地域の気候風土に応じた快適な住まいの普及・啓蒙を目的として、研究者らとビルダーが共同で活動している北海道の「北方圏住宅研究会」、長野の「信州の快適な住まいを考える会」、富山の「富山の快適な住まいを考える会」、東北の「住まいと環境東北フォーラム」の四団体が、昨年に続いて去る6日・7日の両日にわたって仙台市内のせんだいメディアパークで一堂に集まり合同研究会を開催。健康な住まいや高断熱・高気密工法、シックハウス対策などについて、活発な議論が交わされた。
活発な議論が交わされた分科会の様子
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みんなの思いが大切
今回の合同研究会では、初日に各団体から会の目標や活動内容などについての発表、会場内の見学、懇親会を実施。2日目に『健康に住まう』『高断熱・高気密住宅のお勧め工法』『シックハウス問題はこれからの住宅をどう変えるか』をそれぞれテーマとした分科会に分かれて参加者が討論を行い、最後に全体討議を行った。
全体討議では、各分科会の代表がそれぞれの討論の報告を行い、『健康に住まう』をテーマとした分科会では安井設計工房副社長の安井妙子氏(仙台)が「富山では、富山の大きな家が高断熱・高気密でこんなに暖かくなるのかとユーザーは感じており、高断熱・高気密の普及が進んでいる。
また、設計・施工者や住まい手それぞれが、住宅の構造やメンテナンスが最終的には自分たちの健康につながるという強い思いがないと健康な住まいはなかなか実現しない。健康性や快適性など数字で表すことができないものの評価をどう行うかも非常に難しい。喜びをともなった快適さが快適性の中でも一番ランクが高く、それが人や建物、地球も含めた全ての健康に通じる。健康な住まいに対する強い思いをもって頑張っていきたい」と報告した。
高断熱・高気密は全国同じ性能で
温暖地では理解不足も
『高断熱・高気密住宅のお勧め工法』をテーマとした分科会では北海道大学大学院工学研究科助手の長谷川寿夫氏(北海道)が「快適性や省エネ、建物を含めた健康性を目指していく時、必要なのは高断熱・高気密だけではなく、換気計画や全室暖冷房も含めた総合的な対応であり、日射遮へいも加わってくる。しかし、温暖地では高断熱・高気密の工法はもとより、目標とするところすらユーザーにきちんと説明しないで、高断熱・高気密という言葉を使っているだけという話があった。
また、地域によって高断熱・高気密の性能レベルを変える必要性について、基本的に全国一律で変える必要はなく、地域に応じて細部の仕様を変更すればいいのではないかという結論になった」と、高断熱・高気密への取り組みについての報告があった。
今回の合同研究会での討議を総括する吉野教授
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課題残したSH新法
性能や地域性は蚊帳の外
『シックハウス問題はこれからの住宅をどう変えるか』をテーマとした分科会では宮城学院女子大学教授の林基哉氏(仙台)が、国土交通省の委託を受けて行ったシックハウス新法に関連して行った実験のエピソードについて「第三種換気の場合にコンセント廻りや天井と壁の取り合いなどからどれくらい空気が室内に入ってくるか調べたところ、気密性が高いと給気口からの流入のほうが多いが、気密性が低いと隙間から全流入量の7~8割が入り、壁の中の建材等が空気汚染の主役になりかねないということで、第三種換気の場合、小屋裏等も規制することになった。また、第三種換気では、ホルムアルデヒドは内装表面からの発散よりも壁体内等から入ってくるほうが多いことも実験でわかっている。しかし、北海道の住宅のように気密性能が高ければ気密層の屋外側から空気が入ることはまずないなどの点を考慮すると、全国一律の規制はおかしいし、性能や地域性も考慮されるべきで、制度上に問題点があるという意見もあった」と、分科会の発言をまとめた。
改正基準法も万全ではない
最後に住まいと環境
東北フォーラム理事長で東北大学大学院工学研究科教授の吉野博氏(仙台)が「温度・湿度以外の快適さをどう評価するかが大事で、その評価に各地域の環境条件を考慮することで健康な住まいが見えてくると思う。また、シックハウス新法は守ったからといって必ずしも問題が解決しない場合もある。特にシックハウスを発症した人の住宅をどう造っていくかが大きな課題になる」と、2日間の合同研究会を締めくくった。
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