平成16年10月15日号から
断熱化で温室効果ガス増加
慶応大 村上教授 フロン対策が重要

講演する村上教授
 地球温暖化対策の枠組を決めた京都会議(COP3)のなかで、日本はCO2に代表される温室効果ガスを削減することを約束しているが、住宅部門では新築住宅のほとんどが次世代省エネ基準を達成しても1990年比では削減は不可能。さらに発泡系断熱材に使われているフロンガスの漏えいにより、温室効果ガスの発生量は逆に増えてしまうという。慶應義塾大学村上周三教授がこのほど発表したもので、断熱基準の強化とともに発泡系断熱材のノンフロン化が急務であるとしている。今年は温暖化対策の政策を見直す年になっており、政府はこれらの報告をもとに年度内にも断熱基準強化とフロン対策について動き出すものと見られる。

90年比で9%増


会場は多くの受講者で埋まった

フロン漏えいを考慮した温室効果ガス排出量の予測
(2010年時点で新築住宅の次世代基準適合率90%)
 村上教授の報告は、去る9月28日、環境省と建築環境・省エネルギー機構の主催で東京都内で開かれた「ノンフロン断熱材セミナー」での講演。
 地球温暖化対策はCO2の削減が話題になることが多いが、フロンガスはCO2の何千倍もの温室効果をもっているものもあり、その対策は重要だ。しかし一口にフロンといっても種類はさまざまで、温室効果も異なるためわかりにくい。
 村上教授の研究は、発泡系断熱材に使われている数種類あるフロンがこれまでどのように使われているかを調べた上で、断熱材として住宅に使われているうちにフロンがどのくらい漏れ出すかも調査。発泡系や繊維系など断熱材の使用比率を推計した上でCOP3の基準年である1990年比で2010年時点の温室効果ガス排出量を予測した。
 それによると、新築住宅の次世代基準適合率が現状からなだらかに上昇したと仮定し15%と想定すると、温室効果ガスは9.9%増。次世代基準適合率を90%と仮定しても9.1%増に達する。さらに築30年以上の既存住宅の五割を次世代基準に適合させたとしても5.9%増になり、1990年比では減らすことができない。
 これらのシミュレーション結果にフロンの漏れ出しを加味すると、問題はいっそう深刻になる。まず次世代基準適合率が15%の場合は温室効果ガスは14.4%増、適合率90%の場合は何と18.7%増となり、断熱化するほど温室効果ガスの排出量が増えることになる。これは断熱材の使用量に比例して漏えい量も増えるからだ。
 そこで発泡系断熱材に使用するガスをノンフロン化したと仮定して再度シミュレーションする。そうすると、次世代基準適合率90%の場合、温室効果ガスは0.4%減となり、既存住宅の断熱改修と廃棄時のフロン回収をともに5割行ったと仮定すると3.1%まで減らすことができる。

ノンフロン化が急務
 村上教授は現状の温暖化対策の不備を次のように指摘した上で、今後は1.新築住宅の断熱強化 2.既存住宅の断熱改修―による暖冷房エネルギー・CO2の削減とともに、 3.発泡系断熱材のノンフロン化 4.廃棄時のフロン回収―などのフロン対策が重要になると結んでいる。
 現状の温暖化対策の不備はフロンの漏れ出しの問題。フロンの漏れ出しは断熱材の種類や使用しているフロンの種類、さらには使用地域の外気温度によってその量が異なるため単純ではないが、漏れ出しの総量は住宅断熱に関する温室効果ガス排出量の2割を占めており、この点がとても重要になるとしている。
 一方、製造時のCO2排出はごくわずかで、住宅断熱に関しては高断熱化とフロン対策が今後の課題となりそうだ。
 ※温暖化対策とフロンの問題については次号以降、詳しく連載で紹介する。

無落雪屋根に2仕様
住宅保証機構 今月から北海道基準 フラット、M型とも認める
 (財)住宅保証機構では今年度から性能保証住宅設計・施工基準を改訂、木造住宅の屋根は「勾配屋根としなければならない」と定め、木造のフラット屋根を禁止。10月から新基準を適用しているが、北海道については特記仕様を「北海道版」として用意。この中で無落雪屋根としてM型無落雪とともにフラットルーフを認めた。
 まずM型無落雪は下図の通りで、住宅金融公庫の仕様書分冊北海道版などと大きな違いはない。主なポイントは1.屋根板金と横樋とのつかみの部分をしっかり施工する(この部分からのスガモリが多い) 2.横樋を途中で継がない 3.横樋まわりと野地下に断熱材を施工する 4.横樋の下は小屋裏換気を妨げないよう高さを確保する 5.縦樋は階下にまっすぐ下ろす(小屋裏等で横引きしない)。
 次にフラットルーフは、当初はフラットルーフを禁止し、M型または勾配屋根だけとする考えだったが、じゅうぶんな設計・施工配慮があればスガモリ事故を避けられるほか、道東や道北で広く普及している点も踏まえ、条件付きで認めることになったもの。
 フラットルーフの定義は、十分の一未満の勾配とし、それ以上は勾配屋根とする。
 基準は1.材質は塗装溶融亜鉛メッキ鋼板(同等以上の鋼板) 2.葺き方は立平葺き(同等以上の防水性能) 3.パラペットを設ける場合、立ち上がりは原則水上部で120ミリ以上 4.勾配は100分の5程度以上 5.シーリングは適切な個所に連続して施工 6.天井及び屋根の下部を適切に断熱 7.積雪時に屋根面にたわみが生じないよう根太および下張り合板等の仕様は地域の積雪量に応じたじゅうぶんなものとする―の七点。
 このうちポイントになるのは4.の水勾配と⑦のたわみの問題。特にたわみについては、積雪荷重によってたわみが発生してしまうと水勾配がとれなくなるため、たる木や母屋のピッチを十分に検討し、安全な設計をしてほしいとしている。たわみがなければ勾配については水勾配が確保できる程度で設計してよい、という考え方だ。
 このほか小屋裏の換気と天井面の断熱・気密性、継ぎ手の防水材などについては十分に配慮してほしいとしている。


