平成15年2月5日号から
表示統一へ大きな一歩
ヒータの放熱能力を試験

道内では標準的設備となった温水セントラルヒーティング用のパネルヒータ。今回の問題は暖房業界だけの問題にとどまらない
北暖協 BL製品、カタログ値の7割以下
 北海道内を中心とした住宅の暖冷房・換気システムの工事業者らで組織する北海道暖冷房換気システム協会(宮川一男理事長、北海セントラルシステム(株)社長)では、昨年、住宅用温水パネルヒータの放熱能力試験を実施、その結果カタログ値に対して実測値が3割以上も下回っている製品があることがわかった。同協会ではこの結果を重く見て、製品にBLマークを付与しているベターリビングに是正を求めるとともに、パネルヒータの発売元に対してカタログ表示の修正を求めている。

現行JISに準じた測定最大32.3%の違い
 問題の発端は、入居者からの「寒い」というクレーム。
 北海道の住宅性能レベルがここ数年で高くなり、暖房設備も熱損失係数など断熱性能値を踏まえた上で行うようになっているが、「寒い」というクレームは住宅性能がしっかりしており、暖房の施工ミスがない物件からも発生することがあり、同協会の会員から「放熱器そのものに問題があるのではないか」という声があがるようになってきたという。
 これを受けて同協会では2年前の平成13年からパネルヒータの放熱能力について、協会事業として取り組みはじめた。
 測定結果は別表の通り。製品はすべてBL認定を受けているタイプで、測定は道立工業試験場(道工試)に委託して、JIS試験法に準じた方法で行った。
 この結果、窓下などに取り付ける横型のヒータではカタログ値に対して5%前後の差に収まった機種が5タイプある一方、最大32.3%も能力が低い機種があることもわかった。玄関ホールなどに取り付ける縦型のヒータでは測定機種の半分に当たる四機種がカタログ値を20%以上も下回り、最大で29.4%も能力が低い機種があることがわかった。また、縦型と横型を平均値で比較すると、縦型のほうが能力が低いこともわかった。

メーカー
横型ラジエータ
縦型ラジエータ
カタログ値 カタログ値を100とした場合の測定値(%) カタログ値に対する測定値の能力(%) カタログ値 カタログ値を100とした場合の測定値(%) カタログ値に対する測定値の能力(%)
A社
未発表
80.0
-20.0
未発表
80.8
-19.2
B社
95.7
-4.3
88.4
-11.6
C社
102.5
+2.5
101.2
+1.2
D社
99.1
-0.9
77.7
-22.3
E社
68.3
-31.7
70.6
-29.4
F社
106.3
+6.3
98.8
-1.2
G社
94.9
-5.1
77.0
-23.0
H社
67.7
-32.3
73.5
-26.5
単純
合計値
9.849kW
8.742kW
-11.2(%)
8.897kW
7.462kW
-16.1(%)
1台当たり平均値
1.230kW
1.093kW
-11.2(%)
1.112kW
0.933kW
-16.1(%)

北暖協が道立工業試験場に委託して放熱能力を測定した8社16タイプの製品試験結果概要
測定条件 平均温水温度:70℃ ラジエータ温度低下:20K 室温:20℃
Δt:50deg(JIS A4004,1998:11試験法に準じた)
メーカー名は匿名扱い、またラジエータは各メーカー2タイプの市販品を複数の管材問屋から有料で購入した。
全てBL認定品と同一型式。
1kW=860kcal/h 表は北暖協の資料をもとに編集部が編集した。

是正へ動き出したBL
メーカーはカタログ修正へ

 測定結果を受けて同協会では昨年、ベターリビングに対し質問状を提出。“ラジエータ(パネルヒータ)の試験はJISによる”となっているBL認定基準に照らし、試験結果は誤差の範囲を超えており、BLの認定に問題があるのではないか―などといった質問について、正式の回答を求めた。
 ベーターリビング側は同協会に対し現行JISとの不整合について早急に対応すると回答。BL認定を申請したメーカー・発売元に対し申請内容について問い合わせる一方、今後の是正策を検討。その結果、本紙取材に対し、「測定結果はカタログ値から大きくはずれるものではない」としながらも、「今後JISによる表示の統一を進める(同財団研究企画部藤井利幸企画課長)」としている。
 なお、パネルヒータはBL部品として認定を受けると、同時に「省エネルギー住宅工事(暖冷房・給湯設備設置型)」として住宅金融公庫の割増融資の対象となってきた。この点について公庫では「正式なJIS測定法による試験結果が明らかになるまでは何も言えない」と答えている。
 同協会では測定値のクロスチェックのため、現在道立北方建築総合研究所(北総研)に試験を委託中。道工試はJIS試験法と同じ環境がないため、JISに準じるかたちでの測定にとどまっているが、北総研では完全なJIS測定法による試験結果が得られる。
 このような動きを受けて、パネルヒータのメーカー・発売元サイドは、多くが4月以降の今年度版から修正または従来法との併記などのかたちでカタログの見直しをはじめるとしている。ただ、各社とも表示方法の統一は大切なことであり、消費者の利益にもつながるという点では一致しているものの、「歓迎すべき動き」とする声がある一方で、慎重な姿勢をとっている会社もある。
解説
パネルヒーターの能力表示 入り組むメーカーの利害
必要なのは統一表示 認定者BLの責任は重大

