平成15年2月15日号から
新市場創る医療福祉施設
DL(デザインラボ)コシノ設計、酒井組が石狩で建設




外装材に高耐久な中空セメント押出成形板を使ったラルゲットの外観と間取り図
 ここ数年、道内のマイホーム新築市場は徐々に縮小し、ビルダーはその減少分をリフォームなど他の市場で補わなければならない時代となっているが、これから注目したい市場として挙げられるのが小規模医療福祉介護施設の建設だ。そんな折り、このほど(有)デザインラボ・コシノ(札幌市、越野哲郎社長)設計、(株)酒井組(石狩市、酒井敏一社長)施工による精神障害者のグループホーム「ラルゲット」が石狩市内に完成した。

市がバックアップ
木造外断熱でコスト抑制 グループホームとは、精神障害者や痴呆性高齢者などが、寝る・食べる・入浴する・排泄するといった日常生活を自立して送れる環境を整えた施設のことで、利用者の社会復帰を手助けする役目も担っている。
 今回建設されたグループホーム・ラルゲットは、医療法人社団悠気会熊谷病院が建設・運営する施設だが、平成11年に精神保健福祉法が改正され、平成14年度から医療福祉に関する業務を市町村が行うことになったのをきっかけに石狩市が補助金などでバックアップ。デザインラボ・コシノが行った設計で同病院が複数の業者を指名し、入札を行った結果、9社の中から酒井組に決定。建設費は約4,800万円で、昨年9月下旬に着工し、今年1月末に竣工・引き渡しとなった。
 ラルゲットは延床面積約255平方メートルの木造平屋建て。通常、グループホームのような医療・福祉介護施設の場合、RC造など非木造で建設することが多いが、デザインラボ・コシノの越野社長は「今回はなるべくコストがかからないように木造にした」という。
  しかし、木造だからといって性能面で他構造に劣ることはなく、外断熱によって高断熱・高気密化。軸組外側の構造用合板9.5ミリの上にロックウールボード32K25ミリとロックウール24K100ミリを二層張りし、外装材は通気層を取って専用の樹脂ブラケット(SHブラケット)に固定している。気密は軸組と構造用合板の間に張ったポリフィルムで確保。外装材は鉄道の遮音板としても使われている中空セメント押出成形板を使い、メンテナンス負担を軽減している。

ロックウール外断熱としたラルゲットの矩形図
土間床蓄熱式床暖房を採用
  床部分は土間床とし、布基礎両側と土間下はフォームポリスチレン板100ミリで断熱。土間コンクリートの中には電熱線が埋め込まれており、深夜電力を利用して蓄熱・床暖房する。天井の断熱はブローイング300ミリ。換気はパブリックスペースと職員室に熱交換換気を採用した。
 間取りは居間・食堂を中心に、入居者の居室八室、台所、洗面洗濯室、トイレ、浴室、職員室、相談コーナー、宿直室を配置。居間・食堂の話し声やテレビの音が居室に響かないように、居間・食堂と各居室の間には廊下を挟み、各居室間もプライバシーを守るために、間仕切り壁を屋根下まで延長し、石膏ボード9.5ミリを二重張りして、小屋裏で音が響かないようにしている。強い社会ニーズ
 ビルダーは技術力を提案 2020年には4人に1人が高齢者となり、また精神障害者数が毎年4万3,000人程度(札幌市除く)で推移している道内では、痴呆性高齢者や精神障害者が社会復帰のための訓練的な役割を担う施設の必要性が高く、特に精神障害者のグループホームはかなり不足気味という。何十年後かには高齢者の比率も減少に転じるというが、当面は社会的なニーズも強く、高齢者・障害者のための医療福祉介護施設はまだまだ需要が見込める。行政からの助成も期待できるので、ビルダーとしてはぜひとも取り組みたい分野だ。今回の事例のように経験豊富な設計事務所と組めば、ビルダーは自社の技術力を生かした提案ができるだろう。
 酒井組の家守寛営業部長は「地元の仕事であり、福祉関係というやりがいのある仕事なので入札に参加した。高齢者・精神障害者に対するケアが大切になる時代であり、それらの人たちが快適に暮らせる場を提供するのは企業としての義務でもある」と話している。

