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薪ストーブを楽しむ。煙突掃除も?/札幌市・Oさん

中村よしあき建築研究所

ライター 柴田美幸 | バリアフリー | 断熱・省エネ・zeh | 自然素材 | 2010.07.14

札幌市内でも薪や石炭で暖房していた時代から、スイッチひとつで操作しやすい石油や電気、ガスなどに変わりました。ただエネルギー問題に目を向けてみると、石油資源には限りがあると言われるようになりました。薪ストーブの炎というロマンの先に、未来の北海道の家が見えるかもしれません。

 「おおーっ、煤がついていますねー」煙突をのぞく中村さん。
 「おおーっ、煤がついていますねー」煙突をのぞく中村さん。
煙突掃除はこのようにビニールをつけて、上から煤をこそげおとす。ストーブに落としてしまってもいいそうだが、今回はこのやり方で。
煙突掃除はこのようにビニールをつけて、上から煤をこそげおとす。ストーブに落としてしまってもいいそうだが、今回はこのやり方で。
掃除道具を持って、いざ屋根の上へ。
掃除道具を持って、いざ屋根の上へ。
ブラシの先に少しずつ棒を足していき、こすりおとす。「落ちたかー?」とOさんが声をかけると、煙突の中から「いっぱい落ちてきた!」という奥様の声が。
ブラシの先に少しずつ棒を足していき、こすりおとす。「落ちたかー?」とOさんが声をかけると、煙突の中から「いっぱい落ちてきた!」という奥様の声が。
薪ストーブに火を入れるOさん。空気の量の調節がまだうまくいかないそう。
薪ストーブに火を入れるOさん。空気の量の調節がまだうまくいかないそう。
O邸のもう一つの主役は、このオーディオルーム。音響設備はサラウンド。「この部屋が欲しくて建てたようなもの」とOさんが笑う。また壁面の木の色合いと感じにこだわり、1階の室内はこの壁面に合わせた色調でそろえられている。
O邸のもう一つの主役は、このオーディオルーム。音響設備はサラウンド。「この部屋が欲しくて建てたようなもの」とOさんが笑う。また壁面の木の色合いと感じにこだわり、1階の室内はこの壁面に合わせた色調でそろえられている。
栗山町の家具工房「ウララぼっこ」による一枚板のテーブルを中心としたダイニング。窓は木製で、これもメンテナンスしながら使うようになっている。
栗山町の家具工房「ウララぼっこ」による一枚板のテーブルを中心としたダイニング。窓は木製で、これもメンテナンスしながら使うようになっている。
木部(赤の部分)はOさん一家がみんなで塗装した。これもメンテの練習。
木部(赤の部分)はOさん一家がみんなで塗装した。これもメンテの練習。
家についての主婦の役割は大きい。奥さまにも木製サッシの塗装を経験してもらう(塗る前の準備をしている)。
家についての主婦の役割は大きい。奥さまにも木製サッシの塗装を経験してもらう(塗る前の準備をしている)。

屋根の上で煙突掃除の講習会

札幌市清田区にあるO邸では、0さん一家をはじめ中村欣嗣(よしあき)一級建築士と、薪ストーブ会社の方が、なにやらせわしなくストーブを取り囲んでいます。O邸は中村さんの設計で今年1月に完成したばかり。家の暖房は薪ストーブだけでまかなっており、5月までの半年ほどの間で煙突についた煤(すす)を、これから掃除しようというのです。  まず煙突をストーブの上ではずし、ビニール袋を装着します。屋根のうえから煙突をこすったとき、下に落ちる煤をここで受け止める作戦です。Oさん、中村さん、ストーブ会社の方(じつはサカシタペチカの坂下社長)と取材者は、ともに屋根へ続くタラップを登り始めました。なかなかの高さですが、屋根の勾配がきつくないのでそんなにストレスはありません。途中屋根に穴があけられた箇所があり、ここにもタラップがとりつけられています。これは煙突へたどりつくための動線です。「煙突までの安全なルートを選び、屋根の勾配も、掃除しやすいよう設計しました」と、中村さん。坂下さんも、よく考えられていると感心していました。