 現行JISによって測定した場合のカタログ表示の違いは、背景に業界内の複雑な問題も絡んでいるが、認定機関としてこの問題を放置したベターリビングの責任は重大で、同財団では昨年末、処分者も出た。
 まず、技術的な問題としては、縦型タイプがカタログ値に対して性能が低いということが今回初めてわかった。温水の流し方やバルブ方式などによって、性能値が予想以上に出ていないというのがその理由のようだ。これがクレームにつながらなかったのは、縦型は主に玄関ホールなどに使われ常時居住する場所ではないため、居住者も気づかなかったのではないかと見られる。
 次に、1998年に現行JISが定められるまで、国内と海外では測定条件が異なっていたために、主に国産品と輸入品で表示の統一ができず、現行JIS以降もその状態を引きずっているという点も指摘できる。
 現行JISは新しいヨーロッパ規格(EN442)も参考にしながら国際規格(ISO)へ整合させたとされるが、旧JISで表示していたメーカーは技術資料などマニュアル類の整合性を維持するため、旧JISによる表示を続けた。旧JIS表示で問題が出ていないマニュアルを現行JISに改めることによる混乱を避けたいという想いが働いたようだ。
 また、JIS測定法による試験を行える機関が、これまで国内にほとんどなかったという事情もある。道工試のようにJISに準じた試験は行えるものの、完全なJIS試験を行えるのは昨年春に竣工した北総研を含めても国内に2ヵ所くらいしかないのでは、ともいわれている。
 いくつかある基準の中でどれを国内基準にするかは製品の能力評価と直結するだけに基準制定にはメーカー・発売元の思惑も働くが、国内基準がISOに準拠すると決まった以上、現行JISで表示を統一するのが当然だ。
        ※                      ※
 一方、製品を認定する側のベターリビングは、製品のBL認定後毎年、認定の維持(サーベイランス)を行うことになっているが、これが行われていなかった。北海道暖冷房換気システム協会がこの問題を指摘して以降、遅れていたサーベイランスを行うとともに、関係者の処分も発表した。自らの非を認めたわけだ。
 しかし「測定結果はカタログ値から大きくはずれるものではない」という同財団の回答は旧態依然とした責任逃れの姿勢だ。
 これは、同財団に提出されている性能値が現行JISでの測定値と大きく違わないという意味ではなく、“BL認定品を現行JISで測定すれば今回の測定値程度になる”という意味であり、申請受理時点で虚偽申請はなかったことを言っているに過ぎない。
 BL認定基準はJISによることとなっており、現行JISが制定された1998年以降、現在までの間にBL認定品として住宅に取り付けられた製品に対する認定者としての責任はどうなるのか、という点についての回答にはなっていない。
 サーベイランスを行わなかったことによって不利益を被った消費者から実際の被害が発生した場合、同財団が責任もって救済すべきだろう。
 同じことは公庫にも言える。完全なJIS測定法による試験結果が出るまではコメントを控えるというのも一つの対応だが、本紙が昨年末にこの点について問い合わせて以降は、公庫本店はパネルヒータの能力表示に問題があるということを認識しながら割増融資を続けていることになる。
 薬害エイズ問題のような人命に関わることでなければ急ぐ必要はない、という認識なら早急に改めるべきだ。

