R-2000実験住宅はいま…

築15年で性能劣化なし
 R-2000住宅は現在に続く高性能住宅の先駆けとなった超高断熱・高気密住宅。140ミリの分厚い断熱と、次世代省エネルギー基準をも上回る気密性能基準などを達成するため、設計・施工技術は大いに進化し、現在に至った。
 特に気密性能基準は、当時の日本の水準から見れば驚くほど厳しく、その後R-2000の気密基準だけが一人歩きするほど強いインパクトがあった。
 気密性能測定は、当時、50パスカルという台風並みの高圧力をかけたときの空気漏れ(漏気回数)というかたちで行われた。単位は『回/h、50パスカル』。これはR-2000の基準であるとともに、北欧の標準的測定方法でもある。実験住宅の竣工時の測定はすべてスウェーデン式で、同国の気密測定機や換気システムを輸入・販売するディックス(株)が担当した(高橋邸は北海道東海大学・大野仰一教授による)。
 R-2000住宅の最大のポイントとも言える気密性能は、今回の測定でも高い性能が確認された。15年を経ても気密性能はほとんど低下しなかったのだ。これはR-2000の気密施工が十分な耐久性を持っていることを示しており、暖房に使う灯油消費量が竣工時とほとんど変わっていない点を合わせて考えると、建物の断熱・気密性能と耐久性は、いまだにトップレベルを維持していると言える。


R-2000住宅のアウトライン
断熱性能:ツーバイシックス以上(140ミリ断熱)
気密性能:漏気回数1.5回/h、50パスカル
(相当隙間面積1.0平方センチ/平方メートル相当)
暖房方法:セントラル暖房
換気方法:セントラル換気
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R-2000とは何だったのか

R-2000が日本の住宅業界に残したものは数多いが、ここではまずR-2000とは何だったのか、という点から振り返り、その徹底したディテール改良の手法を一部紹介したい。
性能を買ってもらう
いまも変わらない“トップランナー”

 超高断熱・高気密住宅・R-2000は、昭和48年のオイルショックを契機にカナダ政府が開発を進めた、エネルギーを節約し、高い居住環境を実現するツーバイフォー住宅。
 R-2000住宅の基本は 1.バランスのとれた高い断熱性(地区ごとに断熱基準が決まっており、燃費基準をもとに最適な断熱をコンピュータがはじき出す) 2.高い気密性(送風ファンで50パスカルの圧力をかけ、空気漏れが1.5回/時) 3.全室暖房 4.適正な換気(1日中安定して新鮮な空気を導入する)―の4項目。特に気密性の保持は大きなテーマになっている。
 R-2000住宅の最大の特長は、「優れた居住環境を実現し、しかも消費エネルギーはこれくらい」と、住宅の性能を住み手に保証できること。施主は信頼を買うことができるわけだ。この考え方は現在の次世代省エネルギー基準や住宅性能表示制度に導入されているが、R-2000は次世代基準と比べ省エネ性能が高い点、住宅性能表示制度と比べ内容がわかりやすい点で優れており、制度としては廃止されたものの、住宅性能をけん引する、いわゆるトップランナーとしての位置づけは15年を経ても変わっていない。
 R-2000は高い信頼性を確保するため、いろいろな登録制度や資格制度を設けられていた。そして、この考え方も高性能住宅を供給する方法として、ずいぶんと参考にされた。
 資格制度や登録制度は公的な機関が行うほうが信頼性が高いように見えるが、万能ではない。例えば、任意団体でも相互チェックをすることで、コストをかけずに信頼性を高めることができる。
 日本版のR-2000も本国カナダに習い、気密性能基準は50パスカルの圧力をかけ漏気回数が1.5回/時、相当隙間面積でおよそ1.0平方センチ/平方メートルと、とても高い水準に設定された。
 R-2000実験住宅の気密性能値はグラフの通り。認定制度が始まる前の実験段階のため、気密基準をクリアできなかった住宅もあるが、注目してほしいのは今回測定した15年後の数値だ。どの実験住宅でも気密性能の低下はほとんどなく、依然として高い性能を維持している。
ガスケット(パッキン)を使った気密化。気密層の連続のために、徹底したディテールの改良を提示した