「ピークオイル」から未来の家を考える

中村さんが薪ストーブを中心としたO邸で実践したのは「暖房自給率100%の家」です。 「ピークオイル」という言葉がありますが、これは石油資源がすでに採掘のピークを迎えているとする考え方です。そうだとすると、今後は需要と供給のバランスが崩れ、石油が高騰する? 「CO2削減も重要ですが、ボクは本当に必要なのは石油削減だと思うんです。社会全体で化石エネルギーを減らす方向に持っていくべき。熱源や暖房設備を選ぶ場合、エネルギーのいま現在の価格は何十年というスパンではあまり重要ではないと思います。今後の社会のエネルギー事情も考え提案するのが、私のできることです」と中村さんは言います。 北海道の住宅にとって、特に暖房エネルギーは重要です。そこで中村さんが注目するのは、薪やもみ殻の圧縮材を中心としたバイオマスエネルギーです。北海道は森林資源が豊富にあることから、バイオマスエネルギーは暖房エネルギーの総需要のうち一定の役割を担えると中村さんは考えています。ただし地域や生活スタイルによって向き不向きがありますが、O さんの場合は子どもが成人して時間的な余裕があります。またOさん自身ずっと薪ストーブに憧れていました。中村さんは合わせてピークオイルについても知ってもらい、長いスパンで考えてもらったうえで、薪ストーブを設置することにしたのです。 実は、暖房が薪ストーブ1台だけという家は、中村さんにとって初めてのケース。補助の設備はなくても大丈夫なのでしょうか。中村さんによると「全体エネルギーは足りると計算上で分かっていました。壁の断熱厚さを通常の3倍ある31cmにすることで断熱効果を高めています」。朝に1度火をいれると夕方帰ってきたときには20度くらいに保たれているそう。逆に夏は庇もあるので家の中は涼しいのではないかという予測です。  ご主人のお気に入りはストーブの前でくつろぐこと。薪をくべたり、薪割りをするひとときをときには息子さんと分かち合っているそうです。 ただ、奥様には当初、大変な苦労があったようで「朝、みんなが起きる前に部屋を暖めようと、寝不足になったことも。今はもう慣れてすぐ火がつけられるようになりましたが」と笑います。また一度火を入れると、自然に消えるまで待つしかないので、そのまま外出するのに最初は抵抗があったそうです。便利ではない、という点をどこまで受け入れていただけるかを中村さんは慎重に判断しました。

定期的にメンテナンスできる家をつくる

 中村さんが考える家の基本には、施主自身がメンテナンスできることがあります。 「長期優良住宅といいますが、多くはひとつのハウスメーカーによって作られ、そのメーカー以外手を入れられないようになっています。でももしそのメーカーがなくなったら・・・。私の提案するのは、施主自身が定期的にメンテナンスすることで長持ちする家です。そしてどんな工務店でも手を入れることができるようにすること。各部位に画一的な工業生産品ではなく、木などの自然素材をなるべく使うことで実現できると考えています」。  長期優良住宅認定のためには、30年間の維持管理計画が必要です。これを書面だけで終わらせず、実効性を持たせるためには、施主にもその考えを理解してもらわなければなりません。  今回もOさん自身に維持管理してもらうことが含まれており、煙突掃除もそのひとつです。Oさんに感想を聞いてみると「結構力がいりましたが、案外簡単でした」と、楽しそうに答えてくださいました。「煙突と換気扇の掃除ができれば、メンテナンスは7、8割うまくいくと思います」と中村さん。「自分で手をかけることで、どこまでやればいいのか、なぜこの作業が必要なのか、施主のメンテナンスへの理解が深まります。自分で直すことができれば定期的に手を入れるようになり、家が長持ちする。まるで人間の体と同じようなことが、家にも言えるのです」

記者の目

 「今度の取材では屋根に上がってもらいます」。そう聞いて、一抹の不安が。子どものとき以来、屋根になんて上がっていない・・・。そう思いつつ、Oさん宅へ伺いました。この日は快晴。屋根の上からは、普段見えない景色が見えました。同じように、普段なかなか気付かないことについて考えた1日でした。


ピークオイルについては以下のサイトも参考になります。
朝日新聞:http://www.asahi.com/strategy/0604c.html
東京大学名誉教授石井吉徳氏:http://www1.kamakuranet.ne.jp/oilpeak/

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