平成13年4月5日号から
先進性と地場産材の活用
八雲型住宅・八雲戸建住宅協議会
 道南・八雲町の地元工務店9社が発足させた八雲戸建住宅協議会(加納昭平会長、?加納工務店社長)では、地元で入手可能な建材(木材、内装材など)の活用や、施主に安心感を与える家づくり、大手ハウスメーカーとは一線を画す超高性能化を目指し、地域色を打ち出した企画住宅「八雲型住宅」のモデル案を作成。このほど、同協議会のメンバーである?山野内建設(山野内秀男社長)がその一つとして同町に戸建住宅を建設した。この住宅でコストや性能のデータを取り、八雲型住宅の仕様を決定する予定だ。
 同協議会は発足以来、技術力をさらに高めること、良質な住宅を適正な価格で供給することなどで、大手ハウスメーカーに対抗することを目指し、週に1回程度の定期的な勉強会と、月に1回程度の研修会を開催している。
 その活動成果の1つが八雲型住宅だ。①地場産業の育成・地域材の活用②安心の家づくり③徹底した合理化と高品質④高断熱・高気密による省エネルギー化⑤健康住宅・環境への配慮-と5つの目標を設定。この中でも特に注目されるのが、地場産業の育成・地域材の活用と環境への配慮(ヒートポンプの採用)。
排気熱利用のヒートポンプ暖房
 ヒートポンプ暖房システムは函館に支店があるキーテック工業?(本社東京、函館市吉川町6-4、tel.0138-44-1271)の「キーテックシステム」を積雪寒冷地型に改良。
 ヒートポンプは外気や地中熱など自然エネルギーを熱源として、投入するエネルギーに対し2倍以上のエネルギーを生み出す効率の良いシステムだが、同システムはその熱源として、今まで捨てていた換気排熱を利用する点が最大の特徴となっている。
 排熱は常に約20℃以上あるため、外気温が下がってもヒートポンプの能力にさほど影響を及ぼさない。そのため成績係数(COP)は平均して2.5を実現する。ただし、住宅の断熱・気密性能が高いことが条件。この住宅は熱損失係数1.06kcal、隙間相当面積は0.44平方センチ/?。
 積雪寒冷地型への改良ポイントはシステムの設置場所。一階天井ふところを断熱区画することで熱的に屋外空間とし、そこに第三種換気ユニットとコンプレッサーを取り付け熱回収、物置に設置した熱交換器で温水をつくる。ヒートポンプ本体を屋外に設置した場合の雪害などの問題を回避できる新たな手法だ。
 住宅の構造は在来木造二階建てで、工法は室蘭工業大学の鎌田先生が提案しているPFP工法(クレテック金物工法)を採用。

住宅外観と1階天井ふところのヒートポンプ用グリル

品質追求がコスト下げる
品質とコスト(1)
視点はデザイン性と地域性
 最近、住まいの性能と機能は急テンポで向上している。
 高断熱・高気密、全室暖房・計画換気、バリアフリー化、シックハウス対策、この辺まではアドバンテージ、他社に対する優位性が無くなってきている。
 21世紀は、温熱環境的には、室温を20℃程度に設定しても、体感的に寒さを感じない、性能の確立。
 耐久性では、躯体の長寿命化により、設備類のメンテナンス・リニューアルの容易性、ライフスタイル・ライフステージの変化に対応できる自由度の高い・可変性を持つ性能の装備。
 地球環境への配慮としては、温暖化を防ぐエコロジカルな生活への社会的ニーズの高まりに対応できる新しい情報と技術の収得、コージェネレーション型ユニバーサルデザイン住宅の提案。
 そして、これまで性能と機能性の向上に偏っていた取り組みから、潤いや豊かさを意識したデザイン性の向上、地域の気候・風土の中で育まれてきた伝統的住文化と新しい技術の調和を図った「住まいの創造」の時代だ。
 住宅市場は成熟期に入った。色々な機関で、中・長期見通しを行っているが、この先、新設住宅は減り、建替住宅中心の時代だ、という点で見方が一致している。
 その建替市場は非常に豊富だ。北海道では、30年前(昭和45年前)までに建った木造戸建住宅を最近の新築水準に比べると10年分のボリュームとなる。将来に向かって良質な資産としての価値を高める投資効果を得るためには、リフォームで済ませず、極力建て替えを推し進める事だ。
 バブル崩壊前まではユーザーの所得は右肩上がり。住宅価格の上昇にも負担力が付いていた。しかし、これからは、その逆で、負担力は低下していく。新築に変わる建替需要を掘り起こすためには、住宅のコストダウンは避けて通れない。

