平成15年5月15日号から
地産カラマツで三階建て
大径木を無垢材のまま利用 帯広 古田建設
 古田建設(株)(帯広市、古田剛好社長)は、先月19日から、音更町のすずらん台ニュータウン内に道産カラマツの無垢材を使用した提案型のモデルハウス「悟空な家」を公開した。

ほとんどが無垢材
主伐材有効利用の道を開く

 同モデルは、同社が昨年から進めている注文住宅「北楽工舎(きたらこうしゃ)」シリーズのひとつとして建てたもので、大きな特徴は、十勝・浦幌産の40~50年生のカラマツ大径木を無垢材のまま構造柱として使用している点。断面が120×240ミリの大梁も無垢材だ。通し柱のみ、カラマツ集成材を使用している。
 カラマツは、樹齢50年の主伐材に適した人工林が今後大幅に増えることから、有効な利用法として、住宅建築に使うことが考えられている。今回は、オホーツクウッドピア(本社工場・常呂郡留辺蘂町)が製材して供給しているが、無垢材として使える直径40センチ前後に成長したカラマツが今のところ浦幌でしか産出せず、供給量が安定するのは5~10年後と見られることから、当面は古田建設限定で供給するという。
自然素材を多用
眺望活かしたプランニング

 プランは、十勝川に近い南面傾斜地という恵まれた条件を生かして、約80坪と余裕のある敷地に、眺望の効く3階建て。延床面積約37坪。1階は寝室などプライベートルーム、2階はリビングダイニングのみで構成、3階はゆったりとしたヒノキ張りの浴室と天井暖房「エナジョイ」(発売元・フクビ化学工業(株))を利用したサウナ室。これにウッドデッキ型のバルコニーを設置、入浴後に外に出て眺望を楽しむなど、家族や友人でくつろげる空間とした。
 外観は、スカイブルーに塗装した窯業系サイディングに玄関廻りや窓廻りに一部ガルバリウム鋼板を張るなど、モダンなデザインにしている。
 内部仕様は、道産カラマツを天井材、巾木、階段部分などに多用、床材には香りを楽しめる秋田スギを使うなど、無垢材をふんだんに使い、合板類は水回りの床材などにとどめ、木部の塗装は化学漂白していない蜜ロウを使った天然ワックスで仕上げるなど、自然素材にこだわった仕上げ。インテリアのデザインも和風にして、くつろげる雰囲気作りを行っている。
 設備面では、暖房は灯油温水パネル暖房とし、換気は1階がマックス(株)の浴室暖房乾燥換気システムによる第三種換気、2階がダクトレスの第三種換気を使用。給水・給湯配管はスウェーデン・ウイルスボ社製の架橋ポリエチレン配管システムを採用している。

風土に合った住まい
リーズナブルな価格設定

 性能・構造面では、同社が標準仕様としている在来軸組金物工法「スーパーメタル工法」(開発元・ナガサワ建販(株))を採用。構造用合板を壁・床ともに使用、床は25ミリ厚を使って根太を省略した根太レス構造としている。
 なお、通し柱は集成材として強度をアップ、無垢の構造材も含めてすべて四寸柱。断熱は、外壁は高性能グラスウール100ミリ充填、天井部はブローイング300ミリ、サッシはLow-Eペアガラス入りPVCサッシ。
 価格は、広さによっても異なるが、目安としては45万円/坪から。
 古田剛好社長は、「北楽工舎シリーズは、人・環境・地球に優しい、十勝の風土に合った暮らし方を提案できる住まいとして特に力を入れており、基本設計も札幌の(有)TAU設計工房の藤島喬先生にお願いするなど、質の高い住宅になったと思う」と語っており、同社ではローコスト企画住宅のFORTH(フォース)と並ぶ柱に育てていく予定。モデル外観。思いきったデザインに挑戦したという

モデル外観。思いきったデザインに挑戦したという


床は秋田スギ、真壁構造なので構造柱が直接露出している

素材を活かした設計
協和ハウス 軸組も美しく見せる

天然素材軸組の美しさを最大限に引き出したデザイン性がポイント


 比較的シンプルながら豊富な収納スペースを備えるなど使い勝手にも配慮

物置に貼ったカラー鉄板との組み合わせも印象的だ
 (有)協和ハウス(室蘭市、松繁英二社長)では、伊藤建築創作工房(室蘭市、伊藤俊朗氏)設計・管理による住宅「終の棲家(ついのすみか)」を室蘭市内に建設。期間限定で行っている一般公開では、性能だけでなく自然素材を活かし、ほかにはない意匠性を兼ね備えた住宅内部が披露され、見学に訪れた人達の話題となっている。
 「終の棲家」とは─住人が一生住める住宅を目指して─という意味が込められており、「質の高い住宅の建設コストは高いものなのでしょうか」という協和ハウス松繁社長の問いかけがきっかけとなり企画建設された。
 伊藤氏は“あたたかい家”をテーマに設計活動を行っており、「セントラルヒーティングは経済的にそれを維持できるだけの住宅本体の性能確保が必要。セントラル換気は建物の寿命を伸ばす事と住む人の健康を維持するために必要」と考えており、この住宅は温水セントラル暖房、第三種換気システムが装備されている。相当隙間面積0.32平方センチ/平方メートル、熱損失係数1.02ワットと高い性能に加え、換気回数0.6回/hを確保した健康な環境を演出している。
 主要な構造体には、狂いが少なく安定した強度が得られる構造用集成材、接合部分にはクレテック金物を採用したPFP工法。「強くて美しい軸組も特徴」と伊藤氏は話している。

