平成14年10月15日号から
高齢者・障害者の住生活支援
札幌アシストセンター・マザー バリアフリー提案の賃貸住宅運営
 高齢者や障害者は、住み慣れた地域で暮らしたいという気持ちがあっても、賃貸住宅への入居を断られるなど、実際には環境が十分に整っていないために断念することが多い。そのような状況を打開しようと、NPO法人札幌アシストセンター・マザー(小谷晴子理事長)では、札幌市東区で福祉サービス機能を持つ賃貸住宅「プチ・トマト」の運営を11月から開始する。高齢者・障害者が地域社会と関わり合いながら、自立した生活を送れる住居・施設として注目を集めそうだ。

地域との関わりを重視
 札幌アシストセンター・マザーは、平成13年6月に高齢者や障害者を含めた全ての人が、住み慣れた地域で安心して、楽しく、ゆとりある暮らしを実現できるよう、各種福祉サービスを提供することを目的に、障害当事者が中心となって設立されたNPO法人。
 今回建設を進めているプチ・トマトは、高齢者・身障者が住み慣れた地域で過ごすために必要な住居を考えた時、民間の賃貸住宅は車イスが必要というだけで入居を断られることがあり、行政関連の施設は起床・就寝や食事の時間が決められていて、外出の際も制限があるという状況であったため、自らの意志で物事を選択・決定でき、地域社会とも関わり合いながら暮らすことができる住まいの実現を考えたことがきっかけになったという。
 資本金ゼロから始めているNPO法人であるため、建設にあたっては今回の計画の主旨に賛同してくれるオーナーを探し、そのオーナーが建てた建物を札幌アシストセンター・マザーが借り受ける形で運営することを考案。今年4月には無事建物を建ててくれるオーナーと契約を交わし、5月末に着工となった。

安全・安心なプラン
 福祉サービス利用も可能 建物はRC造の三階建てで、延床面積は約900平方メートル、設計・施工は大和ハウス工業(株)札幌支店。1階にはデイサービス室やショートステイルーム、ボランティアルーム、相談室、調理室、浴室など主に福祉サービスを行うスペースを設け、2、3階を合計12室の賃貸住宅としており、福祉サービスについては10名程度のスタッフを置いて、入浴・食事の提供や趣味・娯楽・談話等の場を提供するデイサービス、日常の暮らしの手助けを行う訪問看護などを実施。介護保険対象外の人でも利用可能だ。
 2、3階の賃貸住宅は、専有面積37.5平方メートルのAタイプが8室、同26.2平方メートルのBタイプが4室。居住者が自分の生活を自分の意志で決められるように、あえてケア付き住宅にはせず、介護が必要な場合は、1階のヘルパーステーションを利用する。段差は全て解消し、各階の廊下は車イスが余裕をもってすれ違えるよう1,750~2,560ミリほどの幅員を確保。室内は両タイプともワンルームで、出入り口は全て引き戸としLDK、洗面・トイレ室、シャワー室、クローゼット、玄関で構成した間取りとなっている。
 浴室ではなくシャワー室としたのは、洗面・トイレ室のスペースを優先し、車イスが転回できるよう2,550×1,750ミリと広く取ったため。浴槽に浸かりたい場合は、1階の浴室が利用可能だ。


1階を福祉サービスのスペース、2・3階を賃貸住宅としたプランニング


Aタイプの間取り

建設が進む札幌市東区の現場
車イスでも暮らし易く
 また、玄関には靴の脱ぎ履き用の椅子が設置され、換気やガス湯沸かし器などのスイッチはキッチン横の壁に集中して床から70~100センチの高さに配置し、コンセントも床か50センチの高さに設置。キッチンは2口コンロのクッキングヒーターを採用し、下部の幅木を5センチ切って高さを下げるなど、車イスを使う人でも暮らしやすいように配慮されており、緊急コールボタンもトイレなど3ヵ所に付けられている。
 毎月の家賃は、Aタイプ65,000円、Bタイプ43,000円で、別に共益費がAタイプ12,000円、Bタイプ10,000円必要。
 札幌アシストセンター・マザーの小谷理事長は「高齢者や障害者でも、自分のやりたいこと、作りたいことなどが楽しくできる場にしていきたい。どんどん外に出て、地域の人たちとも交流し、高齢者・障害者・健常者の垣根が取れればいいと思う」と話している。
 プチ・トマトに関する問い合わせは、札幌アシストセンター・マザー(TEL 011・784・5235、FAX 011・784・5236)へ。

