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「環境」と「住まい」、そして「生き方」を考える 3名の専門家のメッセージ

高木善之(たかぎ・よしゆき)さん
高木善之(たかぎ・よしゆき)さん 1947年生まれ。大阪大学物性物理 学科卒業。国連地球サミットなどに 出席。グリーンコンシューマーの ためのネットワーク「地球村」 (会員10万人)代表。

美しい地球を子供たちに

日本は自動車や家電の輸出により、温暖化の原因になるCO2排出量を世界規模で増やしています。国連はこのまま いけば2050年までに世界の森が無くなると予告していますが、日本人の使う割り箸の97%は輸入木材で、量で言えば 年間で木造住宅2万軒分、約100万本の木を使い捨てしています。
世界では1日に4万人から5万人が餓死。一方日本では1日に3000万食分の食料を廃棄しています。
アメリカ全土のゴミ焼却炉は300基、イギリスには50基ありますが、日本では約1700基もあります。日本人は環境 先進国の約10倍、1日1人あたり約1㎏のゴミを排出し焼却しています。焼却場の建設や運転・維持費のために、 年間10兆円以上の税金が使われ、これがビジネスになっています。環境先進国は、家庭ゴミを出すたびに日本の 家庭の10分の1程度の排出量にもかかわらず1家庭あたり3000円近いお金を個人が支払っています。ゴミの出やす い商品が並ぶコンビニは経営が成り立ちません。
例えばあなたはお店で牛乳を買うとき日付の新しい牛乳を選んで買いますか。タクシー券をもらったら折角なの で使いますか。その行動の結果、お店で廃棄される牛乳が発生しています。車に乗って移動する人は歩いた人よ り400倍のCO2を発生させます。
あなたがその事実を考えていないのなら、環境意識の高いグリーンコンシューマー(環境などへの影響を重視す る消費者)ではありません。あなたは常に目先のお金、利便性を優先しています。
私は20年前に免許証を返上し、大阪の夏もクーラーなし、シャワーは水、食事は1日に1回です。皆さんにはぜひ 口先だけでなく、本当のグリーンコンシューマーになって欲しいと思います。
((株)三五工務店総会での講演より)

ハンス・エイクさん
ハンス・エイクさん
無暖房住宅で有名になったスウェーデンの建築家。
数度の来日経験もある。
取材は2006年2月。

無暖房住宅が終点ではない

全エネルギー消費の4割を占める暖房・給湯エネルギーを減らすことを目的に2002年、スウェーデン・イエテーボリ市に暖房設備を必要としない無暖房住宅を建設しました。無暖房住宅はドイツのファイスト博士と共同で研究を進めてきたパッシブハウスの理論に基づくもの。石油価格の高騰を背景に、関心が非常に高まっています。
高断熱化は、結果として地球環境への貢献にもつながります。しかし、それ以上に大切なのは快適性と住む人の健康。省エネは後からついてくるものだと思います。1.孤独を感じない 2.安心できる 3.多様な文化生活が可能 4.たくさんの出会いがある 5.自由な余暇時間が十分にある世界こそ、真の持続型社会です。
また、住宅の省エネ化を図るだけではエネルギーや環境の問題は解決しません。1人ひとりがなるべく無駄なエネルギーを使わない暮らしを心がけることが必要です。
自分自身が日常生活でどのくらいのエネルギーを消費しているか計算したことがあります。その結果1.住宅の暖房・給湯・調理 2.通勤 3.パソコン、コピー機等の使用④自家用車―などをトータルすると年間1万2300kWh。出張で使う飛行機のエネルギーを加算すると、なんと3万5800kWhも消費していることがわかりました。生活全般でエネルギーの無駄使いをやめなければ、いくら省エネ住宅を造ったところで何にもなりません。

中村欣嗣(なかむら・よしあき)さん
中村欣嗣(なかむら・よしあき)さん
1957年岩見沢生まれ。清水建設(株)に勤務ののち、1991年に中村よしあき建築研究所を設立、現在に至る。住宅と人権という大きなテーマをすえて、設計を進めている。一級建築士。HP:http://www17.ocn.ne.jp/~nyk/

「人はどれだけの土地がいるか」

表題のトルストイの民話をご存知でしょうか。
むかしむかしに読んで、すっかり忘れていましたが、エコロジカル・フットプリント(※)のことを考えるようになってふと思い出し、また読み直してみました。
冒頭の姉妹のやり取りの話は120年後の今も状況は同じ。120年ぐらいでは人間の本質は変わらないですよね。
人はどれだけの土地がいるか? この民話では非常に皮肉っぽい答えが用意されていますが、21世紀に生きている我々には、エコロジカル・フットプリントという答えが用意されているのだと思います。あとはいかに想像力を駆使して、“農夫・パホームの失敗”を繰り返さないかです。
先進国の我々の生活が野放図に発展途上国の人々の犠牲の上に成り立っていていいはずはありません。「人はどれだけの土地がいるか」に例えて「人はどれだけのエネルギーがいるか」という言い方があっていいかもしれません。もう少し具体的に言うなら「北海道の我々はどれだけエネルギーを消費してもよいのか」ということです。 このあたりが一住宅に限って言えば、建設の際の必要エネルギーやその住宅の寿命、ライフサイクルCO2と関係してきそうです。

※エコロジカル・フットプリントについては、http://www.ecofoot.jp/などを参考にしてください。

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洞爺湖サミット連動特集 「環境」と「家計」にやさしい住宅大研究! 硝子繊維協会 北海道住宅新聞社