木と珪藻土を多用
感性と健康を一番大切に 人が暮らす器である住宅には住む人の感性と健康を一番大切にしたいとの考えから、職人仕事と天然素材にこだわり、構造柱・梁・天井などを現しとして珪藻土を全面に塗った室内は、木の温もりと塗り壁の素材感が職人達の息使いまで感じさせる空間だ。現しの構造や床・建具などに塗装を施しブラウン系色に統一した木部、白系色の塗り壁、ほど良く射し込む陽射しがマッチし、室内空間の美しさを演出している。
 外観は、住宅と一体の物置にカラー鉄板を張り、全体に塗った赤茶系色の珪藻土と木製サッシによる構成と、2階のバルコニーを併用した玄関のアプローチ、切り妻屋根が独特のデザインを表現している。
 住宅はPFP工法による新在来木造構法、延床面積が173平方メートル、基礎には押出スチレンフォームB三種70ミリ、外壁にはGW24K100ミリ、屋根にはGW24K200?。デザイン性と気密性を高めるために木製サッシトリプルLOW-Eガラスを採用している。
 協和ハウス松繁社長は「設計事務所、工務店、不動産などが協力してお互いの得意分野を活かすことでよい家づくりが行えた。これからも低コストでありながら性能とデザインにすぐれた住宅を建てていきたい」と話している。全体に珪藻土を塗ったモデルハウスの外観。 

高性能住宅Q&A-必見! シックハウス新法10
換気量をチェック
万一の場合も想定し、ぜひ


パッシブ換気の扱いは微妙だ
 個別換気の場合は別として、セントラル換気の場合、ビルダーは設計を外注するケースがほとんどでしょうから、まず大切なのは、物件が換気回数0.5回でいいのか0.7回が必要なのかをハッキリさせるとともに、居室部分を明示し、換気対象面積を計算できるようにして図面を渡すことです。
 そしてもう一点、忘れてならないのが施工後の換気量チェックです。換気システムがしっかり換気量を確保できているか、それは換気システムの信頼性でもあるわけですが、これを行うのは元請であるビルダーの責任です。法律上は換気量チェックをする必要はありませんが、万一の事態を想定し、竣工後に確実に換気量が出ているかどうかを風量測定しておくことが大切です。
 換気回数0.5回/h以上という基準が示されて、道内では『換気量が多すぎて寒い、乾燥する、熱損失が多くなる』という声もあがっています。
 確かに0.5回と0.3回では熱損失は住宅全体で1割程度も違ってきますし、湿度も10%程度違うでしょう。0.3回でいいか0.5回必要かという議論は後回しにして、換気回数を減らしてもいいか、という点について考えたいと思います。
 まず、ビルダーは必ず0.5回以上の能力がある機械を設置しなければなりません。その意味では0.3回でいいというわけにはいきません。
 では居住者が換気を少なくした場合はどうか。これについては国土交通省もOKという判断のようです。つまり居住者も設計・施工者も罰せられることはないということです。
 ずいぶん曖昧な法律解釈だな、と感じることと思います。建材規制に比べ、換気設置の基準は実はかなり曖昧なのです。
 少々理屈っぽくなりますが、法律を見ると、義務化されるのは換気設備の設置であって運転ではありません。またシックハウス対策は最も条件がシビアになる夏場を想定しており、これを裏返して考えると冬場は換気量を落としてもいいということになります。
 ではパッシブ換気はどうか。換気設備の設置義務化なので、当面は動力を使わないパッシブは認められそうにありません。ただ、冬場はパッシブで夏場はトイレや常時換気モードのレンジフードで対応するという考え方も成り立つのです。


棟全体にガラリ
北見工大・坂本先生 小屋裏は自然換気が効果的
 ジェイベック(株)主催による北見工業大学坂本弘志教授の講演会「住まいと換気」が四月二十四日、札幌で開かれ、室内換気と小屋裏換気に関する坂本先生の調査・研究などについて、七〇名あまりの参加者が最後まで熱心に耳を傾けた。
 講演は七月から施行のシックハウス新法の概要、室内化学物質(VOC)調査結果から見たシックハウス対策、そして暑熱環境緩和のための小屋裏換気。
 このうち小屋裏換気について坂本先生は、「雨や雪などの侵入を防ぎながら十分な換気量を確保し、小屋裏内部と外気との温度差を五℃以内に抑えることを目的に、換気部材の開発を進めた。実は、換気を増やせば増やすほど小屋裏の温度が下がるかというとそうではなく、一定量を超えると温度はほとんど下がらなくなる。その意味でも五℃の温度差に保つための自然換気ガラリは有効であり、逆に言うと小屋裏換気に機械ファンを使っても効果は低い」と説明し、先生の開発した棟換気と軒天換気の実験データなども示した。
 また、棟換気について「公庫基準上は一・八?もつければいいことになるが、空気の出入りは通気抵抗も考慮しなければならない。小屋裏内外の温度差を五℃以内に抑えるためには棟全体にガラリをつける必要がある」として設計時の注意を促した。


小屋裏の温度は外気温プラス5℃程度に収まっており、
換気がない場合と比べて札幌で10℃程度も低い

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