平成15年8月25日号から
別海に燃料電池プラント
道開発土木研 農村のエネルギー自給へ第一歩
 燃料電池を活用した地域生産・循環型エネルギーの新しい時代が幕を開けようとしている。国土交通省管轄の独立行政法人北海道開発土木研究所では、道東の別海町でバイオガスから発生する水素エネルギーの製造・貯蔵技術と燃料電池による農村地域のエネルギー自立システムの検証を目的とした「地球温暖化対策に資するエネルギー地域自立型実証研究」を今年度から3カ年計画で実施する。来月中旬には実験プラントを着工する予定。北海道大学触媒化学研究センターの市川勝教授(理博)が開発した有機ハイドライド(※1)という、水素燃料を安全に供給できる手法を導入した資源循環型のエネルギー利用としては、世界でも初の試みとなる。
別海町のバイオガスプラント。ここに燃料電池の実験プラントが建設される
家畜糞尿を資源化
北の技術、灯油並み手軽さ

 同研究所では、平成12年度から「積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト」として家畜糞尿を利用したバイオガスプラント及び堆肥化施設を別海町に建設。これは家畜の糞尿をバイオマス(※2)資源として使うことで、酪農地域の課題となっている膨大な家畜糞尿の処理や、道内で冬期に需要が多い暖房エネルギーの自給を行う試みで、これまで家畜糞尿の嫌気性発酵により発生するメタンガスをエネルギー源とし、コージェネレーションシステムで作った電気と熱をプラント施設内で利用してきた。
 しかし、生産したエネルギーは夏期には多く、冬期には少ないことから、夏期の余剰エネルギーを保存が可能な何らかの形で貯蔵して、冬期に使える方法を検討。そこで取り上げられたのが燃料電池だ。燃料電池はクリーンで環境に優しく、次世代エネルギーとして期待されていることに加え、北大・市川教授が開発した有機ハイドライドの利用によって安全な形で貯蔵も可能。また、広大な土地に都市が散在する道内では農村部へのエネルギー供給に大変な労力を要するが、バイオガス・燃料電池・有機ハイドライドの組み合わせであれば地域内でのエネルギーの自給自足もできることから、北の施設・北の技術という道内らしいプロジェクトとして今回の実証研究が予算化された。

バイオガスから水素

液体変換で安定的に貯蔵

 プラントのシステムとしては、酪農家10戸1000頭分の家畜糞尿をメタン発酵タンクで嫌気性発酵させて、バイオガスと消化液に分離し、バイオガスから純度の高いメタンガスを取り出しCO2が発生しない直接改質方式によって水素を生成。消化液は牧草地などに散布する液肥として利用する。生成された水素は出力10キロワット/hの固体高分子形燃料電池の燃料として使うと同時に、常温で安定した液体である有機ハイドライドとして貯蔵。必要な時には有機ハイドライドから触媒を用いて水素を取り出し燃料電池の燃料とする。具体的には1日当たり1000立方メートル作られるバイオガスのうち、200立方メートル分を使って120立方メートルのメタンガスを取り出し、100立方メートルの水素を生成。これから50キロの有機ハイドライドを作ることが可能になる。
 プラントは来年3月に竣工予定で、平成16年度に処理プロセスごとの運転試験と各要素技術の検証を行い、同17年度には全体の連続運転により、厳寒地における燃料電池の触媒技術や有機ハイドライドの技術、エネルギー効率などを検証することになる。


有機ハイドライト法による水素の貯蔵



バイオガスを燃料電池に使用するプロセス


都市へのエネ供給も可能に
 平成18年度以降のスケジュールは決まっていないが、地域コンソーシアム(※3)のような形による産学官共同研究の方向も考えられる。北大・市川教授は「水素ステーションへ運ばれた有機ハイドライドを、各家庭が灯油と同じ感覚で購入し、住宅に設置した燃料電池で電気・熱エネルギーに変換するなどCO2の削減と地域の需要に応じたエネルギーシステムが期待でき、農村部から都市部へ有機ハイドライドをエネルギーとして供給する農村地域発信型のエネルギー利用も可能になる」と語る。
 同研究所の秀島好昭特別研究官は「バイオガスと燃料電池の組み合わせは、多くの未利用バイオマス資源を使用でき、燃料の水素を貯蔵して使い回すこともできる。この実証研究が10~15年先の北海道のためになれば」と話している。

