昨年7月の義務化により、必ずつけなければいけない設備になった換気ですが、新法施行から1年を過ぎて、新法対応の換気にもいくつかの課題があることが指摘されるようになってきました。今回はダクトレス換気を中心にその課題と対応について見ていきたいと思います。 ◆ |
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Q…昨年7月に機械換気の設置が義務化されてから、ずっとダクトセントラルの第三種換気システムを採用してきましたが、知り合いの同業者から『ダクトレスのほうが安上がりだ』と聞かされ、コストも厳しいので変更しようかと迷っています。どちらがいいのでしょうか。
主に3通りの換気手法
さて、特殊な製品を除き、機械換気が義務化された今、換気に求めるものはどのようなことでしょうか。一覧表にしてみました。大きく必須条件、十分条件、付加条件と3つに分けてみました。 ロスナイタイプから熱交、第三種へ 北海道の歴史から見た換気
住宅の断熱・気密化に伴って換気の重要性に気づきはじめたというのが北海道の換気の歴史です。 高断熱・高気密住宅が開発される前後の換気の状況は、結露対策に排湿型の壁掛け熱交換換気扇、通称ロスナイタイプを設置するというのが一般的でした。ここが北海道の計画換気のスタートラインと言っていいでしょう。 通称ロスナイタイプは、簡単でそれなりに結露を抑える効果はありました。しかしあくまでも一部屋だけの局所換気なので、ほかの空間は空気のよどみや結露が改善されず、また設置した部屋も空気がきれいになったという実感はあまりありませんでした。 そんな状況の中で徐々に目につくようになったのがダクトセントラル換気システムです。換気システムが設置されていると、ハッキリ分かるほど空気がきれいで結露もない。電気代もさほど高くないということで、換気システムが装着されるようになってきました。 熱交換型から第三種へ 換気システムは第一種熱交換から始まりました。熱交換することで冬場は給気が暖かくなるほか、省エネにも貢献するということで、ラインナップは熱交換中心だったのです。しかし、これが徐々に第三種に切り替わっていきます。機械として悪いものではないのですが、フィルターの目詰まりによる換気量減少・結露発生、熱交換素子の霜付き、運転休止中に発生したカビなどにより運転再開時に発生する健康被害などなど。あまりにも手がかかり、住宅用としては手に余るものだということが分かってきたのです。 一方、給気加温効果と省エネ効果もじゅうぶんなものではありませんでした。道北・道東など最低気温がマイナス20℃を下回る地域では、給気を少しでも暖めたいという要望が強くありますが、寒くなるほど熱交換効率は低下し、給気がじゅうぶん暖まらないのです。また熱交換素子の霜取りなどのため予熱ヒーターを運転すると、電気代が高くなり、ユーザーは換気を止めてしまいます。さらに省エネ効果も最も効果的な旭川以北でさえ限られており、経済的にペイするには20数年を要することがわかってくると、標準装備として熱交換換気を採用することが難しくなってきました。
昨年からダクトレス増 このような流れの中で、現在は第三種の換気システムが主流になっています。ダクトの抵抗など、設計と施工に注意が必要ですが、現在のところ最も安定した換気と評価されています。 第三種換気としてはダクトセントラルのほか、三ヵ所排気程度の簡易型ダクトセントラルやパイプファン型のダクトレス換気もあります。そしてこれら簡易なタイプがローコストな換気として換気設備の設置義務化以降、本州を中心にシェアを伸ばしています。その評価はこれから、というのが現状です。
先進国・北欧の歴史 プしたようです。省エネ対策としては第三種の排気熱から熱回収して温水をつくる排気熱回収のヒートポンプなどへ向かっているのが現状です。 |
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換気量が約半分に ファンが室内気密に負ける
実際にパイプファンの換気量を測定した人の話によると、窓を閉め切った状態での測定値は窓を開けた状態、つまり負圧が発生しない状態での測定値の半分しかでなかったというのです。ちなみにそのパイプファンはごく普通のもので、窓を閉めた状態での換気量は15立方メートル/hだったそうです。これには測定者もビルダーも驚いてしまったといいます。
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意外と難しい設計 ダクト換気のほうが安心感
風対策としては、向かい風でも排気を確保できるフードを採用する必要があります。また室内の気密性に負ける点については、対策というよりそういう問題があるということを事前に知っておくことが大切です。前回の例のように、換気量が15立方メートル/hに低下してしまうとすると、天井高が2.4メートル、換気回数0.5回/hとして、パイプファンは8畳の部屋で1台必要になります。つまり、100φタイプパイプファンには、多室間換気するだけの換気能力がない機種もあるのです。 |