平成15年9月15日号から



極寒冷地で排気が結氷
フード形状や換気量の多さなどが原因か?

写真1・換気の排気フード上下の壁に白い霜が放射状に付着している


写真2・排気フード下側の壁をクローズアップしたところ。
サッシにも霜が見える
 北見や帯広、旭川など道内でも非常に寒さの厳しい地域では、冬期に排気が凍って外装材に霜のように付いている住宅を見かけることがある。これは湿度の高い排気が急激に冷やされることにより起こるもので、昔から確認されていたが、より住宅の耐久性が重視されるようになった今日では、外装材などへの影響を懸念するビルダーも少なくない。そこでこの現象の原因と対策などについてまとめた。

壁面温度低下で発生
高湿な空気が瞬時に凍結

 写真1・2は北見市に隣接する訓子府町に建設中の住宅を昨年12月21日に撮影したもの。延床面積は約60坪で、一部の設備を除いて工事は修了しており、第三種換気システムを運転している状態。設計換気量は300立方メートルと規模が大きいだけにかなり多い。
 北側の外壁部分に付けた排気フード上下の外装材には、明らかに排気が凍ったと思われる白い霜が付着しており、近くで同時期に竣工した住宅でも見られたという。同町の気象観測データはないが、隣接する北見市のデータによると、当日は最高気温マイナス2.9℃、最低気温マイナス19.3℃で、同月6日から真冬日が続いていた。
 この現象について道立北方建築総合研究所環境科学部居住環境科の伊庭千恵美研究員は、「積雪が少なく、放射冷却などによる冷え込みが厳しい地域で見られる現象。北見地方は晴天率が高いので夜間の放射冷却量も多く、建物の外表面温度が外気温より下がることが多いので、排気に含まれる水蒸気が壁表面で結露し、瞬時に凍結する。建物側の原因より、気象条件の影響のほうが大きいと思われ、新築・既築に関係なく起こると考えられる」という。
 その後、本紙で調べたところ、帯広や旭川でも同じ現象が確認されており、新築直後で室内の湿度が高い時や住宅の換気量が多い場合、浴室の換気がセントラル換気システムに組み込まれている場合に、排気フード廻りで起こることがあるそうだ。また、排気フードの形状が影響しているとの見方もある。

写真3・帯広のビルダーの対策例。レンジフードの上部に三角屋根を造り、軒先から1.8m位の高さで排気している。破風板と妻壁もトタン仕上げ
凍害起こす恐れも
帯広のビルダーが対策

 問題なのは、この現象によって何らかの障害が起こることはないのかということ。この点について北総研・伊庭研究員は、長期にわたって霜が付着すると、微細なヒビの発生やシーリングの劣化によって水が外装材に浸透し、凍害を起こす恐れがあると指摘する。
 北見や旭川ではこの現象によって障害が起きたという話は聞かないが、帯広では凍害の一因になったこともあり、排気フードとその施工方法を変えたビルダーもいるほか、排気が壁面から離れるよう、排気フードに対策を施した換気メーカーがいることもわかった。
 写真3の住宅はツーバイフォー工法で施工しており、排気の方角・位置・出し方に配慮。北西の季節風で排気が壁に押し付けられないよう、東または北から排気するようにし、平屋など屋根たる木が軒先にかかって外壁に排気フードを設置できない場合、寄棟屋根であれば雪割りの三角屋根を造り、その妻壁部分から排気している。ファン本体からの配管距離は長くなることが多いが、設計段階から配慮しているので換気量は確保されており、システムの抵抗は大きくなるが、それでも確実に排気が抜けるほうが良いと、施工したビルダーは語っている。
 このように排気の霜付きを防ぐには、地場の気候風土を考慮した換気設計を行い、耐凍害性に優れた外装材と排気が外壁にかからない排気フードを使うほか、フードと外装材の取り合い部分でよく起きる凍害にも注意し、フード部分にジョイントがこないサイディングの張り方も必要。浴室対策としては、使用前後に浴槽のフタを開けっ放しにしないなど、住み手の対応も大切だ。
 また、改正基準法での機械換気義務化により、今後厳寒地でこの現象が増えることも考えられるだけに、道内の研究機関には、より詳しい実態調査・研究を期待したい。

新在来木造構法新マニュアルの真意
床の防湿シートは結露を起こす?

マニュアル執筆者の鎌田紀彦助教授
 在来軸組の気密化標準工法となっている新在来木造構法の新しいマニュアルの中で、床断熱の場合の床の気密は下地合板などのボードでとり、床に防湿シートを張ってはいけないと書かれていることから、現場で混乱が起きている。この点について、同工法の開発者であり、マニュアル執筆者でもある室蘭工業大学・鎌田紀彦助教授に取材した。

