平成13年3月25日号から
伝統を活かした高性能住宅
山形・三浦工務店
 日本の代表的な米作地帯である山形県北西部の庄内地方で、(有)三浦工務店(酒田市、三浦文夫社長 tel.0234-24-4449)が瓦葺きの切妻屋根や漆喰と下見張による外壁といった伝統デザインを生かした高性能住宅づくりに取り組んでいる。
 同社では一昨年9月に室蘭工業大学鎌田紀彦助教授監修、(有)赤谷建築設計事務所及び室蘭工業大学鎌田研究室設計により、築百年以上の住宅の建て替えを実施。
 外観は、瓦屋根の切妻、外壁にはモルタル漆喰と付け柱、化粧梁、化粧土台、下見張、積極的に設けた開口部の組み合わせにより醸し出される陰影のある伝統的な造形が大きなポイント。また、屋根には強制通気用ファンを設置した腰屋根を造り、夏には二階天井開口から室内の熱気を排出する棟換気の役割を果たすなど、デザインと機能を両立させている。
 室内は柱や梁などを積極的に表しとして木の温もりを強調し、和室では壁に珪藻土を使って昔ながらの庄内民家の雰囲気を再現。室内の開口は全部引き違いの吊り戸にし、専用トイレのある寝室を設けるなど、バリアフリーも意識し、伝統と使い勝手を上手く融合したプランニングとしているのも特徴的だ。

独自の気密化手法を採用
 これらの伝統的な外観・室内デザインを現代の高断熱・高気密技術で実現する構造体は、クレテック金物で集成材を組むPFPⅢ工法。基礎断熱、屋根断熱仕様としており、布基礎は型枠兼用断熱材を使い、捨てコンクリート200mmと同時打設。捨てコンには32kWの電気ヒーターが埋設されており、深夜電力でコンクリートに蓄熱、一階床のガラリから暖気を上げて全室の暖房を行う。布基礎には高断熱・高気密用床下換気口が設けられており、夏期には開放することで通風を図り、床下の湿度環境を改善する考えだ。
 外壁面は柱を室内に表しとするため、軸間は高性能グラスウール16K100mm厚を90mmに圧縮して充てんし、その室内側にポリフィルム0.2mm厚、仕上げは構造用合板またはラスボードを柱に付けた受け材に施工。軸組室内側のポリフィルムは防湿の役目だけを担い、気密層は外壁下地のOSBで取る考えで、OSBと軸組材との取り合いをパッキンで気密化している(図面参照)。
 3月6日には平成13年新木造住宅技術研究協議会主催の見学会も開催された。

庄内地方の伝統デザインを再現(写真)


付加断熱した外壁の納まり

簡単に手すりを設置、強度も十分 「どこでも下地」
 
 高島(株)では、下地の入っていない壁でも手すりや棚など荷重のかかる部材を取り付けられるよう、壁内にウレタン樹脂を注入・硬化させることで下地を形成する「どこでも下地」の道内本格発売を開始した。
 同製品は、簡単に手すりや吊りなどの下地を作ることができる点が最大の特徴。施工は下地を作りたい部分の壁面に取り付けたい部材のブラケット等を当てて木ネジ部に印を付け、その中央部分にウレタンスポンジを入れる35㎜φの穴を開ける。そして木ネジ部の当たる箇所にも7.5㎜φの穴を開けた後、ウレタンスポンジを壁内に挿入、養生シートを張ってから7.5φの穴にポリウレタン樹脂を注入して、専用キャップ(小丸棒)で栓をする。硬化したら養生シートを取り、専用キャップを壁と面一になるようにカットして、ブラケット等を取り付ける。ベターリビングで行った性能試験では十分な強度があることが確認された。
 リフォームはもちろん、新築中の住宅でも室内のボード張りや内装工事が終わっている段階での急なユーザーの要望や設計変更に対応可能だ。
 定価は、ウレタンスポンジやポリウレタン樹脂などをセットにし、戸建住宅で8~10箇所、マンションで14~16箇所分を施工できる標準パックが15,000円。
 なお、カーテンレールやトイレキャビネットなどの取り付け用として、さらに簡易に下地を作れる「どこでも下地―スピード・ミニ」も新たに発売。
 問い合わせは同社(tel.03-3567-0226)へ。

