平成13年5月25日号から
国土交通省 化学物質の濃度測定を盛り込む
住宅性能表示・改正案
 国土交通省ではこのほど、本格的運用から半年が経過した「日本住宅性能表示基準」及び「評価方法基準」の改正案を発表。また、厚生労働省では室内空気汚染に係るガイドライン(案)として、新たにテトラデカンなど四物質に対する指針値や測定方法をまとめた。
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 今回、日本住宅性能表示基準等の改正案の中で最大のポイントと言える建設性能評価での化学物質濃度測定結果の表示は、「空気環境に関すること」の中の選択項目。
 対象となる化学物質は、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの5物質で、評価書には化学物質の名称と濃度、測定器具、測定年月日、空気採取時の室内外の状況を表示することになる。ただし、性能評価項目として利用する場合の測定・表示は、ホルムアルデヒドのみ義務付けられ、他の四物質は任意選択だ。分析方法は原則として、ホルムアルデヒドは液体クロマトグラフ法、他の物質はガスクロマトグラフ及び質量分析法。
 このほか改正案では、「劣化の軽減に関すること」で補強コンクリートブロック造を対象構法に加えたり、等級3の土台の条件としてにヒノキ・ヒバの集成材も認めるなど、より住宅建築の実際に即した内容への変更措置などが取られている。

熱橋規定など見直し
次世代省エネ基準・改正案
 国土交通省では2年前の3月に告示した、いわゆる次世代省エネルギー基準の一部改正案を発表。横架材部分の断熱補強の緩和や、屋根断熱を薄くする場合の条件(トレードオフ規定)など、現場に即した内容になっている。
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 次世代省エネ基準は、性能規定に相当する「建築主の判断基準」と仕様規定に相当する「設計・施工の指針」の二つの告示で構成されているが、今回の改正案は仕様規定の「設計・施工の指針」。注目されるのは、熱橋部分の断熱補強規定を緩和したこと。
 現規定は、胴差しや床根太など横架材部分に熱抵抗1.2以上の断熱材で断熱補強すること、となっているが、改正案では横架材と断熱材を合算して1.2をクリアできればよい。これにより、木造については横架材部分にも外壁付加断熱を施せば、ほとんどの場合は別途に断熱補強を行う必要がなくなる。
例えば、在来木造で付加断熱した場合、横架材部分は付加断熱材と横架材(厚さ100mm)で熱抵抗1.2をクリアできる(以下ツーバイなどは別表参照)。 もう1つのポイントは、屋根断熱の断熱厚を薄くする場合の条件を示したこと。壁の断熱を厚くすれば一定限度まで屋根の断熱を薄くすることができる。
 例えばⅠ地域の場合、屋根を210たる木でHGW16K相当200mmにするには、在来木造の場合、壁に充てん断熱100mm(HGW16K)+付加断熱として高密度グラスウールボード45mm以上、または押出スチレンフォームB3 30mm以上とすればよい。ツーバイフォーでは、同じく充てん90mm(HGW24K)+付加断熱・高密度グラスウールボード50mm以上など。
 このほかの主な改正点は以下の通り。
▽基礎外側断熱の場合の、土間床とベランダなど屋外張り出し床との接合部は、断熱材を連続させなくてもよい。
▽木造の床断熱工法で、根太ピッチを450mm以上とる場合は、断熱材の熱抵抗値を基準の90%に下げてよい。
▽相当隙間面積2cm2/m2以下とする場合の気密材に乾燥木材等を追加。

指針値に4物質を追加へ
厚生労働省
 また、厚生労働省ではこのほど、「室内空気汚染に係わるガイドライン(案)」において、新たに接着剤などの溶剤として使われる「テトラデカン」「ノナナール」、ビニールクロスの可塑剤として使われる「フタル酸ジ―2―エチルヘキシル」、殺虫剤に使われる「ダイアジノン」の四化学物質の室内濃度指針値(案)をとりまとめた。
 指針値は、テトラデカン330μg/m3(0.041ppm)、ノナナール41μg/m3(7.0ppb)、フタル酸ジ―2―エチルヘキシル120μg/m3(7.6ppb)、ダイアジノン0.29μg/m3(0.02ppb)。ただし、ノナナールは情報量が乏しいことから暫定値としている。

