平成13年6月15日号から
C値平均0.3cm2/m2-高気密ベースに安心構造
奥野工務店
 ウレタンボードによる外張り断熱工法(ソトダン21工法)を採用する(株)奥野工務店(札幌市、奥野諭社長)では、桁上断熱や屋根断熱の採用などによって、全棟平均で相当隙間面積0.3cm2/m2前後の高気密性能を確保するとともに、胴差し廻りに外装材等の荷重を受ける桟を付加したり、ファイヤーストップを施工するなど、ユーザーにより高い安心感を与える住宅造りに取り組んでいる。
 現在、同社では気密測定、換気風量測定、CO2濃度測定を全棟標準で実施しているが、これだけ高い気密性能を安定して実現できるのは、気密層を桁上で取る桁上断熱や屋根断熱の採用がポイントとなっている。
 桁上断熱では小屋梁の上に合板を張り、その上に防湿・気密シートを回してから断熱材を施工するため、外壁のシートと桁上のシートを連続させることが容易で、現場ごとの気密性能の差も解消。屋根断熱ではさらに気密層の連続が容易だ。
 ただ、これだけ気密性が高くなると、レンジフードのファンに負荷がかかったり、給気口から導入される外気量の割合が増えるため、冬期に冷気を感じやすくなることもあるそうだ。これらの点は、同時給排気型のレンジフードと、外気温に応じて開閉量を自動調整する給気グリルの採用で対処していく意向だ。
 また、一、二階外壁のシート張りは、長さ3.2mの製品を横使いで一発張りすることにより、シートのジョイント部分を最小限に抑え、基礎・土台廻りの気密施工では、基礎天端・土台間にパッキン材を挟むのではなく、基礎工事の時に基礎断熱材内側に先張りシートをテープで固定しておき、布基礎打設後に立ち上げて外壁のシートと連続させている。これは、土台に使われる木材が他の構造材より品質が低い場合を想定し、万が一、パッキン材で追従できない隙間が発生しても気密性能が損なわれないようにとの考えだ。
 構造面では、ユーザーに安心感を与える工夫として、胴差し廻りに45×60mmの桟を横に流し、外装材等の荷重を受けられるようにしている。
 外壁軸間部分では、天井面と面揃えで横桟を納めてファイヤーストップとしているのが特徴。火災時の燃え抜けを抑制するとともに、軸組外側に耐力面材として使っている構造用合板と内装下地材の受け材も兼ねており、施工の合理化にもつなげている。



軸間部にファイヤストップを設置

中小の歩むべき道
「あ、いいな」と思える家
 大手ハウスメーカー対中小工務店という図式の中で、中小がどのような住宅を造っていくか。中小はコスト的には有利だが、ユーザーは大手に信用力を感じ、それで価格は高いけれど頼もうかどうしようかと悩む。また、大手は展示場で夢多き住宅を見せているので、ユーザーの耳に入る住宅情報も大手に傾いてしまう。中小にはコストメリットがあるものの、ユーザーは信用面に不安を感じる。
 展示場の住宅はサイディングを使った洋風なデザイン、室内は貼り物材料のデザインで、その住宅が実際に住宅地に建つと5~10年で補修が必要になる。しかし、それが大手のデザインとして、雑誌に山のように掲載されて、日本人はこのようなデザインを好むものだという幻想を生み、結果として工務店はひたすらそれを真似ようとする。
 東大・京大・早大などの出身者がデザインを作り、全国の展示場にその住宅が並ぶのは極めて格好いいが、中小がそれを真似すると破綻をきたし、デザインでは完璧に負けてしまう。大手が住宅をローコストで販売したら、中小はその存在が危なくなるだろう。
 中小は自分たちのデザインの土俵を作って、ユーザーに「こういうデザインもあったんだ」と思わせることが大切。普通に道を歩いていたときに「あっ、いいな」と思えるデザインがいいのではないか。
 道内の住宅に伝統的なデザインはないが、木造に郷愁を抱ける在来工法の家が原点だと思う。日本の在来木造は使いにくく寒そうなイメージがあるが、プランニングは現在のニーズを受け入れて、三尺モジュールや塗り壁、屋根瓦などをシステムとして踏襲していれば、ごく普通の家ができる。普通の家がいいのかと思うかもしれないが、普通の家をつまらないと言って工夫してもいびつな家が多くなるだけだ。
 在来木造の持っているデザイン力を生かせば中小はかなり楽になると思うし、すごくコストパフォーマンスの高い家ができると思う。ユーザーにはそれを見せればいいと思うが、そういうデザインの供給ができていないのが現状だ。

