平成15年12月5日号から
パネルヒータ 表示統一へ
発売元各社 新JIS切替を約束
 温水暖房用のパネルヒータ・コンベクタの放熱能力表示が、来年中にも新JISに統一される。北海道暖冷房換気システム協会(北暖協)が3年がかりで実施してきたパネルヒータ等の放熱能力に関する性能評価の結果を踏まえたもので、今後発売元各社は国内で唯一、ほぼ完全なJIS法で性能測定ができる道立北方建築総合研究所に性能試験を依頼、早ければ来年3月まで、遅くとも来年中には各社のカタログが新JIS表示に変わる見込み。


パネルヒータの能力表示がメーカー等によって違うというこれまでの問題は、JIS表示に一本化することで早ければ来年春にも解決しそうだ
性能値にバラツキ
ベターリビングも非を認める

 パネルヒータ等をめぐる今回の動きは、暖房システムを施工する工事業者から挙がったカタログ性能値に対する疑問からスタートした。住宅の断熱性能や暖房システムを計算通りに設計・施工しても、『寒い』というクレームが付くことがあったからだ。
 この問題に、北海道内を中心とした住宅の暖冷房・換気システムの工事業者らで組織する北暖協(宮川一男理事長、北海セントラルシステム(株)社長)が平成13年から協会事業として取り組みはじめた。
 昨年は道立工業試験場(道工試)に委託して十六機種の測定を実施。この結果、カタログ値に対して5%前後の差に収まった機種が5タイプある一方、最大で32.3%も能力が低い機種があることもわかった。
 これを受けて北暖協では、JIS試験で製品を認定しているベターリビングに対し、“認定そのものに問題があるのではないか”などとした質問状を送付。ベターリビング側も「今後、JISによる表示の統一を進める」として非を認めた。
 ただ、道工試にはJISと同じ環境の試験室がなく、JISに準じるかたちの測定にとどまっていたため、ほぼ完全なJIS環境が整っている北総研に今年、あらためて依頼試験を行った。
 試験を行ったのは、道工試で行った機種から5機種と、新たに加えた6機種の合計九社、11機種。

JIS法でカタログ比55%
メーカー等も動く

 試験結果は道工試のデータよりもさらにショッキングな内容となった。
 まず、道工試でも試験した五機種は、多少の幅はあるものの、JIS環境で測定した北総研データのほうがさらに低い値を示した。カタログ対比では、昨年の道工試データを踏まえてカタログ表示を改めた縦型二機種などではほぼカタログ値並みとなったが、横型機種で最大41.4%、ローボーイ機種では44.2%もカタログ値を下回る機種もあった。
 北総研の測定結果をまとめると、ほぼ完全なJIS法による測定では、カタログ値と実測値の差がさらに開き、中にはカタログ値の半分程度しか能力がない機種もあることがわかったわけだ。
 この結果を踏まえ、北暖協はメーカー等を訪問、JISによる表示を依頼するとともに、性能表示に関するアンケートへの協力を要請した。
 それによると、協力を要請した14社のうち、12社までが北総研での試験を依頼するか、または測定済と答え、残り2社もJISに基づいて測定済と回答。併せてJISによる表示を約束した。
 北総研に依頼するのは、国内ではJIS測定室を持っているのが同研究所だけという事情から。ただ、シックハウス新法の施行などで試験室がこみあっていることもあり、すべてのメーカー等の試験が終わるのは来年夏ころまでずれ込むことも考えられる。

BLは委員会立ち上げ
 一方、バラバラの性能表示をJISに基づくBL部品として認定してきたベターリビングは、先ごろ『ラジエータ、コンベクタの放熱能力に関する研究委員会』を発足させた。同委員会では各企業の試験装置とJISによる試験条件との違いが性能値にどのような影響があるかを調べ、適正なデータが得られるように各企業の試験室と試験方法などを見直す。またこの委員会には北暖協も委員として参加することが決まった。
 一連の調査を終えた北暖協・宮川理事長は「さまざまな部材を組み合わせて暖房システムを販売・施工する当協会の会員企業にとって、メーカー等がそろって同じ物差しであるJIS表示に移行していただけることが何よりもありがたい。今後は1年後をメドにカタログの修正が行われたかどうかの確認をしていきたい」とした上で、残る問題として「放熱器とバルブとの相性の問題や、エア抜きが容易にできる構造」などを挙げ、消費者からの信頼をキーワードに今後も活動を続けていきたいとしている。

キーワード 
JIS…パネルヒータ等についてのJISは、一九九八年に現行基準が定められ、国際規格に準拠した。それまでの旧JISは日本のローカル基準で、一般的に言って現行JISのほうが厳しい数値になるといわれる。


