建材レビュー

2012年08月30日 | エコ機器

ゼロエネルギーハウス(ZEH)は太陽の力で マツナガ

電気代ゼロ!の究極のエコ暖房、ソーラーウォーマー

札幌・(株)アクト工房 設計・営業部長 松澤 総志(まつざわ そうし)さん

 
ソーラーウォーマーの断面図。中に太陽電池が入っているところがミソ
ソーラーウォーマーの断面図。中に太陽電池が入っているところがミソ
太陽熱で暖められた空気は右の給気口から室内に入る。左はコントローラーで、冷風を室内に入れないための設定などができる(写真提供;(株)マツナガ)
太陽熱で暖められた空気は右の給気口から室内に入る。左はコントローラーで、冷風を室内に入れないための設定などができる(写真提供;(株)マツナガ)
松澤さんの自邸に取り付けたソーラーウォーマー(赤丸で囲んだ部分)。遠くから見ると窓のようで目立たない
松澤さんの自邸に取り付けたソーラーウォーマー(赤丸で囲んだ部分)。遠くから見ると窓のようで目立たない
松澤さんの自邸に取り付けた2つめのソーラーウォーマー。道路側からは見えない
松澤さんの自邸に取り付けた2つめのソーラーウォーマー。道路側からは見えない
道路側から見た、松澤さんの自邸。ダイナミックな造形が魅力的だ
道路側から見た、松澤さんの自邸。ダイナミックな造形が魅力的だ
事務所内にさり気なく置かれた、ソーラーウォーマー本体。軽量で、大人なら1人で持ち運び可能
事務所内にさり気なく置かれた、ソーラーウォーマー本体。軽量で、大人なら1人で持ち運び可能
清田区内にあるアクト工房の事務所
清田区内にあるアクト工房の事務所

2020年、ZEHが標準に
政府は2020年度に新築住宅は『ネット・ゼロ・エネルギーハウス(=ZEH)』を標準にすると発表しました。ZEHは、家庭内で使うエネルギーを、太陽光発電や燃料電池発電など、家庭内で造るエネルギーでまかなう「エネルギー自給自足型の家」です。
 
これに対応するのは簡単ではありません。北海道の家庭では、光熱費が年間で30万~50万円以上かかっており、このエネルギーをすべて太陽光発電などでまかなうことは無理です。そこで、光熱費の大半を占める暖房費を半分以下に減らすため、より一層の高断熱・高気密住宅が必要となります。ただ、現状では技術面でクリアするハードルがいくつかあります。今はそのハードルをクリアしようと検討を重ねているところです。
 
当社は、地域に根ざした工務店として、デザインと性能両方にこだわりを持っています。これまで北方型ECOなど先進的な性能の家作りに率先して取り組み、私自身は「CASBEE戸建評価員」や「BIS-M」の資格を取得しています。資格は、私たち地域工務店が「いい家を造っている」ことを公的に裏付けし、お客さまに安心を提供するために必要だと思います。この取り組みを進め、ZEHの家を適正な価格で提供できるよう頑張りたいです。
 
 
ZEH実現に必要なソーラーウォーマー
「ソーラーウォーマー」は、ZEH実現に必要だと考えています。まずは自分が実験台になって実証しなければ、と思い、今年3月に新築した自宅に取付けました。
 
ソーラーウォーマーの優れたところは、熱交換換気と同様の省エネ効果を、太陽エネルギーという再生可能な自然エネルギーのみで達成できるところ。これこそ『エコ』じゃないですか。熱交換換気は、それまで換気で捨てられていた室内の暖房熱を回収できるエコ機器ですが、白熱電球1個分の電気代が24時間必要です。
 
ソーラーウォーマーの仕組みはこうです。外壁に取り付けたソーラーコレクターという集熱器で外気を暖めます。晴れた日は内蔵された太陽電池パネルが発電して換気ファンを回し、30度前後まで暖められた外気を室内に取り込む暖房になります。超高断熱・高気密化で必要な暖房エネルギーを大幅に減らせば、ソーラーウォーマーで必要な暖房エネルギーをかなりまかなうことが可能です。
 
