平成15年8月15日号から
新建材・工法の可能性探る
北総研が新しい実験棟を敷地内に竣工
 道立北方建築総合研究所(辻博司所長)では、RC外断熱仕様の違いによるコンクリート外壁への影響や大きな開口部の室外側をガラスで覆った空間=ダブルスキンゾーンの可能性、グラスウールを使った基礎断熱工法とその仕上げ材の耐久性、外装材を含めた壁体構成の放湿性能などを調査・検証するための実験棟をこのほど旭川市内の同研究所敷地内に完成させ、本格的な実験を開始した。


実験棟の全景。左側の青い外装材は新開発の窯業系サイディング

表面が彫りの深い凹凸形状となるドイツ壁仕上げの基礎
RCの耐久性調査
断熱仕様別に温湿度も計測

 この実験棟は、建材メーカーなど九社との共同研究や、国土交通省・建築研究所総合プロジェクト自立循環型住宅開発委員会断熱外皮委員会の基礎的研究などを目的として建設。延床面積一二坪の平屋建てで、木造とRC造の混構造となっており、施工はダンネツ(本社旭川市、太田吉四郎社長)が行った。
 RC外壁の部分では、熱と水分がコンクリートに与える影響を調べるため、外断熱・内断熱、断熱材の種類、防水塗装の有無によって仕様を変え、それぞれ温湿度センサーを埋め込んでいる。断熱材はXPS(押出スチレンフォーム)、グラスウールボード、フェノールフォーム、EPS(ビーズ法スチレンフォーム)と、透湿性が異なる四種類を、それぞれ熱抵抗値が同じになるように厚さを変えて施工。RC外断熱の場合、断熱材でコンクリート外壁が外気の暑さ寒さから遮断されるために耐久性が高まると言われているが、一方では居住者の生活などから排出される炭酸ガスによってコンクリートの中性化が進み、耐久性が低下するという指摘もあり、この点も検証する。
高耐久モルタルも試験
EPSとの組み合わせ

 RC外壁の一部には新開発の窯業系サイディングを使い、暴露試験とデザイン、カラーの感想の聞き取り調査を行うほか、東面ではRC外壁の部分でEPSとグラスファイバーメッシュ、弾力性のある樹脂モルタルを組み合わせたEIFS(エクステリア・インシュレーション・フィニッシュ・システム)を施工。これは断熱と高耐久な外装仕上げを同時に実現するのが目的で、ダンネツとの共同研究。耐凍害性や防水性を確かめる暴露試験を行うと同時に、接着剤だけで留めているモール材が冬期にはく離しないかどうかも見るという。


EPSの上にグラスファイバーメッシュを張り、高弾性樹脂モルタルで仕上げたEIFSによる外壁部分
ガラス空間を創出
GWでの基礎断熱も実施

 南面には高さ2740ミリ、幅3640ミリ、総厚50ミリという断熱・遮音性に優れたガラスを採用。複層ガラスやLow-Eガラスなどが一般的となってきた今、その先を行く窓として開発中のもので、寒冷地・旭川で断熱性能を検証する。
 また、まだ完成していないが、開口部の室外側を単板の合わせガラスで覆ったダブルスキンゾーンという空間を作る予定。住宅の熱的な緩衝空間とするとともに、屋外側ガラスを外装材の一つと見なした新しい住宅改修の手法や風圧の軽減によって屋内側サッシのフレームを細くして意匠性を高める手法、布などの軽量素材を始め様々な材料によるライトシェルフ(庇)の設置といった可能性も探る考えだ。
 基礎部分については、約半分を型枠兼用断熱材で施工しているが、残りは布基礎外側の断熱材に高撥水性のグラスウールボード48K60ミリを採用。これは硝子繊維協会との共同研究によるもので、温度センサーを設置し、凍害の有無や水の影響による断熱性能の変化などを調べることにより、グラスウールによる基礎断熱が寒冷地で適用できるかを調査する。
 さらにグラスウール基礎断熱の仕上げは、モルタルや鋼板、窯業系サイディング、ガラス繊維補強コンクリート板を使い、それぞれ耐久性やデザインを検証していくとのこと。
 このほか、北面の外壁木造部分は、高さ2470ミリ、幅455ミリの外壁構造の試験体を14体設置することができ、仕様を変えた様々な壁構造の各種試験を行うことが可能。現在は旭化成建材(株)が新開発した窯業系サイディングをオープンジョイントで施工した壁体を試験中だ。また、フラットルーフの雪庇の実験も行う予定で、冬季は西側から風が吹くことが多いため、東側の軒を一メートル近く出している。
 この実験棟を担当している同研究所環境科学部居住環境科の伊庭千恵美研究職員は「現場生産型のダブルスキンゾーンを利用し、住宅改修時の選択肢としてガラスを多用する手法のほか、窯業系、鋼板、湿式モルタルなど外装材それぞれのメリットや寒冷地に最も適した納まりなどを提案することができると考えている」と話している。