旭川にもシロアリ
青プリ・青山社長 学会で新しい分布域発表
 これまで道内におけるシロアリの生息域は、空知管内上砂川町が北限と言われていたが、(株)青山プリザーブ(本社札幌市、青山修三社長)では、2001年から2年間の間に旭川市内の3軒の住宅でヤマトシロアリの生息を確認、ヤマトシロアリの北限地が上川支庁まで達していることが明らかになった。同社青山社長は今月28・29日に行われる第18回日本ペストロジー学会北海道大会で、この事実を報告するとともに、上川支庁を含めた新たな道内のヤマトシロアリ生息分布図を発表する。
工法変化が関連 気密化や基礎断熱
 旭川市内でヤマトシロアリが見つかった住宅のうち、1軒は築20年の古い木造住宅。残りの2軒は築5年、同一年の高断熱・高気密住宅で、羽アリの出現によりヤマトシロアリの存在に気が付いたという。
 築20年の木造住宅では土台に蟻害を受けていたが、これはシロアリの習性として、腐朽した大引の腐朽菌に強く誘因され、土台に到達したと考えられる。築5年の高断熱・高気密住宅は、シロアリの巣の上に家を建ててしまったようで、被害こそなかったものの、基礎断熱した布基礎の表面に蟻道(ギドウ)ができていた。築1年の高断熱・高気密住宅は、床断熱だが布基礎内側に施工してあった結露防止用の押出スチレンフォームが食害を受け、その部分はボロボロになっていた。
 旭川市内で近年までシロアリの発見がなかった理由として同社青山社長では、1,一般市民に被害認識がない 2,駆除優先順位は列をなして侵入するトビイロケアリの方が高い 3,被害規模が小さいため、ナミダタケを代表とする腐朽菌より恐怖感が低い 4,新築時の木材保存処理が徹底している―などが考えられるとしており、一方、基礎断熱の場合は床下換気口がなく、羽アリが室内に出やすくなったこと、基礎断熱の普及によって床下温度が上昇し、ヤマトシロアリが生息しやすくなったことがシロアリ発見の一因としている。

上川が生息圏に 十勝などは未確認

 青山社長は、旭川市内でここ数年にヤマトシロアリが発見されたことを受けて、これまで一般的に使われてきたヤマトシロアリの分布図から、まだヤマトシロアリが見つかっていない胆振支庁・日高支庁・十勝支庁を除外し、新たに上川支庁を加えた2002年版の生息分布図を作成。この結果、ヤマトシロアリの北限は中川町となり、太平洋側の生息域は渡島支庁のみとなった。
 シロアリの存在については、函館など比較的温暖な地方を除き道内には存在しないと思っているユーザーがほとんどで、食害が広範囲に及ぶことはないために、その存在に気が付かないケースも多いと考えられるが、青山社長の報告によると、旭川では今後も高断熱・高気密工法や基礎断熱の普及で羽アリの発見率が高まり、同じ理由で他の地域でも発見の可能性があるという。また、平成13年度から公庫の規定改正でツーバイフォー住宅は通気層がある場合、外壁下地材の防腐処理が不要となったことも、将来のシロアリ被害が懸念される要因になっているとしており、ビルダー・ユーザーともにシロアリに対する認識を改めなければならない時期にきていると言えそうだ。