「シートを使ってはいけない」と記載
 このマニュアルは昨年新住協から発行された「新在来木造構法マニュアル2002」。先張りシートなどを使う従来のシート気密工法に加え、主に外壁下地合板で気密層を形成するボード気密工法の提案など、新しい研究成果が取り入れられている。
 今回問題になっているのはボード気密工法・床断熱の場合の床の気密工法。マニュアル37ページによると「床断熱の際は、床に防湿シートを張ると結露する可能性があるため、床には防湿シートを張ってはいけない」と記載されている。
 疑問は、『シートを張ったら結露するから使ってはダメだということは、これまで施工してきた工法がすべて誤りになるということか』という切実な現場の声だ。
 マニュアルをよく見ると、シート気密工法についても床の気密工法として床下地合板が採用されており、シートは参考図から省かれている(図参照)。
 床下地合板を気密層にした場合はシートを使わなくてもいいというのなら納得できるが、使うと結露するというのであれば、重大な問題だ。鎌田先生の答え
「結露のほか、水漏れも考え、ない方がよい」 鎌田助教授によると、床の断熱材のたれ下がりなどがなく完全に施工されていれば、結露は発生しない。つまりこれまでのシートを使った工法が間違っていたわけではない。
 ただその場合でも、できれば床下地を気密層とし、防湿シートの施工はやめたほうがよいという。その理由はこうだ。
 1.基本的に床の断熱・気密施工は複雑で、施工ミスが起きやすく、その時は結露の危険がある
 2.床面を非透湿性のクッションフロアなどで仕上げた水廻りで、床に大量の水をこぼすと、その水がクッションフロア下にしみ込み、防湿シートの上で逃げ場を失って木材の腐れを呼ぶ可能性がある
 3.床を従来の厚さの畳で仕上げる場合、その断熱性によって畳下の温度が下がり、カビが生え結露しやすくなる
 4.床面の防湿については、床下地合板を気密層として使い間仕切壁の下部なども気密層を連続させれば、室内からの透湿による床組み木材の結露・腐れは心配ない。
 このうち2.と3.については以前から問題が指摘されており、十分注意が必要とされていた。
 4.の防湿については少々説明が必要だ。鎌田助教授によると、現在の施工法では地盤防湿を行い地盤面からの湿気はほとんどシャットアウトされている床下換気口や土台まわりの隙間から床下の換気は十分行われている―ことから、床組みは壁内よりも結露の危険性が低く、床下地合板によって気密性さえ確保できれば、透湿による床組み木材の結露を心配する必要はないむしろ防湿シートを使うことで高まる結露や漏水による危険のほうが問題、ということだ。

「間仕切下部などの気密化をしっかり行う」

 床下地合板で気密層を作る場合は、継ぎ目のテープ止めや間仕切壁下部をしっかり処理することが必要。土台・外壁部との取り合いは土台先張りシートなどで気密化と気流止めを行う。
 なお、防湿シートを使わないほうがいいのはボード気密の場合に限らず、シート気密の場合も同じ。マニュアルの参考図のように、床下地材で気密さえ確保すれば防湿措置はいらないということだ。公庫仕様では「省略可能」 防湿シートを省略した床気密工法は、ツーバイフォー工法が先行して公庫仕様書に認められ、現在は標準施工法になっている。在来木造も公庫仕様書北海道版に掲載され、床の防湿シートは省略できると記載されている(28ページ)。ただ、防湿シートを使ってはいけないとは書かれていない。 

ボード気密工法の納まり(床合板12ミリの場合)



シート気密工法での標準的納まり(床面には防湿シートがない)



床の防湿材を省略する場合の注意点(公庫仕様書北海道版)

高耐久の下地づくり
アスペック・ドライウォール工法 仕上がりの美しさが好評

1.継ぎ目処理

2.出隅コーナー処理
 (株)アスペックコーポレーション(札幌市、矢野哲夫社長)では、VOCなどの有害物質を含んだ製品を一切使用せず、耐久性に優れた内装下地を造るドライウォール工法の普及に向けた取り組みを行っている。最近は、ペイントで仕上げたときの美しさや、どのような仕上げ材にも対応できる点に注目が集まり、若い世代のユーザーから採用されるなど実績を伸ばしている。
 ドライウォール工法とは、石膏ボードの継ぎ目処理を専用セメントとジョイントテープで行い、室内の内装下地を平滑に一体化させる工法。ボード張りから継ぎ目処理、仕上げ施工まで一貫した工程で行うのが特徴だ。ドライウォール工法は北米で開発されてから百年以上の歴史があると言われ、アメリカやカナダの住宅では広く一般的に採用されている。

3.パテ処理

4.サンディング処理
 施工方法は、継ぎ目をより強度に接合しクラックを発生させないために、目地幅の広いテーパーボードを下地材に使用。ボードは千鳥に張って目地の交点がT字になるようにする。継ぎ目処理はオートマチックテーパーという工具を使い専用セメントとジョイントテープを同時に施す。その上からテープをサンドイッチするように、専用セメントをさらに二度塗りして継ぎ目の処理は終了。ビス穴にも専用セメントを塗る。出隅はコーナービートを使いアールに仕上げる。最後に全体を平滑に仕上げるためにサンディング処理を行い下地づくりは完成。あとはペイントや塗り壁など好みの仕上げ材で完成させる。
 価格は、ボード張りを除き平方メートルあたりおよそ2000円。
 アスペックコーポレーションは、今年で開業28年目を向かえる内装工事を中心としたインテリア専門会社。同社は職人専門会社(有)札幌ドライウォールを立ち上げ、カナダでドライウォールの施工技術を習得した、ドライウォーラーと呼ばれる五名の職人で現場の施工を行っている。同社では一貫した工程システムを推奨しており、ボード張りから仕上げまで行っているが、現場の大工がボードを張るときは同社のスタッフが施工マニュアルに基づいて指導する。

ドライウォール下地にペイントで仕上げた室内の写真。アールコーナーの美しい仕上がりが好評だ
 同社の矢野社長は「5年ほど前に北米住宅を視察するため、カナダのサスカトゥーンを訪れたときに初めてドライウォール工法の住宅を目にした。塗装で仕上げたとは思えない素敵なインテリアで、特にきれいなアールコーナーに仕上がった出隅や窓廻りなどの曲面が印象に残っている。そのとき現地の職人から「しっかりした下地を作ることがプロとしての仕事、それが内装業者の命」と聞かされ大変ショックを受けた。これからはドライウォール工法の良さをユーザーに伝えていくことが内装会社としての役目だと思う」と話している。
 ドライウォール工法の問い合わせは、同社(札幌市東区北32条東18丁目6-2、Tel.011・783・6565)へ。

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