5月下旬に終了した住宅金融公庫の今年度個人向け融資の第1回受付に申し込み、1ヵ月以上を経た7月上旬になっても、まだ公庫から「今後の手続きのご案内」文書が来ないケースがあり、工務店を困惑させている。今年から審査が厳しくなったとはいえ、1ヵ月以上も「宙ぶらりん」は異常な事態。公庫北海道支店では「慎重審査先」案件は通常の金融機関による審査を終えた後、公庫が直接審査するという二重の手続きをとっているために時間がかかっているという。「慎重審査先」とは何か、いったい今年の審査はどうなっているのか。
背後には悪質業者の存在
「昨年までは申し込んでから10日から2週間ほどで送られてきた『今後の手続きのご案内』がなかなか来ない」という話が、室蘭、登別など胆振の複数のビルダーで持ち上がった。
「夫が一流企業、妻が看護婦で収入は十分にあるのに通知が来るまで一カ月かかった」という事例もある。ビルダーが銀行に聞いてみたところ、「全体的に融資の手続きが遅れている」という説明だったという。
公庫でも、一部に審査の手続きが遅れていることは認めている。これは、融資申込みの書類を担当金融機関が審査する中で、「手持ち資金が十分でない」と判断するか、「団信(団体信用生命保険)に加入してない」かのどちらかが当てはまると、それだけで「慎重審査先」案件として扱われ、通常の金融機関による審査後、公庫に書類が送られ公庫でも審査を行う二重のプロセスを踏むことになるため審査に時間がかかるからだという。昨年度もこの区分けはあったが、今年度から基準が厳しくなったことでその割合が増加、申込み全体の約2割に達している。
さらに、胆振地区は審査がやや辛くなっているという。それは、「悪質な業者がいて、物件の価格や申込者の収入など、申請書類をごまかして融資金額を大きく引き出そうとする事例があったからだ」としている。
明確でない公庫の基準
ちなみに「慎重審査先」案件の約1/4、つまり申込み全体の約5%は融資限度額を減額したり、融資そのものを断っているという。「慎重審査先」案件にはこうしたリスクがあるにもかかわらず、ビルダー側には「慎重審査先」案件かどうかは直接告知せず、「申込み後10日から二週間ほど経って何の音沙汰もなければ、公庫が『慎重審査先』と判断していると思って欲しい」というのだ。この場合、「今後の手続きのご案内」は送られない。
「手持ち資金が十分にあり、団信に加入してさえいれば、『慎重審査先』として扱われることはほとんどないので心配いらない」と公庫側では言っているが、「手持ち資金が十分にある」判断基準は明確でなく、「申込者の年齢、家族構成、仕事の内容・将来性など様々な要素を総合的に判断した結果」としており、少々わかりにくい。
説明不足が目立つ
融資の底辺支える努力を
[解説]公庫の今年度の融資審査強化については、本紙でも何度か紹介しているが、北海道は全国的にも公庫融資の貸し倒れの割合が高く、その数字は言われている以上との情報もある。今年度は、いわば融資機関として当たり前の審査を行っているとも言えるが、それにしても説明不足ではないか。
しかも、融資限度額を減額されたり、融資を断られる割合は全体の申込者からみれば5%程度とはいえ、その前段階である「慎重審査先」案件か否かの告知がビルダー側に知らされず、通知が著しく遅れているのにその理由をはっきりと説明しないという不親切さは、民間の金融機関では考えにくい事態だ。
民間の金融機関は、「仮審査のスピード」「低金利」「商品の多様性」などサービスを競っている時代だ。公庫には政府系金融機関として、十分な情報開示とともに、事故率を下げながら融資の底辺を支える努力が求められている。
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