平成15年7月15日号から
灯油を次世代基準の半分に
新住協で鎌田先生が提案

鎌田紀彦助教授
 新住協北海道事務局(吉田寛本部長、(株)吉田建設社社長)が主催する新住協第2回セミナーが先日26日、札幌市内で開かれ、八十名あまりの参加者が講師の室蘭工業大学鎌田紀彦助教授の話に聞き入った。

札幌で年間630リットル
ポスト次世代の断熱仕様

 テーマはポスト次世代省エネ基準の住宅の考え方とその仕様。鎌田先生は断熱仕様の強化などによって次世代省エネ基準の半分の暖房用灯油消費量を実現する仕様を札幌を例に説明した。
 ポスト次世代の仕様は床・壁・天井の断熱仕様と開口部の組み合わせで見ていく。また換気は地域区分でⅡ地域に指定されている函館を除き、道内ほとんどの地域で熱交換が前提となる(早見表参照)。
 札幌を例に説明すると、天井断熱はグラスウールブローイング工法四〇〇?相当で、次世代基準より一〇〇?アップさせる(D仕様)。壁は次世代基準の公庫仕様と同じ高性能グラスウール100ミリ充てん+グラスウールボード25~30ミリ(C仕様)。基礎も次世代基準の公庫仕様と同じ押出スチレンフォームB3種相当(B仕様)。
 開口部は南面がプラスチックサッシアルゴンLow-Eペア、それ以外の面は木製サッシトリプルアルゴンLow-E相当。さらに断熱戸をすべての窓に取り付ける(右端の仕様)。
 この仕様で灯油消費量試算は床面積1平方メートルあたり4.75リットル、40坪でおよそ630リットルとなる。
 断熱仕様の組み合わせはほかにいくつものパターンがあるが、基本的な考え方としては、床・壁・天井の断熱強化をそこそこに抑え、開口部強化と熱交換換気で灯油半減を目指すという点。
 特に基礎断熱の場合は、次世代基準を強化してもほとんど効果がないことから、この部分はいじらないのがポイント。

給湯で200リットル削減
太陽熱温水器を活用

 Ⅱ地域の函館は比較的簡単に灯油を半減できるほか、道内他地域も札幌程度の仕様で可能だが、厳しいのが旭川。旭川では壁の付加断熱を押出スチレンフォームB3種三〇?以上としなければならない(ほかは札幌と同じ)。
 なお、灯油半減となる仕様では熱損失係数は1~1.1ワット程度となる。
 エネルギー削減という視点からは、暖房と並び給湯も重要。サンポット(株)が開発中の太陽熱温水器では、年間200リットルの灯油削減が可能。灯油ボイラーと組み合わせ、太陽熱温水器で不足する分をボイラーで沸きあげるというシステムだ。これにより、給湯エネルギーもほぼ半分にすることが可能となる。
 コレクターの設置角度は30~35度くらいがよいといわれているが、北海道の場合は緯度が高いこともあり、夏冬通した効率では45度くらいが最も良さそうだ。

本レンガで差別化
岩手・花住ホーム 木窓など装備し坪45万円

レンガ積みの外観、吹き抜けに大きな開口部を設置
 花住ホーム(株)(本社岩手県花巻市、千葉利一社長)では外装がレンガ積みに洋瓦、躯体はツーバイシックスで木製窓を標準装備し、室内はジョリパット仕上げ、サクラ・ムク材のフロア、ムク材を使った収納建材などを装備して坪45万円を実現した「煉瓦積みの家」モデルハウスを花巻市内にオープン、2ヵ月あまりで10組近く成約にこぎ着けるなど好評だ。
 熱損失係数1.34ワット、相当隙間面積0.9平方センチ/平方メートルというⅠ地域(北海道)の次世代省エネ基準を上回る性能と本物のレンガの質感で差別化を図り、なおかつレンガや木製窓、フロアや収納建材などの木質建材をすべて中国から直輸入することで、割安な価格を実現した。
 レンガは1,140℃で焼き上げた吸水がほとんどないテラコッタレンガで、躯体の基礎と一体で打ち込んだレンガ用基礎から積み上げる。縦筋は455ミリピッチ、横筋は4段ごとに躯体に止めつける。開口部はアングル金物を使い、そこから上に積み上げる。躯体との間には30ミリの通気層を設けている。
 プラスチックサッシとほぼ同じ価格帯で仕入れているという木製サッシ「SAYYAS(セイヤース)」は、ドイツ製の金物と気密材を使った外装アルミクラッドタイプで、ガラスはアルゴンガス入りペアガラス。内倒し・内開きのドレーキップタイプを中心にパティオなども揃っている。
 モデルハウスは吹き抜けに大きな開口部をとった開放的なプランで、室内はジョリパットと米松のつけ柱・梁で装飾。床材、階段材、室内ドア、キッチンなどの建材はすべてムク材または集成材を使用。取っ手など小物に黒塗装の金物を使い落ち着いた雰囲気に仕上げている。
 価格は吹抜面積込み、暖房・カーテンを除いたフル装備で坪当たり45万円を実現。
 同社千葉社長は「一時はコストダウン商品も揃えたが、結局は価格競争になった。地場の工務店として高い性能を前提としながら商品力と妥当な価格で差別化を図っていかなければ生き残れないと痛感し、つくった商品が煉瓦積みの家だ。フランチャイズをはじめる気は全くないが、レンガや木製窓などはオープン販売も考えている。地場の工務店がそれぞれの地域でがんばることがこれからの住宅産業のあるべき姿だと思う」と語っている。

キッチンキャビネットなどにすべてムク材を使用。壁はジョリパット


レンガ積みのモデル

安全性と性能PR
硝子繊維協会 サンキュー・ブロー2003展開
 硝子繊維協会北海道地区委員会(旭ファイバーグラス(株)、東洋ファイバーグラス(株)、ニットーボー東岩(株))では今月からグラスウールブローイング工法の安全性と高い施工精度の向上をPRする「サンキュー・ブロー2003」を全道で展開する。
 このキャンペーンは平成10年に続いて2回目となるもので、前回は現・道立北方建築総合研究所の賛同を得て、メーカー団体が自ら品質保証に乗り出すという取り組みが全国的にも注目を集めた。
 今回もメーカーから委託を受けた検査員が全道の工事現場をまわり、検査終了後は施工品質証明書を発行する。同協会では今回のキャンペーンを通じて、グラスウールブローイング工法の優れた断熱性能に加え、不燃性や火災時に有毒ガスを出さない安心・安全性などをPRしていきたいとしている。
 グラスウールブローイング工法は天井の断熱工法として20年以上前に北海道で初めて採用され、その後は天井断熱工法のスタンダードとして定着した。この間、昭和五十八年には同工法について硝子繊維メーカー各社が建築環境・省エネルギー機構の省エネルギー建築技術評定を取得。2度にわたる省エネルギー基準の改定・強化に伴い施工面積・施工厚さともに伸ばしてきた。
 グラスウールをクルミ状に砕いた原綿を専用の機械で小屋裏に吹き込む同工法は、原綿の性能とともに施工管理も品質向上のための重要なポイント。5年ぶりとなる今回のキャンペーンは、定期的な検査によって品質管理を徹底しようという姿勢を示したものとも言える。
 問い合わせは同協会北海道事務局へ(札幌市白石区東札幌2条3丁目2-25、Tel.011・842・4433、Fax.011・842・4888)。

ブローイング施工現場で施工厚を検査するためのスケール

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