【用語解説】
※1 有機ハイドライド(法)…水素を有機化合物に添加することで、常温・常圧で安定した液体とし、貯蔵・輸送を可能にする技術。水素の貯蔵はボンベに圧縮するか、冷却して液化する方法が一般的だったが、高圧タンクに気体のまま貯蔵しても量は少なく、冷却液化にはマイナス253℃という超低温にする必要があった。しかし、有機ハイドライドであれば灯油と同じように扱うことが可能で、触媒を介して200~300℃で加熱するだけで水素を取り出せる。
※2 バイオマス…生物資源のことで、その種類は家畜・人の糞尿や農業廃棄物、間伐材・端材、生ゴミなど多岐にわたる。クリーンで再生可能なエネルギーであり、社会全体の環境負荷を下げ、産業や雇用の創出など地域の発展につながる可能性を有する。
※3 地域コンソーシアム…コンソーシアムは「協会」「組合」といった意味で、基本的には新しい技術の研究や規格の標準化とその普及などを目的とした企業・団体等の連携を指す。

防風板付き「大雪君」
丸一シラサカ 強い風や雨・雪の吹込み解消
 (株)丸一シラサカでは、パイプ外径に取り付けることで雨水や結露水などの壁体内浸入を防ぐ換気フード「大雪君」(特許・第3135208号、実用新案・3032596号、意匠登録・第1110393号)の新バリエーションとして、強風時でも風や雨、雪が室内へ吹き込むのを防ぐ防風板を有し、室内からの排気を360度どの方向にも出すことができる「防風板付き大雪君」を開発。道立北方建築総合研究所でも優れた防水性が確認されており、特に風の強い沿岸地域や台風の多い地域に適した換気フードとして9月中に販売を開始する予定だ。

 この製品は、ガラリ部分の外側に風が吹き込むのを防ぐ円形の防風板を設置して、強風時に雨や雪が室内に吹き込んだり、排気が逆流してしまうという一般的な換気フードの問題を解消。フード廻りには湿度の高い空気が滞留して凍害を起こす可能性があるため、防風板の中央には円形の窪みを付けて、排気が全周に効率良く流れるようになっている。
 また、防風板の外周には8つの穴を設けており、この穴を通る風がガラリに付いた雪を払ったり、周囲に滞留した空気を拡散させるほか、この穴から本体を工具でビス止めできるので、防風板を付けたままの取り付けが可能だ。
 本体は錆びにくく耐久性に優れるステンレス(SUS304)製で、外壁から6センチ程度しか出ないので外観デザインを損ねることはなく、波形の水切板によって雨水等の外壁への飛散も低減。外壁との取り合い部分には低温や紫外線に強い樹脂製パッキンを組み込むことによって、雨水・結露水の壁体内浸入防止も徹底している。
 施工は100分の1以上の勾配を取ったパイプを外壁から3程度出して周囲をコーキング処理してから、パイプ外径に被せて左右2本のビスで留め付ける。サイズは100φと150φがあり、カラーはシルバーとブラックの2色を用意。設計価格は100φが8200円、150φが1万1200円。
 問い合わせは同社(Tel.0166・32・0643、Fax.0166・32・5080)へ。

外周に8つの穴を設けた防風板が大きな特徴

背面部分には壁体内への漏水を防ぐ樹脂製のパッキンを組み込んでいる



GW製品価格を改定
ニットーボー東岩 10月からフェルト品10~15%
 ニットーボー東岩(株)では10月1日出荷分からグラスウールの価格を改定する。対象は住宅用グラスウールの高性能タイプ「太陽SUN」、24K通常タイプ「トーヨーファイン」、吹き込み用グラスウール「ニューダンブロー」のそれぞれ各種製品で、改定幅は太陽SUNとトーヨーファイン(フェルト製品)が10~15%、ニューダンブロー(吹き込み製品)が15~20%の引き上げる。
 戸建住宅に断熱材として広く使われているグラスウールは、新設住宅着工の低迷で需要減退に伴う価格競争が激化し、実勢価格はここ数年で大きく低下している。その一方で他品種・小ロット生産による製造コストの上昇や流通コストの上昇は避けられず、加えて七月から施行になった改正建築基準法によるシックハウス対策など、費用負担は確実に増えている。
 これらに対応するため、同社では原材料費の見直しをはじめ、人件費の圧縮などを強力に推し進めてきたが、ここにきて現状価格では事業の安定的な継続も危ぶまれる状況となったことから、10月出荷分から価格を改定し、収益を改善することで製品の安定供給を続けていきたいとしている。
 道内でのグラスウール発売元は現在、同社のほか旭ファイバーグラス(株)と東洋ファイバーグラス(株)をあわせて3社に集約されているが、収益の悪化は共通の課題であり、ニットーボー東岩に続き、これら2社も今後、価格改定に踏み切る見込みだ。

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