自宅には2つ採用していますが、1つあたり20万円以下で取り付けできます。取付工事は、今までの給気口用の穴と同じサイズですし、電気配線も必要ないので大工で作業できます。
 
太陽光発電もエコというイメージがありますが、太陽熱は太陽光発電よりも利用効率がはるかにいいのも特徴です。ソーラーウォーマーは、1つで最大1kW相当の熱を取り出せます。太陽光発電が取付に1kWあたり50万円前後の費用がかかることを考えると安いと思います。
 
取り付けた姿も、いかにも「エコ機器を取り付けてるぞ」と強く自己主張しないのがいいですね。
 
  
ローテクだから長く使える
ソーラーウォーマーのメリットは、住宅会社の目で見てほかにもあります。
それは、「ローテク」だということです。独立行政法人・北方建築総合研究所の福島明副所長も、住宅の技術はハイテクよりもローテクの方がいいと話しています。世の中は省エネ=ハイテク機器というイメージですが、壊れると修理しにくく短命です。100年という住宅の寿命を考えると、住宅の省エネ技術は断熱・気密に代表されるように、ローテクの集合体が本命だと思います。
 
ソーラーウォーマーは、壁に穴を開けて取り付けます。屋根に穴を開けると、雨や雪を防ぐ意味でリスクを伴いますが、壁にはさほどリスクはありません。というのも、「通気層」と呼ばれる空気層が建物本体と壁の間にあり、建物本体には防水材が施工されているので、万が一雨や雪が入っても通気層で排出されて中には侵入できないからです。
 
さらに電子制御などの複雑な機構もなく、ローテクだから故障しにくく、万が一故障しても、修理や部品の交換も大工でできます。
 
工務店は、建てた家に対して責任を持ちたいと考えます。だから、自分たちの力でアフターサービスもできるソーラーウォーマーは大きな味方となります。
 
 
今後への期待
ソーラーウォーマーは、3月に取り付けたばかりですので、冬場の本格的な性能評価はできていませんが、どれほど暖房費用を減らせるか、今年の冬を楽しみにしています。当社ではこのほかにもガスと電気のハイブリッド暖房給湯システム、ウレタン外断熱により熱損失係数=Q値1.4W以下の性能値を標準とするなど、ZEHに向けて取り組みを進めています。
 
ソーラーウォーマーは、製造元のデンマークでは、もっとたくさんの種類があるそうです。私は「もっと大きいタイプも輸入して」とマツナガさんに言っています。駐輪場の屋根に取り付ければ、ゼロエネでロードヒーティングができるかもしれないなど、可能性はいろいろ広がります。

■製品概要

「ソーラーウォーマー」は、数百の細かな孔の開いたアルミパネルの外側から冷たい外気を取り込み、透明なポリカーボネート製のカバーが覆った表面で暖められるというとてもシンプルな構造。
太陽熱を集めて補助暖房に使うアイディアは、これまでもあったが、「ソーラーウォーマー」が他と違うのは「電気を使わない」こと。換気ファンを動かす電気は、内蔵した太陽電池で発電しているから、停電時でも作動するのは安心。太陽の恵みを熱利用と発電利用と両方活用するおトクなエコ機器だ。温度センサーの働きで、一定温度以上にならないと外気を室内に入れない仕組みも備えている。(北海道住宅新聞 編集部)

■発売エリア・問い合わせ先

発売エリア :北海道を含む全国
問い合わせ先:株式会社マツナガ(Tel03-3925-0065)

ホームページはこちら

■レビュアー

札幌・(株)アクト工房 設計・営業部長 松澤 総志(まつざわ そうし)さん
札幌・(株)アクト工房 設計・営業部長 松澤 総志(まつざわ そうし)さん

家具デザイナーを目指し職人となるが、『食べるため』建材メーカーの営業マンに転職。デザインの道があきらめきれず、現在の会社に転職し、建築士等の資格も取得した異色の経歴の持ち主。技術、性能、デザインの3つを極めた『斬新な工務店』を目指す。アクト工房ホームページ