都会型分譲が人気
日崎建設・札幌 三階建ての外断熱RC住宅
 日崎建設(株)札幌支店(辻裕介支店長、本社帯広市)では、昨年から外断熱RC住宅を分譲住宅などで採用、札幌市内の数ヵ所で販売したところ好評で、1月に行われた現場見学会でも来場者約50組中3組が申込み、さらに注文住宅など5、6組が見込み客としてリストアップできるなど、マンション並みの立地条件と戸建住宅のゆとりを併せ持った分譲住宅として人気を集めている。
 同社はアパートやマンションのFC「ヒーローマンション」の全国展開で知られるが、ここ1、2年は外断熱RC住宅の「スターハウス」事業にも力を注いでいる。
 スターハウスは、同社が開発し、特許出願中の型枠兼用断熱材「P2パネル」を積み上げ、コンクリートを打設して躯体を構成する。型枠合板を使用する場合に比べて施工の手間が減り、合理化が図れる。断熱材はウレタン系で両側とも40ミリ厚で次世代省エネをクリア。同社ではこの方式を『サンドイッチ断熱』と呼んでいる。P2パネルには等間隔で縦方向にスリットが入れられているため、曲面施工が必要な箇所でも自在に対応できる。
 同社ではスターハウスを高性能で資産価値のある住宅として、基本仕様でも差別化を図っている。例えば外壁のコンクリート厚は180ミリに設定、各階天井スラブにも断熱材を施工して階間の遮音性を謳っている。さらに縦横両方に配筋された強度の高い「ワッフルスラブ構造」を採用、最大7.2メートルまでスパンをとばせるため、間取りの自由度が高まった。基礎はベタ基礎としてこの部分も『サンドイッチ断熱』している。
 企画面では、分譲住宅を月寒、発寒、平岸など都心に近く地下鉄の駅から徒歩圏内の恵まれた立地条件に限定、利便性を確保する代わりに敷地面積は平均30~40坪程度にして土地代を抑えた。限られた敷地を生かすために3階建て、延床面積は40坪前後とし、さらに屋上にテラスを設置して庭代わりに使える空間とした。その結果駐車スペースは一般戸建て並の2台分を確保、外装材はガルバリウム鋼板やタイルを部分的に使うなど都会的な雰囲気でまとめている。設備はオール電化、第三種換気システムを採用。土地と建物を合計した価格も税込で約3,500万円前後と、管理費や駐車場代などを考慮すると4LDKの都市部分譲マンションに近いレベルになった。
 同社では好調の要因として、「本当に興味関心のある人だけが集まるように、見学会告知の折り込みチラシはスターハウスの性能や耐久性を訴える内容にした。こうした点が受け入れられたのではないか」と話しており、今後も札幌市内で何ヵ所か分譲が予定されている。
 なお、同社は関連会社の(株)スターハウス・インターナショナルでスターハウスのフランチャイズ募集を行っており、道内から九州まで既に約20社が加盟している。問い合わせは、スターハウス・インターナショナル(TEL.03・5776・1415)へ

総3階建+屋上テラスで敷地を有効活用


断熱材の形状から名付けられた床のワッフルスラブ構造

高性能住宅Q&A-必見! シックハウス新法1
まず三本柱を確認
技術面より顧客対応が重要
Q…7月からホルムアルデヒドを放散する建材の規制や換気設備を義務化する、いわゆるシックハウス新法が施行されますが、難しくて良くわかりません。わかりやすく説明してください。
A…たくさんの方からこのような要望をいただいております。そこで、ここでは1.ビルダーの立場に立って 2.わかりやすく―新法を説明していきたいと思います。

 まず、この法律の概要です。
1.規制対象はクロルピリホスとホルムアルデヒド―トルエンやキシレンによる健康被害も重要な問題ですが、今回は法規制は行われていません。
2.クロルピリホスは事実上の全面使用禁止―今後使えなくなるので、特に細かい説明は必要ないと思います。
3.ホルムアルデヒドについての規制内装仕上げの制限換気設備設置の義務づけ天井裏等の制限―~の内容がとてもわかりにくくなっていますが、この点については後から説明します。
 法律の概要は、以上の通り3点です。これをしっかり押さえておいてください。
 次に、新法が施行されることによって何が変わるのか、という点について説明したいと思います。
 高断熱・高気密・全室暖房・計画換気の住宅を建てているビルダーは、極論すれば技術的には新たな対応はほとんど必要ありません。当初、書類上の整備が必要になりますが、あとは建材を選ぶときにホルムアルデヒドの発散レベルに注意しておけば十分です。
 では何が変わるのか。ビルダー側の契約上の責任が重大になり、結果としてトラブルがあった場合に“ビルダーは不利になりやすい”という点です。つまり今までは住宅という分野があまりに専門的であるために、住宅の「欠陥」部分についてもめ事が起きても、多くの場合はビルダー有利に判断されてきましたが、今後はビルダーとユーザーが対等か、場合によってはユーザー有利に判断されかねないということです。いわば立場が逆転したわけです。
 新法は消費者保護の大きな流れの一つでもあります。ですから、顧客対応を誤ると、“負けるはずのない裁判で負ける”という事態が起こらないとも限りません。今回の新法では、技術面よりも顧客への対応のほうが重要です。


これからは消費者の立場がますます強くなる

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