平成15年6月25日号から
「こんなに暖かくなるのー」
富山ユーザーの感動など地元の声を紹介
北海道・東北・長野・富山 四住宅団体合同研究会
 地域の気候風土に応じた快適な住まいの普及・啓蒙を目的として、研究者らとビルダーが共同で活動している北海道の「北方圏住宅研究会」、長野の「信州の快適な住まいを考える会」、富山の「富山の快適な住まいを考える会」、東北の「住まいと環境東北フォーラム」の四団体が、昨年に続いて去る6日・7日の両日にわたって仙台市内のせんだいメディアパークで一堂に集まり合同研究会を開催。健康な住まいや高断熱・高気密工法、シックハウス対策などについて、活発な議論が交わされた。


活発な議論が交わされた分科会の様子
みんなの思いが大切
 今回の合同研究会では、初日に各団体から会の目標や活動内容などについての発表、会場内の見学、懇親会を実施。2日目に『健康に住まう』『高断熱・高気密住宅のお勧め工法』『シックハウス問題はこれからの住宅をどう変えるか』をそれぞれテーマとした分科会に分かれて参加者が討論を行い、最後に全体討議を行った。
 全体討議では、各分科会の代表がそれぞれの討論の報告を行い、『健康に住まう』をテーマとした分科会では安井設計工房副社長の安井妙子氏(仙台)が「富山では、富山の大きな家が高断熱・高気密でこんなに暖かくなるのかとユーザーは感じており、高断熱・高気密の普及が進んでいる。
 また、設計・施工者や住まい手それぞれが、住宅の構造やメンテナンスが最終的には自分たちの健康につながるという強い思いがないと健康な住まいはなかなか実現しない。健康性や快適性など数字で表すことができないものの評価をどう行うかも非常に難しい。喜びをともなった快適さが快適性の中でも一番ランクが高く、それが人や建物、地球も含めた全ての健康に通じる。健康な住まいに対する強い思いをもって頑張っていきたい」と報告した。

高断熱・高気密は全国同じ性能で
温暖地では理解不足も

 『高断熱・高気密住宅のお勧め工法』をテーマとした分科会では北海道大学大学院工学研究科助手の長谷川寿夫氏(北海道)が「快適性や省エネ、建物を含めた健康性を目指していく時、必要なのは高断熱・高気密だけではなく、換気計画や全室暖冷房も含めた総合的な対応であり、日射遮へいも加わってくる。しかし、温暖地では高断熱・高気密の工法はもとより、目標とするところすらユーザーにきちんと説明しないで、高断熱・高気密という言葉を使っているだけという話があった。
 また、地域によって高断熱・高気密の性能レベルを変える必要性について、基本的に全国一律で変える必要はなく、地域に応じて細部の仕様を変更すればいいのではないかという結論になった」と、高断熱・高気密への取り組みについての報告があった。


今回の合同研究会での討議を総括する吉野教授
課題残したSH新法
性能や地域性は蚊帳の外

 『シックハウス問題はこれからの住宅をどう変えるか』をテーマとした分科会では宮城学院女子大学教授の林基哉氏(仙台)が、国土交通省の委託を受けて行ったシックハウス新法に関連して行った実験のエピソードについて「第三種換気の場合にコンセント廻りや天井と壁の取り合いなどからどれくらい空気が室内に入ってくるか調べたところ、気密性が高いと給気口からの流入のほうが多いが、気密性が低いと隙間から全流入量の7~8割が入り、壁の中の建材等が空気汚染の主役になりかねないということで、第三種換気の場合、小屋裏等も規制することになった。また、第三種換気では、ホルムアルデヒドは内装表面からの発散よりも壁体内等から入ってくるほうが多いことも実験でわかっている。しかし、北海道の住宅のように気密性能が高ければ気密層の屋外側から空気が入ることはまずないなどの点を考慮すると、全国一律の規制はおかしいし、性能や地域性も考慮されるべきで、制度上に問題点があるという意見もあった」と、分科会の発言をまとめた。

改正基準法も万全ではない
最後に住まいと環境

 東北フォーラム理事長で東北大学大学院工学研究科教授の吉野博氏(仙台)が「温度・湿度以外の快適さをどう評価するかが大事で、その評価に各地域の環境条件を考慮することで健康な住まいが見えてくると思う。また、シックハウス新法は守ったからといって必ずしも問題が解決しない場合もある。特にシックハウスを発症した人の住宅をどう造っていくかが大きな課題になる」と、2日間の合同研究会を締めくくった。

