平成15年5月25日号から
自然エネ利用の加温型換気
小平町・吉田建設 室蘭工大鎌田先生の監修で施工
 (株)吉田建設(留萌郡小平町、吉田興悦社長)では、室蘭工業大学鎌田紀彦助教授の監修により、様々な実験的要素を取り入れた二世帯住宅を昨年11月に完成させ、今月9日に行われた新住協旭川支部の例会で見学会を開催。パッシブ換気とパイプファンを組み合わせて厳寒期に低温外気が直接室内に給気される問題を解消した換気システムのほか、太陽熱給湯・暖房や雨水利用による環境配慮、PFP工法を活用した真壁造りや杉板張りの和風デザインなどに注目が集まった。


住宅を南側から見たところ。中央部分がアトリウムホール
地熱と太陽熱利用
地中とホール経由し給気

 この住宅は中庭を屋根やテラス窓などで囲ってサンルーム的な空間としたアトリウムホールを中心に、親世帯と子世帯を分けた完全分離型の二世帯住宅で、延床面積はカーポートを含め約90坪。各世帯へはアトリウムホールを通って出入りする。
 最も注目を集めた換気システムは、冬期に冷たい新鮮外気が直接室内に給気されるのを防ぐため、まず新鮮外気をアトリウムホールへの入り口付近に立ち上げた300φの塩ビパイプから地中を通してアトリウムホールに導入し、温めてから150φの塩ビパイプ4本を通して各世帯床下に送り、サンポットの床下放熱器でさらに加温した後、1階床面のスリットから室内に給気する仕組み。アトリウムホールが各世帯への給気・加温チャンバーの役目を果たしている。
 排気は洗面所やトイレなど3ヵ所に設置した30立方メートル/時のパイプファン3台と、納戸に設置した100・200立方メートル/時切り替えタイプのファンで行う。

給気経路のイメージ図。塩ビパイプを通して新鮮外気をアトリウムホールに取り込み、放熱器のある各世帯ゾーンの床下を経由して室内に給気する
メンテ負担も軽減
コストは材工で23万程度
 地熱と太陽熱の利用により、アトリウムホールの温度は外気温がマイナス14℃でも3℃を保っており、冷たい新鮮外気の給気による不快感は完全に解消。また、室内にはダクト配管がないのでメンテンナンスはほとんど必要なく、仮に塩ビパイプ内が汚れても水洗いできるよう、塩ビパイプには排水ドレンを付けている。
 なお、この換気システムにかかったコストは塩ビパイプの埋設も含めて材工で23万円程度とのこと。


入り口から見たアトリウムホール内部
PFP工法で真壁
木を活かした和風デザイン

 構造は集成材の軸組をクレテック金物で緊結したPFP工法で施工し、室内側は真壁造りとして構造材を現しにしている。気密は軸組外側の構造用合板12ミリで確保しており(合板気密工法)、外壁は軸間にグラスウール24K90ミリを充てんし、室内側はポリフィルムを張ってから内装仕上げ。室外側は構造用合板の上からロックウールボード32K30ミリで付加断熱し、胴縁を施工してから一階部分は杉板張り、二階部分は土壁風の窯業系サイディングを使い、和風デザインで仕上げた。窓は全てガデリウスの木製サッシ・トリプルLow-Eを採用している。
 基礎部分はフーチングのない凹型形状で、押出スチレンフォームB3種50ミリによる両側断熱。あらかじめ布基礎外周部の地盤に打った幅300ミリ×厚さ50ミリの捨てコン上で墨出しし、布基礎外側の断熱材を立てて配筋してから120ミリ厚の押さえ生コンクリートを打設。その後、布基礎内側の断熱材を立てて生コンを打設する。
 布基礎内側の断熱材は3×6尺を2×6尺と1尺×6尺にカットして、2×6尺を布基礎内側に、1尺×6尺をスカート断熱材にそれぞれ利用し、布基礎外側の断熱材は余った部分を斜め割りして、スカート断熱材の勾配を取るのに利用するなど、断熱材を効率的に使用している。
 また、布基礎外側の断熱材は押さえコンクリートの下端までかかるので、布基礎と押さえコンクリートの継ぎ目からの漏水防止や断熱性向上にも有効と同社では考えている。
室内は真壁造として軸組を現しにしている

設置予定の真空管方式ソーラー集熱パネル
環境共生も提案
ソーラー熱給湯・暖房など

 このほか、環境への配慮として太陽熱給湯・暖房と雨水利用も実施。太陽熱給湯・暖房は今月中に設置予定で、集熱パネルはサンポット(株)が試験中の真空管方式と、市販中の平板コレクター方式の両方を設置し、真空管方式を子世帯、平板コレクター方式を親世帯で利用することにより、それぞれの運転効率などのデータ取りを行う。雨水利用は雨樋から流れてくる雨水を地中の1,000リットルのタンクに溜め、上水だけを散水に利用するシンプルな仕組みだ。
 同社の吉田社長は「鎌田先生の提案と指導によって、自社の技術を存分に発揮できた。現場見学会では驚くユーザーも多く、技術的にも意匠的にも優れた住まいを実現できたと思う」と話している。

