平成16年11月5日号から
造林から住宅まで見学
十勝支庁 バスツアーでカラマツを啓蒙

参加者はスコップ片手にカラマツ植林に汗を流した
 十勝支庁では、10月16日、「カラマツ王国とかち 森と住まいのバスツアー」を開催、30名の参加者は森を育てる大変さを知り、その森林から生まれた木を製材する工場、そして実際にカラマツで建てた住宅を見学するなど、地域で生産されたカラマツを有効に活用する「十勝らしい家づくり」について理解を深めた。

森林育成の大変さ  このバスツアーは今年が3回目。十勝支庁が平成14年度から実施している「カラマツ家づくり推進事業」の一環として地産地消の家づくりを一般住民にPRするため行っている。今年からは建築関係者にも関心を深めてもらおうと案内を送ったところ、30名中8名が工務店などの住宅建築関係者だった。
 一行は、午前9時に十勝支庁前を出発、バスに乗って最初の目的地である、幕別町にあるカラマツ林の植林場所を目指した。植林場所は、平成14年の台風21号で強風の被害を受けたカラマツ林で、森林管理会社の北海道ニッタ(株)が所有している。現地到着後、参加者は植林方法の簡単な説明を受けた後、スコップなどを借りて思い思いにカラマツの苗を植えた。簡単そうな作業だが、草の根などが土の中にぎっしりとあり、スコップで土を掘るのはそうした草の根を切りながらになるので力が必要で、意外と大変。それでも予定より多くの苗を植えることができ、時折肌寒さも感じる天気だったが汗をかく人も多かった。
 次に同社が所有する同町内のカラマツ林を見学、同社取締役の武田業務部長の話を聞きながら、森林を歩いた。この林はカラマツそのものについて研究することを目的とした林で、樹齢は50年以上。このまま今後も伐採しないという。樹高は20メートル以上で、直径44センチに成長したカラマツもある。参加者からは、「売るとしたら原木は1本いくらになるのか」などの質問が寄せられた。ちなみに原木は8~9000円/立方メートルで、成長しても一本せいぜい0.8立方メートルぐらいなので、1本7千円以下にしかならないという。
 信州のカラマツは杉よりも高い値段がつくこともあるという話を聞き、複雑な気持ちで林を後にした。

大正木材からの説明を熱心に聞く。製材後の用途などについて質問が飛んだ。

梁、柱、階段部材などほとんどカラマツを使用した芽室町に建設中のカラマツ住宅。
職人技の製材見学
 お昼前に、中札内村にあるカントリーレストラン「ウェザーコック」(風見鶏の意)に到着、地元食材をいかした昼食をいただいた後、レストランオーナーが最近建てた道産材を使った自宅を見学した。この住宅は古田建設(株)(本社帯広市)の設計・施工で、外装はトドマツを全面に貼り、中はカラマツ集成材の梁、カラマツ床合板などを使用している。
 午後からは、地元カラマツ材を実際に製材しているところを見学するため、帯広市大正町にある大正木材を訪れた。ここでは、住宅や家具用に地元カラマツ材やナラ材を製材しており、今回は直径50センチのカラマツ大径木を実際に製材するところを間近で見学した。
 長さ7メートル以上ある回転鋸で、巨大なカラマツ丸太が熟練した職人の手で次々と製材されていく様子に参加者は熱心に見入っていた。
 最後に、芽室町にある完成間近のカラマツ住宅現場へ行き、内部を見学した。
 この住宅は(有)陽建築工房(札幌市)が設計、紺野建設(株)(十勝管内清水町)が施工している。構造材、床、壁、天井材に幅広くカラマツ材を使用しており、階段はカラマツ3層の積層パネルを使っている。これはカラマツ製材を横に並べて幅はぎして単板にし、繊維方向を変えた三枚を貼り合わせた30~36ミリ厚のパネル。

参加者は好評価
 ツアー後のアンケートでは、製材工場の見学が好評で、今後家を建てるとしたらぜひカラマツを使ってみたいと答えた人が全体の九六%にのぼった。「カラマツに対するイメージが変わった。来年も参加したい」と答える人もおり、ツアーを企画した同支庁経済部林務課では、「来年も引き続きこのツアーを企画して活動を継続したい」と確かな手応えを感じたようだ。

Q1住宅を建設へ
新住協北海道 来年秋メドに全道一斉公開
 新住協札幌支部(武部英治支部長、武部建設(株)専務)が今年度と来年度の2ヵ年事業として進めている「Q1プロジェクト」の骨格が徐々にまとまり、札幌支部にとどまらず全道運動として来年のイベントに向け勉強会が進んでいる。
 Q1プロジェクトとは、Q値(熱損失係数)1ワット/平方メートル・Kを1つの目標としながら、それぞれの地域で次世代省エネルギー基準のQ値1.6ワットの住宅に必要な暖房エネルギーを半減する住宅を提案するというもの。
 室蘭工業大学鎌田紀彦教授の研究室が開発したQ値・暖房灯油消費量計算ソフト「Qpex」を使い、各社が“Q1”を施主に提案、実際に住宅を建設する。Q1の住宅を来年の秋頃をメドに一斉公開し、省エネ・CO2の削減と新住協としての家づくりをPRする考えだ。
 9月15日には第1回の打ち合わせ会合が開かれ、10月末に開かれた4回の会合の中で断熱スペックや灯油消費量試算を行い、さらに細かな納まりやコスト試算なども行ったうえでユーザーを募集することになる。
 断熱スペックの一例は別表の通りだが、この中で、現在のところポイントになっているのは開口部の断熱性能と換気による熱損失。

