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平成17年6月5日号から

特 集
フラット系屋根の防水・すがもり対策

  札幌でこの2、3年、フラットルーフでスガモリが起きるケースが増えているという。これまでは躯体の断熱・気密や小屋裏換気をしっかり行えば、スガモリの心配はないとされてきたが、現実にスガモリが発生している以上、さらに徹底した防水対策が必要との考え方が強くなってきている。ここで改めてフラット系屋根の防水を考えてみたい。


スガモリを起こして天井が濡れている住宅の例
スガモリの原因
気象の変化も関係?

  「フラットルーフでスガモリが起こるようになったのは3年ほど前から。それまでは特に問題はなかった。以前は1日に集中して大雪が降ったり、1、2月に雨が降ることはなかったが、ここ数年はそういうことが起こっている。そのような気象の変化がスガモリの発生に関係しているのではないか」。
 こう話すのは、ここ数年のスガモリ被害に悩む札幌市内のビルダー。断熱・気密性能に関しては高いレベルを確保し、小屋裏換気もしっかり行っているが、それでもスガモリが起きてしまったという。これまでは天井も含む躯体の断熱・気密・気流止めをしっかり行い、小屋裏換気を十分に取れば安全と言われてきたが、気象条件などにもよるがそれだけでは、スガモリを防ぎきれないのではないか、というのが問題の出発点だ。
 フラットルーフのスガモリは、屋根面の融雪によって氷堤ができ、ハゼから融雪水が漏れることによって起こると考えられている。融雪の主な原因は小屋裏空間が暖まること。特に天井の断熱・気密が不足していると、室内から暖かく湿った空気が小屋裏に流れ込み、小屋裏結露を引き起こし、スガモリの原因をもつくる。また、道東などのように氷点下の外気温でも晴天が続くと、トタン面が暖まって融雪を促進することもある。
 そのため屋根面の雪をできるだけ溶かさないよう、天井を断熱・気密化して室内の熱が小屋裏に入るのを防ぐと同時に、小屋裏空間を外気温に近い状態に保つために小屋裏換気を十分に行うことが必要とされている。


フラットルーフのスガモリは雪の重さで屋根面がたわむほか、軒先に氷堤ができて融雪水がたまり、ハゼがゆるむなどして小屋裏側に漏水すると考えられる

 特に小屋裏換気については住宅金融公庫の北海道版共通仕様書で、軒天有孔ボードを使う場合でも積層プラスチック換気部材を使う場合でも軒先全周に設置しなければならない。これは全国版共通仕様書の基準と比べても2~3倍の設置量で、屋根面の融雪防止のためには、いかに多くの換気量が必要かがわかる。

断熱・気密・換気に加え新たな対策が必要に
ここ数年で起こっているスガモリは、断熱・気密・小屋裏換気を十分に行ったうえで起きていると、ビルダーは口を揃える。
では原因は何か。今のところわかってはいないが、冬期の気象の変化を挙げる人は多い。最近、札幌では短期間に集中して大雪が降ったり、時には暖冬で雨が降ったりすることがあった。大雪によって一時的に積雪荷重が増えて屋根面がたわんだり、雨によって溶けた雪が凍る現象が起こっている。
原因はとにもかくにも、大切なのはスガモリ事故が起きている以上、さらに安全な防水を考えなければならないという点だ。

スガモリ(すがもれ):雪のある時期だけ、屋根から水が漏れる現象。一般的には雨もりと同様に扱われるが、専門家の間では分ける。スガモリを起こした家でも、夏場に雨もりは起きないケースがほとんど。水漏れが起きる原因が違うからだ。
すが漏れともいう。

特集

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Q1.0住宅を全国に
新住協総会 ライフサイクルCO2削減へ

基調講演を行う鎌田教授
 NPO法人新木造住宅技術研究協議会の第1回通常総会・研修会が先月19、20の両日、秋田県能代市内で開かれ、全国から220名を超す会員が集まった。
 同協議会は昨年度、従来の任意組織から民間非営利団体(NPO)に生まれ変わり、今年が法人化第1回の総会となるが、通算では16回目を迎える。
 代表理事でSTV興発(株)会長の安田弘氏が冒頭のあいさつを行ったあと、議案を審議。事業計画の技術研修会や市民セミナーなどは全て可決・成立した。
 総会に続いては代表理事で室蘭工業大学教授の鎌田紀彦氏が基調講演。翌日には研修会も行い、鎌田教授は現在北海道内で活動している「Q1.0プロジェクト」について、CO2削減などの狙いを説明したあと、全国的にも各地域の次世代省エネルギー基準による暖房エネルギーの半減を目指す省エネ住宅プロジェクトを実施したいと提案。ライフサイクルCO2削減のために、住宅の高断熱化やヒートポンプ技術、ソーラー給湯など実現可能な技術テーマを解説した。