高性能住宅Q&A-必見! シックハウス新法11
三位一体で仕上げ
クロスなど下地まで規制対象
あやふやだった点の扱い
問  題
あやふやだった点
結  論
建材規制の対象部位 ①軸材・巾木類の扱い 規制対象外(額縁、手すり、窓台、建具枠、カーテンボックス等の造作材、障子、間柱も同様)。ただし面積制限あり
②クロス(壁紙)・じゅうたんの下地 接着剤・下地材も仕上げ規制(クロスなどとともに三位一体で規制対象)。なおフロアは接着剤まで仕上げ規制
③収納の棚板など 取り外せるものは対象外
④面積計算 実面積でよいが芯々でもOK(安全側だから)
設計変更の扱い ⑤造作家具の追加・変更 上位基準への変更・追加は再度の確認申請不要

換気設備関係
⑥居室の対象外 納戸や押入(原則は天井裏等、ただし換気設計によって変わる)
⑦居室と一体となるドア等 ドアのアンダーカット(1㎝程度)、折れ戸、引き戸、ふすま・障子
⑧レンジフードの扱い 低量常時換気分のみ
⑨換気設備のスイッチ 容易に止められないもの(常時運転を指示する注意書き、カバー付きOFFボタンなど)
⑩冬場の換気量 自然換気+機械換気でクリアできればよい
天井裏等の規制 ⑪居室との区画方法 気密層、壁の上下枠材(2×4壁)
 全国各地で国土交通省の担当者によるセミナーが始まっています。詳細は四面で掲載しており、そちらを参考にしてほしいのですが、これまで『Q&A』で解説してきたなかで、あやふやだった点はどうなったかをまとめておきたいと思います。
 主なポイントを表にまとめました。まず、1.軸材や巾木類ですが、基本的に規制対象外です。ただ、当該部位に対し見付面積の10分の1を超える場合は対象とするという複雑な規定もあります。階段では手すり、笠木、側桁が対象外ですが、踏み板と蹴込みは対象となり、オープン階段は部材の両面が対象となります。
 次に2.クロスなどの扱いです。壁紙(クロス)は透過性があるから、下地まで遡って仕上げ規制にかかることになっていますが、この場合塩ビクロスも対象となるかという点です。これはすべてのクロスがひとくくりで下地まで遡るという運用になるようです。つまり、クロス+のり+下地ボードの三位一体で規制対象となり、このうちホルムアルデヒド発散等級の最も低いものがクロスの等級となります。このため、内装下地として合板類を使うときは、ホルムアルデヒドの発散等級に要注意です。
 同様にじゅうたんも接着剤+下地ボードまでが対象となります。このとき注意しなければならないのは、コンパネです。コンパネは新しいJAS規格の上では規制対象外のF☆☆☆☆グレードがないので、床下地としてはコンパネを使わないほうがいいと思います。
 なお、木質フロアは接着剤までが仕上げ対象で、下地材は基礎断熱の場合は天井裏等です。床断熱の場合は、気密層としてシートが下地材の下か、下地材が気密層を兼ねる合板気密なら、下地材だけが天井裏の規制で、断熱材は規制対象外です。
 壁も床も下地材の扱いが複雑ですので、すべての規制対象外となるF☆☆☆☆を使うべきでしょう。
 3.収納家具類については取り外せるものは対象外となりますので、家具店で買った食器棚はもちろん、取り外しできる棚板は対象となりません。
 4.面積計算については簡単な芯々でOKです。実面積よりも芯々のほうが面積が広くなり安全側だからです。
 5.設計変更についても、安全側への変更は再度の確認が不要ですが、例えばF☆☆☆建材の追加は面積規制に絡んでくるので変更届が必要になります。
 次に換気についてですが、6.の居室の対象とならない部位は非常に複雑です。まず、居室はLDKと寝室、和室を指し、これ以外は居室ではありません。残りの空間、すなわち玄関、廊下、階段、脱衣室、浴室、トイレは、換気経路にならない限り、居室とはならない、つまり換気は不要です。ただし、居室と廊下の間にドアのない設計(北海道はこれが多いと思います)では、一体の空間となり居室扱いとなるでしょう。(次号へ続く) 