北暖協によるパネルヒータの性能検証(最終結果)
分  類
横  型
縦  型
ローボーイ
メーカー・商社
A社
B社
C社
D社
E社
C社
F社
G社
H社
I社
A社
カタログ放熱量
1,080
1,223
990
1,285
1,080
850
1,132
780
975
1,270
860
カタログ発行年/月
現行
2001年/10
2003年/7
現行
2003年/2
2003年/7
2003年/5
20310000
現行
2003年/2
現行
                     
北総研による試験値
1,047
731
767
753
1,018
841
1,110
634
545
1,048
596
カタログ対比
96.9%
59.3%
77.4%
58.6%
94.1%
99.0%
98.1%
80.7%
55.8%
82.6%
69.2%
                     
道工試による試験値
1,052
904
884
857
1,191
       
カタログ対比
97.4%
73.3%
68.8%
100.9%
105.2%
※放熱量、試験値はともにΔt=50deg、単位はワット 北総研は道立北方建築総合研究所の略、試験は平成15年5月
 道工試は道立工業試験場の略、試験は平成14年4月 表は北暖協の資料をもとに編集した

体験ショールーム好評
新潟・新井市 長谷川興業

雪対策を重視した同社の新築住宅現場
 変化するニーズに具体的提案 長谷川興業(株)(本社新潟県新井市、長谷川重英社長)では、ユーザーの住まいに対する価値観の多様化に対応するため、3年前にそれまでの移動式住宅展示場を体験型ショールームに切り替える家S(イエス)工房「木もれ陽」を本社事務所敷地内に建設、変化するライフスタイルやニーズに対し具体的に各種コーナーを設け、実際に触れて感じてもらう提案を行っている。
 県産材・木材を多く使用し、品質や環境に配慮した「エコロジーコーナー」、充てん高断熱・高気密工法の壁体構造の「原寸大断面モデル」、スロープや障害者用トイレなどを体感できる「バリアフリー介護体験コーナー」、 高断熱・高気密型サッシ、計画換気システム、暖房機などを展示している「はるめんと部材スペース」、「オール電化体験コーナー」、「介護体験コーナー」などを、木造2階建て(一部3階建て)、220坪に展示している。
 長谷川正道専務は「家づくりはお客様と施工者とのコミュニケーションから始まります。お客様を木もれ陽にお招きして、住まいのポイントを体験してもらい、私たちの提案を理解していただき、マイホームのイメージを具体的に描くお手伝いしております」と言っている。
 上越地方は、暑さ・寒さ対策のほか、雪対策が大きなポイントとなっており、それを熟知している地域ビルダーが活躍している。

ショールーム内の介護体験コーナー

ユニークなアイデア
ジェイベック 本社リフォーム
 ジェイベック(株)(本社新潟市、吉岡茂樹社長)では、かねて取得した本社事務所のリフォームがこのほど完成し、先ごろ移転した。新事務所の所在地は新潟市卸新町1丁目2059-5(Tel.025・250・8900、Fax.025・250・8877)。
 建物は鉄筋コンクリート造3階建て。併設されている倉庫はS造ALC3階建て。事務所と倉庫併せた延床面積は1137.0六平方メートル。事務所には会議室・研修室・休憩室などが2~3階に設けられており、倉庫は全国各地への配送センターとして機能する。
 リフォームポイントは開口面積の大きい窓の断熱強化。「ミエール」と名付けた同社考案による暖房システムの設置と室温・灯油消費量の測定、同社のメイン商品の1つである第三種換気システム「ダッチマン」の展示。
 窓はアルミサッシのシングルガラス部分を全面Low-Eペアガラスに。暖房はサンポット・サンデン・コロナの床暖房ストーブを1台ずつ1階から3階に設置、床暖房回路は露出配管で窓下に廻し、温水を通して窓面からのダウンドラフトを防ぐ工夫をしている。暖房機は微弱運転、水温40℃に設定、20日間ほどの測定経過によると、室温、灯油消費量とも予想の範囲内とのことだ。ダッチマンは1階事務室の入口の天井裏に設置し、本体と配管部分の状況が見えるように天井を開放している。
 また、事務所の床には60ミリの根太の上に28ミリの針葉樹合板を張り、IT関連の配線などを収納している。このほか机、書棚、大会議室のテーブルなどにもユニークな工夫のリフレッシュが行われている。