青山社長が発表する2002年の道内のヤマトシロアリ推定生息分布域
 
押出スチレンフォームを食べるヤマトシロアリ(写真左)と布基礎内側にできた蟻道

高耐久コーキング
小西機械商会 ログ・ビルダー 施工幅の2倍まで追従

カートリッジと缶を品揃え
 (有)小西機械商会では、施工幅の2倍まで伸縮・追従する弾力性や、紫外線・雨水等に対する優れた耐久性によって、長期的にサイディングのジョイントや窓廻りの隙間をシールすることが可能なコーキング材「ログ・ビルダー」(輸入元・(株)オリジナルスペース)を好評販売中だ。
 ログ・ビルダーは、アメリカ・サシュコ社がログ材の動きによる隙間の発生を抑えるために開発したもの。一般的なコーキング材とは異なり、4、5年経たないうちに紫外線の影響などで乾燥し割れたりすることはなく、サイディングや木材の動きに対しても優れた粘着精度と弾力性によって施工幅の2倍まで追従するため、長期間にわたって雨水や埃などの侵入を防ぐことが可能。油性ではなくアクリル系の水性仕様なので、プライマーをかける必要がなく、健康に悪影響を及ぼす心配もないほか、フタを確実にはめていれば保管もできる。
 また、木材や窯業系サイディング以外に、コンクリートやブロック、ガラス、ALC、金属、石材などにも使用でき、最大5センチ幅までの隙間をシール可能。水性・油性の塗装をかけることもできる。水性のため、施工後は15~18%程度の痩せが生じるが、気になる場合は二度打ちすればよい。


優れた粘着精度と弾力性で長期的に隙間をシール
 アメリカでは15年ほど前の発売と同時に、ディズニーワールド関連の建物を手掛けているオレゴンログホームが採用を開始しているが、これまでコーキング切れなどの問題はなく、実験サンプルでは施工9年後に施工幅の171%まで引っ張っても劣化は見られなかったという。現在では、アメリカのログハウスの定番的なコーキング材となっており、他の住宅や一般建築物にも採用されている。
 販売価格は10.5オンス(310ミリリットル)のカートリッジタイプが1箱12本入りで10,400円、5ガロン(18.9リットル)の缶が1缶3万円。カラーは茶系統を中心に7色を用意(カートリッジタイプは5色)。ホワイトやクリアカラーについても、ログ・ビルダーと同じ機能を持つ別の商品に用意されている。
 問い合わせは同社(札幌市白石区北郷4条6丁目6-1、011・871・5937)へ。

大きな段差を解消
日浦・ライトリフト300J 高床住宅の改修等に提案
 建設資材総合商社の(株)日浦(札幌市)ではこのほど、段差解消機としては国内で最も高い1.5メートルのリフトアップが可能な「ライトリフト300J」(花岡車輌(株)製)を、札幌市内の道立衛生学院に設置。これを機会に高床式など玄関前の段差が大きい戸建住宅のバリアフリー改修に対しても、同製品を積極的に提案していく考えだ。
 ライトリフト300Jは、電動油圧方式により、900×1,450ミリの移動テーブルを1.5メートルの高さまで上昇させることが可能で、搭乗荷重は300キロまで対応。移動テーブル前後に設置されている安全バーを降ろさないと作動しないなど、安全面にも十分配慮されている。
 同社として2台目となった今回の設置は、道の関連施設のバリアフリー化推進を受けて行われたもの。建物入口にあった高さ約1.5メートルの階段の幅を約4メートルから約3メートルに改修し、階段左側にコンクリート製のピットを設けて、その上にライトリフト300Jを設置。一般的に1.5メートルの段差を解消するには、スロープの場合、75メートル程度の距離が必要になり、ロードヒーティングの設置費用も含めると約600万円かかることになるが、ライトリフト300Jの材工価格は約200万円と、3分の1の費用で済んだという。
 同製品に関心を示すハウスメーカーや工務店からの問い合わせも増えてきているといい、同社では一般建築はもちろん、戸建住宅の段差解消にも採用を勧めていく考えだ。
 問い合わせは同社(札幌市白石区本通7丁目南7-25、011・864・0177)へ。

黒い部分が移動テーブルで、電動油圧方式でスムーズに上昇する。
前後にある金属製の安全バーを降ろさないと作動しない安全設計

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