魅力的な方法
第二種換気の提案
 集中給気方式(二種換気)は、動力を使って外気を給気し、排気は自然の力に任せる換気方式のこと。機械給気によって室内側の圧力が屋外より高くなる場合が多いため、室内の湿気(水蒸気)が湿度の高い室内から湿度の低い屋外へ流出しようとする過程で、壁内結露を引き起こす危険性が高く、ご存じの通り一般的には使われてこなかった換気方式だ。
 しかし、住宅の気密性能が向上したことにより、室内の圧力が高くなっても、漏気量が著しく少ないため、内部結露の危険性は低いと考えられるほか、建物の煙突効果とも呼ばれる温度差圧力を利用し、外の空気が入りやすい住宅の下半分から給気し、外の空気が出やすい上半分から排気することで、自然の空気の流れに逆らわない、より計画的な換気が可能だ。二種換気も、次世代省エネ基準を満たすような気密住宅において、排気口の位置や有効開口面積の設計次第でうまくいくのではないか、と考えている。
 二種換気には、取り入れる外気を集中的に保温・防塵処理できる点や、各居室へ空気分散しやすいメリットがあり、そのメリットを上手に利用すれば、魅力的な換気方法になると思う。

気密は次世代基準以上
 現在、実施例はほとんどないが、今後新たな計画換気の可能性を期待して、その考え方について解説する。
 二種換気は、室内を加圧するため、内部結露を防ぐためにも漏気量について、一定の条件を満たすことが必要。まず、気密性能は相当隙間面積2cm2/m2。排気口位置は2階の床上2mの位置に、排気口の有効開口面積は床面積1m2あたり1cm2程度に設定する。
 気密化した住宅では隙間も有効な換気の一部として働くため、次世代省エネ基準を満たす住宅では、隙間の換気量を1時間当たり0.1回と見積もることができることから、二種換気による住宅全体の必要換気量は、同0.4回以上となっていればよい。
 給気の方法として、基礎断熱した床下や天井懐空間、屋根断熱した小屋裏などを余熱空間として、各居室に分配する方法が考えられる。基本的には、パッシブ換気・床下暖房と同様に、床面に設けた給気口と間仕切壁などを利用して給気を分配する。給気の予熱は床下などの予熱空間に放熱器を設けるだけで、特段の配慮は必要ない。
 排気口は、住宅内の最も高い位置に設置する。一種換気や三種換気とは異なり、排気に動力を使わないことから、便所やサニタリーからの常時排気はできない。したがって、局所換気は全体換気とは分けて計画する。冬季は内外温度差によって換気量が増加するため、換気量をセーブできるような設計が必要。
 なお、二種換気では、給気口に必ずフィルター設置する。外気側に防虫網を設置し、手軽にメンテナンスできる配慮が必要。床下を使う場合は、床面にフィルターボックスを設置し、取り出しやすくするなど、換気性能を維持するためには、一種換気と同様に保守への配慮が必要。


取材ノートから
基本に立ち返って
 省エネルギーと快適な居住空間を求めてスタートした“高断熱・高気密・全室暖房・計画換気”も広く認知され、現在は普及の一途。多くの先進的ビルダーは、特徴として説明しなくなってきたほどだ◆しかしある設備業者の話では、今でも新築住宅で「寒い」というクレームがでているという。住宅の断熱・気密施工が問題ではない。実際、その設備業者が暖房システムを少し直しただけで解消したそうだから。この設備業者曰く、「住宅1棟の暖房負荷を計算し、“その数値分だけパネルヒーターを取り付ければいい”というビルダーの勘違いが原因」だという◆“住宅の断熱性能が高くなると寒さの主因は冷気流だから、窓や給気口の下にパネルヒーターを取り付けて冷気流の発生を防止する”のがセントラル暖房の基本だったはずだが、熱性能の数値だけが一人歩きしてしまい、適材を適所に設置することの大切さが忘れられてしまった。新しい技術や情報を追うことは重要だが、それが何の目的でスタートしたかを振り返ることも大切なことだ。(堺)

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