「光熱費ゼロ」をコンセプトに住宅を建設する場合、第1に、その住まいで消費される電気や灯油などのエネルギー量を省エネ技術の導入で減らし、その光熱費を予測することが必要です。
次に、太陽光発電などの自然エネルギー利用機器によるエネルギー供給を計画し、年間で消費するエネルギー量以上のエネルギー供給を確保することです。
この点は、断熱性能だけでは判断ができない部分で、家族の人数や住まいの大きさ、家電の数、家事や入浴の頻度、そして住人の省エネ意識や窓の開閉頻度など、生活習慣が結果を大きく左右します。全てを予測することは事実上不可能です。
一方太陽光発電や地中熱ヒートポンプなどの取得エネルギー量は、その住宅の建設地、発電パネルの向きや地熱温度などから、メーカーがシミュレーションを実施し、予測することができます。
「光熱費ゼロ」をコンセプトに住まい作りに取り組んでいる住宅会社の多くは、モデルハウス、あるいはオーナーの了解を得た住宅で、室温やエネルギーの消費量などを測定し、その数値を元に光熱費ゼロと呼べる住宅性能の検証を続けています。
壁や窓、屋根などの断熱は住宅の省エネ性を決める基本的な部分です。新築後でも設置・交換・更新が可能な設備機器と異なり、後から厚みを増したり、性能が高いものに交換することは困難です。住宅会社は各社各様の断熱施工を行っており、断熱材の素材・厚みの選定や施工の精度などが省エネ性能に大きく影響してきます。
室蘭工業大学・鎌田紀彦教授の資料によると、住宅の断熱仕様を次世代省エネ基準レベル(Q値1.6W)からQ1.0レベル(Q値1.0W)にした場合(建設地札幌、40坪を想定)、CO2排出量は1680㎏の削減と、50年生のトドマツ400本が1年で吸収するCO2に相当します。
窓は断熱性能を高めるためにLow-Eガラスを採用したりさらに断熱性能が高いガラス間を真空にする製品などもあります。
窓は日射取得で部屋を暖めたり、照明器具の使用を減らす効果もあります。夏は庇やルーバーなどで日射侵入を抑える一方で、冬には日射が当たる床面で蓄熱を行う技術を導入するなどで暖房機を使用しなくても部屋を暖めることもできます。
太陽熱温水器や太陽光発電も有効な手法です。太陽光発電パネルの場合、例えば後述する協栄ハウスの光熱費ゼロ住宅では、屋根面に185Wのパネルを20基設置。気象条件などから日射時間を算定すると年間3770kWhを発電できるという試算結果が出ました。この発電による電力供給と売電で、住まいの消費エネルギーをほぼまかなえる水準の住宅となりました。
空気中の熱や地中熱を集めて暖房や給湯に活用するヒートポンプシステム、ガスで発電し、その排熱で温水を作り暖房や給湯に有効活用するガスコージェネレーションシステムもあります。
木くずや廃材などを粉砕・圧縮成型した木質ペレットを燃料として使うペレットストーブは、道内では地産地消につながる可能性があります。そして計画植林ができればカーボンフリーな燃料でもあり、灯油などの価格高騰もあって今後有望な手法と考えられます。
照明や家電は、全国平均では住宅で消費されるエネルギーの約3分の1、暖房費の割合が多い道内では16%を占めており、省エネ化を図る上で重要な部分です。照明では白熱電球より寿命が長く、消費電力も少ないLED照明の開発に各社がしのぎを削っています。家電類の省エネ製品も各社が続々と発売しています。
大手ハウスメーカーのなかには、「光熱費ゼロ住宅」を環境意識が高く、予算に余裕がある層に向けて、憧れの高額商品として営業展開する企業も少なくありません。断熱性能アップ、太陽光発電などを導入、「エコ」をコンセプトに住宅を販売できれば大幅な売上げと利益率アップを目指せるためです。
北海道住宅新聞社では、光熱費ゼロ住宅の普及のためには、技術とノウハウがあり、余計な営業経費、多大な企画商品開発のコストが不要な地場有力の中堅工務店の存在が重要だと考えています。
では早速、北海道住宅新聞社が性能、品質、価格の面で注目する「光熱費ゼロ住宅」の実践工務店3社を紹介していきます。