長寿命化でコスト評価に新基準
 日本の住宅はアメリカに比べて、建築費が2倍、耐久性は半分、というデータがある。これはトータルでは、日本の住宅はアメリカの4倍も高く、資産価値は4分の1ということになる。日本では、新古住宅でも、いざ売るとなると新築時の半値しか付かないと言う現実がうなずける。
 しかし、遅ればせながら日本も、住宅のコストは建てた時の値段ではなく、ライフサイクルコストやリサイクル性まで含めたトータルコストで評価が行われるべき時代にきた。資産としての評価もそうした観点から決まってくる。良い住宅の基準は、長く効率的に使用できる事である。
 その実現には、これまで気密化技術向上のために取り組んできた経営者と現場の一体感と現場の性能競争意識を、生産性向上によるコストダウン、住宅の長寿命化を活かす、コストダウンのためのコスト意識に取り組む改革が必要だ。

暖房温度を適正に制御・サーモバルブ
 
 暖房・給湯設備の設計・施工をメインに、パネルヒーターの輸入販売も展開している?畑商会(伊達市)では、パネルヒーターなどの放熱量を制御するサーモバルブ「TP3000」をスペインのポリベンション社から輸入、販売している。電気を使わず機械的に作動するシンプルな構成で、故障が少なく優れたセンサー機能を持っており、床暖パネルや、床埋め込み方法で施工しているヒーターの制御に最適と好評だ。
 製品はプラスチックカバーBox内にバルブとサーモヘットだけで、電気配線などは一切不要だ。まず、間仕切り壁などに取り付け、暖房の配管を延長してBox内のバルブに接続・配管する。室温設定は一度居住者が行った後は自動制御する。床暖房や床埋めヒータなどの暖房空間にひとつずつ取り付け、空間ごとに個別制御する。
 サーモの仕組みは、先端の温感部に室内の空気が触れるとガスエレメント内のガスが反応して膨張、バルブ内の流量調節弁を押し出して流量を変化させる。無段階調整タイプで室温を感知して常に調節弁を制御するが、細かい部材などがないため故障しにくいのが特長のひとつだ。
 Boxの規格寸法は縦185×横130×奥行き90mm。設計価格は1個16,000円。
 詳細の問い合わせは同社(伊達市松ヶ枝町58-98、tel.0142-23-2876)へ。

サーモバルブ本体

Web 高性能住宅づくりQ&A
厳寒期の窓の結露対策(前編)
 Q…2年前の夏に引き渡した住宅で今年の冬、窓が結露しているとお客様から連絡がありました。この冬の厳しい寒さが引き金だとは思いますが、近所の物件では結露していないことから、お客様の暮らし方が原因ではないかと予想しています。対策を教えてください。なお、結露場所は1階北側ユーティリティの窓と、2階東側出窓(2ヵ所)、窓はLow―Eペア、暖房はセントラルですが窓下に放熱器はありません。気密性能は1平方?/?、第三種換気の換気量は測定によってすでに確認済です。

 A…高断熱・高気密住宅での結露のほとんどは、室内発生の湿気が多すぎる、換気不足、暖房温度が高すぎる、などの複合原因であり、単純ではありません。また、お客様に「うちが建てる住宅は結露しません」と宣言している場合は、ガラスが曇る程度の結露でも捨てておくわけにはいきません。

 今回の事例では、出窓部分の断熱や開口部廻りの気密処理に大きなミスがないとすれば、この住宅で最も弱いところに結露が出たと考えるのが常識的だと思います。予想される結露原因はいくつかありますが、その前に、問題を整理するために、まず、以下の点についてお客様に確認します。

①結露は1日中起きるか、朝、カーテンを開けると結露していても日が昇るにつれて東窓は結露が解消するか。 〈以下次号〉

コラム:外野席
スウェーデンハウス
 最近、工務店さんと話していると「スウェーデンハウス」の名前を頻繁に聞くようになった。いわく「この地域でも好調だ」「バッティングしたら勝てない」「獣医、公務員は根こそぎもっていかれる」。そして話題は必ず「なぜ好調なのか」という点に行き着く。木を使った内外装、特徴的な切妻大屋根、北欧に対する信頼感、最近では「会社名が国名そのものではかなわんなァ」というぼやきまで聞こえてくる。

 「スウェーデンハウス対策」も各地で始まっているようだ。性能による差別化、コピー商品など様々あるが、『外野席』に集まる声には非難中傷、欠陥工事の指摘のたぐいはあまりない。この点も、これまでのハウスメーカー対策とは異なる点の1つだ。欠陥などの指摘ではなく、商品力、性能で競う時代。いよいよ北海道は、全国に先駆けて本格的な性能競争時代に突入しつつある。

 本紙でもこのような背景を1つのキーワードにしながら、新しい時代の競争をテーマに特集を組もうと考えている。

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