温水暖房用のパネルヒータ・コンベクタの放熱能力表示が、来年中にも新JISに統一される。北海道暖冷房換気システム協会(北暖協)が3年がかりで実施してきたパネルヒータ等の放熱能力に関する性能評価の結果を踏まえたもので、今後発売元各社は国内で唯一、ほぼ完全なJIS法で性能測定ができる道立北方建築総合研究所に性能試験を依頼、早ければ来年3月まで、遅くとも来年中には各社のカタログが新JIS表示に変わる見込み。
パネルヒータの能力表示がメーカー等によって違うというこれまでの問題は、JIS表示に一本化することで早ければ来年春にも解決しそうだ |
性能値にバラツキ
ベターリビングも非を認める
パネルヒータ等をめぐる今回の動きは、暖房システムを施工する工事業者から挙がったカタログ性能値に対する疑問からスタートした。住宅の断熱性能や暖房システムを計算通りに設計・施工しても、『寒い』というクレームが付くことがあったからだ。
この問題に、北海道内を中心とした住宅の暖冷房・換気システムの工事業者らで組織する北暖協(宮川一男理事長、北海セントラルシステム(株)社長)が平成13年から協会事業として取り組みはじめた。
昨年は道立工業試験場(道工試)に委託して十六機種の測定を実施。この結果、カタログ値に対して5%前後の差に収まった機種が5タイプある一方、最大で32.3%も能力が低い機種があることもわかった。
これを受けて北暖協では、JIS試験で製品を認定しているベターリビングに対し、“認定そのものに問題があるのではないか”などとした質問状を送付。ベターリビング側も「今後、JISによる表示の統一を進める」として非を認めた。
ただ、道工試にはJISと同じ環境の試験室がなく、JISに準じるかたちの測定にとどまっていたため、ほぼ完全なJIS環境が整っている北総研に今年、あらためて依頼試験を行った。
試験を行ったのは、道工試で行った機種から5機種と、新たに加えた6機種の合計九社、11機種。
JIS法でカタログ比55%
メーカー等も動く
試験結果は道工試のデータよりもさらにショッキングな内容となった。
まず、道工試でも試験した五機種は、多少の幅はあるものの、JIS環境で測定した北総研データのほうがさらに低い値を示した。カタログ対比では、昨年の道工試データを踏まえてカタログ表示を改めた縦型二機種などではほぼカタログ値並みとなったが、横型機種で最大41.4%、ローボーイ機種では44.2%もカタログ値を下回る機種もあった。
北総研の測定結果をまとめると、ほぼ完全なJIS法による測定では、カタログ値と実測値の差がさらに開き、中にはカタログ値の半分程度しか能力がない機種もあることがわかったわけだ。
この結果を踏まえ、北暖協はメーカー等を訪問、JISによる表示を依頼するとともに、性能表示に関するアンケートへの協力を要請した。
それによると、協力を要請した14社のうち、12社までが北総研での試験を依頼するか、または測定済と答え、残り2社もJISに基づいて測定済と回答。併せてJISによる表示を約束した。
北総研に依頼するのは、国内ではJIS測定室を持っているのが同研究所だけという事情から。ただ、シックハウス新法の施行などで試験室がこみあっていることもあり、すべてのメーカー等の試験が終わるのは来年夏ころまでずれ込むことも考えられる。
BLは委員会立ち上げ
一方、バラバラの性能表示をJISに基づくBL部品として認定してきたベターリビングは、先ごろ『ラジエータ、コンベクタの放熱能力に関する研究委員会』を発足させた。同委員会では各企業の試験装置とJISによる試験条件との違いが性能値にどのような影響があるかを調べ、適正なデータが得られるように各企業の試験室と試験方法などを見直す。またこの委員会には北暖協も委員として参加することが決まった。
一連の調査を終えた北暖協・宮川理事長は「さまざまな部材を組み合わせて暖房システムを販売・施工する当協会の会員企業にとって、メーカー等がそろって同じ物差しであるJIS表示に移行していただけることが何よりもありがたい。今後は1年後をメドにカタログの修正が行われたかどうかの確認をしていきたい」とした上で、残る問題として「放熱器とバルブとの相性の問題や、エア抜きが容易にできる構造」などを挙げ、消費者からの信頼をキーワードに今後も活動を続けていきたいとしている。
キーワード
JIS…パネルヒータ等についてのJISは、一九九八年に現行基準が定められ、国際規格に準拠した。それまでの旧JISは日本のローカル基準で、一般的に言って現行JISのほうが厳しい数値になるといわれる。
北暖協によるパネルヒータの性能検証(最終結果)
分 類
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横 型
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縦 型
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ローボーイ
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メーカー・商社
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A社
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B社
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C社
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D社
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E社
|
C社
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F社
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G社
|
H社
|
I社
|
A社
|
カタログ放熱量
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1,080
|
1,223
|
990
|
1,285
|
1,080
|
850
|
1,132
|
780
|
975
|
1,270
|
860
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カタログ発行年/月
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現行
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2001年/10
|
2003年/7
|
現行
|
2003年/2
|
2003年/7
|
2003年/5
|
20310000
|
現行
|
2003年/2
|
現行
|
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北総研による試験値
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1,047
|
731
|
767
|
753
|
1,018
|
841
|
1,110
|
634
|
545
|
1,048
|
596
|
カタログ対比
|
96.9%
|
59.3%
|
77.4%
|
58.6%
|
94.1%
|
99.0%
|
98.1%
|
80.7%
|
55.8%
|
82.6%
|
69.2%
|
|
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道工試による試験値
|
1,052
|
904
|
|
884
|
|
857
|
1,191
|
|
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|
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カタログ対比
|
97.4%
|
73.3%
|
68.8%
|
100.9%
|
105.2%
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※放熱量、試験値はともにΔt=50deg、単位はワット 北総研は道立北方建築総合研究所の略、試験は平成15年5月
道工試は道立工業試験場の略、試験は平成14年4月 表は北暖協の資料をもとに編集した |