自然エネ利用の加温型換気 |
小平町・吉田建設 室蘭工大鎌田先生の監修で施工 |
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(株)吉田建設(留萌郡小平町、吉田興悦社長)では、室蘭工業大学鎌田紀彦助教授の監修により、様々な実験的要素を取り入れた二世帯住宅を昨年11月に完成させ、今月9日に行われた新住協旭川支部の例会で見学会を開催。パッシブ換気とパイプファンを組み合わせて厳寒期に低温外気が直接室内に給気される問題を解消した換気システムのほか、太陽熱給湯・暖房や雨水利用による環境配慮、PFP工法を活用した真壁造りや杉板張りの和風デザインなどに注目が集まった。
住宅を南側から見たところ。中央部分がアトリウムホール
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地熱と太陽熱利用
地中とホール経由し給気
この住宅は中庭を屋根やテラス窓などで囲ってサンルーム的な空間としたアトリウムホールを中心に、親世帯と子世帯を分けた完全分離型の二世帯住宅で、延床面積はカーポートを含め約90坪。各世帯へはアトリウムホールを通って出入りする。
最も注目を集めた換気システムは、冬期に冷たい新鮮外気が直接室内に給気されるのを防ぐため、まず新鮮外気をアトリウムホールへの入り口付近に立ち上げた300φの塩ビパイプから地中を通してアトリウムホールに導入し、温めてから150φの塩ビパイプ4本を通して各世帯床下に送り、サンポットの床下放熱器でさらに加温した後、1階床面のスリットから室内に給気する仕組み。アトリウムホールが各世帯への給気・加温チャンバーの役目を果たしている。
排気は洗面所やトイレなど3ヵ所に設置した30立方メートル/時のパイプファン3台と、納戸に設置した100・200立方メートル/時切り替えタイプのファンで行う。 |
給気経路のイメージ図。塩ビパイプを通して新鮮外気をアトリウムホールに取り込み、放熱器のある各世帯ゾーンの床下を経由して室内に給気する |
メンテ負担も軽減
コストは材工で23万程度
地熱と太陽熱の利用により、アトリウムホールの温度は外気温がマイナス14℃でも3℃を保っており、冷たい新鮮外気の給気による不快感は完全に解消。また、室内にはダクト配管がないのでメンテンナンスはほとんど必要なく、仮に塩ビパイプ内が汚れても水洗いできるよう、塩ビパイプには排水ドレンを付けている。
なお、この換気システムにかかったコストは塩ビパイプの埋設も含めて材工で23万円程度とのこと。
入り口から見たアトリウムホール内部
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PFP工法で真壁
木を活かした和風デザイン
構造は集成材の軸組をクレテック金物で緊結したPFP工法で施工し、室内側は真壁造りとして構造材を現しにしている。気密は軸組外側の構造用合板12ミリで確保しており(合板気密工法)、外壁は軸間にグラスウール24K90ミリを充てんし、室内側はポリフィルムを張ってから内装仕上げ。室外側は構造用合板の上からロックウールボード32K30ミリで付加断熱し、胴縁を施工してから一階部分は杉板張り、二階部分は土壁風の窯業系サイディングを使い、和風デザインで仕上げた。窓は全てガデリウスの木製サッシ・トリプルLow-Eを採用している。
基礎部分はフーチングのない凹型形状で、押出スチレンフォームB3種50ミリによる両側断熱。あらかじめ布基礎外周部の地盤に打った幅300ミリ×厚さ50ミリの捨てコン上で墨出しし、布基礎外側の断熱材を立てて配筋してから120ミリ厚の押さえ生コンクリートを打設。その後、布基礎内側の断熱材を立てて生コンを打設する。
布基礎内側の断熱材は3×6尺を2×6尺と1尺×6尺にカットして、2×6尺を布基礎内側に、1尺×6尺をスカート断熱材にそれぞれ利用し、布基礎外側の断熱材は余った部分を斜め割りして、スカート断熱材の勾配を取るのに利用するなど、断熱材を効率的に使用している。
また、布基礎外側の断熱材は押さえコンクリートの下端までかかるので、布基礎と押さえコンクリートの継ぎ目からの漏水防止や断熱性向上にも有効と同社では考えている。 |
室内は真壁造として軸組を現しにしている
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設置予定の真空管方式ソーラー集熱パネル
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環境共生も提案
ソーラー熱給湯・暖房など
このほか、環境への配慮として太陽熱給湯・暖房と雨水利用も実施。太陽熱給湯・暖房は今月中に設置予定で、集熱パネルはサンポット(株)が試験中の真空管方式と、市販中の平板コレクター方式の両方を設置し、真空管方式を子世帯、平板コレクター方式を親世帯で利用することにより、それぞれの運転効率などのデータ取りを行う。雨水利用は雨樋から流れてくる雨水を地中の1,000リットルのタンクに溜め、上水だけを散水に利用するシンプルな仕組みだ。
同社の吉田社長は「鎌田先生の提案と指導によって、自社の技術を存分に発揮できた。現場見学会では驚くユーザーも多く、技術的にも意匠的にも優れた住まいを実現できたと思う」と話している。 |