断熱性・遮音性に優れた総厚50?のサッシ(左)はダブルスキンゾーンを作るガラスで囲まれる予定。布基礎仕上げ(右)は様々な種類の材料を試験している

屋根材で意匠高める
立体感あるシングル屋根材
 (株)住まいのウチイケ(室蘭市、内池秀光社長)では、オーエンスコーニング社(本社、アメリカ・オハイオ州)が製造しているシングル屋根材「オークリッジプロ30」を初採用した住宅を室蘭市に完成させた。同社ではすでにこのシングル屋根材を採用した住宅の3棟目を同市近郊で建設している。
 北米調のデザインを中心に個性的な注文住宅を手掛ける一方、大きな勾配屋根が特徴の一つである規格住宅を提供している同社では、差別化の一つとして、道内では今年の4月から発売されたオークリッジプロ30に着目。無機質のグラスファイバーを芯材に採用したオークリッジプロ30は、表面に良質のアスファルトを使用することで優れた防水性を持ち、曲面になじみやすい柔軟性が自由度の高い設計を可能にしている。棟や谷部分にも同質の素材で葺けるので、統一感のある仕上げができる。
 市内に完成させた1棟目の住宅は、切妻屋根にエステートグレー色を採用。2層構造による凹凸と立体感のある陰影を演出した屋根のデザインが印象的だ。
 住まいのウチイケが行っている施工は、12ミリの野地板の上にカッパールーフ2号15K(発売元・日新工業(株))を下葺きし、軒先の立上げ部分にのみカスタムシャット20K(発売元・日新工業)を葺いている。両製品とも改質アスファルトを使用し釘穴シール性に優れた防水材。水が入りやすい軒先には、より防水性を高めるために厚みのあるカスタムシャット20Kを使用。その上にオークリッジプロ30を一枚ずつ釘打ちし、2枚目以降は先端に重ね代を一四三ミリ取り釘打ち、最後に防水シール材を必要箇所に塗布している。
 同社内池社長は「素材の質感が勾配屋根の外観と相性が良くお客様からも好評なので、長尺トタンよりは若干高くなるが採用していきたい。わが社では常に新製品を取り入れながら、他社との違いがはっきりとわかる住宅の提供を目指している」と話している。

屋根の拡大写真
 製品寸法は幅337×長さ984×厚さ6ミリ。重量は1.74キログラム/枚。色はデザートタン、ブラウンレッド、シャトーグリーン、エステートグレーの4色。設計価格は3500円/平方メートル。
 問い合わせは、オーエンスコーニングジャパン(株)建材材料部門(東京都港区芝公園1-2-9、ハナイビル3F、Tel.03・5733・1676)へ。

オークリッジプロを採用した住宅。屋根材が近所で話題となっている

家づくりの参考に
地元工務店の活動内容紹介
八雲戸建住宅協議会・会報誌創刊
 八雲町の工務店など15社で結成されている八雲戸建住宅協議会(加納昭平会長、(株)加納工務店社長)では、高断熱・高気密住宅の提供や地場産業である地域の家づくりを目指して設立された、同協議会の活動内容などを紹介した会報誌を今年の4月に創刊した。
 同誌は地元の一般消費者を対象に、会員工務店の取り組みや住宅の基本的な知識、技術情報などを取り上げたもので、消費者が家づくりの参考にできる内容となっている。
 最新号は今月10日発行。社会問題になっているシックハウス症候群を防ぐための対策や7月に改正された建築基準法、坪単価のからくりについて取り上げた内容。
 年4回の発行で体裁はA3判カラー4ページ。新聞折り込みなどで配布している。

創刊号の紙面

NASA技術使用
カネマツ 高性能な気密断熱シート

アールホイルの断面。エアーキャップが二層になっているのがわかる
 (株)カネマツでは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発した反射性絶縁材料を使った薄型の気密断熱シート「R-Foil(アールホイル)」をこのほど発売した。
 同製品は、通称プチプチシートと言われるエアーキャップ2層を特殊アルミシートでサンドイッチした複合素材でできており、赤外線を97%反射するアルミシートとエアキャップ内の固定空気層が優れた断熱性能を発揮。厚さ僅か八ミリの製品ながら、16Kグラスウール50ミリ以上の断熱効果があり、また、気密性・防水性に優れているという。
 施工は、下地合板の上に直接R-Foilを横張りでタッカー止めし、重ね部分は専用のアルミテープで留め、その上から通気胴縁、外装材の順に施工する。R-Foilを使用すれば透湿防水シートは必要ない。薄く軽いので施工は楽。
 今回、(有)外城建設(上川郡清水町)がツーバイシックス住宅で初施工した。外壁部の断熱は、140ミリ高性能グラスウールとこのR-Foilを使用。施工面の工夫として、重ね部分が膨らむのを嫌って重ね代の10ミリ程度エアーキャップとアルミシートの片側を剥がして重ね合わせ、膨らまないようにしている。また、エアーキャップ部分が熱膨張して胴縁を押すので、サイディングを留めるビスは胴縁だけでなくツーバイ構造材まで届く長めの65ミリ品を使用している。
 同社外城晶啓社長は、「透湿抵抗の高い素材を外側に貼るのは抵抗があったが、ツーバイ工法により1平方センチ/平方メートル以下の気密性能を確保しており、壁体内への湿気の流入はほとんどないと考え、採用に踏み切った。また、念のため重ね部分の水切り用としてあらかじめ幅30センチ程度にカットした透湿防水シートをアルミテープを貼る前に先張り、アルミホイルと合板の間に雨水が浸入するのを防いでいる。
 見た目は特殊素材には見えないが、引き裂き強度が強く、耐久性も期待できそうだ。また、施工後の住宅は、日中でも中に入るとひんやりとしており、遮熱効果はかなり高そう」と話している。
 製品の規格は、1本あたり幅1208ミリ×長さ27.75メートル×厚さ8ミリ前後。価格はオープン価格。このほか、ロードヒーティング用もある。
 問い合わせは、カネマツ(帯広市西11条南2丁目12-8、Tel.0155・36・6428)へ。

外城建設の現場。
アールホイル施工後、通気胴縁の取り付けが終わった段階

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