釧路20日など講習会を実施
 なお、同機構では改訂された性能保証住宅設計施工基準・標準仕様の講習会を開催中で、今後の予定は次の通り。
 釧路・20日(水)釧路キャッスルホテル(大川町2)▽帯広・21日(木)寿御苑(西7条南6)▽函館・11月9日(火)函館建築工業協組研修室(高盛町19)▽胆振日高・11月10日(水)室蘭市中小企業センター(東町4)。時間割は共通で午後1時から4時まで。内容は1.性能保証住宅設計施工基準・標準仕様と同北海道版 2.住宅金融公庫の証券化支援事業 3.住宅保証制度。講師は同機構のほか公庫北海道支店職員、住宅保証制度の事務機関。
 問い合わせは(財)北海道建築指導センター住宅保証部へ(Tel.011・271・9980)。

通し吊り子、防水パッキンなどによって防水性を高めたフラットルーフの屋根例
((株)キムラ・ヤネ興業カタログから)



M型無落雪屋根の施工例〈参考図〉

家庭用セキュリティ
三和温調工業 手頃な価格で多機能

メインユニット。上部のグレー部分から赤外線が出る
 三和温調工業(株)(札幌市)は、このほど家庭用セキュリティシステム「スピードコール」(開発元・エイム(株))の北海道総代理店となり販売を開始、販売代理店も現在募集中だ。
 スピードコールは、赤外線センサーの付いたメインユニットと、マグネットセンサー5セット、専用リモコン、センサー接続コード、ACアダプター、分配器付き電話コードなどが同梱されている。施工はリビングなどに専用ブラケットをネジ止めし、そこにメインユニットをひっかけて固定する。あとは窓、ドアなどにマグネットセンサーを取り付け、センサーとメインユニットの間は専用接続コードでつなぐ。センサーは最大15個まで増設可能。
 メインユニットの赤外線センサーは人が横切ると作動、マグネットセンサーは窓の開閉やドアの開閉を感知する。これらセンサーが作動すると、メインユニットから大音量のサイレンを鳴らして侵入者を威嚇、さらに自動的に五ヵ所まで一般電話や携帯電話にダイヤルしてつなぎ、メインユニットにあるマイクから室内の様子がモニターできる。また「警察呼ぶぞ」などと呼びかけることも可能。ダイヤル先が留守電や話し中の場合は自動的に別の登録番号にダイヤルする。
 使い方は、リモコンやメインユニットなどで外出モードに切り替えるとセキュリティシステムが作動し、在室モードにするとセンサーは作動しなくなる。メインユニットはチャイムモードに切り替えることが可能で、この場合は人の出入りのモニターとして使える。在室モードのまま外出しても、携帯電話や公衆電話を使って自宅に電話をかけ、あらかじめ登録した暗証番号を入力することで外出モードに切り替えられる。セキュリティシステム以外にも寝たきりの方の非常用連絡装置として使用できる。
 同社ではこのほか、防犯、火災、救急など様々な緊急事態に対応できる総合的なセキュリティシステム「鬼に金棒!」を独自に企画、販売を開始した。これは自動通報付きコントローラーと、無線式人感センサー、無線式ドアセンサーなどをワンパッケージにまとめたもので、センサーが無線式のため配線が必要なく、またセンサーの追加数も多く、ガラス破壊センサーや人感ライト、サイレン、煙感知器などと連動する。「スピードコール」の上位機種として売り込みたい考え。

セットの同梱物。写真左からリモコン、マグネチックセンサー、警報装置ステッカー。このほか、ブラケットやネジ、コードなどが付属
 同社では、「スピードコールは警備会社と通報があったときだけ駆けつける契約を結べば、通報後の対応を警備会社に任せることも可能」と話している。「スピードコール」の希望小売価格は6万3800円(税別)だが、同社では3万9800円(税別、取付費別)で販売している。「鬼に金棒」は標準セットで希望小売価格が15万6000円(税別、取付費別)。
 問い合わせは、同社特機部(札幌市東区北48条東19丁目2、Tel.011・783・6760)へ。

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