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SAPPORO ECO-E HOUSE ハイレベル認定の家/中村よしあき建築研究所

中村よしあき建築研究所

ライター 高橋明子 | キッチン | バリアフリー | 断熱・省エネ・zeh | 趣味・こだわり系 | 2013.03.28

いずれ石油などの化石燃料が枯渇するというピークオイルの思想から、できるだけ少ない消費エネルギーで住む家づくりを考えているという中村欣嗣(なかむら・よしあき)さん。住宅建築で数々の受賞歴があり札幌市立大学でも非常勤講師を務める。私も襟を正して取材に行ってまいりました、ところが・・・

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アイランドキッチンに立つ奥さま。向かって左には子供用カウンター


この方、センセイ?


今回取材するKさん邸の前まで来ると、アウトドアジャケットに使い込んだリュック、足もとは黒の長靴と、まるで森の中に暮らすような男性が「どうも~」と現れました。えっと、この方は?
「中村さん、こんにちは~」。ドアを開けて声を掛けてきたのは、Kさんご夫妻。ということは、この方が建築家の中村欣嗣さん、ですか?
「私も初めにお会いしたときは『あれっ?』って(フフッ)」と笑うKさんと奥さん。聞けば、中村さんはいつもこういったスタイルだとか。
大学で教えるときも冬は長靴ですか?と尋ねれば「1回だけ長靴で行きましたね。学生に断熱と気密のことを教えるためです。短靴だとズボンと皮膚の間にすき間があるため、そこの空気が上昇気流になって首元から抜けてしまい寒くなる。長靴はその気流の流れを止めることができるので暖かくなることを、身をもって説明しようと・・」。なるほど、分かりやすい説明にやはり先生なのだと納得。いや、失礼しました!


厳寒期に万が一の暖房停止でもOK


そんな中村さんの気取らない人柄もさることながら、手掛ける家も気取らず実質的であることを現しているようです。

30代、会社役員のKさんには奥さんとの間に3人の男の子がいます。家を建てるに当たっては本を読むなど勉強し、断熱・気密、耐震の性能を最優先に考えていました。住宅展示場でハウスメーカーも検討しました。ハウスメーカーにちょっと不自由さを感じ、その後知ったのが中村さん。「こちらの意見はあまり言えない感じの先生もいらっしゃいますが、中村さんはうちの意見もしっかり採り入れてくれました」(Kさん)。

新築に当たっては、中村さんのアドバイスを受けてコストと性能のバランスを考えながら採用するものを決めていきました。断熱はなんと!! 壁に厚さ30cmものグラスウールを入れ、窓はトリプルLow-Eガラスの樹脂サッシを採用。その窓の内側にはさらに断熱性を高める特注の断熱戸を設置しました。
そのため、いざ暖房が使えないような非常時にも室内は十分寒さに耐えられる温度になるそう。札幌でここ数年の1、2月最低気温は平均で約マイナス8度。しかし、この家では暖房を入れなくてもプラス6度、より暖かな日には10度前後を保つことができるといいます。

2012年度に始まった札幌市独自の次世代住宅基準「SAPPORO ECO-E HOUSE」では、この家がハイレベルの認定を受けました。「寝るときは暖房を最小にしていますが、薄着にタオルケットで寝ているほど暖かいですよ」と奥さんが教えてくれました。
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シューズだけでなくお掃除用具も収納できる大型の玄関収納。棚の上に認定証が置かれている


地震にも備えを


「バリアフリーもハイレベル相当の温熱環境も、長く安心して暮らせるという考えからでてくるものです。現実に建物寿命を100年というスパンで考え始めると遭遇確率が増える地震にも配慮したいと考え、この建物は耐震性能にプラスして制震性能を付加しています。地震時に建物の応答変位を半減させるというものです」と、中村さん。
施工はKさんと日ごろからおつきあいのある丸竹竹田組さん。気密化、制震化工事など難易度の高い工事を見事に完成させました。

これが正解という設計はない!?