壁を壊さず窓を更新
リフォーム専用樹脂窓「リプラウインドウ」
 (株)ケーアイサッシサービスでは、積水化学北海道(株)、三和シャッター工業(株)と共同で、リフォーム専用のプラスチック(PVC)サッシ「リプラウインドウ」を開発、三和シャッターを販売窓口として発売を開始した。既存の外壁材を壊すことなくPVCサッシに簡単に変更できる工法として、札幌で開かれた展示即売会などでも好評だった。
 既存のアルミサッシからPVCサッシに取り替える場合、規格寸法が異なることやサッシ枠が外壁に飲み込まれているため、一般的には外壁はつり、撤去、仕上げなどでコスト高になるだけでなく、そのコストがハッキリしないためユーザーがなかなか踏み切れないケースもある。また、施工技術によって仕上がり具合がバラつく問題もあった。リプラウインドウはこれらの問題を一挙に解決するもの。
 製品はPVCサッシ本体と、PVCサッシと外壁の取り合いの断熱性能と強度を維持するPVC製ビルトインフレームで構成されており、既存のアルミサッシの寸法を測りオーダーメードで生産する。
 まず、既存のアルミサッシを枠だけ残して撤去、そこにPVCサッシとビルトインフレームを室外側から同時にはめ込む。室内側はPVCサッシ枠を既存の窓枠に木ねじで止め、室外側はビルトインフレームを既存のアルミ枠にビス止めすることで室内・外両側からPVCサッシを支える。ビルトインフレームと外壁の取り合いはコーキング処理して、外側から化粧カバーで被覆して完了。室内側は別売の廻り縁、化粧木枠を窓枠に取り付けて仕上げる。
 断熱性能(熱貫流率)は一般のPVCサッシと同じ(Low―Eガラス仕様で2.0W)。
 設計価格は、掃き出し窓対応の中央Fix+左右外開き(高さ2,190~2,230×幅1,726~2,635㎜)のLow―Eガラス仕様で349,800円。
 詳細の問い合わせは、販売窓口の三和シャッター工業(tel.011-231-8081)へ。

既存のアルミサッシ枠に
リプラウインドウをはめ込む(模型)

Web 高性能住宅づくりQ&A
ベイクアウトとその効果
 Q…ホルムアルデヒドやVOCなどを早期に排出する方法として、ベイクアウトが効果的だと聞いたことがありますが、簡単にできるのならやってみたいと思います。

 A…ベイクアウトとは、温度が上昇すれば揮発量が増えるというVOCなどの特性を利用して、暖房などで室温を上げ、VOCなどを早期に揮発させてしまおうという手法です。語感から何となく難しそうな響きがあることや、過去の例を見ても効果のほどが十分にわからないことなどもあってか、あまり実施例が多くないようです。しかし、北見工業大学の坂本弘志教授は、高断熱・高気密住宅でベイクアウトを実施し、効果を確認しています。
 坂本先生は、実施例が多くないので結論的なことは言えないとしながらも、室温30℃・換気システムを0.5回/hで2週間運転を続けると、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンという優先取り組み三物質は指針値以下に抑えることができるといいます。
 ベイクアウト中は換気を運転しながら室内を暖めます。2~3日程度でホルムアルデヒドは基準値以下に下がるそうですが、下がりにくいのがトルエン。トルエン濃度を下げるために2週間という期間が必要、というのが現時点での結論です。なお夏場は施工中の室温も高いので抜けが速いそうです。

コラム:外野席
日本人もDIY好き?
 アメリカ人は最近、あまりDIYをしなくなった、と聞いていたが、どうやら好景気と無縁ではなさそうだ。
 ナーブショーや住宅地視察などを終えて先ごろ帰国したある方に聞くと、ナーブショーではこれまでの機能性建材から装飾性の高い建材へと出展傾向が変化し、住宅地は明らかに値上がりしており、しかもその敷地は狭くそして住宅の装備はむしろ貧弱とさえ言えるほどの内容だったという。まるでわがニッポンの十年前の姿ではないか。
 以前は米国に暮らし、ここ十年は毎年同国を訪れ、今年は出展者側としてアメリカ市場を見てきた同氏の話だけに、説得力を持っている。「これほどまでに景気の状態がはっきり見えたことはないね。もう終末は近いな」と同氏。ただ、新聞報道のように、急速に景気後退が始まっているという感触はなく、今年暮れには低下するだろうというのがおおかたの見方。政治好きの米国民も好景気下にあってかつてないほど政治への関心は低く、新大統領への厳しい声もないという。
 経済的に満足すると、政治への不満は当然少なくなる。一方、一般的に仕事は忙しくなるので、自分で直すよりお金を払ってやってもらう方がよい、ということになるらしい。
 さて、十年前とは立場が逆転した日米経済から推察すると、日本国民はさらにDIY好きにならざるを得ないか。

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