ジェイベックの本社新社屋

氷で冷房・野菜貯蔵
協同組合コムネ 戸建て初のアイスシェルター

アイスシェルター内部には容量25リットルのプラスチック製の魚箱が360個設置され、9トン分の氷を貯蔵できる
 「自分たちのまちは、自分たちでつくる」という基本理念を掲げ、そのためのハード・ソフトを研究しているまちづくり専門家集団・協同組合コムネ(市村一志理事長、市村都市環境研究所社長)では、冬の冷気で精製した氷で0℃の空気を作り、夏期の除湿換気冷房や通年の野菜貯蔵に利用するアイスシェルターを、今年8月に完成した札幌市西区の新築住宅に採用。戸建住宅へのアイスシェルター設置は全国でも初の試みとなる。

0℃の空気を利用
 水が氷になる時と、氷が水になる時の温度は常に0℃で、それに触れる空気も0℃で高湿度の状態になる。この空気を利用して除湿換気冷房や野菜等の通年貯蔵を行うシステムがアイスシェルターだ。
 今回採用した住宅は同組合会員のオズが設計、光洋建設施工による1階RC、2、3階在来木造の混構造3階建て。延床面積は約87坪。建替を考えていたユーザーにアイスシェルターの設置を提案したところ、『自然との共生が夢』と賛同を得ることができ、ヒートポンプと一緒にアイスシェルターを採用することになったという。
 アイスシェルター部分は市村都市環境研究所のアドバイスのもと、同組合賛助会員の修建築事務所が施工。RCの1階部分に約3.9坪の部屋を確保し、床・壁・天井は熱貫流率が0.015キロカロリーとなるように押出スチレンフォームと現場発泡ウレタンで断熱したほか、入口は二重の断熱ドアで外気の侵入を防止。シェルター内は容量25リットルのプラスチック製魚箱を360個設置して合計9トンの貯氷量を確保し、結露水などが床にたまらないよう排水口も設けている。
 設定目標は、真夏の7月中旬から8月中旬までの約1ヵ月、2階のリビングを室温27℃、湿度45%に維持し、アイスシェルターに隣接する野菜貯蔵室を通年で室温5℃前後、湿度90%に保つこと。

冬季の冷たい外気で氷精製
 氷を作るために必要な冬の冷気は、気温センサーがマイナス5℃以下になった時に200φの塩ビ管からパイプファンを使って導入。塩ビ管はアイスシェルター内で3つに分かれてそれぞれ床面付近に外気を吹き付けるようになっており、温まって上昇した空気は、天井付近に設けた200φの塩ビ管からパイプファンを使って室外に排出する。

アイスシェルターのシステム図とRCの1階平面図。図にはないが野菜貯蔵室には床付近にアイスシェルターから空気を入れる給気口がある


戸建てではじめてアイスシェルターを採用した住宅
外気を除湿し送風
発汗を促進して清涼感

 除湿換気冷房は約7.5坪の二階リビングが対象。25℃で相対湿度60~70%の夏の外気がアイスシェルターに入ると、急速に冷やされて結露し除湿された状態になるが、その空気をリビングに吹き出して室内の空気と混ぜると50%以下の相対湿度となるため、人間の発汗作用が促されて、温度が高くても非常に爽やかな環境が得られるという。送風は室温に応じて3段階の風量調節ができるパイプファンを使ってアイスシェルターの空気を100φのダクト2本から送り込む。
 一方、アイスシェルターに隣接する野菜貯蔵室は、入口が断熱ドア。床面付近に給気口、天井付近に排気ファンがあり、それぞれ壁を隔ててアイスシェルターとつながっている。ファンを回すことによって室内を負圧にしアイスシェルターの空気を導入。その時、排気はアイスシェルターに戻る空気循環方式だ。アイスシェルターに野菜や漬物などの匂いも戻ることが考えられるため、天井と壁には消臭作用がある木炭塗料を施工している。

水は10年以上使用可
施工コストは170~200万円

 雑菌等の繁殖を抑えるために、凍らせる水は今月中旬くらいに入れる予定で、一度入れた水は替えることなく10年以上使用可能とのこと。除湿換気冷房に関してはファンを動かすだけなので、電気代は一般的なエアコンの40分の1で済み、省エネとCO2の削減にも役立つ。
 施工にかかるコストは、断熱工事やダクト配管、排水工事、魚箱、制御装置及びこれらに関する電気工事を含め170万~200万円。
 同組合理事長でアイスシェルター部分を設計した市村都市環境研究所の市村社長は「今後は温度計と湿度計を設置し、計算値と同じになるかどうかを検証する予定。事務所や公共施設の除湿換気冷房、農家の野菜貯蔵など、様々な建物・用途に利用できるので、来年以降も積極的に普及を進めていきたい」と話している。

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