建築家としてアドバイスをする一方で、オーナーの希望にも耳を傾ける柔軟さを併せ持つ中村さん。「立地や予算、そして住むご家族なりの生活スタイルが必ずあることを考えれば、初めから"これが正解"という設計はありません」と語ります。オーナーさんの話をじっくりと聞くことで、そのご家族にふさわしい家づくりを考える、そして話し合う。この作業を何度も繰り返していくそうです。

例えば、1階リビングにある大きなアイランドキッチン。これは奥さんが希望したものでしたが、中村さんは、バリアフリーの長い目でみて、2階にある寝室を将来は下へ移せるように空間を取っておくことも検討すべきです、とアドバイスしました。
「アドバイスをうかがったうえで、キッチンに隣接する子ども用カウンターがどうしてもほしい理由を見つめるゆとりが生まれました」と奥さん。「家事をしながらカウンターにいる息子たちを見ていられますし、3人がキッチンに来て料理を手伝ってくれたりもするんですよ」と、うれしそうに話してくれました。

「結果的に良かったと思います。一時期しか使わないものでも、やはりあれば便利ということもある。大事なのは、ほしいと思う1つ1つをオーナーさんご自身が本当に必要かどうか判断し見極めていくことですね。そのお手伝いをするのがボクの仕事です。」と中村さん。
建て主としては、せっかくコストをかけたのに住んでみて後悔するものはイヤですよね。本当にオーナーさんの身になって考えてくれるのはうれしいことです。
一方で、Kさん夫婦が希望した吹き抜けは「消費エネルギーが増える面もあります」という中村さんのアドバイスで納得し、採用を見送りました。
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キッチンからリビングをみる。断熱扉を閉めると、雰囲気が変わる


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キッチン背面の大きな収納も手づくり


将来を見据えたバリアフリー


収納に関しては、設計前に中村さんがKさんの住居に行って家財道具の分量をはかり、必要なスペースを計算しました。玄関わきにはご主人の趣味であるサーフィンや子どもの物をしまうシンク付きの収納スペースがあります。「夫のウエットスーツや子どもの汚れものが洗えるので便利です」と奥さん。
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(左)トイレは床材にも掃除しやすい工夫が
(右)玄関から土足でも入れる収納。スキーやウェアもここにおけばすぐに乾く


トイレの便器は、車いすのままでも入れるように斜めに設置されていました。実は去年暮れに足を骨折したというKさんが「この家は基本的にバリアフリーなので、本当にその良さを実感しました」と教えてくれました。

2階は階段を上った脇にある、納戸とクローゼットに挟まれたスペースを書斎エリアにしています。「私はいらないと思っていましたが、『将来は企業を経営する立場になる人だから、家でも勉強する場所が必要』と中村さんからアドバイス。子どもたちが遊んでいたりすると自分の場所はやはり必要ですね」(Kさん)。書斎スペースは幹線道路側にありますが、トリプルガラスサッシと30cmの断熱・防音材などのおかげでとても静かなのだそうです。
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手前の収納は「家族の棚」。それぞれが自由に使う棚を用意することで、奥さまの手間がなくなり部屋もスッキリ。奥は静で明るい洗面


セルフメンテナンスも一家で楽しみながら


造作の子ども用カウンターや飾り棚もシンプルなつくりですが、「これが、とても使いやすいんですよ。もしかすると既製品のほうが高かったかも」と奥さんがニッコリ。ユーティリティーと廊下の天井に付けられた物干し・吊り具も木の造作によるもので、これはちょっとうらやましいアクセント。

「洗濯物が臭わなくなりました!」と、これも奥さんが喜ぶ24時間換気は第一種換気(熱交換型)を採用。中村さんによれば「省エネはもちろんですが、壁に給気用の穴を開けずに済むので道路の騒音が直接室内に入らないし、オーナーさん自身がメンテナンスできるようなものを採用しました」とのこと。

2階部分はグレーのモルタルをそのままに、1階部分はオレンジの板壁が印象的なKさん邸。この板を塗る作業は家族で行ったそう。この先に塗り直す時が来ても、ハシゴが届く範囲なので業者に頼まず自分たちで作業することができます。そのころには、3人の息子さんも頼もしい戦力になっているでしょう。
Kさん邸、住むほどに愛着がわいてくる家になりそうです。
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記者の目

中村さんの手掛ける家はシンプルでセルフメンテナンスも可能、子どもの世代まで使える高寿命。例えるなら、流行のファッションだけどすぐ飽きてしまう服でなく、着心地の良さを感じながら長く使える暖かな服のように感じられました。中村さんご自身の思考はアカデミックですが、お会いすれば拍子抜けするほどフランクな方。冬なら長靴をはいてお話に来てくれるかもしれません!
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