平成13年8月25日号から
札幌の高断熱・高気密住宅にシロアリ 
TOPNEWSから続く
 これまで道内では、一部の地域を除いてシロアリはおらず、また住宅での被害も発生することはないと思われていたが、札幌市内で建てられた高断熱・高気密住宅に今年五月、シロアリが室内に侵入、調査の結果、床組木材の一部が食害を受けていたことが明らかになった。いかに高い技術力をもって建てられた高性能住宅でも、自然界の現象に対して万全ではないということを認識させられる出来事と言えそうだ。

乾燥材の大引に食害跡
 シロアリの被害を受けたのは、四年ほど前に札幌市南区真駒内に建設された基礎断熱の住宅で、今年五月、羽アリが床下から室内に出てきているところをユーザーが発見。調べたところ、中間仕切り基礎と押さえコンクリートの継ぎ目部分から型枠兼用断熱材に入り込み、大引へとつながる蟻道が五ヵ所ほど見つかった。土台は工場で加圧注入による防腐処理が行われていたこともあって被害はなかったが、現場塗布で防腐処理を行った大引は、未処理部分の小口からシロアリの食害を受けており、その部分は切断・交換した。
 被害をもたらしたシロアリは「ヤマトシロアリ」といい、道内では道北及び道東の一部地域を除く広い範囲に生息。湿った木材を好んで食べるが、建物が倒壊するような被害に結びつくことはなく、羽アリを発見して初めて被害に気付くことがほとんどだという。
 現在、この住宅では食毒剤による駆除を実施。これは蟻道近くの押さえコンクリートに穴を開け、樹脂容器に円柱状の食毒剤となる木材を入れておき、それを食べさせることで根絶する方法だ。完全に駆除できたと確認できるまで十八ヵ月以上と長期間かかるが、即効性がある土壌への薬剤処理と比べて居住者への影響は心配なく、住宅を傷めることもほとんどない。
 これまで道内では函館など道南の一部地域を除いてシロアリは存在しないものという固定観念がビルダーにも、ユーザーにもあったが、今回の被害はシロアリに対する認識を改めざるを得ない出来事だったと言える。まして、被害に遭ったのは築数十年の住宅ではなく、築五年未満のまだ新しい高断熱・高気密住宅。特に床下空間は基礎断熱によって床組木材の乾燥状態が保たれ、地盤面には防湿措置としてポリフィルムを敷いた上に押さえコンクリートを打設するなど、シロアリにとっては非常に生息しにくい状況だったにもかかわらず被害を受けたことを考えると、どの住宅でも被害に遭う可能性は十分あると言える。今回の住宅も、もともと巣があった場所に建てたことから被害に遭ったと考えられている。

小口まで防腐処理するしかない
 もっとも事前にシロアリが確認できれば対処できるのかというと、それも非常に難しい。今回の住宅の駆除を行っている(株)青山プリザーブの前林とみお取締役部長は「道内ではシロアリがいるかもしれないと思うことすらないだけに、仮に根掘りなどの段階でシロアリがいたとしても、誰もそれがシロアリだとはわからないだろう」と話しており、建てる前にシロアリがいるかどうかを確認すること自体、極めて困難だ。仮に確認できたとしても薬剤による土壌処理などを行えば、職人や居住者への影響が懸念される。
 現状でシロアリ対策は、床組木材に乾燥材を使用するとともに、今回の事例で有効性が認められた防腐処理も行い、床下空間を低湿状態に保つなど、当たり前のことをしっかり行うことしかない。もし、シロアリ発生の疑いがある時は専門業者に調査を依頼し、シロアリが確認されたらまずはユーザーに発生原因と被害状況、駆除方法など今後の対応を順序立てて説明し、安心してもらうことが最も大切だ。
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