防音床パネルを発売
住友金属鉱山シポレックス ALC板と床合板一体化

在来金物工法のおさまり例
 住友金属鉱山シポレックス?(本社東京都港区)は、防音性に優れた軽量気泡コンクリート(ALC)パネルと、床下地合板を一体化して施工性を向上させた木造住宅用防音床パネル「閑」(のどか)を七月から発売する。
 同製品は、防音・防火性に優れた五〇?厚のALCパネルに、一二?の構造用合板と四?のラワン合板を両側から加圧接着して一体化したパネルで、ラワン合板を上面に使用した製品が「閑Ⅰ種」、構造用合板を上面に使用した製品が「閑Ⅱ種」。
 ねじり剛性で二八?厚合板の約三倍の強度があるため、根太を省略でき、大引も最大一、〇〇〇?ピッチまでとばせる。また、床材は、閑の上に直接敷き込むことが可能で、防音床が通常の床とあまり変わらない手間で施工できる。
 防音性は、重量床衝撃音に対して有効で、独立天井にすることでLH―六五程度の防音性能が期待できる。なお、閑Ⅰ種は準耐火仕様に対応しているため、準防火地域での共同住宅でも使える。Ⅰ種、Ⅱ種とも合板の厚さは変更可能。合板の接着剤には低ホルムアルデヒド仕様を使い、現在試験販売されている製品ははFC0相当だが、七月の本格発売時にはF☆☆☆☆仕様に切り替わる。サイズは、厚さ六六×幅六〇六×長さ一、八二〇?。メーターモジュール用に長さ二、〇〇〇?タイプもある。
 施工は、割付を行い、柱や筋交いや金物があたる部分は切り欠くか側根太を用いて長さ九〇?以上のタッピングビスなどを使って止める。
 設計価格は五千円程度/枚になる予定。問い合わせは、同社北海道営業所(札幌市中央区北一条西三丁目三、011・281・6711)へ。

天窓に白枠タイプ
ベルックス バリエーション広げ好評

GGUタイプの使用例

GGUタイプの断面
 日本ベルックス(株)では、ルーフウインドのGGLタイプに、湿気や汚れに対する耐久性を強化した白枠のGGUタイプを今年初めに追加設定、5月出荷分からはスカイビューシリーズも一部改良・ラインナップの強化を図った。
 GGUタイプは、基本的な作りはGGLタイプを踏襲しながら、木製枠材の表面をポリウレタン樹脂で一体成型し継ぎ目なくカバーした製品。洗面所や浴室など湿気の多いところでも防水性や耐久性に優れている。外装と内装色ともに白で、デザイン的にも新鮮味がある。
 また、スカイビューシリーズでは、5月以降の出荷分からガラスの変更や製品の追加発売などラインナップを強化した。まず、押出し外開き型のVSタイプは、従来の透明強化ペアガラスを、内側のガラスを安全性の高い倍強度合わせガラスに変更して価格は据置のまま発売した。次に同タイプに設定のなかった型板網入り強化ペアガラスを新たに設定した。さらに、固定窓のFSタイプ、VS電動開閉型、同手動開閉型ともにサイズを、325、101、302、304、606、308の6バリエーションに統一した。このほか、FSタイプにしかなかった、20分間の遮炎性能を持つ防火設備(旧乙種防火戸)として認定を取得したモデルをVSタイプに追加、防火規制のある地域でも使用することが可能になった。
 価格は、GGUタイプの304サイズ(780×980ミリ)で8万円(網入り透明強化ペアガラス、ブラインド別)など。
 問い合わせは、同社札幌営業所(札幌市白石区本郷通7丁目南3-15、Tel.011・864・4761)へ。


手軽に防犯対策
アクト警備オフィス オートロックシステム

室外側に取り付けるドアロック本体
 (有)アクト警備オフィスでは、後付け可能なドア用オートロックシステム「MY・LOCK-S(マイロックエス)」 の販売・施工をこのほど開始。販売代理店である美ハウス(株)と特約店契約を結んでおり、道内でもピッキングによる被害が増加する中、防犯対策商品として販売していく考えだ。
 マイロックエスは、24時間オートロックシステムなので鍵をかけ忘れる心配がなく、解錠は鍵を使わないデジタル無線リモコンによるワンタッチ方式。リモコンは必要な数だけ増やすことができる。また、本体についているテンキー操作での解錠も可能で、あらかじめ設定しておいた2~9桁の暗証番号を入力するだけでよい。
 暗証番号は3人分(3パターン)まで設定することができ、それぞれ違う解錠音が鳴るので、音で誰が帰ってきたかを確認する事ができる。そのうち、3番目に設定した暗証番号は必要に応じて入室を制限できるので、介護サービス担当者など昼間訪問してほしい人には3番目の暗証番号を利用してもらい、夜の入室を不可能にすることができる。また、内側から解錠できないように設定する機能もついており、痴呆老人の徘徊防止など医療施設での利用も有効だ。
 電源は乾電池を使用、1年間に単3電池4本分が目安。標準小売価格は9万8千円。取り付け費は別途。
 問い合わせは同社セキュリティ事業部(札幌市東区北33条東8丁目8-3-1光山ビル2F、Tel.011・748・3580)まで。

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