通気層施工を短縮
ホーム創建  胴縁兼用防水シートを使用
 (株)ホーム創建(帯広市、阿部利典社長)は、キャスケードコンポーネンツ(日本事務所、神奈川県横浜市)が輸入する通気胴縁と透湿・防水シートの2役をこなす「レインスクリーンシート」をこのほど初めて採用し、施工した。
 通常の施工では、躯体を防水シート(タイベックなど)でラップしてから木製の通気胴縁を施工して通気層を作るが、本製品は、防水シートに胴縁の役目を果たす半円形状の特殊樹脂メッシュが一体となっており、施工の大幅な合理化が図れる。防水シートは、アルミとポリエチレンの複合素材で、防水紙部分の表面には特殊加工で無数の微細孔を設けて透湿性を保っている。さらに、アルミ素材が熱を遮断する働きもあるため、冬は室内の熱を封じ込めて室内に輻射し、夏は外装材などによって暖められた通気層の熱を遮断することも期待できるという。
 特殊胴縁シートは、特殊樹脂メッシュネットが立体的に網目に絡み合い、高さ12ミリの隙間空間を生み出す。全方向に通気性があり、木製胴縁のように方向を気にせず施工できることから、窓回りなど一気に貼ることができる。現在輸入されている製品は12ミリ相当の通気層ができるが、今後は19ミリ相当の製品もラインナップに加わる。
 ホーム創建が行った施工法は、躯体の構造材などに同製品をタッカーで止め、重ね部分は、一方の特殊胴縁シート部分をカッターなどで剥がして胴縁シートが重ならないよう処理。さらにその上から窯業系サイディングを貼った。サイディングは目地をステンビスで留め、目地部分はタッチアップで仕上げた。

今回の施工では1階の窯業系SD下地用として使用
 阿部社長は、「不陸の調整はビスの締め具合で簡単にでき、胴縁シートに通気の方向性がないので窓回りなどの施工も楽にできるという特徴があり、今後も窯業系サイディングとの組み合わせで使っていきたい」と話している。
 製品規格は幅990ミリ×長さ30,480ミリ/巻、価格は工務店渡しで2万6100円/巻(900円/平方メートル)。厚さ19ミリ品の価格は未定。
 問い合わせは、キャスケードコンポーネンツ日本事務所(神奈川県横浜市港北区新横浜3-20-5、TEL.045・475・0711)へ。

重ね部分は左のように胴縁シートだけを剥がして処理


出隅なども施工しやすい

カラスから“ゴミ”を守る
旭鉄工所 アイデア商品発売
 (株)旭鉄工所ではこのほど、ゴミステーションをカラスから守り、使い勝手や美観も優れた「ステーションボックス」を開発、モニター設置した町内会でたいへん好評だったことから、3月から本格発売する。
 ゴミ袋が透明になってから全国的にカラスがゴミを荒らす被害が頻発し、自治体や町内会レベルの工夫もむなしく、根本的な解決には至っていない。
 「このままでは子供の教育上も良くない。ゴミが散乱している街は、その原因がカラスにあったとしても風紀の乱れや環境悪化の原因になる」そんな想いから開発に取り組んだのが同社監査役の古川徳一氏。
 ステーションボックスは使わないときは折り畳んでゴムロープで固定しておき、収集日にパネルを開いて組み立てる。ゴミは組み立てたパネルの中に入れ、ネットを掛けておく。使い方はとても簡単で、モニターで設置した町内会では、誰でも組み立て・畳んで使っているという。
 販売価格が高ければいいものでも使ってもらえないことから、品質と安全性を維持しながらできるだけコストを抑えたといい、また、使い勝手も徹底的に工夫されている。
 例えば本体はゴミを投入する手前側が低くなっており、また、上部のネットがゴミ箱内部に落ちないよう、本体を台形に組んで手前側のネットのミミがはみ出すようになっている。
 本体は亜鉛メッキ鋼材でこれに樹脂ネットを止めつけており、設置は支柱を据え置いて現場で垂直を出すなどして微調整する。下部からカラスに狙われないようにパネル下にはスカート状フィンがついている。
 これまでのモニター先からはたいへん好評で、カラス被害もない。収納時にはゴミ箱とは思えない綺麗な納まりで好評だ。
 販売先は各町内会を想定しているが、口コミ型商品であることから、今後さまざまな形でのPRを進めていく。3月3日から8月29日までは発売記念価格として札幌とその近郊に限り定価の20%引きで販売する。
 機種は収納量に応じて3タイプあり、最も小さい20~30軒用(1A型)が定価9万4000円(特価7万5000円)、40~50軒用の2A型で定価12万円(特価9万5000円)。
 問い合わせは同社北広島工場(北広島市共栄542、TEL.011・372・2213、担当・古川氏)へ。


ゴミステーション。写真は1A型

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