三浦工務店が施工した庄内の伝統的民家スタイルの家

換気性能は実測で
JVIA 政府に意見書提出
 日本輸入換気システム連盟(石原侑理事長、ディックス(株)社長)では、国土交通省が先月発表した日本住宅性能表示基準・評価方法基準等の改正案に対し、意見書を提出した。
 同連盟は、ユーザー保護という大きな流れの中、室内空気環境に対する関心の高まりに対応する改正案の趣旨を踏まえた上で、全般換気対策について、現行の換気性能評価を改め、機械換気による換気回数基準を0.5回/時に一本化した上で、気密性能と機械換気量については測定によって性能を表示すべき、としている。
 同連盟は、昨年度まで運用されていた住宅金融公庫の換気に対する不公平な融資基準をきっかけに、輸入換気システムの輸入・発売元を中心に外国政府(在日大使館)など約120会員で組織された。今回の意見書では、欧米諸国の基準なども踏まえながら、難解な割には現実的でない基準を単純化し、消費者保護、情報公開と規制緩和の流れにあった明確な基準の確立と自己責任によるわかりやすい性能表示を求めたもの。
 同連盟は意見書の趣旨を次のように説明している。
 現行の全般換気対策では、機械換気の換気回数基準を住宅の気密性能のランクによって定めているが、換気量を確保するうえで常に変動する不安定要素である自然換気を加味するべきではない。また、気密性能値もわからないのに隙間からの自然換気が一定量あると仮定すること自体がナンセンス。さらに、1+1=2になるように、単純に自然換気量と機械換気量を合計すれば基準換気量となると考えるのは間違い。
 換気装置の性能を評価する規定として、実務的には使われない難解な数式を示した上で、架空の平面プランで換気能力を証明するかたちとなっているが、これはただ難しいだけで現実の住宅とはかけ離れており、性能評価方法として不適当。最も単純でユーザーにもわかりやすい性能測定によって性能評価を行うべき。
 このほか、*第一種熱回収換気について、熱交換器は顕熱交換に限定すべき、*行政機関などは基準を定めるだけでよく、実際にはユーザーに性能保証するわけでもないのに、機器の性能審査や施工詳細まで関与するのは過干渉、*自然換気は性能表示上の換気としては不適当―などの意見も添えている。

コラム:外野席
公庫民営化に二つの問題
 一般紙で報じられているように、政府は住宅金融公庫の民営化方針を発表した。住宅業界に大きな影響を及ぼすだけに、関心も高いと思う。
 さて公庫の民営化は二つの大きな問題がある。まず、住宅建設という国策の大きな柱の一つを、融資面で銀行などの民間金融機関に完全に任せてよいのか、という点。これまで銀行は住宅建設資金の融資をどれほど行ってきたというのか。最近でこそ融資商品を充実させているものの、これとて数年先にはどうなるか分からない。何せ日本の銀行はサラ金よりもたちが悪い金貸しだと、国民はもうよく知っている。その銀行が長期の小口融資を継続的かつ安定的に行えるのか。はなはだ疑問である。
 次に、制度疲労も見られるものの、次世代省エネ基準などのかたちで住宅の性能向上に大きな役割を果たしてきた公庫技術基準の行方である。省エネルギーや室内環境に関する法規が事実上存在しない我が国で、今後さらに省エネルギーを推進しなければいけないときに、新築融資物件の審査を銀行に任せてよいのか。
 公庫改革の方向は民営化ではなく、解体・再構築である。公庫の技術部と厚生労働省の室内環境に関わる部門などを国土交通省の住宅局が取り込み『住宅省』を新設、融資政策を含む総合的な行政を進めるべきだ。いらないものを無くし、今必要とされているものを作るのが行政改革だ。

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