壁150ミリ断熱
 まず壁の断熱は高性能グラスウール16Kまたは24Kの充てん100ミリプラス、外壁付加断熱としてグラスウールボード45ミリ程度。天井がセルロースファイバー300ミリ、基礎が押出スチレンフォームB3種60+60ミリ。
 窓は木製トリプルアルゴンLow-Eガラスに、ブラインド代わりに断熱性能の高いハニカムサーモスクリーンを設置する。換気は第一種熱交換換気。
 この仕様でQ値は間取りにもよるがおよそ1.0ワット。
 換気については、熱交換換気を使わずに第三種換気とした場合は、そのほかが同じ仕様でもQ値は1.2ワット程度となる。熱交換換気と同様に換気排熱から熱回収するヒートポンプシステムなども考えられる。ヒートポンプシステムの場合、現状のQ値計算方法では熱損失の低減というかたちでQ値評価をできないが、暖房エネルギーの削減は可能になる。
 窓についてはプラスチックサッシの在来商品ではかなり厳しく、Q1の先進国、スウェーデン製の木製サッシが標準的仕様となりそう。さらに断熱戸のように夜間の熱損失を抑える目的で、ハニカムサーモスクリーンを設置するとQ値を0.05程度低減できる。
 プロジェクトではQ値1ワットを1つの目標としながら、いくつかの断熱仕様を検討し、コスト試算も踏まえてユーザーに提案する考えだ。
 参加企業は札幌のほか全道の会員にも広がる見込み。

鎌田教授を交えて行われた会合の様子

Q1住宅の断熱仕様(例)
部 位
断熱仕様
断熱仕様2
天 井
CF300mm  
高性能GW16K100mm GWボード45mm外付加
基 礎
押出B3種外側60+内側60mm  
木製トリプルアルゴン
Low-Eガラス
ハニカムサーモ
スクリーン設置
換 気
第一種熱交換
CF:セルロースファイバー GW:グラスウール

来年から本格販売
ウオサブジャパン 取付け簡単な電気パネル

モデルハウスのリビングに取り付けたウオサブオイルラジエター。設備工事が必要ないので取り付け工事が簡単
 ウオサブジャパン(株)では、スウェーデン製の電気暖房システム「ウオサブオイルラジエター」の総販売元として輸入・販売を開始した。来年から道内で本格販売を始める。同製品は熱源が電気であるためボイラーが不要であることや、取り付け工事が簡単に行えるといったメリットを備えている。
 スウェーデンから輸入されたウオサブオイルラジエータは、温水パネルラジエータとほぼ同じ形状をしており、内蔵されている電気ヒーターで内部のオイルを加熱し、パネルからの自然対流と輻射熱で室内を暖房する仕組み。本体の右側に付いているサーモスタットユニットには、温度を調整するサーモスタットハンドル、内蔵ヒーターが作動中に点灯するインジケーターライト、過熱防止機能、凍結防止機能を装備。
 製品そのものはスウェーデンで一般的に使われているものを、ISO9001、2000を取得し、S-JET認証登録工場であるスウェーデンの工場で北海道向けに生産。230V仕様を200Vに変更し、パネル本体の規格寸法も道内の住宅向けに改良されている。また、EN規格(ヨーロッパ規格の略称)の一つに含まれているSEMKO(セムコ、スウェーデン電気機器試験認証機関)の認証を受け、SEN及びCE/CB基準による認証も受けており、これらの認証試験を全てクリアした製品が日本に輸入されている。放熱量の表示もセムコの基準に準じている。

1…サーモスタットハンドル、2…インジケーターライト、3…リセットボタン、4…オンオフスイッチ
 施工は、200Vの電気工事とパネル本体の取り付け工事のみ。熱源が電気のため、ボイラーの設置や温水配管などの設備工事が必要ない。
 電力はホットタイム22を使用。給湯と調理も電化した場合の年間光熱費は、灯油セントラルよりやや高い程度。
 製品は全部で20パターンのサイズをラインナップ。パネル本体の設計価格は、高さ300ミリ×幅1600ミリ×奥行き60ミリ、重さ19キログラム、ヒーター容量940ワット、放熱量808キロカロリーで9万9750円(税込)。住宅1棟に対しての価格の目安は、パネル代、専用電気工事、取り付け費を含めて温水セントラルに近い価格になる見通し。製品にはメーカーの5年保証が付いている。
 同社では今年中にパネル400枚を販売し認知度を高め、来年からの本格販売ではパネル6000枚・600セットの販売を予定している。
 設計・積算など詳しい問い合わせは同社(札幌市東区北14条東14丁目2-1、Tel.011・751・2121)まで。

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