網走交通と光輝建設が共同提案
潜在需要掘り起こす
高品質・低価格の規格住宅

このほど公開された規格型住宅の外観パース
 新築戸建需要の絶対数が減り、ユーザーの動きも見えにくくなっている中、網走市の網走交通(株)(保前健一社長)と光輝建設(株)(福井政義社長)では、潜在需要の掘り起こしと良質な住宅の普及を目的として、網走交通設計、光輝建設施工となる税込み1380万円の規格型住宅を限定2棟で企画し、このほど網走交通主催、光輝建設協賛の形で新聞に折り込み広告を出稿、建設を希望するユーザーの募集を開始した。
 両社はいずれも、ビルダーや建材商社などで構成し、地球と人に優しい住宅造りを進めている輸入建材協議会(福井政義会長、フクイ産業(株)社長)の会員で、お互いに勉強する中で住宅に対する考え方も一致し、これまでもノウハウを提供しあううなど協力関係にある。
 今回の企画は、景気の冷え込みが厳しく、北見からの業者流入が増えている地元・網走で、家を建てたいが実行に移せない潜在客を見つけるためのアプローチとして考案。現在は注文住宅が主力だが、以前は土地開発・建売分譲がメインで集客は展示場が中心だった網走交通の地元での知名度と、注文住宅がメインで独自に改良を重ねたツーバイシックス工法に代表される光輝建設の技術力と企画・提案力をそれぞれ生かすことで、高い品質を保ちながら価格を抑えた住宅の開発と、その広告宣伝による潜在需要の掘り起こしといった、単独では難しい課題の解決を目指したもの。

シンプル・イズ・ベストを実践した平面プラン

1階

2階
床鳴り防止に工夫
顧客名簿は両社同時利用

 今回販売する規格型住宅は、総2階建て28坪のツーバイシックス住宅で、網走交通の商品(アクレーム)仕様で建設。構造は、1階床は床根太の乾燥収縮による床鳴りなどのトラブル防止のため、床根太に乾燥しても収縮が少ない2×6材を使い、その下にまぐさのようにコンパネを2×10材で挟んだビーム(大引)を床根太と直交して一間ピッチで入れ、2×4材で組んだ束で支える工法を採用しているのが特徴。
 断熱は次世代省エネ基準をクリアしており、一階床根太間にはブローイング100ミリを施工し、さらに床下からウレタンを吹いて音の反響を防止している。
 暖房・換気は、床下に取り入れた新鮮外気を一階床面から室内に給気し、FFストーブで加温して家全体に対流させる暖房・換気一体システムの澄家を採用。
 プランは二階にフリールームのある2LDKで、内装は壁にコットン壁紙のパピウォールを使い、一部に有害物質を含まず、マイナスイオン効果などが期待できる塗り壁材・スタッコラーストも採用。健康性を重視した仕様となっている。
 価格は両社の利益を抑え、外注業者の協力も得ることで税込み1380万円を実現。坪単価は約49万3000円となるが、高品質な構造・仕様で、照明、カーテン、テレビ配線、地盤調査、杭工事、暗渠工事、その他諸費用以外は全て価格に含むため、間違いなくユーザーは良質な住宅を低価格で購入できると両社では考えている。
 なお、今回の企画に応募したユーザーの名簿は、両社が共同で使用。競合した時は営業力の勝負になる。
 網走交通不動産事業部の加藤典幸課長補佐は「坪数は小さいが、品質が高く低価格な住宅を網走で広めていくきっかけになればと思う」と話しており、光輝建設の澤田利昭専務は「デフレ時代のビジネス戦略として企画した。利益は少ないが次の仕事につながるものと考えている」と企画の意図を語っている。



