告書として提出することができる。
 施工者は「自主工事検査チェックリスト(耐火建築物編)」を設計図書とともに10年間保管する。

患者に一時避難場所を
CSセミナー 伊豆の転地療養住宅紹介

尾竹氏
 NPO法人化学物質過敏症支援センター(CSセンター)と旭川市の主催による「CS(化学物質過敏症)セミナー建築塾」が4日、旭川ときわ市民ホール・サンアザレアで開催され、横浜国立大学大学院助教授中井里史氏と建築士の尾竹一男氏(尾竹一男建築研究所代表)が化学物質過敏症の治療を目的とする転地療養住宅の建築手法について講演。その中で、このほど静岡県伊豆市内に完成した転地療養住宅のプランと建築材料に関する説明を尾竹氏が行った。要旨は次の通り。

四方から空気を取り込める設計とした共同住宅。右手前は厨房棟

開放的な空間構成
屋外で処理する換気設備

  今回、静岡県の中伊豆で、化学物質過敏症患者などを対象とする転地療養居住施設「脱・化学物質コミュニティー、あいあい姫の湯」の中の賃貸共同住宅2棟と個人住宅1棟が完成しました。
 建物は在来工法で施工され、温暖で空気のきれいな高地という環境を生かし、建具を開ければ屋外と同じ空気環境が得られる開放的な空間構成を基本としています。

無垢材と漆喰で内装を仕上げた室内
 共同住宅は四方から空気を取り込めるように縁側のある大きなテラスのほか、坪庭やドライエリア、小窓などを配置。換気設備は室内ではなく屋外に設置し、外から汚染空気を引き抜く形にしました。トイレの個別換気は比重の重い汚染空気を効率よく排出するため低い位置に付けています。
 構造体は天然乾燥した天城産の杉、外壁は土塗り壁と漆喰壁の組み合わせ。内装は床がイタヤカエデのフローリング、壁が漆喰、天井が杉板張り。化学物質をほとんど含まない自然素材を使用したほか、木材を無添加のラップで梱包して現場に直送するなどの措置をとり、流通過程での汚染も防いでいます。


化学物質による人体への影響が少ないステンレスを多用した厨房

大理石・ホーロー・ガルバリウム鋼板の内装仕上げの部屋。そのまま洗える
水廻りはステンレス
 また、配管から溶け出す化学物質による水の汚染を防ぐため、給水・給湯管は塩ビ管ではなくステンレス製。シャワーヘッドやハンドルなどシャワー室の部材もステンレス製を使用しています。日本ではPL法施行以来、やけどしにくい樹脂製の浴室部材が一般的ですが、ヨーロッパでは化学物質による人体への影響が少ないステンレス製が主流。今回使った部品もヨーロッパの製品です。
 このほか、共同住宅は床に大理石、壁にホーロー、天井にガルバリウム鋼板を使って、そのまま洗える部屋を1室ずつ設けています。対策は最大公約数 これらの仕様は万人に対応できるものではなく、あくまで最大公約数的なもの。完璧に対応するには、症状に合ったプランをそれぞれ設定することが必要でしょう。
 しかし、化学物質過敏症患者の多くは新築が原因で発症。ローンの上にさらにまたローンを背負って再び新しい住まいを手に入れるのは非常に困難です。患者の置かれた状況を考えると、一時的な避難場所にせよ、化学物質の影響の少ない環境を一つでも多く確保することが重要だと思います。
 個人住宅については、仕様は個別対応で、将来的には個人住宅エリアを拡張し、この地に永住する人達の手で本当の意味でのコミュニティを作り上げてもらえればと考えています。
           *               *
 今回のセミナーでは横浜国立大学大学院助教授の中井里史氏が旭川で運営されている転地療養住宅における入居者の退居後アンケート調査結果について基調講演を行い、木のにおいやカビなど生物的要因による症状の悪化や患者間の信頼関係を築くことの難しさなど新たな問題を提起。その上で「万人に対応可能なハードを造ることは現実的に不可能。パターンの違う転地療養住宅を全国にたくさん造り、患者自身が自分に合った環境を選択しやすいようにする必要がある」と訴えた。

発泡エースを発売
光洋化学 用途を広げた気密テープ

発泡エースABW。左が25ミリ幅、右が50ミリ幅品
 光洋化学(株)は、アクリル系気密・防水テープ「エースクロス」シリーズに発泡体を一体化して用途を広げた製品を開発、「発泡エースABS」、「発泡エースABW」と「発泡エースEFS」としてこのほど発売した。ABSは、高品質ポリエチレン発泡体を柔らかく接着耐久性の高い気密施工用に改良したアクリル糊と一体化した片面接着テープ。ABWはABSの両面接着バージョン。いずれもグラスウールボードや発泡系断熱板の貼り合わせに使用する。厚さは1ミリで、長さは10メートル、幅は25ミリと50ミリの二種類。
 また、EFSはEPDMゴム独立気泡発泡体を使っているので水密性が高く、また不陸への追従性があり、窓まわりの気密防水などに特に適しているという。基材は寸法安定性の高いフラットヤーン(合成樹脂繊維)を採用。この基材がEPDMゴムの伸びを抑えて寸法安定性を高める。さらに手切れ性がよくなるなどのメリットもある。厚さは1.5ミリ、30ミリ、5ミリの3種類、幅は25ミリ、50ミリの2種類。長さは1.9メートル。
 なお、同社ではキッチンパネルや内装用パネルの仮止め用に発泡エースPW、同PFWも開発、来年早々にも発売する予定。
 販売価格など、問い合わせは、同社(東京都渋谷区笹塚1-60-2 エスティ213F、Tel.03・3379・5361)へ。

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