平成13年7月15日号から
公庫審査強化で混乱
慎重審査先の告知行わず
 5月下旬に終了した住宅金融公庫の今年度個人向け融資の第1回受付に申し込み、1ヵ月以上を経た7月上旬になっても、まだ公庫から「今後の手続きのご案内」文書が来ないケースがあり、工務店を困惑させている。今年から審査が厳しくなったとはいえ、1ヵ月以上も「宙ぶらりん」は異常な事態。公庫北海道支店では「慎重審査先」案件は通常の金融機関による審査を終えた後、公庫が直接審査するという二重の手続きをとっているために時間がかかっているという。「慎重審査先」とは何か、いったい今年の審査はどうなっているのか。

背後には悪質業者の存在
 「昨年までは申し込んでから10日から2週間ほどで送られてきた『今後の手続きのご案内』がなかなか来ない」という話が、室蘭、登別など胆振の複数のビルダーで持ち上がった。
「夫が一流企業、妻が看護婦で収入は十分にあるのに通知が来るまで一カ月かかった」という事例もある。ビルダーが銀行に聞いてみたところ、「全体的に融資の手続きが遅れている」という説明だったという。
 公庫でも、一部に審査の手続きが遅れていることは認めている。これは、融資申込みの書類を担当金融機関が審査する中で、「手持ち資金が十分でない」と判断するか、「団信(団体信用生命保険)に加入してない」かのどちらかが当てはまると、それだけで「慎重審査先」案件として扱われ、通常の金融機関による審査後、公庫に書類が送られ公庫でも審査を行う二重のプロセスを踏むことになるため審査に時間がかかるからだという。昨年度もこの区分けはあったが、今年度から基準が厳しくなったことでその割合が増加、申込み全体の約2割に達している。
 さらに、胆振地区は審査がやや辛くなっているという。それは、「悪質な業者がいて、物件の価格や申込者の収入など、申請書類をごまかして融資金額を大きく引き出そうとする事例があったからだ」としている。

明確でない公庫の基準
 ちなみに「慎重審査先」案件の約1/4、つまり申込み全体の約5%は融資限度額を減額したり、融資そのものを断っているという。「慎重審査先」案件にはこうしたリスクがあるにもかかわらず、ビルダー側には「慎重審査先」案件かどうかは直接告知せず、「申込み後10日から二週間ほど経って何の音沙汰もなければ、公庫が『慎重審査先』と判断していると思って欲しい」というのだ。この場合、「今後の手続きのご案内」は送られない。
 「手持ち資金が十分にあり、団信に加入してさえいれば、『慎重審査先』として扱われることはほとんどないので心配いらない」と公庫側では言っているが、「手持ち資金が十分にある」判断基準は明確でなく、「申込者の年齢、家族構成、仕事の内容・将来性など様々な要素を総合的に判断した結果」としており、少々わかりにくい。

説明不足が目立つ
融資の底辺支える努力を

 [解説]公庫の今年度の融資審査強化については、本紙でも何度か紹介しているが、北海道は全国的にも公庫融資の貸し倒れの割合が高く、その数字は言われている以上との情報もある。今年度は、いわば融資機関として当たり前の審査を行っているとも言えるが、それにしても説明不足ではないか。
 しかも、融資限度額を減額されたり、融資を断られる割合は全体の申込者からみれば5%程度とはいえ、その前段階である「慎重審査先」案件か否かの告知がビルダー側に知らされず、通知が著しく遅れているのにその理由をはっきりと説明しないという不親切さは、民間の金融機関では考えにくい事態だ。
 民間の金融機関は、「仮審査のスピード」「低金利」「商品の多様性」などサービスを競っている時代だ。公庫には政府系金融機関として、十分な情報開示とともに、事故率を下げながら融資の底辺を支える努力が求められている。

ミサワホーム・リミテッド25
道内では坪28万円で発売
 ミサワホーム北海道(株)(本店札幌市、岩渕宣昌社長)と(株)ミサワホーム帯広(帯広市、篠河進社長)では、従来商品の品質を維持しながら坪当たり二十八万円台からという、全国規模のハウスメーカーの工業化住宅としては極めて低い価格設定を打ち出した新商品「リミテッド25」の販売を一日から開始した。今月いっぱいの限定販売だが、低価格化が進む道内住宅市場に大きなインパクトを与えそうだ。

1プラン4タイプ
 リミテッド25は、ユニクロに代表されるように低価格でも品質は一定のレベルを要求するユーザーの期待を裏切らない商品として開発。本州では先月中旬から坪当たり25万円台からの価格設定で販売を開始しており、道内での販売に当たっては本州仕様をベースとして主に断熱仕様の強化などを行っている。
 坪当たり28万円台からという価格設定は、主に固定化されたプランでの大量生産・一括施工と、販売期間・着工期間を一定期間に集中させることにより実現。プランは一階にLDKと洋室・和室各一部屋、水廻り、二階に洋室二部屋の4LDKで、外観は根強い人気のある大屋根形状の小屋裏二階建て。各部屋の配置はそのままに広さを変えた36、39、43、47坪の四タイプを用意し、それぞれ反転プランを併せて合計8プランに限定することで、営業経費や積算費、プラン変更に伴う経費を低減、さらに、仕様・設備を限定することで、建材設備機器メーカーへの一括大量発注によるコストダウンも行っている。