高性能住宅Q&A-必見! シックハウス新法14
絶対OKと言わない
全業者共通で意識の徹底を
 まず、最低限の対応として、基準法を遵守することが必要です。基準法さえ守っていれば、ほとんどの場合、シックハウス被害が防げるからです。これは調査結果からも明らかで、北見工業大学の坂本弘志教授の調査によれば、換気回数を基準法と同じ0.5回/h確保し、建材を基準法の規制対象外より一ランク低いF☆☆☆とした住宅を中心にホルムアルデヒド濃度を測定した結果、60件中58件が厚生労働省の指針値をクリアしています。
 しかしそれだけでシックハウスが完全になくなるわけではありません。なぜなら、1.今回の規制はホルムアルデヒドとクロルピリホスという2物質だけで、トルエン・キシレンやアセトアルデヒドなどについては規制されていない、2.規制は基本的に居室のみで、それ以外の空間からの発散を抑えられない場合もある、3.シックハウスの発症は個人差が大きく、『絶対にない』とはどんな場合でも言えない―からです。
 つまり、基準法を守り、厚生労働省の指針値を守ったとしても発症を完全に無くすことはできないのです。潜在的なシックハウス患者は1000人に1人ともいわれており、そうするとおよそ250家族中、1家族はシックハウス問題に直面する可能性があるとも言えるのです。
 さらに、マイホーム新築後の精神的な疲れから来る症状とシックハウスの症状がよく似ており、区別が付きにくいという難しい問題もあります。
 ではどのように対応したらよいのか。これは設計・施工面で万全を尽くすとともに、顧客対応の問題として法的側面から見ていかなければなりません。
 まず、営業段階から注意しなければならないのは、「わが社の住宅はシックハウスになりません」と断定しないことです。次に元請も下請・外注業者も一体となって法律を守る共通意識を持つことです。ウソや騙しはそれだけで損害賠償の対象となるくらいの危機意識を持つべきです。
 ビルダー側の責任と同時に、ユーザー側も実は大きな責任を背負っていることに気づくべきです。
それは業者選びはユーザーの責任であるということです。業者側に違法行為や騙し、配慮不足があれば、当然問題ですが、その業者を選んだのはユーザーであるという意味で、責任は最終的に自分に返るんだということを、一方、しっかりしたビルダーはきちんとPRをすべき時です。(終わり)

■旭川・北見両市の確認・検査■
平面図に換気経路
写真・検査で道と温度差も
 改正建築基準法の施工によって、来月以降、確認申請や中間・完了検査の申請手続きが一部変更になることについて、前号1面で道や札幌市の対応を紹介したが、旭川市・北見市の両市については、確認申請で提出する平面図に換気経路の記入を求めたり、中間・完了検査申請時に添付する写真は原則全室必要とするなど、道や札幌市とは一部異なることがわかった。
 まず建築確認申請書類に関しては、両市とも内装建材の使用面積がわかるような展開図や換気の圧力損失計算書など、法律で求めるもの以外の資料を要求することはないが、平面図には換気本体や給排気口の位置、換気経路を示すことになるという。この点は道や札幌市と異なる対応だ。 中間・完了検査申請図書では、内装仕上げに用いる建材は施工終了時に撮影した写真を貼付することとなっているが、両市ともJIS・JASの表示マークがあるもので施工後に見えなくなる場合は、現場搬入時や施工途中に撮影することとしている。また、道や札幌市では同じ仕上げであれば必ずしも全室撮る必要はないとしているが、北見市では原則全室の撮影のほか、北見・旭川市のいずれも天井ふところなども撮るように求める方針だ。
 完了検査のチェックは、内装仕上げについては目視で行い、目視で確認できないものは完了検査申請書第4面に工事監理者が記載した内容を確認するにとどまる。ただし旭川市は、工事監理者に対し、建材等の数量や等級などを記録した書類を検査時に抜き打ちで見る可能性もあるとしている。換気は換気本体や給排気口、アンダーカットなどの位置の確認のみで、動作チェックは北見市・旭川市ともによほどの場合以外は行わないようだ。
 このほか、来月以降の着工とわかっている物件で今月中に確認申請する場合は、使用建築材料表なども一緒に提出すれば、両市とも変更申請は不要になる。
 



住宅にガラスデザイン
クラウンステンド 自由オーダーでアクセント
 クラウンステンドグラス(株)では、文字や模様など自由なデザインをガラスを使って表現する、ガラスサインのオーダー注文をこのほど開始した。
 ガラスサインとは、希望のデザインを色の付いたガラスから切り出し、透明なガラス板の上に載せ、電気炉で熱を加え溶かし合わせたもの。住宅では、表札や室内ドアのアクセントなど工夫次第で様々な用途に利用できる。取り付けは、ボード用のビスを使用して室内の壁やドアに固定する。サイズは400ミリ×600ミリが最大。価格は応相談。
 同社ではほかにも、ドアやパーテーション、窓などに使用できるオリジナルのステンドグラスも扱っており、大きさやデザインによって価格は異なるが、目安としては、高さ600ミリ×幅300ミリで7万円から。取り付け費は別途。なお、一般ユーザーを対象に、技術者が指導しながら、ガラスを使って様々なものを作る教室も開催しており、随時生徒を募集している。
 問い合わせは、同社(札幌市中央区南5条西23丁目1-19、Tel011・551・0124)へ。

病院に飾られているサイングラスの一例

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