総会前には能代市などで見学会も実施。天然秋田杉(天杉)をひき板などに加工する工場で、天杉に見入る参加者
 また、北海道の例として、無落雪型のこう配屋根で巨大なツララができて悩んでいるユーザーから相談を受けている事例を紹介。先進地といわれる北海道でも断熱・気密施工技術がすべてに行きわたっているわけではないとして、今後も技術開発を進めるとともに、ユーザーに高品質な住宅を提供していこうと呼びかけた。
 研修会ではこのほか、札幌支部長の武部建設(株)武部英治専務がQ1.0プロジェクトについて報告、また、秋田県立大学の土居修一教授が白アリの生態について解説したあとグラスウールによる基礎断熱について(株)マグが説明した。
 このほか昨年募集したアイデアコンテストでは、(株)アシスト企画の透湿・防水シートによる気密施工とその合理化工法など入選応募作品が紹介された。アシスト企画の合理化工法は、土台と胴差しの先張りを透湿・防水シートで行うもので、これをさらに合理化した基礎パッキン一体型の先張りシート開発など合計3編の応募に対し優秀賞が贈られた。

低コスト耐震工法
高橋林産 天井構造を強化する新発想

耐震工法のイメージ図。1F天井ふところにワイヤーブレスをたすき掛けしている
 高橋林産(株)(釧路管内阿寒町)は、このほど在来軸組用の耐震工法(サスペンダーブレース)を開発した。南側に開口部を多くとるなどの理由で壁量配置のバランスが良くない建物の耐震補強用として、同社の在来軸組工法用カラマツ複合梁「ハイブリッドIビーム」とともに今後販売していきたい考え。
 この耐震工法は、在来軸組工法の住宅で1階天井部四隅に専用金物を取り付け、そこに12ミリ径の鋼製ワイヤーをたすき掛けに張って天井面全体で外力に対抗していこうという考え方で、新築、既築両方に適用できる。10畳を超える大きな部屋や開口部が広いなどの理由で耐力壁が少ない部屋1~2室に設置すれば十分な耐震補強効果が得られ、36坪程度の住宅なら1棟20万円前後で施工できるという。
 釧路工業技術センター、釧路工業高等専門学校と共同研究を行い、得られた短期せん断力の実験データから単体の床倍率を計算すると2.95倍という高い値が得られた。在来軸組工法の床倍率を加算できるため、トータルで高い補強効果が期待できる。
 施工は、専用金物を1階天井面の四隅に取り付ける。1辺が約35センチの三角形状で、12ミリ径のラグスクリューを1辺あたり10本使い構造材に固定する。この後、ワイヤーを金物にあるU字型ボルトに取り付けて終了する。

屋外で数年間曝露試験中の専用金物。U字ボルトにワッシャーのようなものでワイヤーを固定している
 同社では通常のKD材だと施工後の乾燥で木痩せが発生し、ワイヤーのテンションが弱くなる可能性があるので使用を勧めないとしており、新築には本紙4月25日号で紹介した、施工後ほとんど木痩せが発生しない同社の木製複合梁「ハイブリッドIビーム」と組み合わせることを推奨している。また、既築建物は昭和56年以前の旧耐震基準の建物や壁量バランスの悪い建物に提案していきたいとしている。なお、「ハイブリッドIビーム」に、このほど建築基準法第37条第2号の認定(旧38条認定)が下りた。これにより建築用材料として一般的に使用できるようになった。
 問い合わせは、同社(阿寒郡阿寒町北町3丁目-12、Tel.0154・66・3106)へ。


無線式防犯システム
三和温調工業 4万円台の低価格で発売

「鬼に金棒40」の本体と付属品
 三和温調工業(株)では、昨年発売した有線センサー式のセキュリティシステム「スピードコール」を改良、無線センサーを採用し「鬼に金棒40」としてこのほど発売した。同商品は、赤外線センサー付き本体、無線人感センサー、無線ドアセンサー、リモコン、取付部材などが同梱され、センサーがすべて無線化されているので取付時の配線工事が不要となり、エンドユーザーでも簡単に設置できる。
 スピードコールと同様、人体の動きを監視する赤外線センサーとドアや窓の開閉を検知するドア/窓センサーで外部からの侵入を感知すると自動的に登録された電話番号に通報、しかも話し中の時は自動的に別の登録番号にダイヤルする。また大音量のアラームが鳴って侵入者を威嚇する。
 今回の改良で、自動通報機能の対応回線として、プッシュ回線、ISDN回線に加えダイヤル回線にも対応した。登録番号も最大8所に増えた。このほかの機能として、本体にはマイクとスピーカーが内蔵されているため通報先の電話機を通して現場の様子を音で確認したり逆に声掛けすることが可能。外出先からは電話回線を通じ、4桁の暗証番号を使って遠隔操作も可能。リモコンを手元に置けば緊急呼出用としても使えるので介護用の非常呼出としても使える。
 本体サイズは70×120×49.5ミリ、重量230グラム。センサーは標準添付品も含めて最大10個まで追加可能。価格は4万4600円(税別)。
 問い合わせは、同社(札幌市東区北48条東19丁目、Tel.0120・141・304)へ


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