光熱費ゼロ住宅のポイント

 「光熱費ゼロ」をコンセプトに住宅を建設する場合、第1に、その住まいで消費される電気や灯油などのエネルギー量を省エネ技術の導入で減らし、その光熱費を予測することが必要です。  次に、太陽光発電などの自然エネルギー利用機器によるエネルギー供給を計画し、年間で消費するエネルギー量以上のエネルギー供給を確保することです。
 この点は、断熱性能だけでは判断ができない部分で、家族の人数や住まいの大きさ、家電の数、家事や入浴の頻度、そして住人の省エネ意識や窓の開閉頻度など、生活習慣が結果を大きく左右します。全てを予測することは事実上不可能です。
 一方太陽光発電や地中熱ヒートポンプなどの取得エネルギー量は、その住宅の建設地、発電パネルの向きや地熱温度などから、メーカーがシミュレーションを実施し、予測することができます。
 「光熱費ゼロ」をコンセプトに住まい作りに取り組んでいる住宅会社の多くは、モデルハウス、あるいはオーナーの了解を得た住宅で、室温やエネルギーの消費量などを測定し、その数値を元に光熱費ゼロと呼べる住宅性能の検証を続けています。

外気から熱をくみ取る空気熱ヒートポンプシステムや、地中から熱をくみ取る地中熱ヒートポンプも有力な自然エネルギー利用法(イラストはサンポット㈱カタログ転載)
発電量や売電量、消費電力がリアルタイムに表示されると省エネ意識も自然と高まる
白熱電球をLED電球に切り替えると、消費電力が約6分の1、寿命が数十倍の約4万時間に伸びる。現在は各社家電メーカーから続々新商品がラインナップされている。写真は東芝ライテック㈱の無段階調光できるLEDダウンライト「E-CORE60調光タイプ」

1・超高断熱

 壁や窓、屋根などの断熱は住宅の省エネ性を決める基本的な部分です。新築後でも設置・交換・更新が可能な設備機器と異なり、後から厚みを増したり、性能が高いものに交換することは困難です。住宅会社は各社各様の断熱施工を行っており、断熱材の素材・厚みの選定や施工の精度などが省エネ性能に大きく影響してきます。

 室蘭工業大学・鎌田紀彦教授の資料によると、住宅の断熱仕様を次世代省エネ基準レベル(Q値1.6W)からQ1.0レベル(Q値1.0W)にした場合(建設地札幌、40坪を想定)、CO2排出量は1680㎏の削減と、50年生のトドマツ400本が1年で吸収するCO2に相当します。

 窓は断熱性能を高めるためにLow-Eガラスを採用したりさらに断熱性能が高いガラス間を真空にする製品などもあります。

2・自然エネルギーの利用

 窓は日射取得で部屋を暖めたり、照明器具の使用を減らす効果もあります。夏は庇やルーバーなどで日射侵入を抑える一方で、冬には日射が当たる床面で蓄熱を行う技術を導入するなどで暖房機を使用しなくても部屋を暖めることもできます。

 太陽熱温水器や太陽光発電も有効な手法です。太陽光発電パネルの場合、例えば後述する協栄ハウスの光熱費ゼロ住宅では、屋根面に185Wのパネルを20基設置。気象条件などから日射時間を算定すると年間3770kWhを発電できるという試算結果が出ました。この発電による電力供給と売電で、住まいの消費エネルギーをほぼまかなえる水準の住宅となりました。

 空気中の熱や地中熱を集めて暖房や給湯に活用するヒートポンプシステム、ガスで発電し、その排熱で温水を作り暖房や給湯に有効活用するガスコージェネレーションシステムもあります。

 木くずや廃材などを粉砕・圧縮成型した木質ペレットを燃料として使うペレットストーブは、道内では地産地消につながる可能性があります。そして計画植林ができればカーボンフリーな燃料でもあり、灯油などの価格高騰もあって今後有望な手法と考えられます。

3・省エネ機器の採用

 照明や家電は、全国平均では住宅で消費されるエネルギーの約3分の1、暖房費の割合が多い道内では16%を占めており、省エネ化を図る上で重要な部分です。照明では白熱電球より寿命が長く、消費電力も少ないLED照明の開発に各社がしのぎを削っています。家電類の省エネ製品も各社が続々と発売しています。

4・実現可能な価格で

 大手ハウスメーカーのなかには、「光熱費ゼロ住宅」を環境意識が高く、予算に余裕がある層に向けて、憧れの高額商品として営業展開する企業も少なくありません。断熱性能アップ、太陽光発電などを導入、「エコ」をコンセプトに住宅を販売できれば大幅な売上げと利益率アップを目指せるためです。

 北海道住宅新聞社では、光熱費ゼロ住宅の普及のためには、技術とノウハウがあり、余計な営業経費、多大な企画商品開発のコストが不要な地場有力の中堅工務店の存在が重要だと考えています。

 では早速、北海道住宅新聞社が性能、品質、価格の面で注目する「光熱費ゼロ住宅」の実践工務店3社を紹介していきます。

光熱費ゼロ住宅のポイント
太陽光発電
 住宅における自然エネルギー利用機器として最も普及している太陽光発電は、一般家庭の電力を賄うのに大体4kW程度の発電出力が必要と言われている。業界最大手・シャープ㈱のホームページによると、札幌で4.28kWのシステムを設置した場合、年間予測発電電力量は4,582kWで、電力料金に換算すると約10万円強。
超高断熱窓
 現在、北海道の戸建住宅ではLow-Eペアガラスがほぼ標準となった感があり、低熱伝導ガスのアルゴンガスを封入した窓を標準採用する住宅会社も目立つ。全国的にもLow-Eペアガラスの採用率は伸びている。
地中熱ヒートポンプ
 地中熱ヒートポンプは、低温の熱源から熱をくみ上げて暖房や給湯に利用するヒートポンプの一種。年間を通じて安定した温度の地熱を熱源として利用するので、使用電力に対して、どれだけの熱量が得られたかを示す成績係数(COP)も3前後で安定している。
エコキュート
 空気中の熱を集めて温水を作るエコキュートは、壁掛け用エアコンや冷蔵庫と同じく、CO2を冷媒として熱の受け渡しを行う自然冷媒利用型のヒートポンプ。給湯用と暖房・給湯兼用の2つのタイプが市販されている。
エコウィル
 エコウィルはガスエンジンで発電して電気を供給すると同時に、発電時の排熱を回収して温水を作り、暖房や給湯に利用する家庭用のガスコージェネレーションシステム。

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