秋口から集中着工
 また、着工期間を9月中旬から11月中旬までの2カ月間に集中させ、ちょうど工場の稼働率の落ちる時期に合わせてパネル等の生産をできるようにしているほか、一定規格の部材を一時期に大量生産することで、通常は混流生産となっている工場ラインの効率を高めるなど、工場生産効率の向上によるコストダウンも実践。着工期間の集中化は現場の施工効率も高めることになり、同一プランの大量施工による工期短縮と現場経費の低減はもとより、職人の慣れによる品質の安定化も図れるという。
 構造は従来と同様の木質パネル接着工法によるモノコック構造で、品質については国の住宅性能表示基準の設計評価で耐震等級(倒壊等防止と損傷防止)、耐風等級、劣化対策等級、維持管理対策等級、ホルムアルデヒド対策がいずれも最高等級。省エネルギー対策等級については等級3となっている。
 価格は本体価格で、換気システムは標準装備となるが、暖房はオプション。外部給排水工事や外構工事等の付帯工事、暖房設備、カーテン・照明などにかかる費用は別途必要。

高額所得者も好感
 ミサワホーム北海道本店営業推進部の青木英二次長は「リミテッド25は受注環境が厳しさを増す中で、良いものをどれだけ安く提供できるかに挑戦した商品。低所得者層だけでなく、高額所得者層からも反応があり、幅広いユーザー層に受け入れられている」と話している。

ほつけん・ファーブル
北網地区にも登場 初日に170組
(株)ほつけん(本社網走市、村中二三男社長)ではこのほど、(株)ホーム企画センター(札幌市、青木雅典社長)が開発したローコスト住宅「ファーブル」のフランチャイズチェーン(FC)に加盟、北網地区では初のFC店を網走・北見市内にそれぞれオープンさせ、7日・8日にモデルハウスを公開した。
 ファーブルはウレタン断熱パネルを使用した在来木造住宅で、次世代省エネ基準をクリアする断熱・気密性能やメーターモジュールによる自由設計などを標準としながら、坪当たり29万8千円からという低価格設定が大きな特徴。ホーム企画センターでは昨年四月に道外でFC実績のあるトステム(株)100%出資子会社のブライトホームと業務提携し道内でのFC展開を開始、これまで函館・帯広・千歳地区合わせて五社が加盟しており、ほつけんが六社目。FC店舗はほっけんの二店舗を加え、合計七店舗となった。
 ほつけんは土木・舗装工事や建設機器リース等を主な業務とする地場ゼネコンで、戸建住宅も年間十三棟ほど手掛けていたが、公共工事の伸びが期待できない中、民間住宅建築の比率をさらに高めていくことを目的としてファーブルのFCに加盟。オープン2日間のモデル公開では両店舗合わせて約170組のユーザーが訪れ、好調なスタートを切ったという。
 同社の羽田俊明建築部長は「ウレタン断熱・メーターモジュールの高性能住宅をリーズナブルな価格で購入できるということで、来場したユーザーの反応は非常に良かった。今後も積極的に営業展開を図っていきたい」と話している。

コラム:外野席
この半年で見えてきたもの
 21世紀最初の半年が過ぎ、住宅業界は年初の悪い予想通り、着工の減少が続いているが、変化の兆しも見られる半年だった。
 まず小泉内閣の成立。構造改革を旗印にした小泉純一郎氏が自民党総裁選に勝利したのは、自民党支持者、もっと大きくは国民が「このままではいけない」と意思表示したからだ。住宅分野では、住宅金融公庫の民営化が議論のテーブルに乗りつつある。これについては6月15日の外野席でも触れたが、「持家促進政策」によって誕生した機関が一つの役割を終えようとしている証でもある。流通も変化しつつある。アメリカでは「ホームデポ」などのホームセンターが、住宅資材を大量にしかもオープンに扱っているが、札幌にもホームデポ型のホームセンターが誕生する。これにより札幌市内の建材流通に変化が生まれるのでは、との見方がもっぱらだ。
 低価格を売りにする住宅フランチャイズや、地域密着型で低価格を打ち出す工務店も出現している。実際の契約金額は坪40万円程度からともいわれているが、これまでのような「安かろう、悪かろう」とは一線を画し、品質も売りにしている点は新たな特徴だ。
 社会全体の構造改革と高品質・低価格商品の提供という流れは、もう止まらない。これをしっかり押さえた企業は厳しい中でも勝ち残れる。そんな明るさも見られた半年だった。

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