新建材・工法の可能性探る |
北総研が新しい実験棟を敷地内に竣工 |
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道立北方建築総合研究所(辻博司所長)では、RC外断熱仕様の違いによるコンクリート外壁への影響や大きな開口部の室外側をガラスで覆った空間=ダブルスキンゾーンの可能性、グラスウールを使った基礎断熱工法とその仕上げ材の耐久性、外装材を含めた壁体構成の放湿性能などを調査・検証するための実験棟をこのほど旭川市内の同研究所敷地内に完成させ、本格的な実験を開始した。
実験棟の全景。左側の青い外装材は新開発の窯業系サイディング
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表面が彫りの深い凹凸形状となるドイツ壁仕上げの基礎 |
RCの耐久性調査
断熱仕様別に温湿度も計測
この実験棟は、建材メーカーなど九社との共同研究や、国土交通省・建築研究所総合プロジェクト自立循環型住宅開発委員会断熱外皮委員会の基礎的研究などを目的として建設。延床面積一二坪の平屋建てで、木造とRC造の混構造となっており、施工はダンネツ(本社旭川市、太田吉四郎社長)が行った。
RC外壁の部分では、熱と水分がコンクリートに与える影響を調べるため、外断熱・内断熱、断熱材の種類、防水塗装の有無によって仕様を変え、それぞれ温湿度センサーを埋め込んでいる。断熱材はXPS(押出スチレンフォーム)、グラスウールボード、フェノールフォーム、EPS(ビーズ法スチレンフォーム)と、透湿性が異なる四種類を、それぞれ熱抵抗値が同じになるように厚さを変えて施工。RC外断熱の場合、断熱材でコンクリート外壁が外気の暑さ寒さから遮断されるために耐久性が高まると言われているが、一方では居住者の生活などから排出される炭酸ガスによってコンクリートの中性化が進み、耐久性が低下するという指摘もあり、この点も検証する。 |
高耐久モルタルも試験
EPSとの組み合わせ
RC外壁の一部には新開発の窯業系サイディングを使い、暴露試験とデザイン、カラーの感想の聞き取り調査を行うほか、東面ではRC外壁の部分でEPSとグラスファイバーメッシュ、弾力性のある樹脂モルタルを組み合わせたEIFS(エクステリア・インシュレーション・フィニッシュ・システム)を施工。これは断熱と高耐久な外装仕上げを同時に実現するのが目的で、ダンネツとの共同研究。耐凍害性や防水性を確かめる暴露試験を行うと同時に、接着剤だけで留めているモール材が冬期にはく離しないかどうかも見るという。
EPSの上にグラスファイバーメッシュを張り、高弾性樹脂モルタルで仕上げたEIFSによる外壁部分 |
ガラス空間を創出
GWでの基礎断熱も実施
南面には高さ2740ミリ、幅3640ミリ、総厚50ミリという断熱・遮音性に優れたガラスを採用。複層ガラスやLow-Eガラスなどが一般的となってきた今、その先を行く窓として開発中のもので、寒冷地・旭川で断熱性能を検証する。
また、まだ完成していないが、開口部の室外側を単板の合わせガラスで覆ったダブルスキンゾーンという空間を作る予定。住宅の熱的な緩衝空間とするとともに、屋外側ガラスを外装材の一つと見なした新しい住宅改修の手法や風圧の軽減によって屋内側サッシのフレームを細くして意匠性を高める手法、布などの軽量素材を始め様々な材料によるライトシェルフ(庇)の設置といった可能性も探る考えだ。
基礎部分については、約半分を型枠兼用断熱材で施工しているが、残りは布基礎外側の断熱材に高撥水性のグラスウールボード48K60ミリを採用。これは硝子繊維協会との共同研究によるもので、温度センサーを設置し、凍害の有無や水の影響による断熱性能の変化などを調べることにより、グラスウールによる基礎断熱が寒冷地で適用できるかを調査する。
さらにグラスウール基礎断熱の仕上げは、モルタルや鋼板、窯業系サイディング、ガラス繊維補強コンクリート板を使い、それぞれ耐久性やデザインを検証していくとのこと。
このほか、北面の外壁木造部分は、高さ2470ミリ、幅455ミリの外壁構造の試験体を14体設置することができ、仕様を変えた様々な壁構造の各種試験を行うことが可能。現在は旭化成建材(株)が新開発した窯業系サイディングをオープンジョイントで施工した壁体を試験中だ。また、フラットルーフの雪庇の実験も行う予定で、冬季は西側から風が吹くことが多いため、東側の軒を一メートル近く出している。
この実験棟を担当している同研究所環境科学部居住環境科の伊庭千恵美研究職員は「現場生産型のダブルスキンゾーンを利用し、住宅改修時の選択肢としてガラスを多用する手法のほか、窯業系、鋼板、湿式モルタルなど外装材それぞれのメリットや寒冷地に最も適した納まりなどを提案することができると考えている」と話している。 |
断熱性・遮音性に優れた総厚50?のサッシ(左)はダブルスキンゾーンを作るガラスで囲まれる予定。布基礎仕上げ(右)は様々な種類の材料を試験している |