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完成!北海道の古民家再生.よみがえる広間(ヒロマ)

中村よしあき建築研究所

北海道住宅新聞社編集長 白井 | 建築家 | 設計事務所 | 趣味・こだわり系 | 2015.07.24

2014年末から始まっていた道南・厚真(あつま)町の古民家再生工事が年をまたいだ今年・2015年3月に完成。6月にはパン屋さんも営業を開始しました。このタイミングで、再生工事を設計・監理した中村欣嗣(よしあき)さんといっしょに厚真町を訪れました。

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築100年を超える古民家が厚真町に寄贈され再生が決まるまでのいきさつと、厚真町と古民家の関係についてはこちらの記事をお読みください。
https://www.iesu.co.jp/ghs/article/20140915150557.html

札幌から片道1時間ちょっとのドライブコース

取材日の7月3日は北海道らしい初夏のすがすがしい空気と青い空が広がりました。 札幌から向かうと、道央自動車道を千歳インターで下りて36号線に入り、新千歳空港を過ぎて「美沢」交差点を左折します。ここからは道道10号線を道なりに進みます。車窓は北海道に暮らすボクたちもうなる、丘の風景。美々川の清流も見逃せません。

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厚真町に近づくと、みごとな田園風景が広がります。そしてほどなく厚真町内へ。そのまま道道10号線を進むと数分で左側に見えてきました。優良田園住宅地「フォーラムビレッジ」の入口に再生した古民家が建っています。

手づくりパン屋さんとして営業開始

10時前に到着したボクたちを待っていたのは、パン屋さんの開店を待つ人たち。この日の新聞朝刊に掲載されたそうで、手づくりパンを楽しみに、厚真町や遠くは日高から足を運んだ人も。開店から1時間、11時ですべてのパンが売り切れました。

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建物好きのボクにとって、古民家をただ展示するのではなく店舗として活用して、多くの人が訪れ、そこでゆっくりした時間を過ごすことができるこの空間はとてもうれしいものがありました。
12.5畳ある広間には座布団と座卓が用意されており、購入したパンをその場で味わうこともできます。

板の間でも、もう寒くない

枠の内と呼ばれるつくりが特徴のこの広間は、6本の柱の上に「キ」の字のかたちに梁がかかり、大きな空間を作り出しています。いろりも建具も当時のまま。

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天井の梁は煙でいぶされてだいぶ黒ずんでいたんでしょうね、と中村さんに聞くと、
「じつはそうでもないんですよ。せっかくの広間ですが板の間が寒くて、冬は使えなかったのではないでしょうか。前のオーナーは広間のとなりを茶の間として利用していました」
と意外な答えが返ってきました。
古民家がすてきでも、寒いままでは暮らしにくい。古民家の良さをそのまま残しながら暖かい空間に変えることも、北海道では大切なことだとわかりました。

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風情残す板戸(引き戸)

いちど外に出てみました。縁側には昔と変わらぬ引き戸が入っています。当時の古いガラスもそのままはめ込まれており、農家民家のなつかしさいっぱい。 「断熱性を優先すると、樹脂サッシが必要になります。板戸を樹脂サッシの外側に使うことで、オリジナルを大切にしながら断熱性を引き上げました」と中村さん。外側の板戸があることで、断熱性もさらに高まるそうです。

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和室でセミの声を聞く

もう一度室内に入り、奥の和室を見てみましょう。広間の奥に和室があるつくりは、日本の農家民家の基本です。都市型住宅からはなくなってしまいましたが、畳にすわってセミの声を聞いていると、自分がタイムスリップした錯覚に陥りました。書院や欄間(らんま)、組子細工も秀逸です。

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中村さんは「まだ見たことのないオリジナルデザインを追って明治時代まで旅をした気分です。設計者として自分らしいデザインを一切出さずに仕上げた初めての仕事です」と振り返ります。

作者不明の建築家として

-楽しかったですか? 少々意地悪な質問をしてみました。

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「楽しかったです。前オーナーの畑島さんは自分の代になってからでも50年以上、この家を守ってきました。厚真町に寄贈し、完成を楽しみにしている畑島さんに喜んでもらいたいと思ったのです。同時に、この仕事が無用のハコモノにしてはいけない。町民に愛される建物にする使命を強く感じました」
「アンティークのデンマーク家具ショップを見ていると、デザイナーに"アノニマス"と書かれたイスや家具があります。"作者不明"だけど50年の時を超えて残った家具たちです。農家民家はまさにアノニマスによる設計です。そして自分もその中の1人としてこの建物にかかわりを持てたことに誇りと充実感をかみしめています」

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現地は札幌から高速道路を使って1時間ちょっと。休日のドライブに、パンを買いにちょっと遠出して厚真・フォーラムビレッジに遊びに行ってみませんか。

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公開時間:午前10時~午後5時
休館日:毎週火・水曜日
札幌北インター近くにある当社から現地までの地図をつけました。

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