1/3,2/3のルール。ダブル断熱などの複合断熱を考える場合、この理論は極めて重要

そのノウハウと影響
 R-2000が日本にもたらしたものは気密性能基準だけではない。高気密化に関するさまざまなディテールや、高断熱・高気密化の意味など、計り知れない影響力を持っていた。ここではその代表的なものを紹介したい(図版は全てビルダーズマニュアルから)。

気密化手法
ガスケット(パッキン)を使った手法

 壁の下枠と床合板との取り合い気密化は、先張りシートを使う方法もあるが、スポンジ状のパッキン材を挟み込む方法が広く紹介された。パッキン材はこのほかに、窓廻りなどにも使われている。

面材を使った気密層
 気密層は、日本では防湿層を兼ねてポリエチレンフィルムを使うケースが多いが、この気密層に面材による押さえがないと、外部の風によってシートがあおられ、暖められた空気がポンプで押し出されるように屋外に逃げ、熱損失が大きくなる。気密層は必ず石膏ボードなどで抑えることが大切。R-2000マニュアルでこの点が指摘されるまで、日本ではとにかく連続した気密層さえあればよいと考えられていた。また防湿・気密シートの厚手化(0.2ミリ厚)が進んだ。

3分の1、3分の1のルール
 防湿層はふつう、断熱壁体の室内側に設けるが、室内配線などによって防湿層は何ヵ所も穴を開けなければならない。そこで壁の断熱性能の室内側から三分の一の部分に防湿層を設け、その室内側に配線などを集中させる。この方法は北欧でも行われており、一般的には室内側に付加断熱を施すことになる。ツーバイフォーの場合、壁90ミリに内付加45ミリ、防湿層はスタッドの室内側といった構成だ。

高気密化と耐久性
透湿か空気漏れか

 室内の空気に含まれる多量の水蒸気が壁の中に侵入して結露し、木材を腐らせる問題は、木造住宅の耐久性に重大な影響があるため、世界中の寒冷地で昔から大きな問題となっていた。北海道もその例外ではなく、ナミダタケ事件というかたちで社会問題に発展した。
 この問題は当初、壁のなかを湿気が移動する“透湿”によって起きるとされていたが、その後空気漏れによる空気の移動が主原因であることがわかってきた。この問題を誰にでもわかりやすく説明してみせたのもR-2000だった。
 マニュアルによると、ひと冬に起きる湿気の移動は、壁に空いた2センチ四方の穴(4平方センチ)からの空気漏れが30リットル。一方、1メートル四方(1平方メートル)の石膏ボードから透湿によって移動する量は3分の1リットル。透湿を防ぐことも重要だが、何より大切なのは空気漏れを抑える気密性能であることがわかる。この調査は現在でも広く引用されている。
 空気漏れを防ぐため、R-2000以降徹底されたのが、コンセントボックスや床下・天井点検口などからの空気漏れをなくすこと。このようなディテールの改良が結果的に“気密性能オリンピック”と呼ばれるほどの性能競争に発展したのだが、本来は内部結露防止と耐久性向上のための徹底した気密化がスタートラインだった。
 余談だが、本国・カナダでは外壁に通気層をとらないケースが多い。外壁材が板張りなどで通気が見込めるからだ。また気密層はドライウォールという例が多い。

断熱施工
軒先部分の性能確保

 R-2000では天井断熱の場合、軒先部分でどのように断熱厚と断熱性能を確保するかという細かい問題についても説明している。
 構造的な手法としてはブローイングで300から400ミリを確保できるようにトラスで軒先を持ち上げる手法が紹介されているが、一般的なたる木を使った小屋組の場合、軒天換気をとりながら断熱性能を確保し、軒天からの風の吹き込みによる断熱材の偏りを防ぐ方法として次のような参考図が掲載されている。
 ブローイングの支持材はグラスウールボードなどを使い、1.軒天通気確保2.ブローイング断熱材の軒先への崩れ防止3.防風4.断熱性能確保―というマルチな機能を持たせる。
 ツーバイフォーの数少ない弱点の1つは、天井断熱の断熱厚を確保しにくいこと。特にフラット屋根の場合にどのように300ミリ以上の断熱厚を確保するかは課題だ。


壁内結露の原因を明確に示した空気漏れと透湿の違い
軒先部分の断熱性能維持。細部の納まりまでしっかりとマニュアル化されていたのはR-2000がはじめて
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